強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント

文字の大きさ
59 / 61

最後なんて言わせない

しおりを挟む
俺、また死んだのかな…だってあんな深さの穴に落ちたら普通無傷じゃいられないよ。
それに何だか暖かい、天国ってこんなに暖かったっけ?

パラパラと顔になにかが落ちる。
なんだろうこれ……砂?

そこで意識を覚醒させて目を開けた。

「…じ、ジョーカー!」

「やっと目、覚ましたな」

俺を膝の上に乗せて覆い被さるように至近距離にジョーカーの顔があり驚いた。
ジョーカーの頬に触れるとぬるっとした感触がして手が震える。
恐る恐る手のひらを見ると手が真っ赤になっていた。
影でジョーカーの顔が暗くてよく見えなかったが頭から頬に向かって血が垂れていた。

よく見たら俺を抱き締めている腕も服が赤くなって染み出している箇所がある。

もしかして俺を守るために…

「ご…ごめんなさい…俺が…」

「…なにが?」

「何ってその傷…」

「むしろイリヤには感謝してる」

感謝?こんな時に何を言っているんだ。
俺を責める事はあっても感謝する事なんてないだろ。
もしかしてジョーカー、変な感じに頭でも打ったのではないかと真剣に思う。

「イリヤに守護を付けてたのは分かっていたんだが、イリヤが怪我をすると思ってとっさにな」とジョーカーは苦笑いした。
そうだった、俺にはジョーカーの守護があったんだ、普通の怪我にも効果があるとは思わなかった。
俺だってジョーカーと立場が逆でも同じ事をしたと思う。

「イリヤが俺の手を掴んでくれたから少しだけ守護の力が俺にも発動したんだ、普通ならとっくに死んでたよ」

「……本当?」

「あぁ、ありがとう…イリヤ」

元々はジョーカーの力だけどジョーカーを守ってくれて良かった。

でも、これからどうしよう…上を見上げてもよじ登れる高さではない。
それにさっきから砂がパラパラと落ちてきている、もしかして崩れそうなのかもしれない。

ジョーカーも上を見上げる。
他に道がないか見渡すが何もなさそうだ。
ジョーカーは大怪我をしているし俺がおぶって登るしかない。

「イリヤ」

「ん?何?」

「俺が君を風魔法で上まで運ぶ」

ジョーカーは怪我をしているのにそんな事をして傷口が開かないか心配だった。

ジョーカーの話によればこの広場はだいぶ昔に地面が脆く危なくなり封鎖されていたそうだ。
しかし今回は被害を抑えるためにとっさにこの広場にやってきたそうだ。
だから風圧で穴が開いたんだ。

俺が先に行き助けを呼ぶ作戦だろうか、でもジョーカーを一人に出来なかった。
……なんだろう、物凄く嫌な予感がする。

「ジョーカー置いてなんて行けないよ」

「砂が落ちてきてるのが分かるだろ、もうすぐ崩れてきたコンクリートや砂が落ちてくる…危ないんだ」

「だから…」というジョーカーに思いっきり首を横に振った。

ジョーカーの話だともうすぐここは上から砂やコンクリートが落ちて埋まってしまうだろう。
だとしたら俺を出すために風魔法なんか使ったらギリギリ俺は出せるだろうがジョーカーはそのまま…

俺が助けを呼ぶ余裕はないだろう。

そんなのダメだ、一緒に逃げないと意味がない。
ジョーカーはずっと嫌だと首を振る俺を優しく認めていた。

「イリヤ、俺は君に長生きしてほしいだけなんだ」

「俺だってジョーカーに生きててほしいんだ!!」

「脇腹が痛いんだ、だから俺は自分の足で上手く立てない」

ジョーカーにそう言われ脇腹に目をやると落ちた時に岩かなにかで擦ったのか脇腹が血で滲んでいる。
ジョーカーは生きる事を諦めて俺だけ逃がそうとしている。
勿論俺に一人だけ逃げるなんて選択肢はないからどうやったら二人助かるか考える。

きっと聖騎士になれれば助かるのだろう。
でもどうやったら聖騎士になれるか分からない。

俺はジョーカーの頬の血を袖で拭う。

「…イリヤ、最後にお願い聞いてほしい」

「………最後とか、言わないでよ」

「エッチしたい」

俺は唖然とした顔でジョーカーを見つめていた。
こんな時に冗談を言ってる場合か!?
ジョーカーは俺を和ませようとしているのだろうか。

傷口に触れないように壊れ物を扱うように優しく抱き締めた。
俺は最後になんてしたくない、ジョーカーともっと一緒にいろんな思い出がほしい。
 
なんでこんな時に力になってくれないんだよ、聖騎士の力は人々の幸せを守る力じゃないのか?

「出れたらいっぱいしてあげるから、だから一緒に帰ろうよ」

「…イリヤ、でも俺は」

「ジョーカーは聖騎士なんだから助かるよ!!」

涙を流しながらやけくそになりそんな事を口走った。
フリードの時とは違い、何の説明もなくそんな事を言ったからジョーカーは全く信じていなくて「俺は聖騎士じゃない」と言われた。

また予知夢がどうとかジョーカーに説明すればいいのか?でもジョーカーが信じてくれるか分からなかった。
フリードはすぐに信じてくれたが俺の目を見てまっすぐ違うと口にするジョーカーは証拠を見せないかぎり信じるとは思えなかった。
ジョーカーはもう一度「俺は聖騎士じゃない」と続けた。

違う、違う…そうじゃない……君は…

「俺は今ないものより今ある力でイリヤを助けたい」

「で、でも聖騎士の力があれば」

「聖騎士は望んで手に入れるものではない」

それは分かってる、聖騎士は潜在的な力なんだ…望んで手に入れられるほど甘くはない。
でもジョーカーは潜在的力がある、手を伸ばせば掴めるんだ。
それをジョーカーに信じこますためにどう言えばいいのか俺には分からなかった。

ジョーカーは俺の肩を掴んだ。
手に力を込めている、まさか…

俺は拒否するようにジョーカーにしがみついて首を横に振った。

「嫌だ嫌だ!一人で行きたくない!」

「…イリヤ」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ
BL
※イヴ視点26以降(ハルフィリア編)大幅修正いたします。 見てくださった皆様には申し訳ございません。 これからも見ていただけたら嬉しいです。 外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。 当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。 それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。 漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは… 出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。 メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。 最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...