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記憶を無くした二人はもう一度恋人同士に戻ったが、いざ結婚となると状況は前と変わらない。
アルフォンスは貴族、ソフィアは平民。
貴賤結婚が禁止されている訳ではないが、理解を得るのは難しいだろう。
そう思っていたのだが、意外な所から解決策が齎された。
厄災から半年程した時、休日をのんびりと過ごしていたソフィアの所に、ミモザケーキを持って突然ジョシュアがやってきた。
「父さんと母さん、正式に籍を入れるらしい」
「は?」
「もういい加減、中途半端なままでいるのは良くないだろ?バードナー家が持ってる男爵位を継ぐってさ」
「何で急に」
「ランセル卿のおかげだって」
「アルの?」
父とアルフォンスに接点などあっただろうか。
「父さんとアルって、接点なんて無いわよね」
「あぁ、厄災の前にデモンズハーピーについての手紙は送ったみたいだけど、直接は会っていないはずだよ」
手紙を送っていたのは知らなかった。
「なんかさ、ランセル卿がソフィアとやり直すために必死なのを知って、心を打たれたらしいよ」
「ん?」
必死な姿を知って?
ジョシュアが言っている意味を理解できない。
「知ってってどういう事よ」
「ほら、瘴気の裂け目を塞いだ日だよ。砦の裏で」
「ゴホッ!」
ソフィアは飲んでいたコーヒーを吹き出しかけた。
「何で知ってるのよ!?」
「誰が見てるか分からないんだから、油断しちゃ駄目だよ」
「いや、そうじゃない!どこ!どこで見てたの!?」
恥ずかしすぎる!
あれを見られていたなんて。
だとしたら、抱きしめようとしたアルフォンスを止めたのは良い判断だった。
「北方には北方の情報網があるんだよ」
「やっぱり西方騎士団に密偵でもいるの!?誰!」
北方怖すぎる。
知りたくなかった闇だ。
「人とは限らないよ。それに隊舎とか砦とかそういう場所だけだから大丈夫。プライベートは安全だよ」
「え?動物?虫?怖っ!」
「リリス様もランセル卿の事は気に入っているみたいだし、良かったね」
「待って!フォーセライド家なの!?え?まさか家門魔法?」
特に慌てるでもない様子のジョシュアは、優雅にカップを口に運ぶ。
「ソフィアはさ、何でリリス様が公爵夫人になれたか考えた事はある?」
「治癒能力が凄かったからでしょ」
「あのね、いくら北方でも孤児院出身の平民が公爵家に入るのは厳しいよ。それを黙らせるくらいの力がフォーセライド家にはあるって事だよ」
「黙らせるくらいの…力…」
聞いた事がある。公表されていない家門魔法には密偵能力を有するものがあると。
「前公爵様は周りを、特に王家を黙らせてリリス様と結婚したのさ」
「ほぁ~…」
知らなかった。
自分が知っていたのは、本当に表面だけだったのか。
ん?だとすると気になる事がある。
「ねぇ、だったら二十三年前の厄災の時、何で前王の圧力に負けたの?」
「リリス様の弟子が何人も王宮治癒師として働いていたんだよ。中には魔術師もね。その人達を人質に取られた。だからリリス様も前公爵様も従うしかなかったんだ」
「…聞けば聞くほど胸糞悪い話ね」
「そう。その上魔力回路の治癒をしたのは母さんだろ?リリス様は悔やんでいらっしゃるんだよ。そのせいで父さんと母さんの仲も拗れたから。無理を通して前公爵と結婚した事の弊害が出てしまったとね」
「そっかぁ。リリス様が可愛がってくださるのも、そういう理由があったのね」
「ソフィアに関しては、生まれた時から見てるから孫みたいに思ってるんじゃないかな。これは前回の厄災に関わった人間が負うべき事だから、ソフィアは気にしなくていいんだよ」
「…そうね」
ジョシュアは本当に優しい。
いつだってソフィアの味方をしてくれる。
「ねぇ、フォーセライド家の家門魔法なら、マーガレットも使えるのよね?」
「マーガレット様は『親友の生々しい姿は見たくない。話を聞くくらいでちょうど良い』って言ってたよ」
「マーガレットめっ!」
思わず口が悪くなってしまう。
あのぽやぽやマーガレットが、そんな事を言っていたなんて。
「口が悪いよソフィア」
「悪くもなるわよ!」
ソフィアは残ったコーヒーを一気に飲み干した。
「でもこれで晴れて男爵令嬢だね。ランセル家は子爵だから結婚出来るよ」
「…父さん達、私の為に籍を入れたって事なのね」
「いいんだよ、それで。母さんだってとっくにお祖母様の事は許してたんだ。でもさ、こういう事って何かキッカケがないと動けないだろ?それがソフィアだっただけだよ。これでソフィアが西方で嫌な思いもしなくて済むし、ランセル家も家格では文句を言えない。必要なら陛下が一筆書くって仰ってたよ」
「どんだけ重い一筆なのよ。ほぼ脅迫じゃない」
そんなものを書かれたら、今後のランセル家との付き合いが気まずくなるだろう。
「安心して自分の幸せを掴めばいいんだ。幸せになるんだよ、ソフィア」
「…ありがとう、ジョシュア。あなたも早く義妹ちゃんに会わせてね」
ソフィアが言うと、分かりやすくジョシュアが赤くなった。
「え!?待って!彼女出来たの!?」
「……出来た、訳じゃ無いけど」
「ふ~ん。良い感じの子がいる訳ね~」
こんなジョシュア、なかなか見られない。
師匠に似てジョシュアは、腹黒策士タイプだ。
「ねぇ、どんな子?王宮魔術師?治癒師?メイド?」
「う、うるさい!僕はもう帰るから!」
顔を真っ赤にさせたまま、ジョシュアは転移して行った。
可愛い弟にも春が来たのだろう。
ニヤニヤが止まらないソフィアが鼻歌混じりに片付けをしていると、今度はアルフォンスが転移してきた。
アルフォンスは貴族、ソフィアは平民。
貴賤結婚が禁止されている訳ではないが、理解を得るのは難しいだろう。
そう思っていたのだが、意外な所から解決策が齎された。
厄災から半年程した時、休日をのんびりと過ごしていたソフィアの所に、ミモザケーキを持って突然ジョシュアがやってきた。
「父さんと母さん、正式に籍を入れるらしい」
「は?」
「もういい加減、中途半端なままでいるのは良くないだろ?バードナー家が持ってる男爵位を継ぐってさ」
「何で急に」
「ランセル卿のおかげだって」
「アルの?」
父とアルフォンスに接点などあっただろうか。
「父さんとアルって、接点なんて無いわよね」
「あぁ、厄災の前にデモンズハーピーについての手紙は送ったみたいだけど、直接は会っていないはずだよ」
手紙を送っていたのは知らなかった。
「なんかさ、ランセル卿がソフィアとやり直すために必死なのを知って、心を打たれたらしいよ」
「ん?」
必死な姿を知って?
ジョシュアが言っている意味を理解できない。
「知ってってどういう事よ」
「ほら、瘴気の裂け目を塞いだ日だよ。砦の裏で」
「ゴホッ!」
ソフィアは飲んでいたコーヒーを吹き出しかけた。
「何で知ってるのよ!?」
「誰が見てるか分からないんだから、油断しちゃ駄目だよ」
「いや、そうじゃない!どこ!どこで見てたの!?」
恥ずかしすぎる!
あれを見られていたなんて。
だとしたら、抱きしめようとしたアルフォンスを止めたのは良い判断だった。
「北方には北方の情報網があるんだよ」
「やっぱり西方騎士団に密偵でもいるの!?誰!」
北方怖すぎる。
知りたくなかった闇だ。
「人とは限らないよ。それに隊舎とか砦とかそういう場所だけだから大丈夫。プライベートは安全だよ」
「え?動物?虫?怖っ!」
「リリス様もランセル卿の事は気に入っているみたいだし、良かったね」
「待って!フォーセライド家なの!?え?まさか家門魔法?」
特に慌てるでもない様子のジョシュアは、優雅にカップを口に運ぶ。
「ソフィアはさ、何でリリス様が公爵夫人になれたか考えた事はある?」
「治癒能力が凄かったからでしょ」
「あのね、いくら北方でも孤児院出身の平民が公爵家に入るのは厳しいよ。それを黙らせるくらいの力がフォーセライド家にはあるって事だよ」
「黙らせるくらいの…力…」
聞いた事がある。公表されていない家門魔法には密偵能力を有するものがあると。
「前公爵様は周りを、特に王家を黙らせてリリス様と結婚したのさ」
「ほぁ~…」
知らなかった。
自分が知っていたのは、本当に表面だけだったのか。
ん?だとすると気になる事がある。
「ねぇ、だったら二十三年前の厄災の時、何で前王の圧力に負けたの?」
「リリス様の弟子が何人も王宮治癒師として働いていたんだよ。中には魔術師もね。その人達を人質に取られた。だからリリス様も前公爵様も従うしかなかったんだ」
「…聞けば聞くほど胸糞悪い話ね」
「そう。その上魔力回路の治癒をしたのは母さんだろ?リリス様は悔やんでいらっしゃるんだよ。そのせいで父さんと母さんの仲も拗れたから。無理を通して前公爵と結婚した事の弊害が出てしまったとね」
「そっかぁ。リリス様が可愛がってくださるのも、そういう理由があったのね」
「ソフィアに関しては、生まれた時から見てるから孫みたいに思ってるんじゃないかな。これは前回の厄災に関わった人間が負うべき事だから、ソフィアは気にしなくていいんだよ」
「…そうね」
ジョシュアは本当に優しい。
いつだってソフィアの味方をしてくれる。
「ねぇ、フォーセライド家の家門魔法なら、マーガレットも使えるのよね?」
「マーガレット様は『親友の生々しい姿は見たくない。話を聞くくらいでちょうど良い』って言ってたよ」
「マーガレットめっ!」
思わず口が悪くなってしまう。
あのぽやぽやマーガレットが、そんな事を言っていたなんて。
「口が悪いよソフィア」
「悪くもなるわよ!」
ソフィアは残ったコーヒーを一気に飲み干した。
「でもこれで晴れて男爵令嬢だね。ランセル家は子爵だから結婚出来るよ」
「…父さん達、私の為に籍を入れたって事なのね」
「いいんだよ、それで。母さんだってとっくにお祖母様の事は許してたんだ。でもさ、こういう事って何かキッカケがないと動けないだろ?それがソフィアだっただけだよ。これでソフィアが西方で嫌な思いもしなくて済むし、ランセル家も家格では文句を言えない。必要なら陛下が一筆書くって仰ってたよ」
「どんだけ重い一筆なのよ。ほぼ脅迫じゃない」
そんなものを書かれたら、今後のランセル家との付き合いが気まずくなるだろう。
「安心して自分の幸せを掴めばいいんだ。幸せになるんだよ、ソフィア」
「…ありがとう、ジョシュア。あなたも早く義妹ちゃんに会わせてね」
ソフィアが言うと、分かりやすくジョシュアが赤くなった。
「え!?待って!彼女出来たの!?」
「……出来た、訳じゃ無いけど」
「ふ~ん。良い感じの子がいる訳ね~」
こんなジョシュア、なかなか見られない。
師匠に似てジョシュアは、腹黒策士タイプだ。
「ねぇ、どんな子?王宮魔術師?治癒師?メイド?」
「う、うるさい!僕はもう帰るから!」
顔を真っ赤にさせたまま、ジョシュアは転移して行った。
可愛い弟にも春が来たのだろう。
ニヤニヤが止まらないソフィアが鼻歌混じりに片付けをしていると、今度はアルフォンスが転移してきた。
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