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甲子ノ巻 齬鬼(かみあわないおに)
子
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“女に産まれてこなかった事がさぞ悔やまれる”
“何故に、女として産まれてこなかったのか。それ程の素質を持ちながら”
散々に、そう嘆かれながら育てられた。
女としての所作や身嗜み、全て女同様に生かされてきたのだ。
それが、ある日告げられる。
“自由に生きて良い”
それは、即ち。これまでの生き方を、全て虚と変える宣告であった。
一族の発祥は、遥か昔、戦国の世まで遡る。
元は神社に所属せず、各地を回る歩き巫女という存在であった。けれど、いつしかそこに戦国武将が介入し、くノ一一族の分家として育てられ、認められるも、徳川泰平の世を機に、再び本来の歩き巫女として細々と生き長らえる事となる。
それなのに、突如、一族に不穏な予言が舞い降りたのだ。
“間もなく、この世は大きく変貌を遂げるであろう。一族も終焉を迎える”
と。その予言通りと言うべきか、半年程で黒船が現れた。
一族は代々嫡女が跡を継いできた。故に、嫡男である忍海(おうみ)は跡継ぎから外されたのだ。
“単なる神社という形でもよい。一族が滅んでしまう事だけは避けたい”
かつての主の想いを消してしまう事だけは避けたいというのが、一族一致の意見である。 故に、これまでの在り方を変えることになった。
しかし、今までの生活が全くもって変ってしまう訳では無い。
忍海が、一族一人の男として、生きていく道はあった。けれど、彼はそれに自ら背を向けたのだ。一族の女に飼われ、犬のように生きるのであれば、自分の意志で生きてみたいと考えた。
しかし、考えたところで、色や芸で情報を仕入れては売り、時には隙を見て人を始末する術しか教わってこなかった。房中術や生きる術としてしか、身体を重ねる意味を知らない。
世が大きく変貌するのであれば、最早男娼の道しか残されていないのではないかと悩んだ事もあった。で、あれば、女に飼い慣らされる筈であった、一族の男が辿る一生と変わりはしないのではないか。
しかし、変貌を遂げる前に訪れるのが変動である。変動が激動へと動き始めるのを感じ取った忍海は、まだ己が己として生きる道が残されているような気がした。
妹が単なる巫女一族として継承するのを見届けると、全てに背を向け旅立ちを決めた。
「兄上、やはり行ってしまうのですね」
ここは、犬小屋。飼い犬は、飼い主が居なければ生きていけないかもしれない。仮にもし、そう諦めた時は、この哀れな犬小屋に戻ろうと決めた。
「さよなら」
全てを決意するまで、五年掛かった。
そして、それから数年。
人を殺しに、殺してきた。
何を食べても鉄の味が混ざるくらい、何処に居ても血の臭いが漂う程に、殺しに殺し続けている。
とまあ、そんな話は置いといて。
“お海”は、追われていた。
暗闇の中、建物の屋根と屋根を伝って逃げる巫女姿の娘が一人。それが、お海である。並走するように、一人の侍がお海を追っていた。時折、侍はお海に向かって刀を振り回すのだが、寸前の所でお海は刃を交わしていく。
(くっそ、しつこいな!)
諦めたように、お海は朧月を背に立ち止まり、侍へと振り返った。
同時に、侍も足を止めた。
「やっと、止まったか。悪いようにはせんて」
侍の息は荒いが、無理も無い。お海に合わせて半刻程、ここまで全力疾走してきたのだから。
強い風が吹き抜ける。お海の髪を揺らすと共に、侍にお海の匂いが運ばれていく。実に、うっとりさせる様な馨しい香りである。
お海は侍へと告げた。
「これ以上、鬼を追い掛けると言うのであれば、地獄まで来ていただきましょうか」
更に吹き抜けた風と共に、雲が晴れた。お海の背景には、見事な満月が顔を出し、同時に侍の身体は痺れて動かなくなってきていた。刀も握っていられなくなると、手から滑り落ちた刀がその場に落ちた。
「娘、何を?」
お海は香りに混ぜて、風に痺れ薬を乗せたのである。
お海は、懐刀を取り出し抜いた。そっと、侍に歩み寄る。
「地獄への口利き、いたしましょう」
お海の振り上げた刃が、月に照らされて鋭く光ると、動けなくなった侍の動脈を切り裂いた。お海は、侍の血飛沫を、まるで踊るように避けて退いた。
侍をそのままに、お海は何事も無かったかのように真っ直ぐ旅籠に戻った。
通常、泊まる旅籠には、我儘な要求を告げている。裏口から出入りさせて欲しい、相部屋は不可、行水程度でも良いのでなるべく毎日身体を洗わせて欲しいと。湯屋を勧められる場合もあるが、薄暗くて浴場に入れば男女混合の湯屋は好きにはなれなかった。
勿論、その分の金を渡してはいる。
無論、この旅籠でも同じ要求をしており、従業員用ではあるが、珍しく小さい風呂があった。夜更けしか使えないと言われたが、帰ってくるのも夜更けだから構わないと告げている。
旅籠の裏口から中に入ると、気付いた女将が手燭を手に迎えに出た。
「お勤めは、終わりですか」
お海はにっこり微笑むと、先程まで鈴を鳴らした様な綺麗な娘の声とは変わり、立派な男の声で答えた。
「はい。夜分遅くに、申し訳ない」
「丁度、風呂が空きましたよ」
「有難いです。直ぐに向かいます」
お海は、夜目が効く。どんな暗闇であっても昼間よろしくよく見えるし、目隠しをしていてもある程度の状況は把握出来る感覚も備えている。故に、時々灯りの事を忘れてしまう。
お海は手燭も持たずに、暗闇の中、真っ直ぐ部屋へと向かっていった。部屋で荷物から寝間着と絹で出来た愛用の糠袋を手に取ると、風呂場へと向かった。
女姿のお海を解くと、男姿の忍海に戻る。風呂に入る前に丁寧に化粧を落とし、糠袋で優しく身体を磨き始めた。磨いていると、背中を流しましょうかと店の者から声を掛けられることが多いのだが、忙しいのかこの旅籠はそういった気遣いは無いようだ。忍海としては、気兼ねなくのんびり出来るので、逆に有難い。
湯加減は、少々温めで長湯するには丁度良い。窓は無く、真っ暗闇だが構わない。
(ああ、疲れた)
思いの外、走った。
今夜の口利きは、佐幕派から怪しい浪士三人組を始末して欲しいと依頼されたものである。その佐幕派は、別に浪士を襲撃する計画があるらしく、自分達が動くのは不都合だと判断してとの闇討ちらしい。
三人というので、三両貰った。人の命なんぞ、一両あれば十分だと忍海は思っている。
それなのに、口利き後の現場に突如あの四人目の浪士が現れた。四人目の金は貰っていないし、想定外なので一旦逃げたまでである。
何より、犯行後では相手も構えるため、侍相手では分が悪い。しつこく追い回されたので、仕方無く殺した迄である。
忍海は、ゆっくり風呂で癒されて部屋に戻る途中、台所を通り掛かった。忍海に気付いた女将が、声を掛けてきた。
「お兄さん、この町の名物。食べたかい?」
普段、呑む、食う、風呂くらいしか楽しみが無いので、興味を唆られた。
「名物って?」
「知らないのかい? まあ、実際はそれっぽく味漬けした鯉の切り身の事なんだけどさ。人魚の肉って奴だよ。巫覡のお兄さんにゃ、ご法度かい?」
女将を覗くと、壺にじっくり漬けられた魚の切り身が見えた。女将が、それを炭火でこっそり焼こうとしている所であったのだ。
忍海の口内に、唾液が溢れる。
「いや、大好きだよ。俺の一族に禁忌は無いのだ。酒と共にその人魚の肉とやらも頼むよ」
「はいよ」
調子が良いもので、先程までの疲れた気分も忘れ、忍海は上機嫌に部屋へと戻った。
部屋で、風呂上がりの肌にへちま水を塗りながら肌を整えていると、酒のお膳を持って女将が現れた。
「お待たせしました。終わりましたら、廊下にでも出しておいてくださいな」
忍海は、幼子の様にその膳に飛びついた。
「飛び切り燗に、たれ漬けした鯉を炭火で軽く炙ったんだな。それから、粕汁か。女将、分かってるじゃないか」
忍海があまりに無邪気に褒めるので、女将は少し照れながら笑った。
「私はね、この仕事の後のささやかな一杯が好きでねえ。この為に働いてるみたいなもんさ。本当は賄いなんだけど、お兄さんも遅くまで仕事して、疲れてたみたいだからさ。こんなもんで悪いけど」
忍海は待ちきれず、既に酒を呑み始めている。いつもはぬる燗で頂くのだが、たまの飛び切り燗は実にいい。程良く秋風が、身に染みていた所でもあったのだ。人肌恋しい季節に飛び切り燗が、五臓六腑じっくり浸透していくようである。
「はあ」
思わず、幸せな声が出てしまう。
「女将、一緒に飲むか?」
忍海は三味線に手に掛けた。心底気分が良いのだ。
「そりゃいいけど、私はこれから風呂に入っての一杯さ。それに、もう皆寝てるんだ。どんな名手でも、三味線は怒られちまうよ」
忍海は笑った。
「それもそうだな。仕方無い、独り月見酒といこう」
女将が去ると、忍海は少しだけ雨戸を開けた。丁度、綺麗な満月がこちらを見ている。
忍海は、人魚の肉を口に運んだ。女将の処理が上手いのか、臭みもなく程良く歯ごたえが残り、実に美味である。それから、残り物で丁寧に出汁を取った粕汁は、複雑な旨味が合わさって実に贅沢な味に仕上がっている。
「俺もこれで、不老不死になるかな」
後から聞けば、どうやらこの町には、八百比丘尼の伝説があるようだ。全国至る箇所に存在する、八百比丘尼伝説の一つだと思われる。ただ、模した料理を食べたのは初めての経験であった。
(こう言うのも良いな)
“何故に、女として産まれてこなかったのか。それ程の素質を持ちながら”
散々に、そう嘆かれながら育てられた。
女としての所作や身嗜み、全て女同様に生かされてきたのだ。
それが、ある日告げられる。
“自由に生きて良い”
それは、即ち。これまでの生き方を、全て虚と変える宣告であった。
一族の発祥は、遥か昔、戦国の世まで遡る。
元は神社に所属せず、各地を回る歩き巫女という存在であった。けれど、いつしかそこに戦国武将が介入し、くノ一一族の分家として育てられ、認められるも、徳川泰平の世を機に、再び本来の歩き巫女として細々と生き長らえる事となる。
それなのに、突如、一族に不穏な予言が舞い降りたのだ。
“間もなく、この世は大きく変貌を遂げるであろう。一族も終焉を迎える”
と。その予言通りと言うべきか、半年程で黒船が現れた。
一族は代々嫡女が跡を継いできた。故に、嫡男である忍海(おうみ)は跡継ぎから外されたのだ。
“単なる神社という形でもよい。一族が滅んでしまう事だけは避けたい”
かつての主の想いを消してしまう事だけは避けたいというのが、一族一致の意見である。 故に、これまでの在り方を変えることになった。
しかし、今までの生活が全くもって変ってしまう訳では無い。
忍海が、一族一人の男として、生きていく道はあった。けれど、彼はそれに自ら背を向けたのだ。一族の女に飼われ、犬のように生きるのであれば、自分の意志で生きてみたいと考えた。
しかし、考えたところで、色や芸で情報を仕入れては売り、時には隙を見て人を始末する術しか教わってこなかった。房中術や生きる術としてしか、身体を重ねる意味を知らない。
世が大きく変貌するのであれば、最早男娼の道しか残されていないのではないかと悩んだ事もあった。で、あれば、女に飼い慣らされる筈であった、一族の男が辿る一生と変わりはしないのではないか。
しかし、変貌を遂げる前に訪れるのが変動である。変動が激動へと動き始めるのを感じ取った忍海は、まだ己が己として生きる道が残されているような気がした。
妹が単なる巫女一族として継承するのを見届けると、全てに背を向け旅立ちを決めた。
「兄上、やはり行ってしまうのですね」
ここは、犬小屋。飼い犬は、飼い主が居なければ生きていけないかもしれない。仮にもし、そう諦めた時は、この哀れな犬小屋に戻ろうと決めた。
「さよなら」
全てを決意するまで、五年掛かった。
そして、それから数年。
人を殺しに、殺してきた。
何を食べても鉄の味が混ざるくらい、何処に居ても血の臭いが漂う程に、殺しに殺し続けている。
とまあ、そんな話は置いといて。
“お海”は、追われていた。
暗闇の中、建物の屋根と屋根を伝って逃げる巫女姿の娘が一人。それが、お海である。並走するように、一人の侍がお海を追っていた。時折、侍はお海に向かって刀を振り回すのだが、寸前の所でお海は刃を交わしていく。
(くっそ、しつこいな!)
諦めたように、お海は朧月を背に立ち止まり、侍へと振り返った。
同時に、侍も足を止めた。
「やっと、止まったか。悪いようにはせんて」
侍の息は荒いが、無理も無い。お海に合わせて半刻程、ここまで全力疾走してきたのだから。
強い風が吹き抜ける。お海の髪を揺らすと共に、侍にお海の匂いが運ばれていく。実に、うっとりさせる様な馨しい香りである。
お海は侍へと告げた。
「これ以上、鬼を追い掛けると言うのであれば、地獄まで来ていただきましょうか」
更に吹き抜けた風と共に、雲が晴れた。お海の背景には、見事な満月が顔を出し、同時に侍の身体は痺れて動かなくなってきていた。刀も握っていられなくなると、手から滑り落ちた刀がその場に落ちた。
「娘、何を?」
お海は香りに混ぜて、風に痺れ薬を乗せたのである。
お海は、懐刀を取り出し抜いた。そっと、侍に歩み寄る。
「地獄への口利き、いたしましょう」
お海の振り上げた刃が、月に照らされて鋭く光ると、動けなくなった侍の動脈を切り裂いた。お海は、侍の血飛沫を、まるで踊るように避けて退いた。
侍をそのままに、お海は何事も無かったかのように真っ直ぐ旅籠に戻った。
通常、泊まる旅籠には、我儘な要求を告げている。裏口から出入りさせて欲しい、相部屋は不可、行水程度でも良いのでなるべく毎日身体を洗わせて欲しいと。湯屋を勧められる場合もあるが、薄暗くて浴場に入れば男女混合の湯屋は好きにはなれなかった。
勿論、その分の金を渡してはいる。
無論、この旅籠でも同じ要求をしており、従業員用ではあるが、珍しく小さい風呂があった。夜更けしか使えないと言われたが、帰ってくるのも夜更けだから構わないと告げている。
旅籠の裏口から中に入ると、気付いた女将が手燭を手に迎えに出た。
「お勤めは、終わりですか」
お海はにっこり微笑むと、先程まで鈴を鳴らした様な綺麗な娘の声とは変わり、立派な男の声で答えた。
「はい。夜分遅くに、申し訳ない」
「丁度、風呂が空きましたよ」
「有難いです。直ぐに向かいます」
お海は、夜目が効く。どんな暗闇であっても昼間よろしくよく見えるし、目隠しをしていてもある程度の状況は把握出来る感覚も備えている。故に、時々灯りの事を忘れてしまう。
お海は手燭も持たずに、暗闇の中、真っ直ぐ部屋へと向かっていった。部屋で荷物から寝間着と絹で出来た愛用の糠袋を手に取ると、風呂場へと向かった。
女姿のお海を解くと、男姿の忍海に戻る。風呂に入る前に丁寧に化粧を落とし、糠袋で優しく身体を磨き始めた。磨いていると、背中を流しましょうかと店の者から声を掛けられることが多いのだが、忙しいのかこの旅籠はそういった気遣いは無いようだ。忍海としては、気兼ねなくのんびり出来るので、逆に有難い。
湯加減は、少々温めで長湯するには丁度良い。窓は無く、真っ暗闇だが構わない。
(ああ、疲れた)
思いの外、走った。
今夜の口利きは、佐幕派から怪しい浪士三人組を始末して欲しいと依頼されたものである。その佐幕派は、別に浪士を襲撃する計画があるらしく、自分達が動くのは不都合だと判断してとの闇討ちらしい。
三人というので、三両貰った。人の命なんぞ、一両あれば十分だと忍海は思っている。
それなのに、口利き後の現場に突如あの四人目の浪士が現れた。四人目の金は貰っていないし、想定外なので一旦逃げたまでである。
何より、犯行後では相手も構えるため、侍相手では分が悪い。しつこく追い回されたので、仕方無く殺した迄である。
忍海は、ゆっくり風呂で癒されて部屋に戻る途中、台所を通り掛かった。忍海に気付いた女将が、声を掛けてきた。
「お兄さん、この町の名物。食べたかい?」
普段、呑む、食う、風呂くらいしか楽しみが無いので、興味を唆られた。
「名物って?」
「知らないのかい? まあ、実際はそれっぽく味漬けした鯉の切り身の事なんだけどさ。人魚の肉って奴だよ。巫覡のお兄さんにゃ、ご法度かい?」
女将を覗くと、壺にじっくり漬けられた魚の切り身が見えた。女将が、それを炭火でこっそり焼こうとしている所であったのだ。
忍海の口内に、唾液が溢れる。
「いや、大好きだよ。俺の一族に禁忌は無いのだ。酒と共にその人魚の肉とやらも頼むよ」
「はいよ」
調子が良いもので、先程までの疲れた気分も忘れ、忍海は上機嫌に部屋へと戻った。
部屋で、風呂上がりの肌にへちま水を塗りながら肌を整えていると、酒のお膳を持って女将が現れた。
「お待たせしました。終わりましたら、廊下にでも出しておいてくださいな」
忍海は、幼子の様にその膳に飛びついた。
「飛び切り燗に、たれ漬けした鯉を炭火で軽く炙ったんだな。それから、粕汁か。女将、分かってるじゃないか」
忍海があまりに無邪気に褒めるので、女将は少し照れながら笑った。
「私はね、この仕事の後のささやかな一杯が好きでねえ。この為に働いてるみたいなもんさ。本当は賄いなんだけど、お兄さんも遅くまで仕事して、疲れてたみたいだからさ。こんなもんで悪いけど」
忍海は待ちきれず、既に酒を呑み始めている。いつもはぬる燗で頂くのだが、たまの飛び切り燗は実にいい。程良く秋風が、身に染みていた所でもあったのだ。人肌恋しい季節に飛び切り燗が、五臓六腑じっくり浸透していくようである。
「はあ」
思わず、幸せな声が出てしまう。
「女将、一緒に飲むか?」
忍海は三味線に手に掛けた。心底気分が良いのだ。
「そりゃいいけど、私はこれから風呂に入っての一杯さ。それに、もう皆寝てるんだ。どんな名手でも、三味線は怒られちまうよ」
忍海は笑った。
「それもそうだな。仕方無い、独り月見酒といこう」
女将が去ると、忍海は少しだけ雨戸を開けた。丁度、綺麗な満月がこちらを見ている。
忍海は、人魚の肉を口に運んだ。女将の処理が上手いのか、臭みもなく程良く歯ごたえが残り、実に美味である。それから、残り物で丁寧に出汁を取った粕汁は、複雑な旨味が合わさって実に贅沢な味に仕上がっている。
「俺もこれで、不老不死になるかな」
後から聞けば、どうやらこの町には、八百比丘尼の伝説があるようだ。全国至る箇所に存在する、八百比丘尼伝説の一つだと思われる。ただ、模した料理を食べたのは初めての経験であった。
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