処刑予定の悪役令嬢ですが、全世界のイケメンが味方です!

暦灯花(こよみとうか)

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子世代編:王妃と騎士の息子、王立学園へ!

子世代編 第5話:「試験戦と、選ばれなかった才能」

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王立学園・初週末。

新入生たちにとって最初の“洗礼”とも言われる行事――
それが、公開模擬戦《才能査定試験》。

貴族の家柄も、王家の名も、関係ない。
この試験だけは、魔力、剣技、知識の総合力で「実力」を査定される。

だがそこには、当然ながら“見えない圧力”も働いていた。

 

「リオ=ヴァルモンは、個別試験ではなく――ユリシス王子との直接対戦とする」

教官がそう告げた瞬間、講堂がざわめいた。

 

(初戦で王子と!? 普通ありえない……!)
(リオってまだ魔力量も不明なのに……潰すつもり……?)

 

観客席には他の貴族令嬢たち、そして一部の教師、そして――カティア。

彼女は腕を組みながら、無言で見つめていた。

「……露骨すぎるわよ、ユリシス。まるで“潰しておきたい”って顔に書いてる」

 

だが、当のリオは驚きもせず、静かに立ち上がった。

「わかった。受けるよ。逃げるつもりはないから」

「はん、見苦しく足掻くのも、下層の血筋らしいな」

そう嘲笑するユリシスの剣は、純銀製の魔導剣。
王家特注の魔力増幅装置が組み込まれている。

 

一方、リオが手にしたのは――素朴な練習剣。

だが、それを見て教官の一人が思わず唸った。

「……あの構え、どこかで……いや、まさか……」

 

審判の声が響く。

「公開模擬戦、開始!」

 

ユリシスが放った初撃は、剣ではなく――精密な魔法の斬撃。

空気が裂け、リオの立っていた床が吹き飛ぶ。

「終わりだ、ヴァルモ――」

 

「……まだ、始まってないよ」

 

吹き飛ばされたかに見えた瞬間、リオは低姿勢で距離を詰めていた。

そしてその剣が――王妃クラリスの“騎士”だった男と同じ剣筋で、ユリシスの懐に届いた。

「っ……!」

咄嗟に防御魔法が展開され、直撃は避けられたが――会場は騒然となった。

 

(今の踏み込み……あれ、“王妃を守った伝説の一閃”!?)
(いや、あれは……リオの剣だ。似てるけど、どこか違う……)

 

試合は、そのまま判定持ち越しとなった。

ユリシスは怒りを隠しきれずに去り、
一方、リオはただ静かに剣を収める。

 

観客席から拍手が起きるわけでもない。
称賛も、賛美もなかった。

けれど――その静けさの中、
ひとつだけ確かに評価されたものがあった。

 

「……あれは、“選ばれなかった者の剣”だ」

カティアの呟きは、誰にも聞かれなかった。
けれどその目は、明らかに“興味”から“敬意”に変わっていた。

 

そして、試合後。

校舎裏で、リオはひとり腰を下ろしていた。

「……怖かったな……」

そこへカティアが現れ、缶入りの甘い果汁水を投げてよこす。

「ふふ、かっこよかったじゃない。……少しだけ」

「“少し”だけって何……!」

 

ふたりの影が、西日に長く伸びていく。

 

そしてその背後では、ひとつの影が――
王国諜報部の使者が、静かに報告を記録していた。

「リオ=ヴァルモン。王妃クラリスの息子。実戦評価、予想を超える反応」

物語は、動き出したばかりだった。
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