ケーキのまほう、知ってる?

天音 翔杜

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ケーキのまほう、知ってる?

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「じゃあ、みんなに聞いてみようか。将来、どんな仕事がしたいですか?」

先生がそう言ったとたん、教室の空気がそわそわしはじめた。

「サッカー選手!」
「声優さん!」
「パン屋さんで、パンの味見係!」
「YouTuber!」

なんだかにぎやかで、楽しそう。
でも、わたしはちょっとだけ考えこんだ。

だって、わたしの夢は、ケーキ屋さんだから。

ちいさいころから、ケーキがだいすきだった。

お誕生日にはいちごのショートケーキ。
クリスマスにはまっ白なホールケーキに、ろうそくを立てて。

合格祝い、じいじの退院祝い、お正月だって、いつのまにかケーキが出てきて。

家族もにっこり、友だちも「おいしそう~!」って笑って。ケーキって、なんだか魔法みたい。

一口で、心がふわっとあたたかくなるんだもん。

だから、わたしはケーキ屋さんになりたいって思った。

自分で作ったケーキで、誰かの「うれしい日」を、もっとすてきにできたらって。

だけど、そのとき。

「ケーキ屋さん? なんか、ふつーすぎない?」

前の席のケンタが、ふり返って言った。

「なんでケーキ屋さん?  もっとすごいやつ、ないの?」

なんか、ちょっとショックだった。

わたしの夢って、ふつうなのかな。もっと、すごい夢じゃないとダメなのかな。

その日の帰り道。

ランドセルが、いつもより重く感じた。

それから一日がすぎて、次の日。

わたしは家のキッチンにいた。
ママのとなりで、エプロンをつけて。

今日は弟のたんじょう日。
ママが「ケーキ職人さん、よろしくね」って、わたしにウィンクしてきた。

スポンジにクリームをぬって、いちごをぽんぽんとのせていく。

最後に、チョコレートで「おめでとう」の文字を書いたら、あっというまに完成!

夜。家族みんなが集まって、「いただきます!」って言ったとき。

弟の目が、きらきら光ってた。
パパもママも、ほっぺがゆるんでた。

ケーキのまんなかには、ろうそくがゆらゆらしてて。

なんだか、おうち全体が、あたたかくなったみたいだった。

そのとき、わたしは思ったんだ。

ふつうでいいや。

わたしは、ケーキ屋さんになりたい。

すごい科学者でも、超人気アイドルでもないけど、誰かの「特別な日」をもっとキラキラにできるなら、それって、ちょっとだけ世界を変える魔法かもしれない。

学校の黒板には、みんなの将来の夢が書かれた。

「大工さん」「保育士」「消防士」「パン屋さん」
いろんな夢があって、いろんな思いがある。

わたしのところには、ちゃんとこう書いてある。

「ケーキ屋さん」って。

ふつうって、すごいことかもしれない。

だって、「おいしい」とか「うれしい」とか「ありがとう」って、あたりまえに見えて、じつはとっても大切なことだから。

わたしの夢は、ふつうだけど。わたしにとっては、とっておきの夢。

ケーキの上にのせる、いちごみたいに。
キラッと光る、小さな願いです。
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