最凶のダンジョンで宿屋経営

藤雪たすく

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腹ペコエルフの話

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何も無い平坦な草原を歩いていく。
探検にちょうど良い森とか無いかなぁ……。

しばらく歩くと森発見。
今日のスキルは調子が良いな。
食べると幸運が訪れるというジュエルベリーのお陰かな?

森の中に入って花や木を夢中になってタブレットで撮っていく。

「見て?こんなに図鑑うまったよ?」

後ろを振り返るとヒュウガと触手がまたじゃれ合っている。
随分と仲が良くなったんだな。

森の奥へ進もうとしたらヒュウガが真面目な顔で俺の腕を掴んだ。

「何かいる……魔物……ではないな……エルフか……」

エルフ……エルフと言えば耳が尖っていて金髪の綺麗なお姉さん……男としてはやはり見ておかねば……しかし初見となるとやはり緊張するので鞄から面を取り出して装着した。

何人の男に犯られようと俺の根底は男だ。エルフは見たいだろう。
気を巡らすヒュウガと触手とは裏腹に期待に胸を膨らませて森の奥へ進んでいった。

森の奥、少し開けた場所の真ん中に差し込む光を浴びながら横たわる体。
え……死んでる!?

「あっ……待て、カラスマ!!」

ヒュウガが止めるのも聞かずに抱き起こした。

「大丈夫ですか!?」

瞑っていた瞳がうっすらと開かれた。
美女じゃないけど超美少女。

「お……」

小さな唇が震えながら、開かれた。

「お腹空いた……」

グルグルルル……。

美少女からものすごい腹の音が響く。
外傷は無さそうだけど、ものすごくベタにお腹空いてそうだ。

エルフと言えば、お肉は食べないんだっけ?
お弁当を開けて……ヒュウガ向けに作ったからお肉ばっかり……。
彩りと隙間埋めに入れたトマトくらい?
たまご焼きはダメかな?

どれが食べられるか悩んでいると鼻を引くつかせた美少女はガバリと起き上がるとものすごい勢いでお弁当を食べ始めた。
あ……お肉も普通に食べるんだ。

どんどん無くなっていくお弁当にヒュウガが毛を逆立てるのを、まぁまぁと宥める。

二人分のお弁当を一気に食べ上げた美少女はキラキラした瞳でこちらをあざとく上目遣いで見上げてきた。

「ありがとうございます!!これを作ったのはお兄さんですか?とても美味しかったです!!」

嬉しそうに笑顔を向けられ、こんなに喜んで貰えると作った甲斐があるな。

ブス~とむくれるヒュウガ。

「帰ったら何かヒュウガの好きなもの作るから機嫌なおしてよ」

やったぁ~!!と尻尾を振るヒュウガを押しどけて美少女が抱きついて来た。
発展途中らしく豊満な胸の感触は無かった。

「お兄さん達の家!?僕も行きたい!!まだお腹空いてるの、お兄さんの料理もっと食べたいな」
駄目?とボクっ娘に小首をかしげられ、おねだりされてドキドキする。

獣なヒュウガもいるし、男所帯の家に女の子を連れていくなんて、どうしよう……とヒュウガを見ると興味無さそうにアクビをしている。

ヒュウガがこの子を襲いそうになってもアスの触手もいるもんね。大丈夫だよね。

「僕の名前はリンフィ、お兄さんは?」

「あ……カラスマです」

エルフって物静かなイメージだったけど結構ガンガン来るんだね。

「おい、エルフ!!お前何であんなとこにいたんだ?」

ヒュウガ……女の子にはもうちょっと優しくしないと……。

「このダンジョンで採れるテトロ草とサテュリ草を集めにね……色欲のダンジョンの名に恥じないね。いきなりオークに犯されそうになって、ぶちギレちゃって……後先考えずに暴れてたらエネルギー切れちゃった。そんで気づいたらあの森に倒れてた」

見た目に反して中々……。

「ふ~ん……サテュリ草ねぇ」

ヒュウガがポツリと呟いた。
サテュリ草に何かあるのかな? 
図鑑で調べたけど、まだ発見していない様で載っていなかった。
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