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愛されたいと願う
素敵な贈り物
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次の日の朝、寮の部屋を出るなり陸人に抱きつかれた。
「緒方さんから聞いたよ。なかなか大胆な事をしでかしたそうじゃないか」
「う……陸人には言わないでってお願いしたのに……」
お願いしたけど、確かに了解の返事は貰えてなかったな。
「緒方さんちのお父さん、うちの父さんの直属の部下だから無理無理」
「そうだったんだ……」
ガクリと肩が下がる。
じゃあ恥ずかしい事も情けない事も全て筒抜けなんだ。まあ、陸人になら知られても大丈夫かな……陸人にはもっと情けないところ、いっぱい知られてるし、陸人が緒方さんにお願いしてくれたから会を乗り切れたんだし。
「……緒方さん優しい人で助かりました。ありがとう、陸人。緒方さんにもお礼を伝えてくれる?」
「緒方さんオメガには優しいからね。適任者がいて良かったよ」
アルファやベータには容赦無いけどね、と陸人は笑った。
緒方さんの牙を思い出してゾクリと背筋が震える。
「でも須和秀哉かぁ……大物掴んだね!!将来安泰!!」
「掴めてないし……大物って……須和さん、そんなにすごい人なの?」
緒方さんも須和さんの事、クラス違うのによく知ってたみたいだし……僕が知らないだけで有名人?
「本郷グループ知ってる?手広くいろんな事業に手を伸ばしてるから名前は聞いたことあると思うけどそこの血筋だから、家柄は申し分ないけど、本家筋じゃないから気負わなくて済む。海里にはうってつけだね」
どううってつけなのかわからないけど……立派な家柄の人なんだ……そんな人が僕なんか選んでくれるわけないや。
「大丈夫だって!!番になってもよっぽどの事がない限り海里が表に出されることはないよ。番になったアルファって超嫉妬深いから」
番になった時の事が心配なんじゃなくて、そもそもの話なんだけどね……話だけでも陸人が喜んでくれてるから……いいか。
笑顔を向けると陸人も笑ってくれる。
陸人と友達で本当に良かったなと、しみじみ思った。
ーーーーーー
数日後、学校の寮に僕宛ての小包が届いたと寮母さんから荷物を手渡された。
差出人は『須和 秀哉』と書かれている。
その文字列に一気に全身の血が沸騰して、お礼もそこそこに陸人の部屋の扉を叩いた。
返事が返ってきて……ガチャリと鍵が開かれる音すら待ちきれず、扉が開かれる前に扉を開けて陸人に抱きついた。
「陸人!!須和さんから連絡来た!!」
緒方さんに待つとは言ったけれど本当に連絡を貰えるとは思っていなかった。
喜びと驚きに完全挙動不審な僕を見て陸人は自分の事の様に嬉しそうに笑ってくれた。
「良かったね海里。それで?何が入ってた?」
「わかんない。怖くて一人じゃ開けられない」
早く開けろと催促されたけれど……封を破ろうした手が震えて上手く開けられない。
「俺が開けてやろうか?」
「大丈夫。がんばる……」
大きく息を吸い込み、グッと息を止めてガムテープを剥がした。
大丈夫……どんな内容だろうと受け止めてみせる。
箱を開けると中には封に入った手紙と、もう一つ正方形の箱が入っていた。
高級そうな手触りの良い箱を開けてみると中に入っていたのは……。
「陸人っ!!首輪っ!!首輪が入ってる!!」
深い焦げ茶の落ち着いたデザインの首輪。
恐る恐る持ち上げると小さく須和さんと僕の名前が入ってる。
「これ、これ僕の首輪!!須和さんが首輪くれた!!僕にかな!?僕がつけていいのかな!!」
興奮する僕を見て陸人は声を上げて笑った。
「海里の物で間違いないよ。貴司を通して海里の首のサイズとか教えたの俺だもん……ほら、手紙も読んでみなよ」
「う……うん」
促されて読んだ手紙には初対面の時の無礼を詫びる内容と、今は事情があって会えないけれど、僕が高校を卒業したら番になって欲しいと書かれていた。
便せんからあの日香った須和さんの匂いがする気がする。
封筒には番の仮契約の契約書も入っていた。仮とはいえ……僕と番の契約をしても良いと思ってくれているんだ。
「陸人……」
「ん?」
「陸人……陸人……」
「なに?」
言葉が続かなくて名前を呼び続ける僕の声に陸人は丁寧に一言づつ返事をしてくれる。
嬉しすぎて溢れる涙で濡らさない様に手紙をしっかり胸に押し当てて守る。
僕のご主人様に……番に……家族に須和さんがなってくれる。
「海里、良かったね」
「うん……うんっ!!」
中学三年のお正月……学校の寮も閉まるので実家へ戻った時、家族は旅行に出かけていた。
鍵を持たせて貰っていないので家に入れず、行くあても無く駄目元で学校に戻った時に、たまたま学校に残っていた陸人に助けて貰った。
その日から陸人はずっと僕の側にいて、支えてくれている。本当は陸人なら、登下校の送迎付きの条件で、入寮は免除され実家から通う事も出来るのに、わざわざ寮を選んでくれたのは……僕を気にしてくれているんだと思う。
年末年始で忙しい中で、突然上がり込んだ僕を温かく迎えてくれた陸人の家族。そこには貴司さんもいて、陸人の幸せそうに笑う姿。
その時、憧れていたものを……僕も手に入れる事が出来るのかも。
手紙には住所と電話番号も書かれていたけど、電話を持ってないから急いで購買でレターセットを買ってきて返事を書いた。
手紙なんて書いた事が無くて、マナーとか言葉を知らないから、陸人と悩みながら何とか自分の思いを込めて書き終えた手紙と僕の署名をした契約書を封筒に収めて投函した。
陸人に首輪のつけ方と手入れの仕方を聞いて、首をつけて鏡の前に立ってみた。
僕の首にぴったりと合った首輪。
その首輪自体が須和さんの様に思えて愛しさがこみ上げてくる。
「海里……絶対幸せにならなきゃ……駄目なんだからね」
後ろから抱きついてきた陸人……鏡の中の陸人の目からは涙がこぼれている。
「うん。ありがと……陸人」
回された陸人の腕を強く握りしめた。
「緒方さんから聞いたよ。なかなか大胆な事をしでかしたそうじゃないか」
「う……陸人には言わないでってお願いしたのに……」
お願いしたけど、確かに了解の返事は貰えてなかったな。
「緒方さんちのお父さん、うちの父さんの直属の部下だから無理無理」
「そうだったんだ……」
ガクリと肩が下がる。
じゃあ恥ずかしい事も情けない事も全て筒抜けなんだ。まあ、陸人になら知られても大丈夫かな……陸人にはもっと情けないところ、いっぱい知られてるし、陸人が緒方さんにお願いしてくれたから会を乗り切れたんだし。
「……緒方さん優しい人で助かりました。ありがとう、陸人。緒方さんにもお礼を伝えてくれる?」
「緒方さんオメガには優しいからね。適任者がいて良かったよ」
アルファやベータには容赦無いけどね、と陸人は笑った。
緒方さんの牙を思い出してゾクリと背筋が震える。
「でも須和秀哉かぁ……大物掴んだね!!将来安泰!!」
「掴めてないし……大物って……須和さん、そんなにすごい人なの?」
緒方さんも須和さんの事、クラス違うのによく知ってたみたいだし……僕が知らないだけで有名人?
「本郷グループ知ってる?手広くいろんな事業に手を伸ばしてるから名前は聞いたことあると思うけどそこの血筋だから、家柄は申し分ないけど、本家筋じゃないから気負わなくて済む。海里にはうってつけだね」
どううってつけなのかわからないけど……立派な家柄の人なんだ……そんな人が僕なんか選んでくれるわけないや。
「大丈夫だって!!番になってもよっぽどの事がない限り海里が表に出されることはないよ。番になったアルファって超嫉妬深いから」
番になった時の事が心配なんじゃなくて、そもそもの話なんだけどね……話だけでも陸人が喜んでくれてるから……いいか。
笑顔を向けると陸人も笑ってくれる。
陸人と友達で本当に良かったなと、しみじみ思った。
ーーーーーー
数日後、学校の寮に僕宛ての小包が届いたと寮母さんから荷物を手渡された。
差出人は『須和 秀哉』と書かれている。
その文字列に一気に全身の血が沸騰して、お礼もそこそこに陸人の部屋の扉を叩いた。
返事が返ってきて……ガチャリと鍵が開かれる音すら待ちきれず、扉が開かれる前に扉を開けて陸人に抱きついた。
「陸人!!須和さんから連絡来た!!」
緒方さんに待つとは言ったけれど本当に連絡を貰えるとは思っていなかった。
喜びと驚きに完全挙動不審な僕を見て陸人は自分の事の様に嬉しそうに笑ってくれた。
「良かったね海里。それで?何が入ってた?」
「わかんない。怖くて一人じゃ開けられない」
早く開けろと催促されたけれど……封を破ろうした手が震えて上手く開けられない。
「俺が開けてやろうか?」
「大丈夫。がんばる……」
大きく息を吸い込み、グッと息を止めてガムテープを剥がした。
大丈夫……どんな内容だろうと受け止めてみせる。
箱を開けると中には封に入った手紙と、もう一つ正方形の箱が入っていた。
高級そうな手触りの良い箱を開けてみると中に入っていたのは……。
「陸人っ!!首輪っ!!首輪が入ってる!!」
深い焦げ茶の落ち着いたデザインの首輪。
恐る恐る持ち上げると小さく須和さんと僕の名前が入ってる。
「これ、これ僕の首輪!!須和さんが首輪くれた!!僕にかな!?僕がつけていいのかな!!」
興奮する僕を見て陸人は声を上げて笑った。
「海里の物で間違いないよ。貴司を通して海里の首のサイズとか教えたの俺だもん……ほら、手紙も読んでみなよ」
「う……うん」
促されて読んだ手紙には初対面の時の無礼を詫びる内容と、今は事情があって会えないけれど、僕が高校を卒業したら番になって欲しいと書かれていた。
便せんからあの日香った須和さんの匂いがする気がする。
封筒には番の仮契約の契約書も入っていた。仮とはいえ……僕と番の契約をしても良いと思ってくれているんだ。
「陸人……」
「ん?」
「陸人……陸人……」
「なに?」
言葉が続かなくて名前を呼び続ける僕の声に陸人は丁寧に一言づつ返事をしてくれる。
嬉しすぎて溢れる涙で濡らさない様に手紙をしっかり胸に押し当てて守る。
僕のご主人様に……番に……家族に須和さんがなってくれる。
「海里、良かったね」
「うん……うんっ!!」
中学三年のお正月……学校の寮も閉まるので実家へ戻った時、家族は旅行に出かけていた。
鍵を持たせて貰っていないので家に入れず、行くあても無く駄目元で学校に戻った時に、たまたま学校に残っていた陸人に助けて貰った。
その日から陸人はずっと僕の側にいて、支えてくれている。本当は陸人なら、登下校の送迎付きの条件で、入寮は免除され実家から通う事も出来るのに、わざわざ寮を選んでくれたのは……僕を気にしてくれているんだと思う。
年末年始で忙しい中で、突然上がり込んだ僕を温かく迎えてくれた陸人の家族。そこには貴司さんもいて、陸人の幸せそうに笑う姿。
その時、憧れていたものを……僕も手に入れる事が出来るのかも。
手紙には住所と電話番号も書かれていたけど、電話を持ってないから急いで購買でレターセットを買ってきて返事を書いた。
手紙なんて書いた事が無くて、マナーとか言葉を知らないから、陸人と悩みながら何とか自分の思いを込めて書き終えた手紙と僕の署名をした契約書を封筒に収めて投函した。
陸人に首輪のつけ方と手入れの仕方を聞いて、首をつけて鏡の前に立ってみた。
僕の首にぴったりと合った首輪。
その首輪自体が須和さんの様に思えて愛しさがこみ上げてくる。
「海里……絶対幸せにならなきゃ……駄目なんだからね」
後ろから抱きついてきた陸人……鏡の中の陸人の目からは涙がこぼれている。
「うん。ありがと……陸人」
回された陸人の腕を強く握りしめた。
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