ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく

文字の大きさ
1 / 87

異世界に行ったらしたい事

しおりを挟む
「……っ!!」
「…………っ!!」

コンビニのバイトからの帰り道。
神社の前を通り掛かると言い争う声が聞こえて、ビビりながらも鳥居の奥を覗いてみた。

「だからっ!!あんな奴より俺の方が優れてるって言ってるだろ!!」

「自分の力量もはかれない思い上がった奴などいらんと何度言わせる!!」

痴情のもつれか? 巫女さんの様な格好した女の子に男が詰め寄っている。痴話喧嘩なら関わり合いにならない方が良いんだろうが、力任せに女の子の腕を掴んだり、肩を掴んで強く揺さぶったりと些か乱暴だ。

喧嘩に自信は無いが……こんな夜遅くにこんな場所で女の子を乱暴に扱っている場面に遭遇して、流石に見て見ぬ振りは出来ない。何時でも通報出来るように手にスマホを握りしめてから平静を装い鳥居を潜った。

「大丈夫ですか?何かトラブルですか?」

「……あ?何だよ!!邪魔すんな!!」

なるべく事を荒たげない様に努めてにこやかに近づいたが、振り返った男に思い切り睨まれた。

絶対俺の姿を確認して、貧弱だから突っかかってきたな……まあ、俺も男がいかにも危なそうな奴だったら逃げてたと思うからお互い様だけどな。

「うむ。素質も無い下賤の者が騒ぐもので困っておったところだ」
「何だと!?」

……この巫女さん、なかなかの上から目線。これじゃあこの男がキレるのも分かる気がする。

「まあまあ落ち着いて下さ「煩ぇっ!!」
宥めようと止めに入ろうとして、男が振り上げた肘が顎に入り、俺の体は玉砂利の上に倒れ込んだ。

「いってぇ……」
顎をやられたせいかクラクラと頭が揺れるのを手で支えながら見上げた視線の先に男が女の子に向かって拳を振り上げたのが見えた。

いくら体格が普通でも男は男だ、その力が小柄な女の子に向かっては最悪怪我どころでは……!!

「下手に出てれば調子に乗りやがってぇ!!」
「そんなに行きたければ行かせてやるわ!!」
「やめろっ!!」

男と女の子と俺の3人の声が重なり……。

男と女の子の間に飛び出した俺のこめかみに男の拳が当たると同時に背後からも体が浮き上がる程の衝撃を受けた。

「あ……」

女の子の僅かな驚嘆の声。

何が起きた?

まるでジェットコースターに乗っているかの様なスピード感で何処かに飛ばされて行くような感覚。周りの景色は見えず、ただ星の中を抜けて行くように光の線が流れて行った。

ーーーーーー

いつまでこうしているのか?
何が起こったのか解らないまま、俺は飛ばされ続けている。

俺はもしかしたら男に殴られた事で死んだのかもしれない。やはり身の丈に合わない善意など見せずに逃げていた方が良かったのかも……いや、でもそうしたらあの女の子が殺されていたかもしれないし……次の日そんなニュースを見でもしたら罪悪感に押し潰されていただろう。

こんな俺でも誰かを助けられたんだ、これで良かったんだ、そう自分に言い聞かせていると、何処からともなく声が聞こえてきた。

『……まさたか……椎名雅貴……聞こえるか?』

「誰だ?俺の名前……」
その声には聞き覚えがあった、さっきの女の子だ。

『聞こえているようだな。時間が無い、早速本題だ。儂はとある世界の神なのだが先の天界と魔界の間で起きた戦で力を失ってしまい、儂の世界は魔界の力が強まり荒れてしまった。神の力となる生命力を集めるために神の御使いとなる勇者を借りようとお前達の世界の神の手を借りたんじゃ』

「なるほど……」

……夢か。
かなり突拍子もない話に俺は夢だと断定し、疑問など返さずに流れを見守る事にした。

『勇者に相応しい男を見つけ勧誘し、儂の世界に送る事には成功したんじゃがあの無礼な男に見られてしまっていてな、自分の方が勇者として才能があるから連れて行けと煩くてなぁ……力を貸してくれた神の世界であまり事を荒たげたくは無かったので我慢をしておったが、流石に不敬にも程がある、そんなに別の世界へ行きたいなら送ってやろうと戦で消滅した神の世界へ送り飛ばしてやろうと思ったんじゃ……』

ふんふん……こんな夢を見るなんて俺の脳内は随分漫画に侵されていたんだな。これはあれだろう? 『異世界転生』ってやつだろう?

『まさかお主が飛び込んでくるとは……これからお主の向かう先は神を失った魔の力に侵略された世界だ。これはもう儂にも止められんし、その世界に入ってしまうと儂は一切の干渉が出来ん様になる』

ありがちな犬死にと神の手違いってやつだ。俺の想像力の限界だな。

『しかし……危険を顧みず助けに入ってくれたお主の優しさは……嬉しかった』

おお……幼女女神がデレた。

『殆どの力は勇者を送る時に使ってしまったが、今の儂に出来る精一杯の祝福をつけてやる……だから……だから死ぬで無いぞ!!椎名雅貴!!』

女神の大声と共に目の前に真っ白な光が広がった。

異世界、女神の祝福……憧れのチート能力で世界最強で可愛い女の子達にモテまくりのハーレムが俺を待っている!! 彼女いない歴、年齢の俺にも遂に彼女が!!

ツンデレな剣士の危機を助けたり、究極魔法を軽く使ってそれを伝授してちょっとヤンデレ気味な魔法使いに尊敬されたり、クールビューティーなエルフに精霊のお告げだと結婚を迫られたり、奴隷にされかけた可愛い獣人を助けてご主人様と慕われたり!!

テンプレートな女の子達を想像しながら俺は光の洪水の中に飲まれていった。

『お主が……もし祈りを……神……復活……たら……』
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

処理中です...