ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく

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ベタ展開になる呪い

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始めからこうしてれば良かったんだよな。

隊長のガラクタの中から見つけた、先がフォークみたいに三叉になった槍の先、雑巾を被せて天井を擦っている。

木の棒を手に入れた猿が高い場所のバナナを叩き落とす程の大発見にルノさんは大層残念そうにトボトボと去って行った。

難点は重くて腕が震える事だ。

ルノさんはモテるだろうに、わざわざ俺なんて選ばなくて良いのに。

そういえばルノさんの鑑定に最初俺を弟と重ねていたって書いてたな。

ルノさんの家族は全員亡くなってるはずだから……。

それで初めの頃、子どもをあやす様な接し方だったんだな。

いつから?いつからその気持ちが変わったんだろう?

特にルノさんに好かれる様な事はしてない筈だけど……。

「はっ!!」
悶々と考え込んでいるうちに気が付けば隊員達の部屋の掃除が終わっていた。

暇な時間があるといろいろ考えてしまうから、掃除に没頭して忘れようと思ったのに結局ルノさんの事ばっか考えてしまってた……無意識で難攻不落に思えた汚部屋の掃除すら終わらせてしまう自分の才能が憎いよ。

脱ぎ散らかされていた服やシーツはお手製にして綺麗に出来るけど、ベッドが無い。

敷いていた藁は運び出して中庭で干しているけど……湿っぽくカビが生えていた。せっかく綺麗になったのにあの藁をまた敷くのもなぁ。
だからといって床に直で寝るのは隊長ならともかく、普通は腰を痛めるだろう。

何か使える物は無いかと収納袋の中を探っていると、街で買った物を忘れていた裁縫道具のセットが目に止まった。

大きな袋を作って中に藁を詰めれば藁が散らばって部屋が汚れる事も無くなるな!藁は……今まであの上で寝ていて平気だった訳だし気になるなら新しい藁を自分達で用意してもらおう!!

申し訳ないが俺の頼れる人は一人しかいない……部屋で仕事をしているであろうルノさんの元へ突撃した。

「ルノさん!!布ください!!」

勢いで扉を開けた途端に飼い主を見つけた犬みたいな顔をするのはやめて欲しい。

「どんな布でも良いなら倉庫へ行けば何かしらあると思うよ」

ルノさんはそう言って立ち上がった。
仕事の邪魔だし、倉庫にあるなら一人で行けるのだが……ルノさんが机に広げていたのは例の地図で、ぱっと見たところ赤い丸は無さそうだった。

「シーナの地図のおかげで今まで気付かなかった小さな瘴気溜まりもすぐに発見できるから、時間にゆとりが出来たんだよ」

俺の考えてる事を読めているようにルノさんは笑いながら部屋を出て行く。

「布なんて今度は何を作ろうとしてるんだい?」

「大きな袋に藁を詰め込めば藁も散らからないと思うので、せっかく裁縫道具も買ったし作ってみようかなって……布が余ったら鍋つかみも作りたいです」

「鍋つかみ?」

「熱い鍋に触れても大丈夫な様に厚手の手袋みたいな物です」

伝わる物と伝わらない物があるんだけど、鍋つかみは伝わらないらしい……そうだろうなぁ。この間隊長は熱した鍋を普通に持ってたもんな。必要無いだろうよ……どんな手の皮をしているんだろう。

倉庫の扉の向こうは一度隊長と見たきりだけど、相変わらず倉庫の中にはいろんな物が押し込まれていた。

「壊れたベッドも残してあるにはあるんだけど……流石に全員分は残って無いな。魔石が買えない家に砕いて薪として配ってしまったからね」

「確かこの辺に……」と言いながら、ごそごそとガラクタの山を登りながらルノさんは何かを探しているが、隊長の時も思ったけどこの山の中、何処に何を置いたかなんとなくでも覚えているのだろうか。

「あったよ」

山から飛び降りてきたルノさんが持っていたのは赤黒いバスタオル位の……皮?

「火山の側に棲むフラケンゲっていう魔物の皮なんだけど、炎に強いから冒険者達にはマントの素材として人気で、高値で取引される。鍋つかみには最適だと思うよ」

どんな高級鍋つかみを作るつもりなんだ。

「有り難いですが、俺が探してるのは藁を詰める袋用ですから」

フラケンゲの皮は少し硬めで通気性が無く、ベッドの素材としてはムレそうだ。

「そうか。とりあえずそれはあげるからとっておいて。う~ん……ベッドに使う大きさの布か……」

ルノさんは山を見上げて少し考えているが、何かを思い出した様でもう一度山に登っていった。山の向こうに消えてしまい姿は見えないが何かをひっくり返している音は聞こえる。

……ぼんやり待ってるのも何だし、何か面白い物がないかちょっと『鑑定』してみようかな。

結構『お手製』に出来る物があるなぁ……。

「あっ!!」
「どうしたシーナ!?」
思わず出てしまった声にわざわざルノさんが山を飛び越えて来てくれて……申し訳ない。

「すみません。ベッドがお手製出来る様になってて、つい驚いて声が出ちゃいました」

「良かった……うっかり呪いの掛けられた物に触れてしまったかと思ったよ」

ホッと胸を撫で下ろしているけど聞き流せない言葉を聞いたぞ。

「ベッドなんて大きな物もお手製に出来るなんてシーナは優秀だよ……修理するのは皆、苦手なんだ。壊すのは得意なんだけどね」

「褒めてくれるのは嬉しいですけど、聞き捨てならない言葉を今言いましたよね!?」

「壊すのは得意って事か?大丈夫、シーナがお手製してくれた物を壊させたりはしないから大切に使わせてもらうよ」

そうして貰えると助かるけど、それも違う!!

「呪いって……言いましたよね?……呪いって血を吸う魔剣とか所有者をもれなく不幸にする宝石とかいうアレですか……?」

そんな物騒極まりない物がこのガラクタの山の中に紛れてんの!?

「直接触れなければ平気だから、鍵付きの箱に結界を張って2重で保管してあるけど……シーナにはまさかがあるから心配してしまったよ」

「何だ……良かった。無造作に置いてあって偶々それに触れて呪われるとかベタな展開に怯えちゃいましたよ」

安心して力が抜けて、側のベンチに腰を下ろした。

「昔は呪い系の物は教会が保管してお祓いをしていたんだけど、神が居なくなり昔ほど力を持った聖属性の魔法を使える者がいなくなってしまったから……やっぱりシーナには見えていないんだね」

「へ?」

感心した様なルノさんの声に、まさかそんなベタな……と思うが、唾を飲み込んでベンチを見下ろした。

「うん、まさにそれ。そうか……シーナには結界も効かないのか」

「うわぁっ!!そういう事は座る前に教えて下さいよ!!」
慌てて飛び退いたそのベンチをルノさんはジッと見つめながら何かを考えている。

「結界は効かない……でも俺の氷魔法は効いていた。結界は相手の精神に魔力が作用するから……精神攻撃では無く直接的な攻撃なら有効という事なのか?」

「俺は戦闘はするつもり無いから分析は良いですよ……で?このベンチ型の箱一つだけですか?」

これ以上触れない様にここはしっかり確認しておかないと……呪いは困る。

「この箱と後ろにあるその二箱だよ。結界が効かないからって鍵は開けちゃ駄目だからね。俺達で管理出来る程度の弱い物だけど危険な物もあるから」

何のフラグだよ……。
なんか疲れた……今日はもうベッドは諦めてもらってそのまま藁で寝てもらおうと自分を甘やかそうとしたその時……。

「シーナ!!シーナは何処だ!!」

中庭の方で俺を呼ぶ声にガクリと肩を落とした。
疲れる人が帰ってきてしまった……。
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