ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく

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街の変化と彼の夢

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概ね平和である。

俺の世界はいまだこの詰所の中だけなので詳しい事はわからないけれど、街の雰囲気は間違いなくいい方向へ向かっているらしい。

窓から外を眺めていて、それは何となく感じていた。建物の陰なんかに隠れていた、陰鬱とした視線を感じなくなってきていた。レイニート様が崩れかけていた建物を全て修復させたってのもあるけど。

政治的な事はわからないけれど、レイニート様の改革的な物がうまく行っているのだろうな……。

表立って出て行ってはないが、実は俺もがっつりこき使われている。

まずレイニート様にやらされた事は……大量の寝具の『お手製』だ。
大量に持ち込まれた寝具はあまり出来の良い物で無かったけれど『お手製』にすれば高級品に早変わりする。

寝具に関しては目立って特殊な効果が付くわけでも無いが『お手製』に関して魔力や体力を消費する事も無い。
元の寝具もレイニート様の持ち込みだから、俺が失う物は何もないし、隊長からの頼みでもあるので言われるままにしているが……どうやら結構な高値で他の街の貴族に売り付けているらしい。

そのお金で何をするか……食料を買い込み俺に寸胴いっぱいの料理を依頼してきた。簡単な物で良いから大量に作れる物を、との依頼。

その大量の料理は広場で炊き出しとして配られているそうだ。

集まった人々に声を掛けて雇って寝具を作らせて……お金を回しているらしいが……よくこの街の人達が働く気になったもんだと感心したけれど、レイニート様直々に声を掛けているらしいから……それはもう半ば強制労働だろう。

「そんな事はないさ。皆喜んで働いているよ。彼らに支給される食事もシーナの料理だからね。シーナの手料理が食べられるなら俺だって枕でも何でも作るよ」

「俺なんかのご飯で良ければ枕なんて作らなくてもいくらでもご馳走しますよ」

ルノさんは俺の扱いが上手いな。
そんな風に言われたら、俺もこの街の活性化の役に立っている気になるじゃないか。
俺は褒められると調子に乗りやすいのをよくわかっていらっしゃる。

おかげで朝から晩まで厨房に立っていて……畑は隊員の皆さんにお任せしっぱなしになってしまってる。オットーさんがいるからむしろその方が上手く育つかもだけど……成長を見にぐらい行きたい。

しかし街の変化には、ちょっと嬉しい事がある。

炊き出しを作っているのがこの詰所の厨房だと言う事が広まり……窓の外を眺めていたりすると通行人に会釈される事があるのだ。

通行人がいる事自体が変化なのに、会釈されるなんて初めは戸惑ったけれど、今では会釈友達のおじちゃんも出来た。

レイニート様が税やら何やら……いろいろ動き回ってくれているらしく、寝るのが大好きニート様だと思っていたらとんでもない人だったんだなぁ。

少しずつだけど変わってきている。
いつか俺もカイもリーナも……この街に住む子供達が自由に表を走り回れる未来が来るかもしれないな……なんて感慨に耽ってみた。

街を囲う壁の向こうは未知の魔獣も潜んでいるかもしれない危険な場所だけど、壁の周りはレイニート様のゴーレムや警備隊も巡回しているので壁から出なければ安全だ。

安全なんだよ……。

「それよりシーナ見てくれ!!マルトリノさんが仕入れてくれた最新のテントだよ」

最新のワンタッチで組み上がるテントを室内で取り出すもんだから、俺は壁に追いやられてテントに潰された。

「ルノさん……嬉しいのはわかりますが狭い場所で広げないで下さいよ」

「ごめん……シーナにも早く見せたくて」

まあ仕方ないか、新商品って興奮するよね。

二人用にしては大きめにも感じるテントの中に、いざ入って見ると……ちょっとキャンプみたいで俺もワクワクと心が踊ってしまった。

二人で寝っ転がってテントの天井を眺めていると、ルノさんの手が俺の手を取った。

「街も穏やかになって来た……俺達の仕事も減ってきたよ。これも全てシーナのおかげだ」

「俺は……別に……凄いのはレイニート様でしょう」
俺は妄想はするけど行動力は無いから……思っても実行には移せない。

「シーナは自分の力を『凄いでしょう』と言うわりに自己評価は低いな」

可笑しそうに笑うルノさん。
でも実際俺のスキルは凄い。でもそれは女神様の力であって、凄いのは俺じゃ無いんだよね。使いこなして世界を救おうなんて作戦も思い付かないしさ。

「……シーナが皆に愛されているお陰だよ」

「へ?何の話ですか?」

突然の話の流れに体を起こしてルノさんを見下ろした。

「皆……準備をしてくれているんだ……俺が警備隊を抜けても何の問題も無い地盤を作ってくれている」

「ルノさん警備隊辞めちゃうんですか!?」

「俺はシーナを取られなくて済むなら辞める必要は無いと思ったんだが……俺が警備隊をやめてシーナと冒険者として旅をしたいって口にしたのを、隊長は叶えてくれようとしているんだよ」

その為に街を平和にって?
それ、愛されているのは俺じゃなくてルノさんなのでは?ルノさんこそ自己評価が低い。

「ただひたすら俺が魔物を狩り続けていれば平和になると信じてた……それじゃあ駄目なんだね。人が、皆が変わらなければ本当に平和とはいえなかったな」

「魔物がいたら誰も外へは出られないくなるし、ルノさんが魔物を対峙してくれる事は無駄な事なんかじゃ全然無いですよ。俺だってルノさんに助けられなかったら死んでたでしょうし」

レイニート様が来て街が変わっていく事に多少の嫉妬でもあるんだろうか?ルノさんはそういうところで人に嫉妬するタイプとは思わなかったな。

「シーナ…………」

手を握ったままルノさんも体を起こした。
ジッと見つめられる視線に少し戸惑いを覚えて視線が泳いでしまう。

「その……レイニート様のお屋敷が良ければ……遠慮なく言ってくれて良いから……シーナは優しいから俺に気を使ってしまうかもしれないけど、同じ街の中だし……」

「何で突然レイニート様のお屋敷に行く話?俺最初から行く気ないって伝えてますよね」

「あの時は出会ったばかりだったから、今はレイニート様に頼られみんなの為に働いているシーナはとても生き生きとしている。俺の側にいるよりはレイニート様の側にいる方がシーナも楽しいんじゃないのか?」

確かにレイニート様は俺の可能性を色々見つけてくれるかもしれないけど、求めているのは平穏なんだよね。
レイニート様と俺のスキルの使い方を模索するのは楽しいけど、賑やかな夕食を過ごし、1日の終わりにルノさんの顔を見ないと落ち着かないからレイニート様の屋敷には行けないな。
寮の管理人感覚というか、俺がいなくちゃって自己肯定感。

「俺はここが自分の居場所だと思ってますから」

ルノさんの手を強く握り返した。ついでに冒険者として放浪するのは止めましょうと匂わせておいた。

「シーナ……俺もシーナの隣が自分の居場所だと思っている。同じ様に感じてくれていて……嬉しい」

ん?

「俺が勝手にシーナと旅に出たいなんて言っているのに、いつも楽しみだと笑ってくれる。でも本当はシーナは俺と一緒に旅になんて出たくないのではと、隊長達に大丈夫だと言われても不安だったんだ……すまなかった、シーナの笑顔を疑って……」

ん~……なんか歪んで伝わった?

これは……魔物狩りツアーは避けては通れぬ様だ。

とりあえず、わざわざ退職しなくても、この世界にあるかわからないが夏休みとか長期休みを貰えば良いのではなかろうか?できれば2泊3日ぐらいにして欲しい物だと願った。
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