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災厄の幸福

災厄の罰

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魔王様の顔ばかり見ていた為、いつの間になのか、どこをどう通ってきたのか、どこに着いたのかも分からないまま俺はベッドの上に投げ出された。

「ここは……?」

ぐるりと部屋を見回しても俺の知識の中にある牢屋とも拷問部屋とも処刑場とも合致しない豪華な部屋。
ゴテゴテとした装飾は無いが調度品が醸し出す高級そうな雰囲気から言って……ここはまさか魔王様のお部屋なのでは!? 落ち葉のベッドすらなかった俺の洞窟部屋とは大違いだ。

前回お誘いいただいた部屋は闘技場に滞在する為だけの部屋だという事だったので、こここそ正真正銘魔王様の私室。
うん、魔王様の匂いも魔力も至るところに深く染み付いている気がする。

バレないようにこの空気をあの世まで持って行こうと体内に空洞を作り思い切り部屋の空気を吸い込んでいたら、ベッドが弾む勢いで押し倒された。
「……俺は1秒でも早くと引き継ぎ業務をこなしていたと言うのに……お前は散々楽しんでいたようだな」

乱暴に下されたズボンから露わになった内腿に噛みつかれ、舌が、指が、なぞる様にゆっくりと上がってくる。
「ん……」
普段なら容れ物には痛覚すらあまりないのに、やっぱり魔王様に触れられるとこんなにも敏感に感じてしまう……まるで容れ物を剥がされ直に触られているような……魔王様だけが俺に快楽も痛みも与えてくれる。

スライムという事はバレていないのだろうか?もう一度あの悦びを与えていただけるのだろうか?

「浅ましい身体だな、これぐらいで感じているのか?それとも俺が行く直前まであの魔物達とそういう事をしていたのか?」

魔物達とそういう事?魔王様とお会いする直前は魔物と何をしてたか……思い出そうとしても頭の中は魔王様でいっぱいで思い出せない。

乱暴に引っ張られた服は、俺の体をすり抜けツルンと衣服が剥がれて俺は全裸へ。

抜け殻のようになった服を驚いたように見つめる魔王様。
尊いその手を煩わせるのも悪いので自ら服を取り去ったのだが……。

性行為が罰になる事もあるらしいがこれが罰だとしたらなんて甘い世界だ。
魔王様とのあの経験は俺にとって喜びにしかならない。
露わになった触手は待ち構えるかのようにゆったりとそれでも嬉しそうに揺れ始めた。

気高きその手を下等生物の体液で穢すことに抵抗はあるのだが、触れていただけるなら早く……早くこの体に触れて欲しい。
一度覚えた満たされるあの感覚は頭を麻痺させる効果があるようで、俺はもう魔王様のことしか考えられなくなって、触手が勝手に魔王様の腕へと絡まっていく。

「魔王様……」
それでもただ冷たい目で見下ろしてくる魔王様に焦ったくなって無礼と思いながら魔王様のお召し物の裾を引っ張った。

「そうやってペルソリアを誘ったのか?俺に抱かれておいて他の奴にまだ体を開くとはなかなかいい度胸だ。褒めてはやれないがな」
「まっ!?魔王様!?や……め……」

ペルソリア様を誘った記憶は微塵もないがそんな事を反論する事など頭から吹き飛ぶ。
思い切り左右に開かされた足の真ん中、魔王様や師匠に比べると小ぶりだがしっかりと自己主張機能まで再現され首をもたげた性器を模した物を魔王様が口に含まれたのだ。

「魔王様!!駄目です!!いけません」
気持ち良さが最高潮へ達すると射精機能まで着いている事は実証済み。
アルラウネ様は食事の為にこうやって精液を摂取していたけれど、魔王様の食事はそれではないはず。
第一俺のソコから噴出されるのは精液では無く、スライム粘体の体液だけ……わざわざ苦手な食材を口にしなければならないほど魔王様は飢えていないはずだ。

「黙れ……ペルソリアや、爺が嫌がらせに押し付けた下等な魔物達にもこうして食わせているんだろ?嫌がるそのそぶりも手の内か?その余裕面を壊してやりたくなる」

俺の制止はうけいれられず、行為はさらに次へと進んでいく。
魔王様の口内の温もりを感じながら、魔王様の指が俺の体内温度を測るかのように俺の穴の中を探っていく。

生まれたばかりの俺を楽しそうにつついてくれた魔王様のあの指が俺の内部へ触れている。
薄い膜があるので直接体液に指を突っ込まれたわけではないけれど、触手と違って内部の膜は極々薄いようで細かな感覚まで伝割ってくる。

「ま…お……さま……駄目です…も……出てしまいます」
掌で撫でられただけで体液が蕩けて緩んで溢れてる。
魔王様の口元が僅かに濡れて光っているから……俺の我慢できなかったもの絶対魔王様の口に入ってる。
あんなに怒るほどスライムは嫌いだと言っていたけれど、怒らないところを見ると実は気がついてなくて食わず嫌いだったんじゃ……ひとまず気分を害したり吐き気を催したりという事はなさそうで安心した。

「甘いな……魔力量で味が変わると聞いてはいたが、ここまで甘いのは初めてだ」

口を俺のモノから離すと魔王様は俺のモノをそのまま手でしごきながら、もう片方の手で俺の足を持ち上げると、魔王様自身のモノを解されトロトロになってしまった穴へと一気に押し込めてきた。

「あああああっ……!!」
ゾクゾクとした身震いが走り抜けて、後に残る脈打つ魔王様の存在感が伝わってきて、同時にがくりと体の力が抜けた。
薄目で確認すると魔王様の体には青く粘度のある、見覚えある液体が飛び散っていた。

「おい……そう締め付けるな、力を抜け」
苦しそうに魔王様は眉を潜めると、妙な脱力感に投げ出していた繋がったままの俺の体を抱き起こすと膝の上にそのまま座らせた。
ぴったりと結合部分がくっついてそれだけでまた性器もどきはプルプル震えて液体を吐き出す。
魔王様に指摘されない事で大分気が緩んでしまっているのかもしれない。

もう完全にスライムである事はバレたな。このまま殺されるかな?こんな至福の夢見心地のまま死ねるなんて俺はなんて幸せ者なんだろう。
魔王様の上で激しく揺さぶられながら、そのまま幸せ過ぎて逝ってしまいそうだ。

「ん、ああぁ……『魔王様、魔王様……好き……好きです。ずっとずっと……魔王様を追いかけてきて……会えて良かった』

思わず抱きついた魔王様の体……偽りの体越しに伝わる魔王様の体温が体を、心を満たしていく。

「そうやってペルソリアの奴にも甘えてみせたのか?俺だけだと言いながら……獣にすらこの体を許したのか?」

魔王様は何故そこまで魔物達に体を食べさせている事をお怒りになるのだろう?スライムなんて食物連鎖の底辺でただ捕食されるだけの生き物で……実際魔王様の食卓にも出てきていた。

大体俺はいつペルソリアさんに甘え……あ、もしかして部下達の食事を貰った事?

『生まれた時からずっと俺には魔王様だけなのに……どうやったら伝わるんだろう?魔王様の為ならいつだってこの命を投げ出すつもりでいるのに』

目の前に魔王様がいる事を忘れて考え込んでいた目の前に手が差し出される。

「早く手……出せ」

「え?は、はい!!」

思考から急に呼び戻され、言われるままに手を差し出すと手の上に赤く丸い石が乗せられた。
「これは……?」
「いるのか!?いらないのか!?いるなら早くしまえ!!」
「は、はい!!ありがたく頂戴いたします!!」
急かされ、慌てて拳大の石を飲み込んだ。体の中を移動させ、核を守る膜の中へと取り込んだ。
大切な物を守るならここに限る。

「飲んだのか?大丈夫かよ?」
心配そうな表情の魔王様に笑顔でお礼を伝えた。
「ありがとうございます。大切なものは体内に隠しておくのが1番です。魔王様からの頂き物、この命に代えてもお守りいたします」

「いや、命はかけなくて良い……渡した意味が無くなるだろうが」

そう言われてももう核の中に入れてしまったし、この石が奪われる時は俺の核が破られた時で必然的に死んでいる。

何に使う物かわからないけれど、魔王様から物を頂けるなんて嬉しくて嬉しくて何度も胸の上から赤い石に手を当てた。
体越しでも核が喜んでいるのがわかる。

「アルファルド」
名前を呼ばれ、頬を掌で包みこまれた。見上げた魔王様の表情は先ほどまでの怒りが嘘のように柔らかくてほっとした。

何をそこまで怒っていたのかも、何故急に怒りが解けたのかもわからにいけれど、ただ大好きな魔王様の体温をもっと感じたいと頬を手にすり寄せると魔王様も優しい手つきで撫でてくれる。

「お前はその石の意味を……あ……煩いのが帰ってきたな。おい、早く服を着て……」

魔王様が言い終わる前に扉がわざとらしく派手に開かれた。

「おい!!命懸けの仕事をさせておいて自分だけお楽しみとは良い度胸じゃねぇか!!」

怒りを露わに入ってきたのは白い髪と赤い瞳を持った男……どことなく魔王様と似ている……けどこの気配は……。

「命懸け?あの程度の事に命を掛けなきゃいけないなんて耄碌したか?良いぞ、いつでも引退を許してやるからさっさと出ていけ」

「ざけんな!!誰が魔王に差立ててやったと思ってんだ!!約束通り俺の復讐には最後まで付き合ってもらうからな!!」

魔王様と男のやり取りをじっと見ていると、俺の視線に気づいた男は俺に顔を近づけると全身くまなく舐めるような視線を向けられた。
何だろう?

「は~ん……まんま、あいつの好みだな。何百年経ってもまだ小さい物好きはなおんねぇのか、あのクズ竜」
「???」
クズ竜?オメガドラゴン様の事?

「勝手に話しかけるな。まだ出来上がってはいないんだろう?なぜ戻ってきたんだ」

いきなり視界が暗くなったと思ったら、頭から布団を被せられたらしい。

「お前が約束を破って城から出たから文句を言いに帰ってきたんだ!!たく、だらしない下半身は親ゆずりか!!」

「はあ!?親ゆずりって事はお前も同罪だろ!?元はと言えばお前があんな危険な奴をアルファルドに近づけたせいだ!!何が食にしか興味が無いから大丈夫だ、ガッツリアルファルドに手を出してくれたみたいじゃねか!!どう責任取る気だテメェ」

先ほどより聞き取りにくくなったが魔王様の男の話はまだ続いているようだ……けれど、布団の中に籠る魔王様の匂いが尋常じゃない安心感で俺を包み込んでくるので、俺の体は全ての緊張を解いて停止してしまった。
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