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~プロローグ3~
しおりを挟む翌日から、愛莉は荒れた。
といっても、なにも不良のようにふるまったわけではない。
母のため、と思っていたすべてをやめたのだ。
母が帰ってくるかもしれないと思って作っていた食事の用意も。
母が少しでも助かるようにと思って手伝っていた(最近ではほとんど愛莉がしていた)家事も。
母に褒めてほしいと思って頑張っていた勉強も。
全部、全部、やめた。
毎日行っていた最初は休みがちになったが、それで母に連絡がいくのも嫌だったのでしぶしぶ毎日行くようにはした。
表面上は何も変わっていないように見えるはずだった。
だが、敏感な年頃。
次第に様子が変わっていく愛莉に友人たちは距離を置くようになり。
中学を卒業するころには親しいと呼べる友人の存在はなくなり。
愛莉は一人になった。
私立の中学に通っていたので何となく持ち上がりで通い始めた高校。
特に何事もなく過ぎていくはずだった。
平坦だった水面に泥水が滴り、波紋が広がるように、それは始まった。
最初はちょっとした嫌がらせだった。
文房具がなくなったり、教科書が隠されたり。
特に興味がなかったので、放っておいたら、それは次第にエスカレートし始めた。
多分犯人はクラスの中心的な、派手な子たち。
遠目でいつもクスクス笑ってる。手下なクラスメイトを使って、自分の手は汚さない。
クラス担任も気づいてはいるだろうが、無駄なトラブルは避けたいのだろう、何も言わなかった。
次第に、普通に挨拶を交わしていたはずのクラスメイトも気づけば愛莉を避けていた。
巻き込まれるのは、誰だってごめんだろう。
幸い母が大量においていく生活費のおかげで、壊されても隠されても、新しいものを買えば済んだ。
心の中の何かが削れていくような音がするだけで。
だから必然だったのかもしれない。
「そうだ、全部捨てよう!」
そう、思ったのは。
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