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迷子の子犬?
拾いました。
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「お~い、て~ん!どこ行った~!」
先ほど散歩をしていた矢先、飼い犬の天がいきなり走り出した。
普段の散歩ではよほどのことがない限りそんな行動をしない飼い犬に驚いてリードを離してしまった。
公園に差し掛かったところで走り出したので、おそらくこの公園のどこかにはいるはず。
この公園は近所で評判のスポーツ公園。
人気の散歩コースであるのはもちろんのこと、普段からウォーキングやジョギングの人々でにぎわっている。
普段はなにも思わないが、こういうときはなかなかに辛い。
今は夜で視界が悪い上に、先ほどからちらちらと雪が降ってきたせいでなおの事探しずらい。
「ああもう、ほんとどこ行ったんだ?」
天は大型の犬で、明るい茶色の毛並みから夜でもある程度目立つ。
なのに全く見つからない。
「お?」
公園を半周した当たりで、目の前に降り積もり始めた雪に点々と付き始めた動物の足跡。
間違いなく、天の足跡だった。
この雪のせいで視界は悪いが、これはいい方向に転んでくれた。
足跡をたどった先には確かに天はいた。
「ん?」
膝を抱えてベンチうずくまる子供を温めるように寄り添っていた。
「ちゃんと肩まで浸かれよ」
そういって抱き上げていた小さい体を脱衣所に下した。
帰ってきてから風呂に入るつもりで準備して言ってよかった。
天に寄り添われていた子供は、中学生か高校生ぐらいだった。
話かけても返事はなく、ぼんやりしているので仕方なく抱き上げて連れて帰ってきた。
温まれば少しは話してくれるようになるといいんだが。
「て~ん。そんなとこにいてもすぐには出てこないぞ」
閉じられた脱衣所の前で前足をそろえて座り、じっと扉を見上げている天。
何がそんなに気になるのか、公園で発見してから今まで、あの子のそばから一瞬たりとも離れようとしない。
一応声をかけてみたが、それでもそこから動きそうはなかった。
「さて、何を作るかね・・・」
とりあえず、体が温まるものを・・と考えて、冷蔵庫を除くが、あいにくうどんやそばなどの麺類はない。
雑炊でいいか、と鍋をかけると、パタン、という音がした。
どうやら風呂から上がったらしい。
ペタペタとはだしで歩く音が近づいてきたのでキッチンの入り口を見る。
「・・・・・・・・・は?」
裸に、バスタオルを巻いただけの女の子がそこに立っていた。
いやいやいや、ちょっと待とうか・・。
服が濡れているだろうから、一応着替えにスエットを置いておいたはずだ。
だから着るものがなかった、ということはないはずだ、うん。
じゃあ、この子はなぜこの格好でここにいるのか、という問題がでてくる。
「あ~・・と、スエット気に入らなくてもそれしかないから着てくれると助かるんだが」
そういうと、その子は小さくわからない、という風に首を傾げた。
え、まさか見るからに日本人なこの子は実は日本語通じないとかじゃないよな。
それとも噂に聞く裸族とか?
いやいや、もしそうだとしても普通自宅以外では普通に服を着るはずで・・・
混乱がぐるぐると頭の中を回っていると、小さく、その子が口にした言葉は、
「・・・・しないの?」
だった。
は?
しないってなに?
なにって、もしかしてナニ!?
「あ~、っと。さすがに、子供には興味ないぞ?」
そういいつつ、視線はその子の胸の部分へ。
あ、意外と胸ある?
いやいやいや、そうじゃなくて!!
彼女がいくつかはわからないが、さすがに未成年なのは確実で、犯罪者にだけはないたくない。
「とにかく、服着てこい。せっかく温まったのに湯冷めするだろ」
着替えるように促しつつ、視線を火にかけている鍋に移す。
お、いつの間にかいい具合。
「・・・・やっぱり、いらないんだ」
え?
なんのことだと思った時には、その子は脱衣所の方へと歩いていた。
いらない?
なんのことだ?
とりあえず戻ってきてから聞けばいいかと思っていれば、玄関の方から天の鳴き声が聞こえた。
普段めったに上げない声に何事かと足を向ければ、そこには先ほどの子が着替えにだしたスエットではなく元々の自分の服を着てそこにいた。
「ごめんね、どいて」
「ワン!」
「うん、ありがと。でも、ご主人様、私の事いらないみたいだから。ここにいちゃダメなの」
「ワワン!」
「暖かかったよ。ありがとう」
そういってぎゅっと天を抱きしめると、そのまま外に出ていこうとするのを見て、慌てて引き留めた。
「って、おい!まだ外雪降ってるし、しかもこんな時間にどこ行くつもりだ!?帰るなら明日送ってってやるから、とりあえず家に電話して「だれもいない」やる・・・って、え?」
誰もいない?
思わず時計を見上げるが、時刻はすでに21時を回っている。
仕事で帰ってきてないってことか?
「両親、仕事か?」
「お父さんは死んだ。お母さんは・・・知らない」
そういってこっちをみる彼女の目に光はなく。
反射的にその体を抱きしめた。
先ほど温まったはずのその体は冷たく冷えていた。
先ほど散歩をしていた矢先、飼い犬の天がいきなり走り出した。
普段の散歩ではよほどのことがない限りそんな行動をしない飼い犬に驚いてリードを離してしまった。
公園に差し掛かったところで走り出したので、おそらくこの公園のどこかにはいるはず。
この公園は近所で評判のスポーツ公園。
人気の散歩コースであるのはもちろんのこと、普段からウォーキングやジョギングの人々でにぎわっている。
普段はなにも思わないが、こういうときはなかなかに辛い。
今は夜で視界が悪い上に、先ほどからちらちらと雪が降ってきたせいでなおの事探しずらい。
「ああもう、ほんとどこ行ったんだ?」
天は大型の犬で、明るい茶色の毛並みから夜でもある程度目立つ。
なのに全く見つからない。
「お?」
公園を半周した当たりで、目の前に降り積もり始めた雪に点々と付き始めた動物の足跡。
間違いなく、天の足跡だった。
この雪のせいで視界は悪いが、これはいい方向に転んでくれた。
足跡をたどった先には確かに天はいた。
「ん?」
膝を抱えてベンチうずくまる子供を温めるように寄り添っていた。
「ちゃんと肩まで浸かれよ」
そういって抱き上げていた小さい体を脱衣所に下した。
帰ってきてから風呂に入るつもりで準備して言ってよかった。
天に寄り添われていた子供は、中学生か高校生ぐらいだった。
話かけても返事はなく、ぼんやりしているので仕方なく抱き上げて連れて帰ってきた。
温まれば少しは話してくれるようになるといいんだが。
「て~ん。そんなとこにいてもすぐには出てこないぞ」
閉じられた脱衣所の前で前足をそろえて座り、じっと扉を見上げている天。
何がそんなに気になるのか、公園で発見してから今まで、あの子のそばから一瞬たりとも離れようとしない。
一応声をかけてみたが、それでもそこから動きそうはなかった。
「さて、何を作るかね・・・」
とりあえず、体が温まるものを・・と考えて、冷蔵庫を除くが、あいにくうどんやそばなどの麺類はない。
雑炊でいいか、と鍋をかけると、パタン、という音がした。
どうやら風呂から上がったらしい。
ペタペタとはだしで歩く音が近づいてきたのでキッチンの入り口を見る。
「・・・・・・・・・は?」
裸に、バスタオルを巻いただけの女の子がそこに立っていた。
いやいやいや、ちょっと待とうか・・。
服が濡れているだろうから、一応着替えにスエットを置いておいたはずだ。
だから着るものがなかった、ということはないはずだ、うん。
じゃあ、この子はなぜこの格好でここにいるのか、という問題がでてくる。
「あ~・・と、スエット気に入らなくてもそれしかないから着てくれると助かるんだが」
そういうと、その子は小さくわからない、という風に首を傾げた。
え、まさか見るからに日本人なこの子は実は日本語通じないとかじゃないよな。
それとも噂に聞く裸族とか?
いやいや、もしそうだとしても普通自宅以外では普通に服を着るはずで・・・
混乱がぐるぐると頭の中を回っていると、小さく、その子が口にした言葉は、
「・・・・しないの?」
だった。
は?
しないってなに?
なにって、もしかしてナニ!?
「あ~、っと。さすがに、子供には興味ないぞ?」
そういいつつ、視線はその子の胸の部分へ。
あ、意外と胸ある?
いやいやいや、そうじゃなくて!!
彼女がいくつかはわからないが、さすがに未成年なのは確実で、犯罪者にだけはないたくない。
「とにかく、服着てこい。せっかく温まったのに湯冷めするだろ」
着替えるように促しつつ、視線を火にかけている鍋に移す。
お、いつの間にかいい具合。
「・・・・やっぱり、いらないんだ」
え?
なんのことだと思った時には、その子は脱衣所の方へと歩いていた。
いらない?
なんのことだ?
とりあえず戻ってきてから聞けばいいかと思っていれば、玄関の方から天の鳴き声が聞こえた。
普段めったに上げない声に何事かと足を向ければ、そこには先ほどの子が着替えにだしたスエットではなく元々の自分の服を着てそこにいた。
「ごめんね、どいて」
「ワン!」
「うん、ありがと。でも、ご主人様、私の事いらないみたいだから。ここにいちゃダメなの」
「ワワン!」
「暖かかったよ。ありがとう」
そういってぎゅっと天を抱きしめると、そのまま外に出ていこうとするのを見て、慌てて引き留めた。
「って、おい!まだ外雪降ってるし、しかもこんな時間にどこ行くつもりだ!?帰るなら明日送ってってやるから、とりあえず家に電話して「だれもいない」やる・・・って、え?」
誰もいない?
思わず時計を見上げるが、時刻はすでに21時を回っている。
仕事で帰ってきてないってことか?
「両親、仕事か?」
「お父さんは死んだ。お母さんは・・・知らない」
そういってこっちをみる彼女の目に光はなく。
反射的にその体を抱きしめた。
先ほど温まったはずのその体は冷たく冷えていた。
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