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第17話 パジャマパーティー前夜戦

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待ち合わせ場所。そこは、学校と商店街を繋ぐ先にある駅前だった。林の独り暮らしのマンションは、とても利便性の良い場所にあった。

(マッドサイエンティスト林の部屋とか…実験台に固定されて、機械的なものでいじくり回されたらどうしよう…)
ネコは林に対してレトロ且つネガティブなイメージ像を持っていた。

そこへ、なーんにも考えていなさそうな顔した奴がやって来た。
「ミトさん…今日ネコっぽいドット柄着てる。可愛い!」
小池は、私のヒョウ柄のジャケットを見て、目をキラキラさせた。
「今からでも遅くない!二人で逃げよう!」

「駆け落ちとかさせませんから!」
そしてタイミングよく林に見つかった。
(いざとなったら、何か…こう…破壊して─兎に角こいつを先に逃がそう!)

コンシェルジュの居るフロントから、外が見えるガラス張りのエレベーターに乗りこんだ。
「こんなに高い所にくる乗り物、初めて!」
「もしかして、林って金持ちなん?」
「資産運用は得意でして。授業で習った株式の応用です。」
林はタワーマンションに独り暮らししていた。

林が玄関に立つとカシャンと音がしてドアが開いた。
「因みに私がいないと入れませんので、ネコを追い出した際は、再び入れませんのでお気をつけて。」
「いや、追い出すなよ。そして内側から入れろ。」

「皆さんお飲み物は?」
「カフェオレ、あれば。」
「…ミトさん…凄い。」
さっきから私のジャケットにしがみついて羨望の眼差しを向けてくる。
(何この未知なる可愛い生き物は…)

「ズルいです妖精さんの好きなドット柄着てくるなんて!私もそうすれば良かった!」「…まずヒョウ柄がドット柄に分類されてるのを初めて知ったんだけど…」
そんな林は、ヒラヒラした白のトップスにデニムの短パンを履いていた。
(林は髪型も服もユラユラしてて掴み倒したくなるな…)

「それにしてもカフェオレが何故凄いんです?」
「カフェイン…毒!」
「毒もたしなめる私って凄い!」
「大人!」
「ふむ…確かに…(ワンちゃんに与えてはいけないと聞いた事があります…)」
「メモるな林…」
「私…とりあえず水!」
「とりあえずは水だな!」
「カルキ抜きで!」
「白湯!ですね…ふむ…」
「安全圏!」
「そして林は密かにメモるな…」



(ちょっとしたことでも、擬人化の方との常識が違っていて面白い!二人を誘ったのは正解でした♪)

「食べ物も頼んでしまいましょう。今日は家事代行の方が来ないので、デリバリーにしましょう!」
リモコンで壁にスクリーンを写し出して、デリバリーの注文画面を開いた。
「スゲー、流石ブルジョア。あっ、ついでに天気予報も見ても良い?今日の流星指数みたい!」
「良いですね!今日は晴れですし。夜はテラスで流星見ますか?」
「流星見るの、好き!」
「決まりだな!」
「ベランダも広いし、本当にここ林だけの力で借りてるん?」
「ええ、なので妖精さんを養うくらいは出来ますよ?ねぇ、ここに一緒にどーですか?」
私は、妖精さんの両手を握り見つめてアピールした。
「養ってくれる?…それって勝ち組…?」
「そーですよ♪」
「目を覚ませ!自力で生きろ!!」ネコの奴が慌てて間に割り込んできた。
「チッ、邪魔が入りましたか…」
(林のやつ油断ならねーし。小池は心配だし。女子会疲れる…)

「さて、注文も終わりましたし、そろそろパジャマに着替えませんか?」
「何か、女子会って慣れんくてムズムズする。林は慣れてるん?」
「うちに入れたのは貴方達が始めてですよ。ワクワクするものですね!(擬人化の調査も兼ねてますが…純粋に─)」

「私着替え終わった!」
「下のズボン履き替えただけ…相変わらず拘り無いなーお前。」
「ですが、今日はドット柄のTシャツじゃ無いんですね?」
「チッチッチ…よく見て。アキヨシ手作りのこのTシャツ!」
そこには、フクロウの絵が描かれていたが、よく見ると細かいドットで描かれていた。
「「……点描画!!」」

ネコの人のルームウェアはまたしても上下ヒョウ柄のジャージだった為、妖精さんに懐かれていたので、2人をひっぺがした。

「女子会って何するんだ?」
「まぁ、定番は恋バナとかをするのではないでしょうか?」
***
ベランダのテーブルと椅子が置かれた所に座り、3人はそこへ食べ物や飲み物を置いて、流星群を眺めながら話をした。

「恋は分からんけど、お見合いはしたことあるよ。動物だった時…」
「その方とは縁が無かったのですか?」
「外国から来た奴だったから、始め何言ってるか分かんないし。威嚇してくるしで険悪だった…結局話が分かる様になっても価値観の違いで駄目だったよ…」
「どこの世界にもあるんですね。価値観の違いって…」

そして話が進むうち私は、ミミズク先輩と話ていた時の事を思い出した。
(何で妖精さんが好きなんです?)
(彼女、同族みたいに飛べそうに軽いし、後…彼女に対して食欲がわかないから…)
と、ミミズク先輩はそう言っていた。

「貴方はよく美味しそうって、人の事言ってるじゃないですか…」
「美味しいそうは褒め言葉だぞ!喜べ。」
「だけど…私は美味しそうじゃないんだよね。」と妖精さんはフフフッと笑った。
「だから…その…性欲と食欲は別ということでしょうか?」
「なっ!?性欲ってなぁ…コイツの前で言える訳ないだろ!…だけど─」

「美味しそうじゃないってことはだ…同族に値するかもしれない可能性があるし。元肉食動物からすると、見る度に食欲あったら落ち着かんだろ?…メス同士だとしてもだ…それが一緒になるときの条件なんだよ。」

今の所、結婚をした擬人化した者が子を成したという報告はなく、その可能性があるとしたら、完全に人間化出来た者か、動物だった時と同族同士の異性かだと言われていた─。
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