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第3章
素のリリス
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「気持ちはわかるけど危険だぞ。老夫婦に若い女性の店に…」
バルは危険ではないかと言おうとしたが口が止まってしまった。
「なによ」
「いや、リリスなら大丈夫かもしれないが、過信は禁物ではないか?」
「いやいや、私も戦士じゃないんだから暴漢に襲われたらこわいし対応出来るかわかんないよ。でもな~私にはお金があるわけだから、困っている人に使ってもらいたい」
「変われば変わるものだな…昔は俺の金貨100枚奪っといて」
「あ、あれは私も将来が不安だったし、バルはお金持ちだと思ってたから実際、お金持ちだったわけし、いいかなって、うふ」
かわいく笑って見せる。
「いいわけないだろう!」
「リリスの昔話は興味深いけど、本当に危険ではない?心配よ」
バルが普通に食卓にいる。バルは夕食に半年以上、来なかったものだからリエの企てにより、リアンのお茶会の帰りにリリスを送って来たバルをキースが待ち伏せをし、羽交い絞めにして無理やり夕食に拉致…招待したのだ。そして、お茶会の帰りには夕食に来るようになり、最近では毎日いる。今ではたまにバルがいないとキースもリエも「今日はバル様は?」とリリスに聞いてくるようになった。
「たまに、セドやジンがお店にお顔を出してくれてるの。騎士の恰好でね。だから最近はわりと周りの治安が良くなってるって近所の人たちからも好評なのよ。私は転移してるから周りの治安なんてわからなかったけど、けっこう悪いのかしら」
「キキ殿のいや、リリスの店の近くはそこまで治安は悪くはないよ。もう少し奥に行くとちょっとガラのよくない人はいるかもな。…そうかぁ騎士の恰好でね…」
キースはなにやら考え込んでいる。
「セドとジン?誰なの?」
リエは、2人を覚えていないようだ。
「ルキのパーティーにいた第1と第2部隊の2人よ。覚えていない?」
「ん~あんまり記憶にないわね。今度夕食に招待しましょ」
「…俺はいない方がいいだろうな。その時になったら言ってくれ」
「なんで?」
「なんでって…俺がいてもいいのか?」
「…いちゃまずいの?」
「…さぁ」
バルはリリスから目を反らし食事をした。キースとリエは2人の微妙なやりとりにやきもきした。
今もまだ泉の管理はとくにしていないので、いつも通りにリリス、バル、リエにキース4人で温泉に入りに行く。今では泉の中に世界樹の小さな芽が芽吹いている。
キースはリエとリリスが脱衣所に入ったのを確認してバルの首根っこを捕まえた。
「どうするのですか?」
キースは小声だ。
「ちょ…どうするとはなんだ?」
バルもそれに合わせて小声になる。
「もちろん、リリスですよ。今リリスは非常にモテています。ご存じでしょうがリアン様とは、ときどきお茶会をしていますし、ジンとかいう私の古い友人の優秀な部下と時折、デートをしているようです。たまに馴染みの飯屋に行って昔馴染みとも遊んでいますし…私はバル様を応援していますぞ」
バルは耳まで真っ赤だ。
「な、なにを言っているのだ!リリスは私の姪っ子だぞ!そんな目で見るなど…」
「血は繋がってはおりますまい。しかも今は姪っ子でもない。遠い親戚ぐらいです。よくあることです」
「そ、…リリスは魅力的な女性になった。俺のような男より似合う若くいい男はたくさんいる」
「バル様はリリスがお嫌いですか?確かに言葉遣いは微妙ですし、とても女の子らしいとは言えません。でも普段はなるべく女性らしく私たちに恥をかかせないようにと振舞っています。でもバル様の前だけは素のリリスです。あの子は自由気ままにそして寂しく生きてきました。あの子には好きな人と結婚してもらいたい。リリスは今でも貴族に狙われています。色んな理由を付けて見合いをさせろと圧を掛けられているのです。このままでは上級貴族に無理やり嫁がせることになるかもしれません」
「…リリスは俺の事がす、好きなのか?」
「それは…ご自分で確かめらては…」
確かに、リリスは以前から貴族に狙われていた。俺が上位の公爵の時は公爵の権限で見合いも止めてはいたが、セリア様が上位の公爵になってからは分からない。さすがに身分が違うのでセリア様の妻にとはならないが、上級貴族の第2第3夫人にと求められるのもわかる。
だからと言って俺の妻にとリリスにとっていい事なのか?俺ならリリスを守れる。それは王族出身の上級貴族だからだ。俺と婚姻すれば誰も文句は言えない。でもそれはセリア様もリアン様もそうなのだ。俺でなくてもいいような気がする。俺とリアン様はこう見えても10歳ほども変わらない。やはりリリスが決めることだ。
「煮え切らない男のようだ…」
「なんだ?」
「いえ、なんでもありません」
▽
「ポポス」から繁華街に出るまでの道をリリスは遊びに来ていたジンと一緒に歩いている。あまり近所を歩かなったリリスは下町があまりキレイでないことに眉をひそめた。下町育ちのリリスだが都会の下町と田舎の下町とではちょっと異なる。
「けっこう汚れているのね…」
「ここら辺かい?まぁ大通りから見えない下町だからね…他国からの観光客とかから見えない場所はあまり予算に入れないからな…」
「大通りは誰かが清掃しているのね」
「リリスは世間知らずだな。清掃専門の人たちがいるんだよ。まぁ手を魔獣に持っていかれた元冒険者とか足がない元騎士とかね…水や風の魔法でとかね。だから見た目はキレイだよ」
「まぁそれで回ているのなら問題はないのか…」
下町には継ぎはぎ多めの子供や浮浪者かと思われる人が地面に寝そべっている。こんな状況では「ポポス」に普通の客は来ないだろうし、大金があると勘違いした輩が、夜に「ポポス」に強盗が入るかもしれない。老夫婦だけでは危険だ。リリスだけならいいが彼らを巻き込みたくはない。今は店に登録していないものは店を閉めた後に入れないようにしている。でも夜中でも体調が悪くなり「ポポス」にポーションを売ってもらおうと来ることもあるだろう。そういう時は困るな。それが強盗だったりしても困るな。
バルは危険ではないかと言おうとしたが口が止まってしまった。
「なによ」
「いや、リリスなら大丈夫かもしれないが、過信は禁物ではないか?」
「いやいや、私も戦士じゃないんだから暴漢に襲われたらこわいし対応出来るかわかんないよ。でもな~私にはお金があるわけだから、困っている人に使ってもらいたい」
「変われば変わるものだな…昔は俺の金貨100枚奪っといて」
「あ、あれは私も将来が不安だったし、バルはお金持ちだと思ってたから実際、お金持ちだったわけし、いいかなって、うふ」
かわいく笑って見せる。
「いいわけないだろう!」
「リリスの昔話は興味深いけど、本当に危険ではない?心配よ」
バルが普通に食卓にいる。バルは夕食に半年以上、来なかったものだからリエの企てにより、リアンのお茶会の帰りにリリスを送って来たバルをキースが待ち伏せをし、羽交い絞めにして無理やり夕食に拉致…招待したのだ。そして、お茶会の帰りには夕食に来るようになり、最近では毎日いる。今ではたまにバルがいないとキースもリエも「今日はバル様は?」とリリスに聞いてくるようになった。
「たまに、セドやジンがお店にお顔を出してくれてるの。騎士の恰好でね。だから最近はわりと周りの治安が良くなってるって近所の人たちからも好評なのよ。私は転移してるから周りの治安なんてわからなかったけど、けっこう悪いのかしら」
「キキ殿のいや、リリスの店の近くはそこまで治安は悪くはないよ。もう少し奥に行くとちょっとガラのよくない人はいるかもな。…そうかぁ騎士の恰好でね…」
キースはなにやら考え込んでいる。
「セドとジン?誰なの?」
リエは、2人を覚えていないようだ。
「ルキのパーティーにいた第1と第2部隊の2人よ。覚えていない?」
「ん~あんまり記憶にないわね。今度夕食に招待しましょ」
「…俺はいない方がいいだろうな。その時になったら言ってくれ」
「なんで?」
「なんでって…俺がいてもいいのか?」
「…いちゃまずいの?」
「…さぁ」
バルはリリスから目を反らし食事をした。キースとリエは2人の微妙なやりとりにやきもきした。
今もまだ泉の管理はとくにしていないので、いつも通りにリリス、バル、リエにキース4人で温泉に入りに行く。今では泉の中に世界樹の小さな芽が芽吹いている。
キースはリエとリリスが脱衣所に入ったのを確認してバルの首根っこを捕まえた。
「どうするのですか?」
キースは小声だ。
「ちょ…どうするとはなんだ?」
バルもそれに合わせて小声になる。
「もちろん、リリスですよ。今リリスは非常にモテています。ご存じでしょうがリアン様とは、ときどきお茶会をしていますし、ジンとかいう私の古い友人の優秀な部下と時折、デートをしているようです。たまに馴染みの飯屋に行って昔馴染みとも遊んでいますし…私はバル様を応援していますぞ」
バルは耳まで真っ赤だ。
「な、なにを言っているのだ!リリスは私の姪っ子だぞ!そんな目で見るなど…」
「血は繋がってはおりますまい。しかも今は姪っ子でもない。遠い親戚ぐらいです。よくあることです」
「そ、…リリスは魅力的な女性になった。俺のような男より似合う若くいい男はたくさんいる」
「バル様はリリスがお嫌いですか?確かに言葉遣いは微妙ですし、とても女の子らしいとは言えません。でも普段はなるべく女性らしく私たちに恥をかかせないようにと振舞っています。でもバル様の前だけは素のリリスです。あの子は自由気ままにそして寂しく生きてきました。あの子には好きな人と結婚してもらいたい。リリスは今でも貴族に狙われています。色んな理由を付けて見合いをさせろと圧を掛けられているのです。このままでは上級貴族に無理やり嫁がせることになるかもしれません」
「…リリスは俺の事がす、好きなのか?」
「それは…ご自分で確かめらては…」
確かに、リリスは以前から貴族に狙われていた。俺が上位の公爵の時は公爵の権限で見合いも止めてはいたが、セリア様が上位の公爵になってからは分からない。さすがに身分が違うのでセリア様の妻にとはならないが、上級貴族の第2第3夫人にと求められるのもわかる。
だからと言って俺の妻にとリリスにとっていい事なのか?俺ならリリスを守れる。それは王族出身の上級貴族だからだ。俺と婚姻すれば誰も文句は言えない。でもそれはセリア様もリアン様もそうなのだ。俺でなくてもいいような気がする。俺とリアン様はこう見えても10歳ほども変わらない。やはりリリスが決めることだ。
「煮え切らない男のようだ…」
「なんだ?」
「いえ、なんでもありません」
▽
「ポポス」から繁華街に出るまでの道をリリスは遊びに来ていたジンと一緒に歩いている。あまり近所を歩かなったリリスは下町があまりキレイでないことに眉をひそめた。下町育ちのリリスだが都会の下町と田舎の下町とではちょっと異なる。
「けっこう汚れているのね…」
「ここら辺かい?まぁ大通りから見えない下町だからね…他国からの観光客とかから見えない場所はあまり予算に入れないからな…」
「大通りは誰かが清掃しているのね」
「リリスは世間知らずだな。清掃専門の人たちがいるんだよ。まぁ手を魔獣に持っていかれた元冒険者とか足がない元騎士とかね…水や風の魔法でとかね。だから見た目はキレイだよ」
「まぁそれで回ているのなら問題はないのか…」
下町には継ぎはぎ多めの子供や浮浪者かと思われる人が地面に寝そべっている。こんな状況では「ポポス」に普通の客は来ないだろうし、大金があると勘違いした輩が、夜に「ポポス」に強盗が入るかもしれない。老夫婦だけでは危険だ。リリスだけならいいが彼らを巻き込みたくはない。今は店に登録していないものは店を閉めた後に入れないようにしている。でも夜中でも体調が悪くなり「ポポス」にポーションを売ってもらおうと来ることもあるだろう。そういう時は困るな。それが強盗だったりしても困るな。
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