体の自由がきかなくなってしまった主人公が思い悩む話

兎月悠

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「ん……蒼太」
「気がついた?どこか痛いところは?」
「大丈夫」
「よかった」
 目を開くとすぐそばに蒼太がいる。彼は体ごとこちらを向き片手で俺の頭を撫でていた。心地が良かった原因に納得し、まだ少し重い瞼を擦る。
「お腹は空いてる?」
 目元を擦っていた手を優しく握りながら聞いてくる。目が覚めたら大好きな人が1番に視界に入る。そんな幸せを噛み締め頷くと彼が顔をほころばせた。
「用意してくるからもう少し休んでて」
 額にキスを落としベッドを離れようとする彼の服をそっと掴む。空腹を訴えたくせに離れ難くなってしまったのだ。
「……それはずるい」
 上半身だけ覆いかぶさったかと思えば少し乱暴に唇を奪われる。
「…んっ」
「かわいい」
 完全に欲情した彼の表情に更なる興奮を覚える。腕を首に回し、必死に対抗する。
「……やばい、ちょっとごめん」
 ふと、蒼太は腕を解き、ベッドから降りた。眉を寄せて不満を表現するがこちらに来てはくれないようだ。
「陽向のこと大切にしたい」
 わかって欲しい、と懇願する彼の顔は我慢で歪んでいた。獣のような息遣いからも残ったほんの僅かな理性で耐えてくれていることがわかる。
 彼をこんな風にすることができるのは堪らなく気分が良い。しかし、最後まで満足させてあげられないことがこの上なく悔しい。
 少し起こしていた上半身をベッドに沈めた。
「陽向」
 名前を呼ばれ顔だけで振り向くと、軽く唇が重なった。
「こうしていられるだけで幸せだから、何も思い悩まないで」
 彼は俺の考えなんてお見通しだった。俺が想っているように、蒼太も俺の事を想ってくれている。
 しばらくすると、少し空いたドアから味噌汁の優しい香りが漂ってきた。エプロン姿の蒼太が俺を抱えて食卓まで連れて行ってくれる。
 蒼太の料理は優しい味がする。
 どれだけゆっくり味わっても時間が経てば朝食は終わってしまう。
「今日学校の後バイトだからちょっと遅くなる」
「うん、頑張って」
 今まではこの時間が大嫌いだった。ひとり家に取り残され、静寂の中不安でいっぱいになる。でももう大丈夫。しっかり話し合って、お互いの気持ちを再確認して、彼が俺のことを置いていくなんてことは有り得ないと心から安心できた。
「行ってらっしゃい」
 彼は振り返って微笑むと、幸せそうに口を開いた。
「行ってきます」
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みんなの感想(2件)

ゆう
2023.05.31 ゆう

いつも楽しみにしてます
次はないの?

解除
花雨
2022.01.03 花雨

先が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^^)

2022.01.03 兎月悠

ありがとうございます!
続きはもうしばらくお待ちください!

解除

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