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ゆりの場合
決行前日
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「それでさぁ、三城ちゃんが困ってたから助けてあげたの。そしたら、今度お礼にお茶でも行きませんか? だって」
この男はもう三度目くらいになる話しを嬉々として私にしゃべってくる。
「はいはい、もうそれは聞き飽きました。嬉しいからって飲み過ぎ。とにかく水飲んで」
チューハイを三杯。お酒が弱いくせによくもまあこんなに飲んだものだ。私は呆れながら目の前に座る顔を真っ赤にした男、健斗に水を差し出した。
私たちは週に一度、時間が合えばこうやって飲みに出ている。
元は大学の仲良しグループに属する奴くらいの認識だったのに、気がつけばさしで飲む間柄になっていた。なんでそうなったのかはもう忘れてしまったくらいに、私たちは自然に仲を深めていった。
さっき健斗が話していた三城というのは健斗の会社の同僚のことで、今片思い中の相手らしい。
健斗はその三城という女に勝手に恋に落ち、私に今後どうするべきかとうるさいくらいに相談してくる。
互いの仕事の関係でこうやって向かい合うのは週一度あればいい方だが、メッセージのやり取りは毎日のようにしている。そこでも健斗はずっと三城ちゃんがどうしたといっていくるのには辟易しているわけなのだが。
正直その三城ちゃんが羨ましい。健斗にこんなに愛されているなんて。
最初は恋愛対象になりうるなんて思ってなかったのに、健斗の恋愛観とか今までの恋愛話を聞くうちに、健斗のことをただの男友達として見れなくなっている自分がいた。
一緒にいて楽しかったし(三城ちゃんの話しを聞く時を除いて)、案外趣味の話しも弾んで、恋人としてそばに居られたらとても楽だろうなと思った。自然体でいれる気がした。
私が健斗の彼女になりたい。その思いは日に日に大きくなっていったが、健斗が片思い中とは別に、私自身にも一つ問題があった。
私には彼氏がいた。健斗に出会う前から付き合っている。
世の中の全ての女がそうであるとは決して思わないが、恋愛というか付き合うという関係において女は卑怯だ。
私自身もそうだし、友人にもいるのだが、彼氏と別れる前に次の相手を見つけている。
今の彼氏と別れるために、新しい男を探し出す。まともな人であれば、きちんと別れてから次の人を探した方がいいんじゃないかという。しかし、男を常にキープしておかなければ耐えられないという人種もいるのである。
まあ、この話しはここら辺でおしまいにするとして、私はそっち側の人間というわけで、彼氏がいても、他の男を好きになり、付き合いたいと思うことにそこまで抵抗がないわけなのです。
現状、健斗は三城ちゃんにご執心。私に彼氏がいることも知っている。別れたからとて健斗をすぐに手に入れるのは恐らく不可能。
聞いている限りでは、三城ちゃんもまんざらでもなさそうな感じで、プライベートで会うことになれば、大きく関係が進むことも考えられる。となると時間もあまりない。
だから私は少しずつ準備をしてきた。
健斗にいい女だと思われるための努力を怠らず、健斗の好みを聞き逃さず、彼氏と上手くいってないこともアピールしてきた。ただ一回のチャンスの成功率を上げるために地道に努力と日々を重ねてきた。
今日、お茶の約束をしたことを聞いた。
健斗と三城ちゃんの関係が一歩進む前に、私たちの関係を一気に詰める大勝負に出るしかないと、私は机に崩れている健斗を見ながら決意した。
私と健斗が飲み交わした二日後にメッセージが届いた。
『次の土曜に夕方から三城ちゃんと会ってディナー一緒にすることになっちゃった』
思っていたよりも早い展開に少し焦りつつも、私はおめでとうと冷静に返信して息を吐く。
次の金曜日が勝負かぁ……。
日曜の午後。気だるげに過ごしていた私は、スマホを置いて部屋の掃除を開始する。
木曜の夜。私は健斗にメッセージを送った。
「彼氏にふられたー。マジで辛い。助けて……」
もちろん、彼氏とは現在もメッセージのやり取りをしている。
本当に別れるのは健斗をものにできてからだ。ただ、自分から振るのは後味が悪いので、彼氏の好感度を少しずつ落としている。別れたいような雰囲気を醸し出して修復はそろそろ不可能かもしれない。それくらい、健斗への勝負にかけているといってもいい。
『マジか。大丈夫? いつも相談乗ってくれてるし、話しくらい聞くぞ?』
「ありがとう! 大丈夫じゃないから、明日ちょっと付き合って! 土曜夕方からでしょ?」
『仕方ないな。いつもの店でいい?』
「持つべきものは友達だね。できれば、家きてくんない? 絶対ボロボロ泣く……」
『店でボロボロ泣かれるのは困るな。それよりいいの? 一応男だぞ?』
「みきちゃん一筋の健斗なんて怖くないよ(笑)何? 意識してんの?」
『一応だよ。みきちゃんと次の日やっとデートなのに、ゆりとか悪いけど眼中にないわ』
イメージ通りに流れていくメッセージに満足しながらも、そのメッセージに傷ついている自分がいた。
大丈夫、きっと上手くいく。
時間と待ち合わせ場所を決めて、私は早く明日がくればいいのにと思っていた。
この男はもう三度目くらいになる話しを嬉々として私にしゃべってくる。
「はいはい、もうそれは聞き飽きました。嬉しいからって飲み過ぎ。とにかく水飲んで」
チューハイを三杯。お酒が弱いくせによくもまあこんなに飲んだものだ。私は呆れながら目の前に座る顔を真っ赤にした男、健斗に水を差し出した。
私たちは週に一度、時間が合えばこうやって飲みに出ている。
元は大学の仲良しグループに属する奴くらいの認識だったのに、気がつけばさしで飲む間柄になっていた。なんでそうなったのかはもう忘れてしまったくらいに、私たちは自然に仲を深めていった。
さっき健斗が話していた三城というのは健斗の会社の同僚のことで、今片思い中の相手らしい。
健斗はその三城という女に勝手に恋に落ち、私に今後どうするべきかとうるさいくらいに相談してくる。
互いの仕事の関係でこうやって向かい合うのは週一度あればいい方だが、メッセージのやり取りは毎日のようにしている。そこでも健斗はずっと三城ちゃんがどうしたといっていくるのには辟易しているわけなのだが。
正直その三城ちゃんが羨ましい。健斗にこんなに愛されているなんて。
最初は恋愛対象になりうるなんて思ってなかったのに、健斗の恋愛観とか今までの恋愛話を聞くうちに、健斗のことをただの男友達として見れなくなっている自分がいた。
一緒にいて楽しかったし(三城ちゃんの話しを聞く時を除いて)、案外趣味の話しも弾んで、恋人としてそばに居られたらとても楽だろうなと思った。自然体でいれる気がした。
私が健斗の彼女になりたい。その思いは日に日に大きくなっていったが、健斗が片思い中とは別に、私自身にも一つ問題があった。
私には彼氏がいた。健斗に出会う前から付き合っている。
世の中の全ての女がそうであるとは決して思わないが、恋愛というか付き合うという関係において女は卑怯だ。
私自身もそうだし、友人にもいるのだが、彼氏と別れる前に次の相手を見つけている。
今の彼氏と別れるために、新しい男を探し出す。まともな人であれば、きちんと別れてから次の人を探した方がいいんじゃないかという。しかし、男を常にキープしておかなければ耐えられないという人種もいるのである。
まあ、この話しはここら辺でおしまいにするとして、私はそっち側の人間というわけで、彼氏がいても、他の男を好きになり、付き合いたいと思うことにそこまで抵抗がないわけなのです。
現状、健斗は三城ちゃんにご執心。私に彼氏がいることも知っている。別れたからとて健斗をすぐに手に入れるのは恐らく不可能。
聞いている限りでは、三城ちゃんもまんざらでもなさそうな感じで、プライベートで会うことになれば、大きく関係が進むことも考えられる。となると時間もあまりない。
だから私は少しずつ準備をしてきた。
健斗にいい女だと思われるための努力を怠らず、健斗の好みを聞き逃さず、彼氏と上手くいってないこともアピールしてきた。ただ一回のチャンスの成功率を上げるために地道に努力と日々を重ねてきた。
今日、お茶の約束をしたことを聞いた。
健斗と三城ちゃんの関係が一歩進む前に、私たちの関係を一気に詰める大勝負に出るしかないと、私は机に崩れている健斗を見ながら決意した。
私と健斗が飲み交わした二日後にメッセージが届いた。
『次の土曜に夕方から三城ちゃんと会ってディナー一緒にすることになっちゃった』
思っていたよりも早い展開に少し焦りつつも、私はおめでとうと冷静に返信して息を吐く。
次の金曜日が勝負かぁ……。
日曜の午後。気だるげに過ごしていた私は、スマホを置いて部屋の掃除を開始する。
木曜の夜。私は健斗にメッセージを送った。
「彼氏にふられたー。マジで辛い。助けて……」
もちろん、彼氏とは現在もメッセージのやり取りをしている。
本当に別れるのは健斗をものにできてからだ。ただ、自分から振るのは後味が悪いので、彼氏の好感度を少しずつ落としている。別れたいような雰囲気を醸し出して修復はそろそろ不可能かもしれない。それくらい、健斗への勝負にかけているといってもいい。
『マジか。大丈夫? いつも相談乗ってくれてるし、話しくらい聞くぞ?』
「ありがとう! 大丈夫じゃないから、明日ちょっと付き合って! 土曜夕方からでしょ?」
『仕方ないな。いつもの店でいい?』
「持つべきものは友達だね。できれば、家きてくんない? 絶対ボロボロ泣く……」
『店でボロボロ泣かれるのは困るな。それよりいいの? 一応男だぞ?』
「みきちゃん一筋の健斗なんて怖くないよ(笑)何? 意識してんの?」
『一応だよ。みきちゃんと次の日やっとデートなのに、ゆりとか悪いけど眼中にないわ』
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