心より先に体を繋ぐ

皐月 ゆり

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健斗の場合

一目惚れ

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 一目惚れしてやっと近づけた君に彼氏がいた。その衝撃はあまりにも大きくて、この恋を諦めてしまうには充分だったはずなのに、諦めの悪い俺は片思いを続けた。
 彼氏の存在を知ってしまった時にはもう、引き返しても大きなダメージをくらうくらいに君の存在は俺の中で大きくなってしまっていて、自分から離れて行くなんてできなくなっていたんだ。
 キャンパスで笑う君の笑顔に心を奪われて、影ながら思いを温める日々だった。
 声をかける勇気はなくてただ見つめるくらいしかできなかったけど、友人がいつの間にか大きくしていった繋がりの輪の中に君は加わっていた。
 仲良しグループの一人。
 薄い繋がりだけど、俺はこの機会は逃せないとなんとか君の隣に行こうと頑張った。声もかけた。
 君の魅力に気づくたびに好きが大きくなって、肝心なことをずっと聞き忘れていた。
「最近よくゆりに話しかけてるよな」
 このグループを作った友人に心配そうに声をかけられた。
「いい奴だけど、ゆりはやめた方がいいぞ。男が絶えないって噂だ。今も彼氏いるしな。男なんて知らなそうな顔してるけど。そこまで悪くいわれているわけじゃないが、純情な健斗には荷が重いと思うぞ。俺の勘違いならそれでいいんだけど」
 それを聞いても恋心を捨てされなかった。
 それとなく君の友人に聞けば、彼氏が絶えないのは本当のようだけど、別に男遊びが酷いわけじゃない。本人曰く、一人が耐えられないからだという。
 なら、君とこのまま仲良くなって、いつかその隣の席が空いた時自分の順番が来るかもと待っていてもいいかななんて、悠長なことをいっていたら大学を卒業し、社会人になり後輩もできてしまった。
 君の隣は何度か知らぬ間に空いて、新しい人が座っていた。
 時間があれば毎週二人で飲む仲にまでなったのに、俺の会話のメインは他の女のことだった。

「三城ちゃんがさぁ、なかなか心を開いてくれないっていうか、いつまでもなんか固いんだよね」
 片思いを装うようになったのはこんな相談をした後だった。
 ゆりは親身に相談に乗ってくれて、私がいないとだめねとかいいつつアドバイスをくれた。俺のことを考えていてくれるならと、後輩の話しをするうちにいつの間にか恋をしていることになってしまった。
 そんな中、最近ゆりは彼氏と上手くいってないらしい。
 喜ぶのは性格が悪いとわかりつつも、三城ちゃんが誘いに乗ってくれたと喜ぶ振りをして、嬉しいことは隠せなかった。

 三城ちゃんとの仲が深まっているのは事実で、ゆりのアドバイス通りにして打ち解けるまでは良かったものの、三城ちゃんは積極的過ぎる程くっついてくるようになった。
 ゆりに話すようなアプローチなんてしていないのに。
 俺からではなく三城ちゃんから頻繁にお茶に誘われていた。
 自惚れじゃなく三城ちゃんに好かれていると思う。
 今ゆりが別れたとして、俺が片思いしていると装っているのだから、告白してもゆりには信じてもらえないだろう。
 ゆりは彼氏が途切れない。
 別れたとしてもすぐに次の男の話しを聞いて傷つくことになるだけかもしれない。ならいっそ、本当に三城ちゃんを好きになった方がいいんじゃないか。
 そう思い始めていたから、断り続けることが申し訳なくて受け入れたお茶の誘いが、食事になっても変わらず受け入れた。

 ゆりが彼氏と別れた。
 三城ちゃんを好きになろうと思ったのに心が揺れてしまう。
 励ますことになって、ゆりの家に行くことが決まった。
「一応男だぞ」
 つぶやいて、意識されてないのかと勝手に傷ついてため息を吐く。

 綺麗に片づけられた部屋とたくさんの手料理。
 料理が苦手とは聞いたことがないけど、片づけはさぼりがちだっていってたっけ。元カレのことを考えないように常に何かしていないと辛いのだろうか。
「三城ちゃんとはどうなの?」
 正直今そんな話しをする気など起きなかったが、ぐっと酒を飲んで、片思い中の俺を演じる。
 本当に好きな女の前で他の女が好きな振りをすることにも疲れてきた。自業自得なのはわかっている。
 何本飲んだのかわからなくなり、ゆりに促されるままベッドに行く。
 ゆりが上にまたがる。服を脱がされ、手が肌に触れ、舌が這う。
 俺にゆりが愛撫をしている。目の前に裸になったゆりがいる。
 触れたい。感じさせたい。でもここで、自分から手を伸ばすのはためらわれた。傷心のゆりの心につけ入り、体から始まる関係はセフレに落ち着いてしまうんじゃないか。なけなしの理性を総動員して必死に耐えた。
「私、健斗が好き……。あの子よりも絶対健斗のこと、大好きだもん」
 この状況でいうのはずるい。
「ねぇ、入れたい……。入れて、いいよね?」
 もう無理だ。我慢できない。ゆりと繋がりたい。そう思った時にはもう、ゆりの腰を掴んで一気に奥まで差し入れていた。
 繋がった時涙が出そうだった。思えば六年近くの片思い。
 あまりの快感にすぐに射精してしまい、ゆりがティッシュで股間の周りを拭いてくれている間に眠ってしまっていた。

 目が覚めたら一糸まとわぬゆりを抱きしめていた。セックスしたのは夢じゃなかったらしい。
 ベッドから抜け出し、ゆりに布団をかけ直して、顔にかかる髪を払った。
 あぁ……だめだな。諦められない。
 ゆりが隣に座っていて欲しいというなら、辛い道になろうとも、ゆりに不信感を抱くことに苦悩する生活になろうとも、そばにいよう。
 寝顔を見ながらそう決意してしまった。
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