もふってちーと!!

でんちむ

文字の大きさ
15 / 43
もふって新人生!

◆もふって契約!

しおりを挟む
「…これで最後っと……ふぅ」

 王城から馬車で帰ってきた舞達は自分の荷物を部屋に運び込んで、一段落つけようとしていた。

「ありがとうございました。またそのうちそちらに向かうので、そのときはよろしくお願いしますね」

「はい。とは言っても私も歳ですしそのときにはもういないかも知れませんがね」

 などと、冗談交じりな会話をして相手を和ませ合っている。

「では、私はこれで」

「はい。お気をつけて」

「ありがとうございましたー!」

「またおじいちゃんのお家で会いましょうねー!」

 各々が見送りをした後、部屋に戻って同時に盛大なため息を吐いた。

「…疲れた……物凄く」

「そーお?俺は元気だぞ?」

「千明お姉ちゃんは我儘言ってただけだからね…」

 二人は疲弊しきったやつれた顔をしていたが、それとは対照的に千明の顔は光が照り返す程艶々しかった。

 家の中に運び込んだ荷物を改めて奥の部屋へと持っていく。

 そこで舞は二人に相談する。

「…んー…まだこっちの世界の家の相場が分からないんだけど、もし買えるんだったら家、買っちゃう?」

「んー、そうだねー……プライベートな時間が欲しい時もある!」

「お人形さん集めたいかなーって」

 満場一致で買う方向へと話が進んでいき、では早速出掛けようと舞が声をかける。

 新しい家がどのような建物なのか検討もつかないが、自分の思い通りの家が建てられたらなぁ、と三人はそれぞれに思案する。

 あれやこれやとインテリアや間取りの話をしているうちにどうやら不動産屋に着いたようだ。

 ここの不動産屋は王国一大きいことで有名で、接客カウンターから奥の事務所までは二百メートル程あり、全力疾走でもしたら息切れどころか汗までかいてしまう。

「ここかぁ。よしっ!早速お家契約っ!」

 そう言って一番乗りに不動産屋に入っていく舞を二人は追いかける。

「あっ、ずるいっ!!」

「まってーお姉ちゃんー!!」

 そうして三人が不動産屋の中に入ると、そこには如何にもという感じの事務所が広がっていた。

 対応する人がすぐに出て来なかったので、舞達は「従業員の人、呼んだ方がいいのかな……」と店内をキョロキョロしながら歩き回っていた。

 そこに慌てた様子で制服であろう服を着た女性が駆けてきた。

「もっ、申し訳御座いません、お客様…!当店、はっ、現在っ、とても立て込んでっ……はぁはぁ…おりますのでっ、少々お待ちっ、くださっ……」

「ちょっ、おっ、落ち着いてください!」

 余程焦ったのだろうか、尋常ではない息の切らし方をして、肩を揺らしていた。

 数分してようやく落ち着いたのか上を向いて汗を手で拭う。恐らく、事務所から全速力で来たのだろう。

「……ふぅ、すみません、落ち着きました」

 どうぞこちらへ、と業務員の人にソファのある接客室に案内される。

「さて、本日はどの様なご用件で当店をお訪ねですか?当店では土地や住居の売買は勿論、借家などのレンタルサービスも充実しており、建築の契約なども可能ですよ?」

 先程の焦っていた表情とは打って変わって一瞬で営業スマイルに切り替わる。

「えっと、建築の契約をしたいのですが…」

「畏まりました。土地はお持ちですか?」

「いえ、土地も一緒に買おうかなと思っていたんです」

 わかりました、少々お待ちくださいと言って席を立つ業務員さん。戻ってくるまでの間、新しい家をどうするかなどで三人で話し合いをして待っていた。

 業務員さんは何やら大きなファイルを抱えて戻ってきた。

「お待たせいたしました。こちらが、イースガルズ国全体の現在未契約の土地一覧です」

 ドサッと目の前に置かれたファイルは3冊だったが、厚さで言えば一冊十センチくらいの厚さだった。

 それを素早く捲って流し見していく。すると、二番街のある土地を見つけ、そのページを叩いて業務員さんに見せる。

「ここ、売ってもらえますか?」

 そう言って指を指したのは、とても広大な緑の豊かな土地だった。

「はい。問題ありません。では、このイースガルズ二番街六八〇でよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「畏まりました。では、ギルドカードからの支払いとなりますので、ギルドカードを拝借いたします」

 すぐに鞄の中から取り出して業務員さんに渡す。

「…はい、確かに確認いたしました。では、この契約書の項目とお名前の記入をお願いします」

 そう言って渡されたのは一枚の紙だった。紙にはでかく、契約書と書いてあり下の方に名前を書く欄がある。

【          契約書

 貴殿は当店、イースガルズ不動産屋一番街店にて、当店保有の土地、若しくは家を購入された事を認める。

 ギルドランク :
 年齢     :

 名前     :            印

          イースガルズ不動産屋一番街店】

「えっと、ギルドランク……すいません。このギルドランクって契約者のギルドランクでいいんですか?」

「はい、契約者様御本人のギルドランクをご記入ください」

「ありがとうございます」

 すらすらと項目を埋めていく舞。契約書の名前の欄まで書き終えて業務員さんに確認を求める。

「これでいいですか?」

【          契約書

 貴殿は当店、イースガルズ不動産屋一番街店にて、当店保有の土地、若しくは家を購入された事を認める。

 ギルドランク :F
 年齢     :17

 名前     :マイ・カミカワ      印

          イースガルズ不動産屋一番街店】

「はい。結構です。ありがとうございました。この契約書にご記入頂いた時点で土地はお客様のものとなりますのでご了承ください」

「はい、わかりました」

「続いて、建築の契約に入りますがよろしいですか?」

「はい」

 また分厚いファイルを取り出すが、今度は一冊だけだった。どうやらこのファイルに建築様式の一覧がのっているようだ。

 それも同じように流し見をしてこれだ!と言うものを探し続ける。しばらくしてその建築様式を見つけたようだった。

「あった!これだよ!!これにしよう!!」

 皆が舞の見ているページに視線を集める。そこには日本で言う和風建築が載っていた。

「こちら、ですか?こちらの建築様式はあまり好まれないんですよ。なんだか、持っている土地とあわないそうなんですが…それでもよろしいのですか?」

「はい。私達はこの家に住みたいんです」

「畏まりました。お手数ですが、もう一度ギルドカードを拝見させていただきます」

「はい、お願いします」

「因みに、土地と合わせて家っていくらかかりますか?」

「えーと、土地と住居をあわせますと……金貨五枚と大銀貨八枚ですね」

「……贅沢な買い物だねー」

「ねー」

「そうだねー」

 贅沢な買い物だ、贅沢な買い物だと言う割りにはそこまで喜びもなく、無駄遣いしたという後悔もなかった。

「では、こちらの契約書の項目とお名前をご記入ください」

【          契約書

 貴殿は当店、イースガルズ不動産屋一番街店にて建築契約を結んだ事を認める。

 ギルドランク :F
 年齢     :17

 名前     :マイ・カミカワ     印

          イースガルズ不動産屋一番街店】

 記入を終えて業務員さんに紙を返す。

「はい。確かにお預かり致しました。工事の方はこれだけ大規模だと……恐らく二週間ほど掛かってしまいますが、よろしいでしょうか?」

「はい!もちろんです!!」

「では、御契約ありがとうございました………あ!申し訳御座いません!!!申し遅れました!私イースガルズ不動産屋一番街店担当業務員、リーフィ・タムメリアと申します。今後とも、何卒よろしくお願いいたします」

「あぁ、いえいえ!!こちらこそ、私の名前はマイ・カミカワです。こっちがチアキで、こっちがリョウカです。よろしくお願いしますね!」

 お互いに完全に忘れていた自己紹介と簡単な挨拶を終えて改めて契約が終わる。

 席を立って少し店内のインテリアを眺めた後に、ありがとうございました、と言って店を出た。

 背中の方からは、リーフィさんの元気で快活な声が聞こえてきた。

「またのご来店を心よりお待ちしております!」

 手を振って、自分達の家に歩みを進める。

「よしっ!これで沢山出来ることが増えたね!」

 舞達は新しい家を購入することができ、とても上機嫌で帰っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...