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もふって新人生!
◆もふって称賛!
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一連の事件の主犯とされた副園長が捕縛された後、舞はゆっくりと家への歩みを進めていた。
「……なんだか、ほんとあっさり行ってくれてよかったぁ…これで何かがあったらまた千明達にドヤされる所だったよ…」
一番街に戻ってきて、もう少しで家に着くという前に後ろから複数人分の鎧同士がぶつかり合う音が聞こえた。
舞が後ろを振り向くと、国の正式武装の鎧を着た国軍の兵士たちだった。
「…あなたが、マイ・カミカワ様ですね?」
筆頭兵士であろう人物が舞に話しかけてきた。
「…はい、私がマイ・カミカワです。何か御用が?」
「はい。今回の件、彼奴を捕縛出来たのはカミカワ様の功績だと国から正式に勲章と報酬を送りたいと礼状が出ております故、後日、王城の方へと出向いていただきたく声をかけさせていただきました」
「はぁ…。わかりました、明日にでも伺います」
「承知いたしました。それと、我々からも深く御礼申し上げます。御協力、有難う御座いました」
「いえ、やるべき事をしたまでですので、私なんかに頭を下げないでください」
「…なんと謙虚な方だ。これも含めて報告させて頂きます。おお、本日はもう日が暮れてしまいました、重罪人を捕らえてくれたお方をこの暗い中一人で返すわけには行かない。我々に送り届けさせていただけないでしょうか?」
「………せっかくですし、お願いします」
そうして兵士達の護衛のもと、無事に帰宅した舞は二人に出迎えられた。
「……おっそい!!」
「お姉ちゃん!!……心配したんだからね!!」
外はもう真っ暗で、時刻も九時を回っている。少しくらい怒られても仕方がないだろう。
「…ごめんね。でも、無事だし、しっかりと事件も解決してきたよ!!」
「当たり前だよ!!」
「寧ろ、有事だったら動物公園を滅ぼしに行ってたところだよ!!」
我が妹と幼馴染ながら怖い、などと家族に戦慄を覚えた舞は移動して椅子に腰掛けてから二人に声をかける。
「……ねー、僕のご飯はまだ?」
その言葉を聞いた二人は一瞬目を見開いたがすぐに声を揃えて、今すぐ準備するね!と返事をして、キッチンへとかけていった。
「……いやー、生きてるっていいなー。幸せっていいなー」
死ぬ可能性があった今回の作戦に成功した舞は生を噛み締めて幸せを享受している。だが、次の瞬間に千明の口から放たれた言葉に絶望する。
「あ、舞ー、今日の昼間ね大家さんが来てそろそろ家賃回収にくるってー、諸々かかって銀貨2枚だけど、お金ある?」
「………………た」
「へ?」
「忘れてたぁぁぁああああああああああぁぁぁぁあ!!!!!!」
自身が勲章を受けることも、その時に報酬が出ることも忘れて慌てふためく舞。
それを見ながら二人は明日からまた大変だな、と微笑んでいた。
翌日。
「さてと、そろそろ行くよー?」
「待ってー!お姉ちゃん!」
「ちょっ、早くない?」
明朝から王城へと向かう準備をしていた舞達。二人にはとりあえず今日は謁見をするとだけ伝えてある。
「ほら、早くー。あんまり王様待たせると失礼だよ?」
「よしっ!私は準備終わったよー!!」
「まっ、待ってぇ!!」
準備の遅い千明を置いて先に外に出る舞と涼華。それを焦って追いかける千明。こうして三人は仲良く王城へと繰り出していった。
王城は5番街の中央に位置する。そこは国としての中心である場所だった。
イースガルズは1番街から9番街まであるが、それらが正方形の土地となっていて、まるで碁盤目状になっている。
「うへー、疲れたよー…」
「千明お姉ちゃん、情けないよ…」
数時間歩きはしたが、まだ2番街に入ったばかりでへこたれる千明に涼華がツッコミを入れる。
移動距離としては1番街の舞達の家から2番街に入るまで15キロ程度しかないのだが、如何せん今日は日が照っていて何時もより暑さが増しているのだ。
「…んー、そうだね、今日は暑いから、冷たいものでも買おうか?」
「ほんとっ!?やったー!」
「…いいの?お金あるの?」
舞の提案に真っ先に乗った千明とは対照的に涼華は所持金の心配をする。
「…んー、大丈夫。あるよ」
「……家賃」
「…明日辺りギルドに行こっか……」
収入の目星を付けたところで舞は出店で三人分の冷えたオレンジジュースを買った。
「…はぁ、美味しい……」
「んく………つめたーい……」
「うん、美味しいね」
暑さにやられかけていた体に最高に冷えたオレンジジュースは大分効いたようで千明が家を出る前の元気さを取り戻した。
オレンジジュースを飲み終えた三人は張り切って王城へと歩みを進める。心なしか先程より歩くスピードが早くなっている。
その後も歩き続け、丁度太陽が真上に上がったのを見て、
「あ、もうお昼! 急がないと! 謁見の時間に間にあわないよ!」
と、二人を急かしたてた。しかし、いくらなんでも歩きでは限界があることを悟り、舞は近くの停留所で馬車を拾うことにした。
馬車はまだかとそわそわし始めた頃に、一台の馬車が停留所に止まった。
「お嬢さんたちよぉ、乗るのかい?」
「はい」
「あいよ。後ろに座りな……んで、どこまで乗ってく?」
「あぁ、えっと、王城までお願いします」
そう目的地を告げると馬車の主は「あいよ」と返事して走り出した後に、急に止まり、
「あぁ!? 王城ゥ!?」
と、こちらを向いて叫んだ。
しっかりと目的地が王城の理由を説明すると、馬車の主は「へぇ、あんた、凄いんだねぇ」と、舞たちの事を褒め、
「じゃあ、急がなきゃな。ちと飛ばすぞ! しっかり捕まっとけ!」
という台詞とともに馬車は突然スピードを上げて走り出した。
その馬車のおかげで遅れることなく、王城には家からわずか8時間で到着した。
早速馬車から降りて急いでくれた馬車の主にお礼を言ってから、目の前にどでかく佇む王城を眺める。
「へー…ここが王城かぁ。想像してたより大きいねぇ」
「そーだねー、中も綺麗なんだろうなー」
「ねぇねぇ、みてみて! メイドさん!! メイドさん!!」
舞と千秋は王城を褒めていたのだが、涼華だけは別方面へトリップしてしまったようだ。涼華をカムバックさせた二人はそのまま王城内へと進むために関所に入っていく。
「すみません、マイ・カミカワと申します。国王様に謁見させていただきに参りました」
扉をノックしてからそこそこ大きい声で舞が言った。すると、中からひょこっと兵士が出てきた。
「おお、貴女方は…どうぞ、お入り下さい」
「あ、昨日の……では、失礼しますね」
昨日、舞を家まで送り届けた兵士のうちの一人が関所の兵だったようで、舞は少し気が楽だった。
「では、一応形式上、ギルドカードを拝見させていただきますね」
「はい。これです」
「……有難う御座いました。これで確認は終了となります。今案内の者をつけますので少々お待ちください」
兵士の言葉に軽く会釈した舞は兵士の言葉に甘えて少し座って待っていることにした。
すると兵士は割と早く、二分程度で戻ってきた。その後ろには如何にも気が弱いですよー、と言わんばかりの雰囲気を纏った少年が居た。
「ほら、案内をするんだ」
「ひゃぃぃ……」
「なんだ!その気の抜けた返事は!!」
どうやら本当に気が弱いようで、兵士に怒られている様子を見て舞達の緊張が少しだけ和らいだ。
「ふふ、そんなに怒らなくて結構ですよ。ところで、お名前は?」
「ふぇ!?……ぼ、ぼくです……か?」
「うん」
いきなり話しかけられて焦っているのか目が泳いでいる。少し待つと、徐々に落ちついてきたようで、舞の質問に返答をしてきた。
「ぼ、僕はハリスと申します。ふ、フルネームだと、ハリス・カージェストです」
「ハリスくんだね?………ん?カージェスト?って、もしかしてあのカージェスト?」
「ええ、あの魔法貴族アリエステル・カージェスト様の息子です、現在礼儀を知るためにここに来て修行を積んでおります」
以前国立魔法図書館で調べ物をしていたとき、魔法の第一人者であるカージェスト家の事が書いてあったことを舞は思い出した。
「へー…やっぱりかぁ、今度、魔法教えてね!」
舞は冗談を含めていったのだが、ハリスから発せられた返答は舞が予期していなかったものだった。
「は、半人前の、ぼ、僕で…よければ……」
段々とハリスの声が小さくなっていく。その頬はよく見えないが朱に染まっている気がする。
「おっと、ハリス。もう時間がない。早く謁見の間へと案内して差し上げろ」
「はっ、はいっ!」
さっきよりも大きくはっきりした声で返事をするハリスは舞達についてくるようにしじを出した。
道中、ハリスに対して物凄い質疑応答が行われ、謁見の間へと着く頃には大分疲弊していた。
「…こちらが、謁見の間となっています。………失礼します。マイ様達三名をお連れしました」
扉に向かってハリスが喋ると向こう側から低い響くような声で返事が返ってきた。
「…うむ。通し給え」
その声に反応したハリスは扉を四回ノックしてからもう一度失礼しますと言ってから謁見の間へ入っていった。
三人が部屋の奥を目指して歩いて行く。すると、段々と玉座が見えてきてそこには、白い髭を長々と伸ばしたお爺さんが座っていた。
「…君達が、我がイースガルズ国の魔獣密売人を捕らえてくれたのかね?」
先程と変わらない低く響く声で聞かれる。
「はい。微力ながら、協力させていただきました」
「ほっほ、そんなに畏まらんでも良い。何せ、君達は我が国の評判を守ったのだからな。そこでな、君達に褒美をやろうと思ったのじゃ」
「褒美、ですか?」
舞が聞き返す。
「あぁ、昨日、兵士達から聞いたとは思うが、勲章と、報酬を出そうと思っとる。勲章に関しては、後日叙勲式を執り行うつもりじゃ。報酬は今この場で渡せるがの、持っていくかの?」
「…えぇ、そうします。少々強欲かと思いますが、今は一銭でも惜しい状態なので…」
「素直なのは良いことじゃの。ほれ、報酬を持ってきてやれ」
そう王様に指示された兵士は隣の部屋から重そうな袋を6袋程持ってきた。運んでいる最中金属同士がぶつかり合う音がしたから、貴金属かお金だろうと推測する。
「中に全部で金貨が700枚ほど入っておる。少し、多過ぎたかと思うが、それだけの功績じゃ。受け取ってくれ」
「……はっ、有りがたき幸せ」
「畏まらんでもええと言うとろう。敬語は禁止じゃ。王直々の命だぞ」
「はぁ、わかった。ありがとう、国王様」
「ほっほ。対等な会話が出来る相手が欲しかったんじゃ」
舞が敬語をやめたことに大層嬉しそうに笑う王様。謁見も終わってお金を受け取って馬車に積み込んでいる間、舞は王様と世間話をしていた。
荷積みが終わってそろそろ帰宅することになる舞達の背中を見ながら王様が声をかける。
「叙勲式の連絡は追ってするからの。また、王城に来てくれよ。今度は息子達も見せてやりたいからの」
「…うん、そう遠くないうちにくるねおじいちゃん」
それに返事をしたのは涼華だった。初めに敬語を崩したのは舞だったが最終的に凄く懐いたのは涼華だった。
そんな涼華は国王のことをおじいちゃんと呼び、本物のおじいちゃんの様に話をしていた。
そして、帰宅の時間が来たので三人共馬車に乗り込む。窓から手と顔を出して、メイドさんと国王に手を振る。
「…また来るからねー!元気でねー!」
「次行く時は美味しいもの買ってくからねー!!」
「またね、おじいちゃん!!」
メイドさんたちは声を揃えて、
「またお越しくださいませ。お嬢様方」
と言い、国王はそのまま終始無言で手を振って見送っていった。
その日の馬車はとても賑やかだっだ。
「……なんだか、ほんとあっさり行ってくれてよかったぁ…これで何かがあったらまた千明達にドヤされる所だったよ…」
一番街に戻ってきて、もう少しで家に着くという前に後ろから複数人分の鎧同士がぶつかり合う音が聞こえた。
舞が後ろを振り向くと、国の正式武装の鎧を着た国軍の兵士たちだった。
「…あなたが、マイ・カミカワ様ですね?」
筆頭兵士であろう人物が舞に話しかけてきた。
「…はい、私がマイ・カミカワです。何か御用が?」
「はい。今回の件、彼奴を捕縛出来たのはカミカワ様の功績だと国から正式に勲章と報酬を送りたいと礼状が出ております故、後日、王城の方へと出向いていただきたく声をかけさせていただきました」
「はぁ…。わかりました、明日にでも伺います」
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「………せっかくですし、お願いします」
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「……おっそい!!」
「お姉ちゃん!!……心配したんだからね!!」
外はもう真っ暗で、時刻も九時を回っている。少しくらい怒られても仕方がないだろう。
「…ごめんね。でも、無事だし、しっかりと事件も解決してきたよ!!」
「当たり前だよ!!」
「寧ろ、有事だったら動物公園を滅ぼしに行ってたところだよ!!」
我が妹と幼馴染ながら怖い、などと家族に戦慄を覚えた舞は移動して椅子に腰掛けてから二人に声をかける。
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「……いやー、生きてるっていいなー。幸せっていいなー」
死ぬ可能性があった今回の作戦に成功した舞は生を噛み締めて幸せを享受している。だが、次の瞬間に千明の口から放たれた言葉に絶望する。
「あ、舞ー、今日の昼間ね大家さんが来てそろそろ家賃回収にくるってー、諸々かかって銀貨2枚だけど、お金ある?」
「………………た」
「へ?」
「忘れてたぁぁぁああああああああああぁぁぁぁあ!!!!!!」
自身が勲章を受けることも、その時に報酬が出ることも忘れて慌てふためく舞。
それを見ながら二人は明日からまた大変だな、と微笑んでいた。
翌日。
「さてと、そろそろ行くよー?」
「待ってー!お姉ちゃん!」
「ちょっ、早くない?」
明朝から王城へと向かう準備をしていた舞達。二人にはとりあえず今日は謁見をするとだけ伝えてある。
「ほら、早くー。あんまり王様待たせると失礼だよ?」
「よしっ!私は準備終わったよー!!」
「まっ、待ってぇ!!」
準備の遅い千明を置いて先に外に出る舞と涼華。それを焦って追いかける千明。こうして三人は仲良く王城へと繰り出していった。
王城は5番街の中央に位置する。そこは国としての中心である場所だった。
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「千明お姉ちゃん、情けないよ…」
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「…んー、そうだね、今日は暑いから、冷たいものでも買おうか?」
「ほんとっ!?やったー!」
「…いいの?お金あるの?」
舞の提案に真っ先に乗った千明とは対照的に涼華は所持金の心配をする。
「…んー、大丈夫。あるよ」
「……家賃」
「…明日辺りギルドに行こっか……」
収入の目星を付けたところで舞は出店で三人分の冷えたオレンジジュースを買った。
「…はぁ、美味しい……」
「んく………つめたーい……」
「うん、美味しいね」
暑さにやられかけていた体に最高に冷えたオレンジジュースは大分効いたようで千明が家を出る前の元気さを取り戻した。
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「はい」
「あいよ。後ろに座りな……んで、どこまで乗ってく?」
「あぁ、えっと、王城までお願いします」
そう目的地を告げると馬車の主は「あいよ」と返事して走り出した後に、急に止まり、
「あぁ!? 王城ゥ!?」
と、こちらを向いて叫んだ。
しっかりと目的地が王城の理由を説明すると、馬車の主は「へぇ、あんた、凄いんだねぇ」と、舞たちの事を褒め、
「じゃあ、急がなきゃな。ちと飛ばすぞ! しっかり捕まっとけ!」
という台詞とともに馬車は突然スピードを上げて走り出した。
その馬車のおかげで遅れることなく、王城には家からわずか8時間で到着した。
早速馬車から降りて急いでくれた馬車の主にお礼を言ってから、目の前にどでかく佇む王城を眺める。
「へー…ここが王城かぁ。想像してたより大きいねぇ」
「そーだねー、中も綺麗なんだろうなー」
「ねぇねぇ、みてみて! メイドさん!! メイドさん!!」
舞と千秋は王城を褒めていたのだが、涼華だけは別方面へトリップしてしまったようだ。涼華をカムバックさせた二人はそのまま王城内へと進むために関所に入っていく。
「すみません、マイ・カミカワと申します。国王様に謁見させていただきに参りました」
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「おお、貴女方は…どうぞ、お入り下さい」
「あ、昨日の……では、失礼しますね」
昨日、舞を家まで送り届けた兵士のうちの一人が関所の兵だったようで、舞は少し気が楽だった。
「では、一応形式上、ギルドカードを拝見させていただきますね」
「はい。これです」
「……有難う御座いました。これで確認は終了となります。今案内の者をつけますので少々お待ちください」
兵士の言葉に軽く会釈した舞は兵士の言葉に甘えて少し座って待っていることにした。
すると兵士は割と早く、二分程度で戻ってきた。その後ろには如何にも気が弱いですよー、と言わんばかりの雰囲気を纏った少年が居た。
「ほら、案内をするんだ」
「ひゃぃぃ……」
「なんだ!その気の抜けた返事は!!」
どうやら本当に気が弱いようで、兵士に怒られている様子を見て舞達の緊張が少しだけ和らいだ。
「ふふ、そんなに怒らなくて結構ですよ。ところで、お名前は?」
「ふぇ!?……ぼ、ぼくです……か?」
「うん」
いきなり話しかけられて焦っているのか目が泳いでいる。少し待つと、徐々に落ちついてきたようで、舞の質問に返答をしてきた。
「ぼ、僕はハリスと申します。ふ、フルネームだと、ハリス・カージェストです」
「ハリスくんだね?………ん?カージェスト?って、もしかしてあのカージェスト?」
「ええ、あの魔法貴族アリエステル・カージェスト様の息子です、現在礼儀を知るためにここに来て修行を積んでおります」
以前国立魔法図書館で調べ物をしていたとき、魔法の第一人者であるカージェスト家の事が書いてあったことを舞は思い出した。
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舞は冗談を含めていったのだが、ハリスから発せられた返答は舞が予期していなかったものだった。
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「褒美、ですか?」
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そして、帰宅の時間が来たので三人共馬車に乗り込む。窓から手と顔を出して、メイドさんと国王に手を振る。
「…また来るからねー!元気でねー!」
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「またね、おじいちゃん!!」
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