もふってちーと!!

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もふって就職!

◆もふって決着!3

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 舞の目の前には、おびただしい量の石炭が埋まっていた。先ほど投げつけられた山はどうやら石炭の鉱脈だったようで、その埋蔵量は想像もつかない。

「…これしかないか、な…げほっ……」

 地面に手をついて腰を浮かせると、それと同時に体中に激痛が走る。どうやら骨が数本イってしまったようだった。
 だが幸いにも足の骨は無事だったようで完全に動けなくなったわけではない。

「……っ! あぁ、ッもう! 後で涼華に治してもらわなきゃ…いづっ…!」

 痛みをこらえて立ち上がり、口内に広がる鉄の味を体外へ排出する。舞を投げつけた当のランクーレは舞をじっと見つめ続け、そこに佇んでいる。
 動く様子はない。

 ならばこちらから攻撃を仕掛けようじゃないかと、高密度のフレアをランクーレにぶつける。するとまだ動けると判断したランクーレはその巨体を思いっきり山にむけて叩きつけた。

 雪と土が激しく舞う。空中で混ざり合い泥となり地面に降り注ぐ。山から肩を抜いたランクーレはくるりと踵を返して帰ろうとした。だが、潰したはずの山から飛んできたフレアによってその足を止められる。

《Aoooooo……?》

 フレアの感触を鈍く感じたランクーレは山の方を振り向く。そこには、潰れたはずの舞が立ち上がりランクーレを睨みつけていた。

転移魔法ゲートがこんなとこで役に立つなんて思いもしなかったな…」

 依然として予断を許さない状況ではあるが、多少の余裕が出てきた。冷静になってフル回転している舞の頭は次から次へと行動を予測し、それを瞬間的に引き出している。

 つまり、ランクーレがどのような攻撃を仕掛けようとも、当たらない。簡単に言ってはいるが、瞬間的に引き出し、更にそれを実行に移す。それには頭の回転だけでなく、瞬発力も必要になる。

「さぁて、と。そろそろ仕上げにしとかないと。これ以上長引かせても時間の無駄だし、そろそろ体力も限界だし…」

 そんな無茶苦茶な体の使い方をしながら精神を尖らせる。予測し、避ける。ただそれだけに神経を削る。ふっと息を吐いてフレアをランクーレにぶつける。

 未だ敵意があると判断したランクーレは肩を突き出して舞に突進を繰り出した。

──今だ!

 刹那、轟音があたりに響き渡る。低く鈍い音だが、爆発音のそれと全く変わらない衝撃を伴っている。当たれば一溜まりもないだろう。もちろん、当たればの話だが。

 見事にランクーレは山に突っ込み、肩が突き刺さっている。引き抜こうと手をついているがそう簡単には抜けそうにない。

「やるなら、今、だね!」

 転移魔法ゲートを使用してランクーレの背後を取ると、声高に叫びながらフレアの魔力マナを練り始める。肩が抜けるまで、ぎりぎりまで、練り込みを続ける。

「…………よし、そろそろ、いいかな」

 舞の頭上に大きな火の塊・・・が出来上がり、それを一息にランクーレに向かって飛ばす。しかし、飛んでいったのは火の玉ではなく、炎だった。

《OOOoooooooo!!!!!》

 だが、その火力は火の玉よりも遥かに高く、炎が当たっただけでランクーレはうめき声をあげる。

 必死に力を入れて山から肩を抜こうとしているがそれも叶わない。そのまま何もできないままに巨大な爆発・・・・・が起こり、ランクーレは爆炎と黒煙の中に消えていった。

「ふぅ…やっぱり石炭だったんだね……もし別の特殊な鉱石だったらどうにもならなかったなぁ…いや、よかったよかった」

 大きく息を吐いてランクーレの元に無機追尾監視魔法サインレストラックモニターを飛ばし、その姿を確認する。

 流石にあれだけの爆発でも爆散とまでは行かず、満身創痍が関の山だった。だが、それだけダメージを与えられればあとは止めを刺すだけ。簡単な作業だ。

「…さて、行きますかね」

 無機追尾監視魔法サインレストラックモニターを頼りに黒煙の中を突っ切って真っ直ぐにランクーレの元へと飛翔する。その勢いを利用して直接弱点部位に高密度フレアを叩き込む。

《AAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!》

 今までにないほどの絶叫をあげ、ランクーレがぴたりと固まる。ぴくりとも動かなくなった体に数発フレアを打ち込む。完全に動かないことを確認してから首を狩るために風魔法を使う。

「上手く切れなくても、大丈夫だよね。よし【ウィンド】」

 そう小さく呟くと舞の右側から風の刃が現れてランクーレの首を狩った。その頭を風魔法で運びつつ涼華たちのもとに戻る。ぽたぽたと雪の上に赤いしみが滴る。

 雪山には、首がない魔物の体と、赤い雪の山が残った。

              ◆

 地面にゆっくりと腰を下ろして伸びをする。

「んー……っ! いてててっ!」

 折れた骨が内蔵に触れ痛みが走る。腹部に力を込めて痛みをなんとかこらえる。

「りょ、りょう、か…ちょっと治癒魔法かけてよ…使えるでしょ……?」

「えっ、あっ、うん。大丈夫?」

「大丈夫……じゃなっ…い、から…! はや、く……!」

 どんどん痛みが大きくなっていき、脂汗が舞の頬を伝う。口元には笑みが浮かんでいるが強がっているだけだろう。それを見た涼華が急いで治癒魔法をかける。

「【ヒール】」

 淡い光が舞を覆うと、舞の表情が次第に和らいでいくのがわかった。それまで額に浮かんでいた脂汗もすっと引き、状態だけ見れば、万全だった。

「ふぁー…ありがと。痛みがすーって引いてったよ」

「それはよかった。他に痛いところは?」

「いや、特にな」

 舞の言葉を遮ったのは三人のうちの誰かの言葉ではなく、別の誰かによる攻撃だった。

「マイー! 大丈夫!? 痛いところはない!?」

「あぁあぁぁあ……だぁぃぃじょぉぉぅぶぅだぁかぁぁらぁかぁらだあぁゆぅぅすぅらぁぁなぁぁいぃぃでぇぇぇ……」

 起き上がったルイは舞の肩を掴むなり思い切り前後に揺らして安否を確認する。あまりの大胆さに涼華も助けに行けないようでずっと固まっている。
 すると、後ろから歩いてきた千明がルイの襟首を掴んで持ち上げた。

「こら、舞は怪我治したばっかなんだから少しは自重しなさいな」

「おお、千明がまともなこと言ってる」

「喧嘩売ってるのかな? いいよ、いつでも買うよ。支払いは拳でいいかな?」

「ちょっ、ごめんごめん、嘘だから落ち着いて、その手を下ろそうよ。まだ僕達は分かり合えるから、ね?」

「どっせーい」

 その一言とともに振り上げられた手が振り下ろされる。一直線に綺麗に舞の頭に直撃した。

「痛っ!」

 舞はその当たった場所を擦りながら涙目で訴える。

「痛いよー…僕病人だよ…?」

「真の平等主義者は怪我人さえも差別しないのさ」

 などと千明は適当なことを言って舞の訴えを受け流した。

 その後、舞が空間魔法ボックスを使い、その中にランクーレの頭を入れると再び移動魔法ゲートを使って街に戻っていった。

 街につくと今はちょうど昼下がりでお日様が燦々と照っている。先ほどまで雪山で時間が確認できなかったために失った時間間隔を正していく。

「ふぅ、こうして考えるとランクーレ討伐も案外すぐに終わっちゃうもんだね」

「確かにね。朝出てから移動魔法ゲート使ったにしろ、今はお昼ごろだし、だいぶ早く終わったんじゃないかな」

 舞は三人と会話を交わしながら、自身が強くなっていることを確信しランクーレの討伐方向のためにギルドへと向かっていった。
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