もふってちーと!!

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もふって就職!

◆もふって獲得!1

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  ランクーレを倒した後、一行はギルドにクエスト達成報告をしにギルドIrisイリスを訪れていた。

 最早何度もくぐり、奥から光る眼光に慣れた扉を開き内部へと足を進める。それと同時にギルドの中から大きな完成が溢れだす。

『おおおおぉぉおおお!! あいつら、帰ってきやがったぞぉおおおお!!!』

 大音量の歓声に思わず体が硬直する。何事かと怪訝な顔をしているとごつい体格をした男が舞たちのもとへ歩いてきた。

「…なんで皆さんはこんなに騒いでいらっしゃるので?」

「そりゃァ、お前さん達が指定推奨冒険者のクエスト受けて無事に帰ってきたからだろォよゥ! あのクエストは本来よりもランクを一つ下げて・・・・・・・・・依頼を出してるってんだから、帰ってきた事をすげぇって感じるのも訳ねェよなァ! がっはっは!」

 初めてその情報を耳にして驚きを隠せなくなってしまった。正直なところ、舞たち本人は強くなったといっても勝てるとしたらAランクが精々だと思っていた。だが、話を聞くに今回のクエストはSランク相当。そのクエストをクリアして戻ってきたのだ、大騒ぎになっていたのも納得がいく。

「初耳なんだけど………舞ぃ?」

「ちょ、違うから。僕は本当にあの騎士さんからはAランク相当だって聞いてた……あれ、言ってたっけ?」

「うちのお姉ちゃんは平常運転です」

「ちゃんと情報は事前に確認しておこうよ…」

「あはは…ごめんごめん。まぁでもこうして無事なんだし、結果良ければすべてよし……いだいいだいぃ!」

「いいわけないでしょー?」

「ひっ」

 珍しく怒りの形相の千明を見て涼華が怯えている。舞の両こめかみに拳の第二関節を押し付けて拳をひねる。いわゆる"ぐりぐり"という、滅茶苦茶痛いあれだ。

 それを喰らった舞はそのままこめかみを抑えて地面にうずくまってしまっていた。

「近接戦闘してたから多少力には自信あるからね。お仕置きは任せておいて!」

「うぅ……痛いぃ…今回のはあんまり非は無くないかな、僕…」

 涙目になりつつも起き上がり千明に物申す。しかし拳を見せられた途端に口をすぼめて押し黙ってしまう。

「さて、じゃあ報告しにいこっか」

「うぅ、はい…」

 千明に促されて受付カウンターに向かう。受付嬢が今日のご用件はなんですか、と尋ねてくる。

「えっと、このクエストの完了報告をしにきました」

「はい。了承いたしました。では、クエスト完了確認のための条件を満たすものはお持ちですか?」

「ここに」

 そう言って空間魔法ボックスの中からランクーレの首を取り出す。それを鳩を豆鉄砲で打ったかのような顔をして受け取る。いや、受け取る、というよりかはカウンターに置いたものを鑑定する。

 しばらくの間鑑定していたが、それが終わると大きなため息をつき、頭を抱え込んだ。

「少々お待ちください。この任務完了確認はギルドマスターの承認が必要です。今呼んできますので」

 そのまま受付嬢は奥へ行き、中年のおじさんと言うに相応しい男性を連れてきた。

「こちらが当ギルドのマスター、ダイルです。今回は指定推奨冒険者起用のクエストの完了確認でよろしかったでしょうか?」

「は……い…? あれ、ダイルさん?」

「ん? どこかでお会いしました…? あぁ! あの時の!」

 紹介された男性は以前の事件で知り合った自称探偵のダイルだった。舞もダイルもギルドで鉢合わせるとは思いもよらず、微妙な雰囲気が流れる。

「あの時はどうも。すごく助かったよ」

「いやいや、こちらこそ。なんとなくで話しかけたらあんなにあっさりと事件を解決できちゃうもんだから、びっくりだよ」

 軽く会話を交わしてからダイルもランクーレの生首の鑑定を始める。どうやらギルドマスターも鑑定をしないと完了報告ができないようだ。

「ふむ……こりゃぁ見事な切り口だ。なにで切ったんだ? 並の大剣じゃ切れやしねぇし、そもそも刃物でランクーレの首を狩るって初めて聞いたぞ」

「え、あ、いや、刃物じゃなくて風魔法で切ったんだ。だから切れ味がいいんじゃないかな」

「風魔法って、上級の?」

「いや、ウィンド」

『はぁ!?』

 舞がした発言に受付嬢とダイルの二人が食い付き同時に同じ反応を返す。少しおかしくて口元を抑えて舞は笑う。それを見たダイルが眉間に皺を寄せて声を大きくする。

「ばっ…あんな切れ味初級で出せるかよ! ちょっとどころじゃなく感覚がずれてるぞ!」

「へ? そうなの? 僕、てっきりあれが普通なのかと…」

「はぁ……まるで箱入り娘だな。常識を知らねぇだなんて…って、お前、僕って言ってたか?」

 舞の一人称を聞いて違和感を覚えたダイルが舞に問いかける。

「以前会った時は私って言ってたんだっけ? んー、なんか、人に合わせて一人称を変えるのもアホらしいかなって思って。あ、それよりも完了報告したけど、指定推奨冒険者って今から適用になるの?」

「ん? いや、今度叙勲があるらしいじゃねぇか。そんときに一緒に認定式もやるらしいぞ。だから今はとりあえずクエスト報酬を受け取って叙勲を待つって感じだな」

 ダイルから今後の行動について聞く。話によると、クエストを受けるなら自分の適正ランク。もちろん今の自分のだ。要するに、今までと変わらない生活を送っていいと言う。
 クエストをこなすもよし、今回のクエストの報酬で遊ぶもよしだそうだ。

「ちなみに報奨金ってどれくらい出るの?」

「銀貨8枚だな。すごい大金だから叙勲までは余裕で遊んで暮らせるぞ。叙勲の時にまた大金を貰えるからな」

「以外とあるね」

「うん。苦戦こそしたけどもうちょっと低いかと思ってた」

 舞と千明が声を潜めて耳打ちをする。思っていたよりも報奨金は多く、財政難からも少しは逃れることができそうだ。

 そうと決まれば舞の行動は早く、報奨金をダイルから受け取り、軽く社交辞令で挨拶を交わしながらギルドを出る。

 長い間話し込んでいたつもりはなかったのだが、最近は日が落ちるのが早くなってきたのか、外はすでに暗がりの中だった。

「ひゃー、もう日が沈んじゃったんだね。早いなぁ」

「じゃあ、日が沈んだらご飯だよね!」

「折角報奨金も出たんだから美味しいご飯を食べたいなぁ? ね、ルイ!」

「えっ、あ、う、うん。できれば、その、いっぱい食べたいなぁって…」

 ルイは頬を赤く染めながらもじもじとして言った。少しの間だが食事を共にするようになってから、ルイがそこそこ食べる人だと知った。

 「もうしょうがないなぁ」と息をつき、笑いながら歩き出す。そのまま屋台の群れへと突っ込んでいき、お店を探す。

 後ろでは舞についてきている三人がやった、と大喜びで舞い上がる。多少騒がしいが、今日は難しいクエストもクリアしたことだし、しょうがないなと注意をせずに先頭を歩き続ける。

「今日は何食べたい?」

『にく!』

 三人が声を揃えて言うと、舞は目を丸くしてから腹を抱えて笑いだし、その姿を三人に避難されていた。その後、手頃なところにあった屋台に入り、夕食を取ることにした。

「…ここでいいかな」

「うん!」

「お腹すいたね」

「早くはいろ! 早く食べたい!」

「そんなに焦らなくたってお肉は逃げないから落ち着いて」
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