それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和

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 あの若者達がいない。
 それを聞いた三井は仲間と共にホテルから去って行った。
 去り際に「なにか思い出したり、話したいことがあったらいつでも連絡してください。島内さんには後ほどお話を聞かせていただきます。あと皆さん極力町から出ないでください」と言い残して。
 俺達はレストランに取り残されたみたいになり、手持ち無沙汰だった。そこで若い女の永野が口を開く。
「これってもう部屋に戻ってもいい感じ?」
「いいんじゃないですか」と大槻さんが答えた。
「じゃあ帰る」
 永野はどことなく不安で落ち着かない様子のままレストランからエレベーターホールへと向かった。
 対照的に大槻さんは安心していた。
「警察がこれだけ動いているんだ。犯人はすぐ捕まりますよ。やったのが三人組かどうかは分かりませんが狭い町ですしね。しらみ潰しに探していけば隠れようがない」
 大槻さんは手首に付けた腕時計をチラリと見た。
「じゃあ私は打ち合わせがあるんで」
 そう言って去って行く大槻さんは如何にも仕事ができるサラリーマンという感じだ。
 それを見て柄の悪い島内が頭の後ろを掻きながら歩き出す。
「せっかくアリバイができたと思ったのに。くそ」
 島内は舌打ちをし、明らかに苛立ったままどこかへ消えた。
「私も支援者にお話しないといけないことがあるので」と秘書の佐竹も慌てて出て行く。
 残されたのは俺と朝陽、それと木下というじいさんとサトさんというおばあさんだけになった。
 木下さんは小さく溜息をついた。
「岩間の倅め。好き勝手した挙げ句殺されたか……。まったく……」
「祟りじゃよ」とサトさんは窓の外を見ながら言った。「猫神様を怒らせたんじゃ」
 木下さんは呆れていた。
「サトさん。猫神なんておらんよ。わしらの子供の頃を思い出してみればいい。そんなの信じてる奴はどこにもおらんかった」
「いんや。いる。わしはこの目で見たんじゃ。夜の町を風のように駆ける猫神様を。お前さんも猫神様の像が夜な夜な鳴くのを知っておるじゃろ?」
 サトさんは細い目を見開いた。その目は心底猫神を信じているようだった。木下さんは呆れてかぶりを振った。
「あれはただの空耳だよ。まあ、信じること自体にとやかくは言わん。けどな。町はどうにかせんと。岩間の倅が無茶苦茶にした後始末を誰かがせんといかん。誰かが」
 まるで自分にそう言い聞かせるようにそう呟くと木下さんはレストランから去って行った。
 朝陽はサトさんに話しかけた。
「一人で帰れますか?」
「心配せんでええ。さっき倅の嫁にLINEしたからもうすぐ来る」
 神様は信じてるけどLINEは使えるんだな。
「大丈夫そうだし俺も部屋に戻るか」
 すると朝陽に呼び止められた。
「ちょっと待って。話しておきたいことがあるの」
「俺はない」
「あたしにはあるの。いいから来なさい」
 朝陽は母親のようにそう言うとレストランを出てラウンジの方に歩いて行った。俺は面倒だったが渋々ついていった。
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