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佐竹が死んだ。
死体が見つかったのは温泉近くの山道を登っていったところにある木材加工場だ。
なんでも燻製ブームの時に町の新事業として発足したが、流行が終わり、すぐに経営は立ち行かなくなって潰れたそうだ。
そう言えば野菜工場とかも潰してたな。どうやら死んだ岩間はブームがあればすぐ飛びつくミーハーらしい。
問題は佐竹の死に方だった。
木材をスモークチップに加工するためカットするそうだが、その機械の中に死体があったそうだ。
つまり刃と刃が噛みちぎられたという表現がよく合っていた。
工場に佐竹の車を見つけ、中を探っていた町民はその光景を見て大声を上げ、一瞬気を失いそうになったらしい。見なくてよかった。
だが問題なのはその猟奇性じゃない。
被害者が噛み砕かれていた点だ。
これは猫神伝説で三人目の頭領が殺された時と一致する。
唯一の救いは佐竹が刃物で刺し殺されてから死んだことだろう。
つまり生きたまま砕かれたわけじゃないらしい。
犯人は佐竹をナイフかなにかで刺し殺してからジャケットを脱がせ、稼働させた機械の中に放り込んだ。
刻まれたジャケットが裏返しになって死体の近くに落ちていたらしい。なんでそんなことをしたのかだが、分厚いジャケットに刃が絡まって機械が止まらないようにだという見方が大勢を占める。
この不気味なニュースは瞬く間にこの狭い町を駆け巡った。
みんなが祟りを警戒して家に籠もり、ただでさえ人影が少ない町から人が消えた。
最早ねこの方が多いくらいだ。だがそのねこ達も敬ってくれる人間がいなければただの柔らかい獣だった。
町民の代わりに来たのがメディア達だ。
静かな田舎の町で起きた連続殺人。しかも見立て殺人となればこんなおいしいネタを見過ごす手はない。
すぐさま多くのメディアがこぞって町にやってきた。
閑散としていたホテルは満室となり、溢れた連中は隣町で宿を取り、車で通っていた。
だが取材をしように町民は出てこない。仕方なくこんな時でも呑気に直売所を開いているサトさんに話を聞きに行くが、返答はいつも同じだった。
「祟りじゃ。猫神様の祟りじゃよ」
メディアクルー達は困惑しながら愛想笑いを浮かべることしかできてなかった。
その後もメディアの報道は進み、この奇妙な町のルールが白日の下に晒された。そのせいで夕方からはユーチューバーがカメラを持って押し寄せるもののホテルが取れず、野宿しようとするが警察に見つかり、口論の末、町から追い出された。
現在は限られた情報でネットの素人探偵達が喧々諤々の議論を交わしている。だが誰も現地に来ず、正確な情報は持っていないせいもあり、町の住人が結託して町長と秘書を殺したという陰謀論が支持を集めていた。
たしかになにも知らなければここに住む人達は狂った町の狂った住民なんだろうが、実際に話してみると誰も彼もどこにでもいる老人ばかりだ。
今のところ猫神を猛烈に信じているのはサトさんくらいしか見当たらないが、あの老婆がこれほどの連続殺人をするとは思えない。
神社にでも行って天罰を望むくらいが関の山だろう。
大体これが連続殺人なら岩間も殺したことになるが、この町の老人達ではあの巨体を森の深くまで運ぶことは不可能だろう。
ネットの住民はそこも知らない上に死体が捨てられたのは森の中という情報しか持っていないため、ねこ車に入れて押したと言っているが、あそこは坂道になっている上に地面も柔らかいからとてもじゃないがそんなことはできない。
ただこいつらの意見で一つ参考になりそうなことと言えば、佐竹の死に場所だ。普通あんなところには行かない。行くとしたら呼び出された場合だろう。
つまり佐竹を殺した犯人は人のいない山道まで無警戒で呼び出すことができるほど親しい人物ということになる。
佐竹と仲が良い人物。その筆頭が岩間の妻だが……。
「あり得ないわ」と朝陽はロビーのソファーで断言した。
「と言うと?」
聞き返すのは俺ではく、刑事の三井だ。先ほどから朝陽は事情聴取を受けている。朝陽は答えた。
「佐竹の死亡推定時刻は昨日の二時半頃なんですよね? その時間あたしは奥さんの優花さんとずっと一緒にいたから」
二時半頃というと俺が三井と会っていた頃だ。アリバイができてよかった。
だが三井は諦めない。
「山とは言え、あそこは町から車で五分の場所にあります。往復で十分。町長の屋敷からは十五分ほど。佐竹さんは後頭部を殴られて死亡してから稼働した機械に放り込まれました。このことを考えると手早くすれば十分もかかりません。最短で二十分。それだけの時間、奥さんが消えていたことはありませんか? 我々が行った時、すんなり出てきてくれませんでした。あれは裏口から隠しておいた車に乗って犯行現場に行ったのでは? 現に後ろの林には古い四駆がありました。あちらにある道からでも犯行現場には同じ時間で行けます」
朝陽は少し考え、やはり否定した。
「たしかに優花さんは途中で用があると言っていなくなりました。でも二十分はなかったはずです。精々十五分ほど。いや、それよりも短いはずです。席を離れた時に電話がかかってきて出たんですが、あなた達が来てすぐ切ったんです。だから」朝陽は着信履歴と通話時間を確認した。「十三分強ですね」
「十三分……」
三井はソファーにもたれて目線を上げた。おそらく頭の中でシミュレーションしているんだろう。
「彼女がWRCのレーサーであれば十五分を十分ほどに短縮できるかもしれませんね。そしてジョンウィックを凌駕する殺し屋ならさ三分で佐竹を殺して戻ってくることは可能です。その確率に賭けてみるのも悪くないかもしれません」
肩をすくめて苦笑する三井を俺は少し気の毒に思った。
殺されたのは町長とその秘書。しかも佐竹は町長の奥さんと不倫関係にあったと言われている。
これだけ見ればどう考えても奥さんが一番怪しい。だが最初の殺人では町におらず、第二の殺人では確固たるアリバイがある。
三井はチラリと朝陽を見た。
朝陽はカフェオレをストローで掻き回しながら先読みで答える。
「私と優花さんとは初対面です。会ったのはあの日が初めてで、協力するように頼まれたことも見返りに金品を受け取ったこともありません」
「…………全部言われちゃいましたね」三井はあははと笑って続けた。「ですけど見返りに関しては少し違います。あなた方はそんなものなくても取引が成立するでしょう?」
「……と言うと?」
「ネタですよ。あなた達作家に取ってそれが一番じゃないんですか」
三井の瞳が鋭く朝陽を捕らえた。朝陽は小さく嘆息する。
「なるほど……。あたしとそこにいる売れない作家Aが岩間の奥さんと共謀して事件を起こしたと考えているわけね。動機はネタを得る為に。二人だから町長も運べるし、あたしが協力すれば奥さんのアリバイも作れる。まあ町に来たタイミングや二人いることを考えればそう思うのも無理ないか」
「あるだろ」と俺は反論した。「どこの作家が殺人なんてを起こすんだよ?」
「エドガー賞を受賞したアン・ペリーは若い頃に友達の母親を殺してるわ」
三井も続く。
「中国の有名作家劉永彪も殺人で逮捕されています。彼は中国作家教会の会員でもあった人です。作家の人殺しって結構いるんですよ」
「おいおい」俺は呆れた。「そいつらのことは知らないけど、俺と朝陽が組むなんてことは絶対ない。もし共謀したってことはネタを共有するってことだろ? そんなことしたら俺だけ弾かれるに決まってる。それだけは絶対ない」
「当たり前よ」と朝陽も同意した。「刑事さん。あなた作家になった方がいいですよ。少なくともこいつよりは上手く書けるわ」
朝陽は呆れながら俺を指差した。俺がムッとしていると三井は苦笑して天井を見上げた。
「ですよねえ。分かってますよ。自分が荒唐無稽なことを言っているってね。我々も困ってるんですよ」
朝陽が小さく嘆息する。
「佐竹が殺された時、優花さんにアリバイがあることがでしょう?二人は共犯の可能性が高かった。その片方が死ねば仲間割れ。単純なストーリーがあたしのアリバイのせいで瓦解した。あるとすれば第三の共犯者がいる可能性。でもそれが誰だか分からない」
両者が悔しそうにするのを見るに、朝陽の推理と三井は同じものだったらしい。
三井は困った笑みを浮かべて手を組んだ。
「奥さんが旅行先で誰といたかは分かってます。その人物と撮られた写真もある。ここと違って周囲は防犯カメラだらけですしね。なので犯行当時に彼女がこの町にいたということはあり得ない。実行犯は別にいます。その筆頭が佐竹でした。しかし彼も殺された。色々聞き込みはしましたが、奥さんはほとんど町の人とコミュニケーションがないらしく、話をするのは旦那と秘書の佐竹くらい。殺人の依頼を受けてくれるような間柄は誰もいません。そして第一の犯行から町を出た主要な人物は例の三人組だけ。つまり、もし共犯者がいればまだこの町にいるということになります。しかし奥さんにはもう親しい人物はいません。全員死にました」
「奥さんを恨んでいた人がいたとか?」と朝陽は尋ねた。
三井はかぶりを振る。
「だから親しい人を殺したと? 今のところはなさそうですね。話さないのであれば恨まれることもないでしょう」
「たしかに……。あそこは周囲も町長の土地だから隣人トラブルもないでしょうしね」
気になったので俺は聞いてみた。
「あの三人組はまだ見つからないんですか?」
「そちらも手間取ってます。どうやら匿ってる連中がいるみたいですね。でないとこれだけ探して見つからないのはおかしいですから」
「そうですか……」
あの三人組が見つかれば事件が解けるかもしれないのに。いや、だからこそ隠れているのか。随分人手を割いているみたいだし、それで見つからないなら計画的に隠れた可能性が高いな。
「犯人の有力候補である佐竹は殺され、その共犯者のある可能性が高い岩間の奥さんにはアリバイがあり、事件の鍵を握っていると思われる三人組は雲隠れ……」
「もう笑うしかありませんね」
三井はとびっきりの笑顔を俺達に振りまいた。
だが事件を解決した方がネタを手に入れるという勝負をしていた俺と朝陽は面白くもない。
朝陽はボソリと呟いた。
「このままだとなんの成果も得られないかもしれないわね……」
だとすればこいつより先に俺だろう。残金はあと数日で尽きてしまう。
最悪の事態が近づいていた。
死体が見つかったのは温泉近くの山道を登っていったところにある木材加工場だ。
なんでも燻製ブームの時に町の新事業として発足したが、流行が終わり、すぐに経営は立ち行かなくなって潰れたそうだ。
そう言えば野菜工場とかも潰してたな。どうやら死んだ岩間はブームがあればすぐ飛びつくミーハーらしい。
問題は佐竹の死に方だった。
木材をスモークチップに加工するためカットするそうだが、その機械の中に死体があったそうだ。
つまり刃と刃が噛みちぎられたという表現がよく合っていた。
工場に佐竹の車を見つけ、中を探っていた町民はその光景を見て大声を上げ、一瞬気を失いそうになったらしい。見なくてよかった。
だが問題なのはその猟奇性じゃない。
被害者が噛み砕かれていた点だ。
これは猫神伝説で三人目の頭領が殺された時と一致する。
唯一の救いは佐竹が刃物で刺し殺されてから死んだことだろう。
つまり生きたまま砕かれたわけじゃないらしい。
犯人は佐竹をナイフかなにかで刺し殺してからジャケットを脱がせ、稼働させた機械の中に放り込んだ。
刻まれたジャケットが裏返しになって死体の近くに落ちていたらしい。なんでそんなことをしたのかだが、分厚いジャケットに刃が絡まって機械が止まらないようにだという見方が大勢を占める。
この不気味なニュースは瞬く間にこの狭い町を駆け巡った。
みんなが祟りを警戒して家に籠もり、ただでさえ人影が少ない町から人が消えた。
最早ねこの方が多いくらいだ。だがそのねこ達も敬ってくれる人間がいなければただの柔らかい獣だった。
町民の代わりに来たのがメディア達だ。
静かな田舎の町で起きた連続殺人。しかも見立て殺人となればこんなおいしいネタを見過ごす手はない。
すぐさま多くのメディアがこぞって町にやってきた。
閑散としていたホテルは満室となり、溢れた連中は隣町で宿を取り、車で通っていた。
だが取材をしように町民は出てこない。仕方なくこんな時でも呑気に直売所を開いているサトさんに話を聞きに行くが、返答はいつも同じだった。
「祟りじゃ。猫神様の祟りじゃよ」
メディアクルー達は困惑しながら愛想笑いを浮かべることしかできてなかった。
その後もメディアの報道は進み、この奇妙な町のルールが白日の下に晒された。そのせいで夕方からはユーチューバーがカメラを持って押し寄せるもののホテルが取れず、野宿しようとするが警察に見つかり、口論の末、町から追い出された。
現在は限られた情報でネットの素人探偵達が喧々諤々の議論を交わしている。だが誰も現地に来ず、正確な情報は持っていないせいもあり、町の住人が結託して町長と秘書を殺したという陰謀論が支持を集めていた。
たしかになにも知らなければここに住む人達は狂った町の狂った住民なんだろうが、実際に話してみると誰も彼もどこにでもいる老人ばかりだ。
今のところ猫神を猛烈に信じているのはサトさんくらいしか見当たらないが、あの老婆がこれほどの連続殺人をするとは思えない。
神社にでも行って天罰を望むくらいが関の山だろう。
大体これが連続殺人なら岩間も殺したことになるが、この町の老人達ではあの巨体を森の深くまで運ぶことは不可能だろう。
ネットの住民はそこも知らない上に死体が捨てられたのは森の中という情報しか持っていないため、ねこ車に入れて押したと言っているが、あそこは坂道になっている上に地面も柔らかいからとてもじゃないがそんなことはできない。
ただこいつらの意見で一つ参考になりそうなことと言えば、佐竹の死に場所だ。普通あんなところには行かない。行くとしたら呼び出された場合だろう。
つまり佐竹を殺した犯人は人のいない山道まで無警戒で呼び出すことができるほど親しい人物ということになる。
佐竹と仲が良い人物。その筆頭が岩間の妻だが……。
「あり得ないわ」と朝陽はロビーのソファーで断言した。
「と言うと?」
聞き返すのは俺ではく、刑事の三井だ。先ほどから朝陽は事情聴取を受けている。朝陽は答えた。
「佐竹の死亡推定時刻は昨日の二時半頃なんですよね? その時間あたしは奥さんの優花さんとずっと一緒にいたから」
二時半頃というと俺が三井と会っていた頃だ。アリバイができてよかった。
だが三井は諦めない。
「山とは言え、あそこは町から車で五分の場所にあります。往復で十分。町長の屋敷からは十五分ほど。佐竹さんは後頭部を殴られて死亡してから稼働した機械に放り込まれました。このことを考えると手早くすれば十分もかかりません。最短で二十分。それだけの時間、奥さんが消えていたことはありませんか? 我々が行った時、すんなり出てきてくれませんでした。あれは裏口から隠しておいた車に乗って犯行現場に行ったのでは? 現に後ろの林には古い四駆がありました。あちらにある道からでも犯行現場には同じ時間で行けます」
朝陽は少し考え、やはり否定した。
「たしかに優花さんは途中で用があると言っていなくなりました。でも二十分はなかったはずです。精々十五分ほど。いや、それよりも短いはずです。席を離れた時に電話がかかってきて出たんですが、あなた達が来てすぐ切ったんです。だから」朝陽は着信履歴と通話時間を確認した。「十三分強ですね」
「十三分……」
三井はソファーにもたれて目線を上げた。おそらく頭の中でシミュレーションしているんだろう。
「彼女がWRCのレーサーであれば十五分を十分ほどに短縮できるかもしれませんね。そしてジョンウィックを凌駕する殺し屋ならさ三分で佐竹を殺して戻ってくることは可能です。その確率に賭けてみるのも悪くないかもしれません」
肩をすくめて苦笑する三井を俺は少し気の毒に思った。
殺されたのは町長とその秘書。しかも佐竹は町長の奥さんと不倫関係にあったと言われている。
これだけ見ればどう考えても奥さんが一番怪しい。だが最初の殺人では町におらず、第二の殺人では確固たるアリバイがある。
三井はチラリと朝陽を見た。
朝陽はカフェオレをストローで掻き回しながら先読みで答える。
「私と優花さんとは初対面です。会ったのはあの日が初めてで、協力するように頼まれたことも見返りに金品を受け取ったこともありません」
「…………全部言われちゃいましたね」三井はあははと笑って続けた。「ですけど見返りに関しては少し違います。あなた方はそんなものなくても取引が成立するでしょう?」
「……と言うと?」
「ネタですよ。あなた達作家に取ってそれが一番じゃないんですか」
三井の瞳が鋭く朝陽を捕らえた。朝陽は小さく嘆息する。
「なるほど……。あたしとそこにいる売れない作家Aが岩間の奥さんと共謀して事件を起こしたと考えているわけね。動機はネタを得る為に。二人だから町長も運べるし、あたしが協力すれば奥さんのアリバイも作れる。まあ町に来たタイミングや二人いることを考えればそう思うのも無理ないか」
「あるだろ」と俺は反論した。「どこの作家が殺人なんてを起こすんだよ?」
「エドガー賞を受賞したアン・ペリーは若い頃に友達の母親を殺してるわ」
三井も続く。
「中国の有名作家劉永彪も殺人で逮捕されています。彼は中国作家教会の会員でもあった人です。作家の人殺しって結構いるんですよ」
「おいおい」俺は呆れた。「そいつらのことは知らないけど、俺と朝陽が組むなんてことは絶対ない。もし共謀したってことはネタを共有するってことだろ? そんなことしたら俺だけ弾かれるに決まってる。それだけは絶対ない」
「当たり前よ」と朝陽も同意した。「刑事さん。あなた作家になった方がいいですよ。少なくともこいつよりは上手く書けるわ」
朝陽は呆れながら俺を指差した。俺がムッとしていると三井は苦笑して天井を見上げた。
「ですよねえ。分かってますよ。自分が荒唐無稽なことを言っているってね。我々も困ってるんですよ」
朝陽が小さく嘆息する。
「佐竹が殺された時、優花さんにアリバイがあることがでしょう?二人は共犯の可能性が高かった。その片方が死ねば仲間割れ。単純なストーリーがあたしのアリバイのせいで瓦解した。あるとすれば第三の共犯者がいる可能性。でもそれが誰だか分からない」
両者が悔しそうにするのを見るに、朝陽の推理と三井は同じものだったらしい。
三井は困った笑みを浮かべて手を組んだ。
「奥さんが旅行先で誰といたかは分かってます。その人物と撮られた写真もある。ここと違って周囲は防犯カメラだらけですしね。なので犯行当時に彼女がこの町にいたということはあり得ない。実行犯は別にいます。その筆頭が佐竹でした。しかし彼も殺された。色々聞き込みはしましたが、奥さんはほとんど町の人とコミュニケーションがないらしく、話をするのは旦那と秘書の佐竹くらい。殺人の依頼を受けてくれるような間柄は誰もいません。そして第一の犯行から町を出た主要な人物は例の三人組だけ。つまり、もし共犯者がいればまだこの町にいるということになります。しかし奥さんにはもう親しい人物はいません。全員死にました」
「奥さんを恨んでいた人がいたとか?」と朝陽は尋ねた。
三井はかぶりを振る。
「だから親しい人を殺したと? 今のところはなさそうですね。話さないのであれば恨まれることもないでしょう」
「たしかに……。あそこは周囲も町長の土地だから隣人トラブルもないでしょうしね」
気になったので俺は聞いてみた。
「あの三人組はまだ見つからないんですか?」
「そちらも手間取ってます。どうやら匿ってる連中がいるみたいですね。でないとこれだけ探して見つからないのはおかしいですから」
「そうですか……」
あの三人組が見つかれば事件が解けるかもしれないのに。いや、だからこそ隠れているのか。随分人手を割いているみたいだし、それで見つからないなら計画的に隠れた可能性が高いな。
「犯人の有力候補である佐竹は殺され、その共犯者のある可能性が高い岩間の奥さんにはアリバイがあり、事件の鍵を握っていると思われる三人組は雲隠れ……」
「もう笑うしかありませんね」
三井はとびっきりの笑顔を俺達に振りまいた。
だが事件を解決した方がネタを手に入れるという勝負をしていた俺と朝陽は面白くもない。
朝陽はボソリと呟いた。
「このままだとなんの成果も得られないかもしれないわね……」
だとすればこいつより先に俺だろう。残金はあと数日で尽きてしまう。
最悪の事態が近づいていた。
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