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元来真広は女性が苦手だった。
特に若い女の子はなにを考えているか分からない。
いつも群れでいるし、いきなり甲高い声で笑い出すし、なにより不機嫌を隠さない。
パート先のスーパーにもいるがあまり関わりはない。若い子が好きでよく話しかける男性社員も多いが、真広からすれば火のついたダイナマイトに触ろうとするのと同じだった。
だから小白が女の子だと分かった時には随分驚いた。まだ五歳とは言え、自分の家に女の子がいるなんて本来なら恐るべき事態だ。
だが不思議と真広は小白に対して苦々しい思いを抱かなかった。それは小白が普通の女の子とは違ってわりと大人しいということもあったが、なにより妙な品を感じたからだ。
言葉遣いは粗野だが、その佇まいには変な気品がある。それは野生動物を見た時に思う命としての強度が人とは違うあれに似ている。
にもかかわらずどこか甘えたところもあり、野生の子ねこが家に迷い込んできたように思えた。
だから真広は疲れていたが休み時間になるとシュークリームを買って家に戻った。昨日あれだけケーキで喜んでいたのだからシュークリームも喜んでくれると思った。
キラキラと輝く小白の瞳がまた見られると思うと真広は自分でも嬉しくなっているのが分かった。
「ただいま。もうお昼は食べたかな?」
真広がそう言って玄関の引き戸をガラガラと開けるが返事はない。また寝ているのかと思って居間に向かうが小白はいなかった。それどころか母親の部屋にもいない。
真広は家中を探した。風呂にもトイレにも真広の部屋にも真理恵の部屋にも押し入れの中にも小白はいなかった。
廊下で呆然と立つ真広はじわじわと焦りを感じてきた。そしてぽつりと呟いた。
「大変だ……」
特に若い女の子はなにを考えているか分からない。
いつも群れでいるし、いきなり甲高い声で笑い出すし、なにより不機嫌を隠さない。
パート先のスーパーにもいるがあまり関わりはない。若い子が好きでよく話しかける男性社員も多いが、真広からすれば火のついたダイナマイトに触ろうとするのと同じだった。
だから小白が女の子だと分かった時には随分驚いた。まだ五歳とは言え、自分の家に女の子がいるなんて本来なら恐るべき事態だ。
だが不思議と真広は小白に対して苦々しい思いを抱かなかった。それは小白が普通の女の子とは違ってわりと大人しいということもあったが、なにより妙な品を感じたからだ。
言葉遣いは粗野だが、その佇まいには変な気品がある。それは野生動物を見た時に思う命としての強度が人とは違うあれに似ている。
にもかかわらずどこか甘えたところもあり、野生の子ねこが家に迷い込んできたように思えた。
だから真広は疲れていたが休み時間になるとシュークリームを買って家に戻った。昨日あれだけケーキで喜んでいたのだからシュークリームも喜んでくれると思った。
キラキラと輝く小白の瞳がまた見られると思うと真広は自分でも嬉しくなっているのが分かった。
「ただいま。もうお昼は食べたかな?」
真広がそう言って玄関の引き戸をガラガラと開けるが返事はない。また寝ているのかと思って居間に向かうが小白はいなかった。それどころか母親の部屋にもいない。
真広は家中を探した。風呂にもトイレにも真広の部屋にも真理恵の部屋にも押し入れの中にも小白はいなかった。
廊下で呆然と立つ真広はじわじわと焦りを感じてきた。そしてぽつりと呟いた。
「大変だ……」
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