路地裏のアン

ねこしゃけ日和

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 門の外から見えるよりこの屋敷の庭は広かった。
 煉瓦で作られた道が何本も伸び、合流と拡散を繰り返している。小白は蒼真のあとを追ってその道を進む。庭の真ん中にあるオリーブの木陰を蒼真は覗き込んだ。
「あれ? ここもいない。いつもならここら辺にいるのに」
 蒼真が振り返ると小白の不満そうな顔があった。
「だましたな。クソガキ」
「だましてない。本当にいるんだよ。ほら、あの家にねこ用のお皿があっただろ?」
「そこまでしてうちと遊びたいのか」
「聞けよ」
 蒼真はおかしいなと首を傾げ、庭の奥にある煉瓦造りの物置を見つけた。
「あ。あそこにいるかも」
 小白は眉をひそめて物置を見つめた。
「いなかったら?」
「え? いや、またべつのところを探すしかないけど……」
「いなかったら一生うちの言うこと聞くか?」
「なんでだよ」
「それほどねこのうそは重い。いのちがけ」
「……まあ、いるよ。多分」
 蒼真は不安になりながらも物置の方に歩き出した。
 綺麗な庭だが奥の方はそこまで手入れされておらず、草花が道にはみ出ている場所も多い。二人はそれを避けながら庭の端にある物置小屋に向かった。
 物置小屋はプレハブサイズの二階建てで、本館や離れと比べれば手入れされてなかった。
 蒼真は背伸びをして汚れた窓ガラスから中を覗く。その隣で小白は腕を組んでいた。
「いた?」
「せかすなよ。おかしいな。いつもだったら気付いたらいるのに。お前がいるから出てこないんじゃないか?」
「なんで?」
 小白はギロリと蒼真を睨んだ。
「いや、だってお前もねこじゃん。警戒してるとか?」
 すると小白は目をぱちくりとして、そのあと嬉しそうに蒼真の頭をポンポン叩いた。
「そう。うちはねこ。わかってるな」
「痛いからやめろよ」
 蒼真が鬱陶しそうにすると小白は楽しげに歩き出した。
「そうかもしれん。うちがねこだから出てこないのかも。うちはそこら辺を歩いてるから見つけたら連れて来て。生死は問わん」
「問えよ。うん。でもあんまり遠くに行くなよ? ここ、裏山と繋がってるから」
「大丈夫。ねこなので」
 小白はそう言うと蒼真から離れて行った。
 一人残された蒼真は「変な奴……」と呟いてねこ探しを再開した。
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