路地裏のアン

ねこしゃけ日和

文字の大きさ
38 / 67

38

しおりを挟む
 翌日の月曜日。
 朝の食卓には白米とわかめの味噌汁、昨晩作った筑前煮の残りと真理恵が作った卵焼きが並んでいた。
 真理恵は対面に座る小白をちらりと見てから、少しぎこちなく口を開いた。
「その、あそこはどうだった?」
「あそこって?」
「えっと、昨日行った庭が広いお屋敷。気に入った?」
「ふつう。牧師に会えたらいいところかも」
「牧師って?」
「ねこ。あの屋敷に住んでる」
「へえ。そんなねこがいたの」
「うん」小白は頷いた。「あいつはいるって言ってたけど、結局見つからなかった。だまされた。でも本当にいるってリカは言ってた。だから半分ウソ」
「それは残念だったわね」
「うん。だけど世の中そんなもの」
 大袈裟な表現に真理恵と真広は面白がる。真理恵は少し躊躇いながらも言った。
「そう。それでだけど、今は週に三日留守番してるでしょ?」
 小白はこくんと頷き、真理恵は続ける。
「でも一人だとなにかあった時大変だし、寂しかったりするじゃない」
「多少はそう」
「それで、兄さんが仕事に行ってから私が帰ってくるまであそこに行って待ってるっていうのはどうかと思って」
 真理恵の提案に小白は卵焼きをもぐもぐ食べながら考えていた。
 真広は真理恵は顔を見合わせた。真理恵は尋ねる。
「どう?」
 小白は卵焼きを飲み込んでから言った。
「テレビによる。あそこはテレビなかったから。見たいのがあったら行かん。相棒は毎日やってるし」
 小白はムムムと悩んだ。どうやらあの屋敷がイヤなわけではなさそうだった。
 真理恵が困っていると真広が告げた。
「なら録画すればいい。ブルーレイレコーダーを買ってくるよ。僕も欲しかったし」
 すると小白の顔が明るくなる。
「それならコナンも録画して見たい。ポケモンも。それと古畑も見る」
「うん。そうしよう」
 真理恵は真広に「でも高いんじゃないですか?」と聞いた。
「大丈夫だよ。お金はなんとかなる」
 真広は自信ありげだったが、真理恵はまだ不安そうだった。しかしだがそれも無粋だと思い小白に向き直す。
「行ってみる?」
 小白はちらりと真理恵を見上げた。それからすぐに食卓に目線を落とす。
「うん」
 その小さな間を真広が汲んだ。
「まあ、すぐに仲の良い友達ができるよ。その、女の子の」
 真広の牽制に真理恵は苦笑しながら頷いた。
「そうですね。もちろん無理にとは言いません。まずは行ってみて、イヤならまた考えましょう。ではそれでお願いします。場所はこの子が知ってますから」
 真理恵は真広にそう言うと、兄は頷いた。
「ああ。うん。連れてくよ。今日は休みだけど見に行ってみようか」
 真広がそう言うと小白は頷き、白米にシャケのふりかけをかけた。
「行く。牧師に会う」
 そう言いながらも小白には別の計画があった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

処理中です...