魔法使いが死んだ夜

ねこしゃけ日和

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 三日目。最終日。

 今日の内に犯人が誰だか突き止めなければならない。

 間違いなく追い詰められている。それは誰の目にも明らかだ。

 だが――

「もうちょっと寝たいんだけど……」

 中々出てこないと思って朝の九時にシャロンの部屋を訪れると片腕で枕を抱きしめ、もう片方の手で眠そうに目を擦りながらそう言われた。

「……何時までですか?」

「できるなら一日中でも寝たい。そんな日ってあるわよね?」

「あります」

「それが今日よ」

「困ります。今日の内に犯人を見つけないとダメなんですよ?」

「それはあなた達の都合でしょう? わたしの小さな体は睡眠を欲しているの」

「犯人を捕まえたら貪りたいだけ惰眠を貪っていいですから」

 こっちは今日一日に人生が懸かっているんだ。多少眠いくらいでは譲れない。

 私がいつになく強い語気と目で決意を示すとシャロンのまん丸なほっぺたはぷくーっと膨らんだ。

「朝食には紅茶も淹れてもらって。あと苺ジャムもよ」

「何杯でも淹れさせます。浴びるほど飲んでください」

「そんなにいらないわ!」

 シャロンはむすっとしてドアを強めに閉めた。

 いくら怒られても今日だけは頑張ってもらいたい。でないと私達はどうなるか……。

 これまで積み重ねた全ての努力が無駄になるかどうかの瀬戸際だった。

 なのに――

「ソックスを履かせて」

 部屋に朝食を持って行くとシャロンはふてくされていた。どうやらまだ眠いらしい。

 私は大きな溜息をついてその場で屈み、小さな足に白いレースのソックスを履かせた。

 あったはずの期待が少しずつ萎んでいくのが分かった。
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