シャックス 名家落ちこぼれの少年は未踏大陸踏破を目指す

透けてるブランディシュカ

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第1章 クロニカ編

04 暗雲

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 少年と別れたシャックスは、その場に倒れるがすぐに起き上がる。

 数分後意識を取り戻したシャックスは、頭の中に疑問府をたくさん浮かべた。

 たまに意識が途絶える事があるが、その後自分が移動しているためだ。

 理由が分からない点を、戸惑い、不気味に思う。

 こんな症状が出るのは、毎朝森に入っている時だけだった。

 普段寝ている時や、屋敷の中で頭を打った時は、普通に気絶したままだった。

 シャックスは、一度医者に診てもらった方が良いかもしれないと思った。

 そんな事を考えながら屋敷へ歩いていると、途中で服の中に何かが入っている事に気が付いた。

 それは水晶のかけらだった。

 それは、何かの拍子で割れたものを、後から整えた物だった。

 シャックスはこのような物を手に入れた覚えがないため、首を傾げる。

 しかし、水晶の形が綺麗だった事や、どことなく手放しがたく思えたため、そのまま所持する事に決めた。

 前世で見た事のある魔道具に似ていたため、それもあった。

 鬼族という角の生えた種族と交流したとき、家宝だと言って見せてもらった事があった。



 屋敷に戻ると、シャックスの父ワンドと母レーナが言い争っていた。
 白い髪に赤い目をしたワンドは、憤りと怒りの視線を向ける。
 黒い髪に青い目をしたレーナは、悲しみと不安そうな視線を向けているのが対照的だ。

 シャックスはこっそり様子を窺う。
 ワンドは子供達に何かの試験を課そうとしていた。
 しかし、レーナはまだ時期が早すぎると主張している。

「もう十分に待った、私の子供達に試練を課しても良いだろう。誕生日から一か月後だ、それ以上は伸ばせん。本来の予定なら誕生日前にやるはずだったのだぞ。分かり切った事のために、無駄な時間を費やさせるな!」
「そこをどうか。せめて、あと一年待ってくださいませんか。お願いします!」
「その間に俺を説得できるとでも? 時間の無駄だ」

 レーナはひたすら頭を下げているが、ワンドの気持ちは変わらないようだった。

 シャックスは、どうするべきか迷った。

 声をかけて、二人の仲をこじらせたくないからだ。

 両親の仲が悪いのは分かっていたが、だからといって進んで悪化させたいわけではなかった。

 ワンドは最低な父親であったが、母であるレーナにはある程度優しいため、レーナを悲しませたくなかったのだ。

 シャックスが悩んでいる内に、話が終わった。
 ワンドがその場を去っていく。
 レーナも悲しそうにしながら、どこかへ歩いていった。



 その後、シャックスはニーナとフォウを部屋に呼んで、今朝あった事を話した。
 すると、二人は何の事なのかをしっかりと知っていた。

 フォウが最初に話す。

「試練って言うのは、当主の座をかけた争いの事だろうな」

 ニーナが補足するように続けた。

「とっても厳しいのよ。本来は、誕生日の日にやるみたい。前にこの家の歴史をまとめた本で調べた事があるわ」

 二人は、試練についてシャックスに話す。
 試練は、この家の子供達が7歳になった誕生日に行うもので、当主にふさわしいかどうかを見るためのものだ。
 ふさわしくないと判断されたら、養子を迎えると言う。



 しかし、今のこの家には双子ばかり。
 だから、双子同士を競わせて、より優秀だった方を当主にするという判断らしい。
 試練が行われるなら、ニーナとアンナの出番だろうとフォウが言う。
 女性より男性を当主にしたがる事が多いが、ワンドは性別についてこだわりがないようだった。

 ワンドはこの屋敷にたまに客人を招待する事があるが、その顔の中にもちらほら女性がいた。

 女性を男性と同等に扱う事は珍しい事だが、ワンドはそういった事に対し何とも思っていない用だ。

 むしろ、女性を女性だという理由で蔑む者達を軽蔑している節がある。



 数時間後。

 レーナは自分の部屋で悩んでいた。

 ここのところ、彼女は子供達にかまってやれなかった。

 それは、試練が近づいていたせいだった。

 レーナの部屋は書物で溢れかえっている。

 家の書庫にあった本を数十冊運び込んだせいだ。

 普段は綺麗に整頓されているが、今はそんな様子は見る影もなかった。

 レーナは今までにクロニカ家で行われた試練を調べている最中だった。

「どうにかして、ニーナやフォウ、シャックスを守る方法を考えないと」

 レーナは真っ青な顔になりながら、書物を睨みつけるように呼んでいく。

 その様子は疲労こんぱいで、今にも倒れそうだった。

 ふらついた彼女は、積んであった本に手をぶつけてしまう。

 そのせいで本の一冊が床を転がった。

 レーナはその本を拾おうとして手を止める。

 彼女は、とある書物のページに目を止めた。

 それは、書庫から運び込んだ書物ではなかった。

 最初の子供達が生まれた時に書いたレーナの日記だった。

 アンナとニーナを抱いているレーナの絵が書かれていた。

 その絵には温もりがあった。

 それを描いたのはワンドだ。
  
 レーナは涙をこぼす。

 小さな水の雫が日記に落ちた。

「どうしてこんな事になってしまったのかしら。昔はあんなに幸せだったのに」

 悲哀に満ちたレーナの言葉を聞くものは誰もいなかった。

 レーナは、幼い頃から蝶よ花よと育てられた貴族令嬢だ。

 両親も彼女を溺愛し、レーナはそんな両親を大切にしていた。

 そのため、家のためになら好きでもない男と結婚する事も厭わなかった。

 しかし、出来る事なら名のある家の当主と結婚し、両親の助けになりたかった。

 レーナの実家は、ほとんど名前の広まっていない地方の家だったからだ。

 社交界に出る度に、誰と結婚するのか考えない日はなかった。

 そんなレーナが出会ったのはワンドだ。

 レーナはワンドと結婚する事になるとは思わなず、話しかけられる事などないと思っていた。

 しかし、ワンドはレーナに話しかけ、他の令嬢よりも優先して多くの時間を過ごした。

 時折、冷たい顔を見せる時もあるが、ワンドはレーナには常に丁寧な態度だったため、うまくやっていけると思っていたのだ。

 今では、ワンドと話す時間はなく、禄に顔を合わせる事もない現状だった。

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