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第4章 未踏大陸編
23 生存者
しおりを挟むエルフたちはみな酒豪だった。
酒を飲んだことのないシャックスは、口をつけるが、アルコ―ルの度数が高くて飲めなかった。
しかし舐めるようにして摂取したアルコールの効き目が強かった。
シャックス達はすぐに寄ってしまう。
ロック、ナギ、アーリー、シャックスの順番に酔いつぶれてしまった。
シャックスはその晩深く眠って、昔の事を思い出した。
家族全員が生きていた頃で、まだ全員が言葉もろくに離せなかった頃。
ワンドが、レーナを気遣っている光景があった。
二人は、屋敷のバルコニーで星を眺めている。
「体を冷やすな」
「大丈夫よ。これくらい平気」
ワンドの表情はシャックスの記憶にある通り冷徹だったが、身に纏う雰囲気が少し柔らかく感じられる。
レーナは記憶にないような穏やかな表情をワンドに向けていた。
「不思議ね、私達の間に子供なんて生まれるはずがなかったのに。お医者様だって、奇跡だっておっしゃっていたもの」
「そうだな」
子どもが生まれるはずがなかったとレーナは言う。
レーナは体質の問題があったようだが、後に医者の誤診だと判明する。
ワンドはレーナが子供を産めなくても良かったと言う。
「子供なんて作らなくても良い。お前はこの家にいるだけで。その役目は他の奴にやらせれば良い」
「そんなのだめよ。その女性達が可哀そうだわ」
レーナが子供を産めないなら、ワンドは愛人を迎える予定だったらしい。
レーナはその発言に悲しそうな顔をする。
ワンドはレーナの反応が予想外だった。
自分が怒るのではなく、他人の不幸を悲しむと言う反応が。
「お前は変わった女だな」
レーナはくすりと笑った。
時が流れてレーナは、シャックスを抱きかかえながら、一人の女性と話をする。
女性はフードで顔を隠し、表情が見えない。
手には水晶を持っていた。
彼女達が口にするのは未来についての話だった。
ワンドがニーナ、フォウ、シャックスの3人の子供達を手に掛けると知ったレーナは、激しく狼狽した。
当主を決める試練にて、森の中で子供達が血まみれで倒れるという予言だった。
さらに占い師は前世についても言及する。
レーナは前世で国の王妃だった。
そして、セブンやシャックス達の親だった。
しかし、魔王をそれと知らずに助けた事で、魔王に執着され、国が狙われる事になる。
子供達は魔王を倒したが、呪いを受けて、転生した後は、討伐の功労者であるゴローーつまりシャックスを憎むようになる。
その事実を知ったレーナはふさぎ込んだ。
ワンドは見舞いのために部屋を訪れるが、入室させない。
その頃から、夫婦仲がぎこちなくなっていく。
翌日、再び大陸を進む計画を練るシャックス達。
大陸踏破のためには、エルフたちが恐れているモンスター、大陸の主を討伐する必要があると考えた。
この大陸には、恐ろしく力のつよいドラゴンが住んでいるらしい。
気ままに破壊し、この大陸に生きる生命を弄ぶそのドラゴンは、いつか退治しなければならない存在だという。
シャックスたちが協力を申し出ると、エルフたちが武器や装備品などを分け与えてくれた。
シャックス達は他パーティーと連携をとるために、しばらく里に滞在して、周辺を探索しながら、鍛える事に決めた。
数日後。シャックス達が探索していると、ハクと出会った。
ハクは一日目の夜にモンスターに襲われたが、何とか生き残っていたのだった。
しかし逃げている間に迷子になって、今まで彷徨っていたらしい。
ハクは、小さなエルフの少女を連れていた。
その少女はシャックスを見て驚く。
「昔、あなた、会った事ある」
少女の名前は、ミザリー。
10代半ばで、他のエルフと同じく人間と喋るのが得意ではなかった。
お洒落で髪の毛のところどころを色々な色に染めており、遠目から見てもかなり目立った。
そういったお洒落は、他のエルフはしないことだという。
「魔道具、他の大陸、いった。モンスター、襲われて、助けられた。むかし、見た目、少年」
シャックスは屋敷に住んでいた時、フードをかぶった子供と出会った事を思い出す。
その時のミザリーは助けられたお礼に、シャックスに二つあった魔道具の水晶を渡したのだった。
シャックスは「これのおかげで、昔助けられた」とお礼を言う。
ミザリーはエルフ族にしては珍しく、かなり好奇心が強かった。
そのため、第一陣の探索隊にも積極的に関わっていた。
しかし、ミザリーが言葉を交わした第一陣は全滅したため、その時の事は情報として伝わらなかったのだ。
そんなミザリーはかなり深く、剣を使いこなした。
弓の扱いや飛び道具が苦手だが近接戦闘に関係する武器の扱いはかなり熟練していた。
そのため、ミザリーはその剣を使って、あの夜に襲われて逃げていたハクを守っていたのだった。
シャックスは、ハクに他のメンバーが全滅したことを伝える。
覚悟していたハクは、悲しそうな顔で「教えてくれてありがとう」といった。
あの日の夜、ハクが逃げた時にはすでに、仲間たちは助かりようのない傷を負っていたからだ。
自分の命がもはや助からないものだと悟ったノースはハクに向かって「お前だけでも生きろ」と言ったのだった。
シャックスは、あの場にあった亡骸の体を思い出す。
どれも損傷がはげしかったが、ハクと断定できるものはなかったなと思った。
ハクやミザリーと共にエルフの里へ戻るシャックス達。
ミザリーはハクを助けてから何度か里に戻っていたが、ハクは初めてだった。
そのためハクは、里に入れることに対して緊張していた。
そんなハクに対して、シャックスたちは里について色々と説明していく。
しかし、里についたシャックス達は驚愕の光景を目撃する。
ドラゴンがやってきて、エルフの里を攻撃してきたからだ。
エルフたちはドラゴンを刺激したわけではないと、後にシャックスたちに教えた。
ドラゴンがこうして自分より弱いものを攻撃するのは、遊びのようなものだという。
事実、そのときに里を攻撃していたドラゴンからは、驕り高ぶった勝者の感情がみえた。
シャックス達はエルフを守って戦う。
「けが人に近づけるな。退避させるまで、俺達が注意をそらそう」
シャックスはそう言い、襲われているものたちが逃げる時間をかせぐため、奮闘する。
しかし、ドラゴンは強かった。
エルフたちは大勢が怪我をしてしまった。
その数は、全体の三割にのぼる。
エルフたちは敗北したが、完全にやられっぱなしではなかった。
迎撃準備の整った集団の攻撃は鮮やかだった。
シャックスたちは、エルフたち団体での戦い方に圧倒された。
無防備な所を襲われたのではねれば、けが人はもっとすくなかっただろうと考えられるほどに。
シャックスは、大陸の主を倒すためには、集団の力が必要だと理解する。
クロニカ家への仕返しのために、できるだけ少人数で手柄を建てたかったが、エルフたちのために考えを変えたのだった。
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