シャックス 名家落ちこぼれの少年は未踏大陸踏破を目指す

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
25 / 38
第4章 未踏大陸編

24 リーダー

しおりを挟む
 シャックスたちは積極的に他の探索メンバーを探し、交流を取ることにした。

 そして、エルフの里を紹介し、彼らの交流の架け橋になる。

 大陸の主攻略には、人数が必要だからだ。

 しかし、第一陣の探索隊はエルフの里を見つけられなかったが、なぜか第二陣は自力で続々とエルフの里を発見している者たちもいた。

 その変化は、今回発生した嵐によるものだとのちに判明する。

 この時期、未踏大陸では、暴虐の嵐と呼ばれる季節がやってくる。

 いつもの嵐より風が強くなり、降水量も増えるため、地形が変わってしまうのだ。

 その影響で、川のいくつかが氾濫し、探索隊は普通なら通らないルートを歩く事を強いられた。

 その道の途中に、エルフの里に繋がる隠し通路が近かったため、相次いで発見されたのだと言う。

 ちなみに、エルフの里は定期的に住処を変えており、今までも別の場所で似たような事が起こり、モンスターがやってくる事があったらしい。

 怪我をしていたエルフたちの復帰がすすみ、負傷した者たちの具合が回復に向かったところで、ドラゴン討伐への案が練っていく。

 ドラゴンと出会ったり、見かけたパーティーは想像よりも多く、状況を把握している者が何人かいた。

 彼らの話によると、慢心したドラゴンだったからかろうじて、命を拾えたという。

 しかし、拾えなかったものも当然おり、なくなった探索者の数もそれなりに存在した。

 そういった話が明らかになったことで、単独での撃破は明らかに無理だというのが、第二陣の共通認識になった。

 そのため今のところは、手柄を独り占めしようとしたパーティー達はいなかった。

 自分の力に奢るサーズ達以外は。

 サーズは他の者達の意見に同意し、強調する姿勢を見せつつも、手柄を独り占めするチャンスを探していた。

 シャックスは合流してきたサーズやロレンス達を見て、警戒心を深める。




 他の探索パーティーが合流してからシャックス達は大陸の主攻略に向けて、特殊モンスターを集団で倒す事にした。

 探索を少しづつ進めながら、誰がリーダーに相応しいかも決めていくことにする。

 探索者達は意見を出し合う。

「なあ、誰がリーダーになれば良いと思う?」
「頼もしいのは当然として、それなりに強くなくちゃな」
「決断力があるのも大事だぞ」

 各探索パーティーのパーティーリーダーには様々な個性があった。
 脳筋だが、補佐が有能なもの。
 知略に長けているが、人望がやや心もとないもの。
 何も考えずに、圧倒的な実力でねじ伏せるカリスマのあるものなどなど。

「うちのリーダーがよい。一番頼もしいぞ!」
「いやいや、うちだ。強いし筋肉あるし」
「筋肉は関係ないだろ。それより頭だ。かしこくないとな」

 各自リーダーに求めるものが違うため、議論は紛糾してしまう。

 しかしそれでも、戦闘時の切り替えはしっかりできていた。

 モンスターを前にした彼らは、思考を切り替えて敵を倒していく。





 集団戦の訓練は順調に進んでいくが、ある時分け前で諍いが起こってしまう。
 諍いはサーズが起こしたトラブルだった。

「俺達が一番活躍した。なぜ対して働きもしない人間にも分け前を渡さなければならないんだ」

 アリーナでの試験の時は猫をかぶっていたが、彼の猫の皮はだいたい剥がれ落ちていた。

 サーズの言葉にロレンスが同調する。

「そうだ! 自分の力量考えろ!」

 モンスターの貴重な素材は、活躍した者が先に得るべきだと主張する。
 シャックスはある意味、それでも良いと思っているが、他の者達が苛立ち始める。

「いい加減にしろよ。目立たない連中だってしっかり仕事してるんだぞ」
「自分勝手なことをいうな。それじゃ、前に出ないやつがいつまでたっても、何も得られないじゃないか」

 分裂させないためにどうすれば良いのか分からないシャックス。
 やったのは腹を割る事だった。

「言い争いはやめるべきだ。ここまで大勢で行動することは今までなかっただろうし、意見が割れるのは仕方がない。それぞれ言いたいことが山程あるわけだから、今日は探索はやめにして里で美味しいものを食べたり、飲んだりして話をしよう」

 宴を餌にしてアルコールなどの力も借り、彼らにじっくりコミュニケーションを取るように進めた。

 その日の夜、探索メンバーたちはエルフの里で夜通り思いを打ち明けあった。

 どこの出身であるかや、どんな目的があるのかを、語れることはすべて語れるようにシャックスが促したのだ。

 互いに本音を出し合い、良いことも悪いことも指摘し合う。

 それは、セブンがやったことをまねた結果だった。
 セブンの下で世話になっていた時、シャックスが聞いた話だった。

 一人で行動しがちだったセブンだが、唯一集団とうまく行った時に、腹を割って話をしたのだといった。

 そのおかげで即席のパーティーは、それ以降分裂せずにすむようになった。

 サーズやロレンスたちは不満そうだったが、シャックスから見て、不気味なほど静かに場を静観していたのだった。

 この事がきっかけで、シャックスが臨時リーダに抜擢される。
 驚いて他の人間に譲ろうとするが、9割がシャックスがリーダーになるのが良いと言った。
 仲間達もこれに同意する。
 サーズたちだけはシャックスを気にくわず、睨みつけていた。





 とある日の夜中。

 ハクはエルフの里にある祠を掃除していた。

 ミザリーはあくびをしながら、傍でその様子を見つめる。

 ミザリーはハクに対して「変わってる、どうして?」と言った。

 ハクは掃除をしながら続けた。

「お世話になっている所の偉い人には礼を尽くしなさいって、両親から言われているからね」

 その祠は誰も見向きもしなくなったものだった。

 エルフ達も忘れていたものだ。

 ミザリーは不思議そうに見つめながら、ハクが掃除する様を見つめる。

「神様とか、何か強い物はこの世界にいると思うんだよね。きっとその人たちが運命を操っているんだよ。だからいざという時のためにご機嫌をとっておかなくちゃ」

 ミザリーは小首をかしげながら、雑談を続ける。

「人間、そういうの、考えない、思ってた。珍しい」
「そうかもね。僕が特殊なんだと思う。あ、あと何だかこの祠には親近感を感じちゃってさ。気に掛けなきゃって思ったんだ。変かもしれないけど」
「うん、変」

 雑談をする二人が視線をそらした時、祠がほんの少し光った。

 眠くなったミザリーとハクはその場を別れ、夜は更けていった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...