シャックス 名家落ちこぼれの少年は未踏大陸踏破を目指す

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
30 / 38
第5章 その後編

29 再会

しおりを挟む
 数日が経過。
 祭りは数日にわたって開催されるため、今も町は賑わっていた。

 そんな中、その町の祭りに参加するために、国の要人がやってくるという情報がシャックス達に伝わってくる。

 その人物は、名前のあるもので、引退したかつての騎士らしい。
 第一回の探検隊で生き残った人間でもあるという。

 ヒルズという名前のその男は、現役騎士の最中に探索に生き、その後騎士を引退して、政治家になったという異色の経歴を持つ60代の男性だ。

 街にやってきた彼と顔を会わせたシャックス達は、想像より逞しい見た目に驚いた。

 出会ったのは街の中の屋台で、ロックが串焼きを頬張っていた時だった。

「なるほど君たちが噂の探索隊の、そして生き残った……」

 ヒルズはシャックスに興味津々だったが、突っ込んだ事は効かなかった。

 背景で、未だ口を動かしているロックにナギが注意をしているのを見ながら、シャックスはヒルズを観察する。

 確かに戦いの経験のある人間特有の身のこなしをするなと考える。

 人混みの中でも、しっかりとした足並みで歩いてきた彼は、シャックス達とまた話をしたいといった。

 遠ざかっていくヒルズを見ながらアーリーが「そういえば」と呟いた。

「他の探索者から聞いたことがあるんだけど」

 それは過去のヒルズに関しての情報だ。

 第一陣探索参加者である彼はしかし、表向きには探索隊のメンバーにはなっていない事になっている。
 それは、荷物に紛れて密航していたからだった。

 未踏大陸にたどり着いた後は、策を弄して生き延びる。

 魔道具によってモンスターに変身する事ができた彼は、未踏地域を冒険し、探索を生き残り、いかだを作って帰って来たらしい。

 そんな彼はミザリー達とは出会わなかったため、エルフたちの情報は国には伝わらなかった。

 彼の経歴を聞いたシャックス達は驚いて、口を開けるしかなかった。

 護衛要らないかもしれない、とシャックスは思ったが、仲間たちも同じように考えたらしくロックが「俺達いるか?」とつぶやいた。




 祭りのさなか、街の治安維持活動の一端を担っているらしいヒルズとはそれからも、何度か顔を合わせる事があった。

 貴族社会でいきる者らしい、しっかりとした服装をしていたが、実際に会って話してみると、ヒルズは話しやすい人間だった。

 奢り高ぶる面もなく、貴族ではないアリーやロックにも親しく接した。

 ヒルズは「若い頃不良貴族として有名でよく町で遊んでいたためだろうね」と、言う。

 彼がそうしていられたのは長男が家を継ぐ予定だったからだ。

 三男であった彼は、長男になにかあったとしても、次男がいるからと言われ、気楽に生きてきた。

 しかし、長男は町の暴漢に襲われ死亡し、次男は病でこの世を去った。

 その結果、三男である彼が責任ある立場にならざるを得なかったという。

「こんなに跡を継ぐことが大変だとは思わなかった。兄たちは苦労していたんだろうな」

 死者と話せるなら、謝りたいとヒルズは後悔の言葉をこぼした。

 家族を失った事のある点で後悔を残しているシャックスには、彼の気持ちが少しわかる気がした。



 そんなシャックス達は、これまでに集めた情報で裏組織ダークネスの狙いに見当をつける。

 アンナは表ではやっていけないから、裏社会で生きていくつもりだった。

 それで、組織の者達と共に、だんだんと難しい仕事をこなしているところだったのだ。

 アンナには、ある意味向いているかもしれないと、シャックスは思った。

 アンナは人を殺めたりするのに抵抗がなく、罪を罪だと思わないからだ。

 そのシャックスの気持ちを示す通り、アンナの順応は順調で、裏社会では評価が上がっているという。

 同時期にワンドはその話を聞いて、頭を痛める事になっているが、シャックス達には知らない事だった。




 シャックスとナギが他の仲間に礼儀を教えて、要人の騎士のホテルへ再度訪問する。

「緊張するぜ。礼儀とか常識とか今まで考えた事なかったからな、あんまり」

 一番の問題児ロックの成績は少々怪しかったが、ヒルズならば多少のトラブルがあっても目くじらを立てたりはしないだとうと、シャックスは考えていた。

 ホテルに向かった後、要人である政治家ヒルズに挨拶をして、護衛させてもらう。

 話はとんとん拍子に進み、障害などはなかった。

「それにしても、短期間でよく礼儀作法を密につけたね。特にロックくんは苦手そうに見えたけど」
「えっと、ナギっていうスパルタ教官がうるさくて」
「はは、熱心に何かを教えてくれるのは良い仲間の証拠だよ、大事にしなさい」

 ダークネスの狙いはヒルズにある。

 企みを阻止するためには、彼を守らなければならない。

 長期戦も見込んで、シャックス達は即席の勉強会を開いていた。

 それは貴族社会のマナーや知識などをつめっこむためだ。

 シャックスとナギは、貴族のマナーがこんな所で役に立つとはな、と言いあった。

 そんな努力が実を結んだのか、それとも祭りの空気で細かい事に目くじらを立てるものがいなかったのか、シャックス達は貴族の要人の護衛として、ミスなく過ごした。

 そんな中、状況が動く。

 日付が変わる頃合い。

 部屋の前で見張りをしていたシャックスとアーリーが足音と物音に気付いた。

 夜中に襲撃者がきたのだった。

 ヒルズが止まっている建物の、どこかの階の窓ガラスが割られいくつかの足音が接近してくる。

 守りをかためて、ヒルズの部屋に入ったシャックスとアーリー。

 ややって、その部屋にたどり着いたのは一人の人物。

「まさか、落ちこぼれのあんたと戦う機会が訪れるなんてね」

 シャックスは、再会したアンナと戦う。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...