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〇03 雪女の住む家 03.03

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 しんしんとした寒さの中、静かに雪が降り積もる。
 風のない日だった。
 人里離れた山の中、小さな家に一人の女が住んでいた。

 その女は、遠くから雪を踏みしめる音が近づいてくるのを感じた。
 ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ。
 規則正しく刻まれる足音。

 それが家の前で止まる。
 女は、家の扉を開けた。

 するとそこには、さむさに身を震わせる男がいた。
 吐く息が白くなり、消えていく。
 そんな中、白銀の世界を歩くのは辛かっただろう。

 そう思い、女は楽にしてやろうと家の中へと招き入れた。

 男は、寒さから解放されたことを喜ぶが、女の生活を案じ、すぐに家を出ようとした。

 このような場所で一人暮らし、なにかと大変だろう、と述べる。

 しかし女は首をふった。

 大変などではない。

 掃除は、たまに家にやってくる旅人を一晩泊めるかわりにやってもらう。

 洗濯は、その男から着る物をわけてもらう。

 料理は、冷たくしたものを胃に入れるだけなので手順は簡単だ。

 胸騒ぎを覚えた男は女の身なりを見た。

 女は男物の服を着ている。

 その奇妙さに目を見張った男を、次に瞬間凍てついた風が襲った。

 家の中に吹く雪風が、瞬く間に男を凍らせていった。

 数分後、男は寒さから解放されて、楽になった。

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