古い方・恋愛ジャンル(ほぼ女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
24 / 150

〇24 今さらだから「愛してる」なんて言わないで。貴方は私を嫌ってこちらを捨てたじゃないですか

しおりを挟む



 まぶしい光の下の中。
 キラキラとした家具。
 この場所に踏み込んできた男性がいた。

 元婚約者が今日も私の所を訪ねて「愛してる」と言ってくる。
 昨日も一昨日も「愛している」と言いにきたから、明日も明後日もきっと私の所に来て「愛している」と言うのだろう。

 私と彼は婚約を交わした仲だった。
 私は将来、彼の家の一員となり、彼の子供をうみ、家庭を築くのだと思っていた。

 私は少し、不器用で自分の意思を伝えるのが得意ではないけれど、彼とは全てわかり合えていると思っていたのに。

 けれど、彼は私を捨てたのだ。
 交わした婚約を破棄した。
 そして、思ってもいないような言葉を吐くという、ひどい仕打ちをしてくる。

 彼は内心では、私の事を嫌いだったようだ。

 そんな彼は、どういった思考をしているのか、私の元に通いながら「愛している」と言い続けている。

 私はもう彼の事など「愛していない」のに、おかしいったらないわ。

 世間では私は、死んだことになっているのでしょうね。

 私は彼に用意された美しい家具に囲まれながら、閉ざされた牢屋の中で、今日も一人寂しく時間を過ごしていた。





 俺は今日も元婚約者だった、彼女の元へ赴く。

 俺が用意した部屋の内装もあって、彼女の美貌は輝くような美しさをはなっていた。

 彼女を眺めてうっとりとした俺は、彼女を保護している牢屋の前まで言って、「愛している」と囁いた。

 今はそっけない彼女でも、そうしている間にいつかは俺の事を好きになってくれるに違いない。

 不自由を強いてしまっている事を怒っているだけのはずなのだから。

 全てはそう、時間が解決していくはずだ。

 だって俺はこうするために、わざわざ彼女と交わしていた婚約を破棄したのだから。

 美しい彼女を外の世界で堂々と晒しておくなんてできなかったから、だからどこからも邪魔者が入らないように隠しておこうと思ったのだ。

 そう思った俺は、彼女に興味がなくなったふりをした。

 だって嫌っている相手と一緒になりたいなんて考える人はいないだろう。

 進んで関わりたがる人間なんていないだろう。

 彼女を牢屋に保護している俺に、疑いがかかる事はなくなるはずだ。

 そして自分の屋敷に、婚約者にふさわしい綺麗で明るい牢屋を作った俺は、彼女を行方不明にして保護した。

 ああでも、「嫌いだから殺したんだろう」と疑われるのは面倒だ。

 だから、そう思われないために常日頃から、嫌っている相手にでも礼儀正しく接しなければらなかった。

 おかげでイライラしっぱなしだ。

 どんな相手にも礼儀正しく接するというのはなかなか難しかしい。

 だから全然悪くないのに、へそを曲げたままの彼女にやつあたりしてしまいそうだ。

 でも、俺はやりとげた。

 ここまでくれば大丈夫だろう。

 彼女の捜索はもう打ち切られた。

 後は、彼女はこの生活に満足して、俺の愛を受けいてれくれるようになるまで待つだけだ。

「愛してる」

 囁く俺に彼女は顔をしかめて言った。

「愛していないわ」

 その時、ちょうど寿命がきたのか、美しい牢屋を煌々と照らしていた電球が切れた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...