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〇24 今さらだから「愛してる」なんて言わないで。貴方は私を嫌ってこちらを捨てたじゃないですか
しおりを挟むまぶしい光の下の中。
キラキラとした家具。
この場所に踏み込んできた男性がいた。
元婚約者が今日も私の所を訪ねて「愛してる」と言ってくる。
昨日も一昨日も「愛している」と言いにきたから、明日も明後日もきっと私の所に来て「愛している」と言うのだろう。
私と彼は婚約を交わした仲だった。
私は将来、彼の家の一員となり、彼の子供をうみ、家庭を築くのだと思っていた。
私は少し、不器用で自分の意思を伝えるのが得意ではないけれど、彼とは全てわかり合えていると思っていたのに。
けれど、彼は私を捨てたのだ。
交わした婚約を破棄した。
そして、思ってもいないような言葉を吐くという、ひどい仕打ちをしてくる。
彼は内心では、私の事を嫌いだったようだ。
そんな彼は、どういった思考をしているのか、私の元に通いながら「愛している」と言い続けている。
私はもう彼の事など「愛していない」のに、おかしいったらないわ。
世間では私は、死んだことになっているのでしょうね。
私は彼に用意された美しい家具に囲まれながら、閉ざされた牢屋の中で、今日も一人寂しく時間を過ごしていた。
俺は今日も元婚約者だった、彼女の元へ赴く。
俺が用意した部屋の内装もあって、彼女の美貌は輝くような美しさをはなっていた。
彼女を眺めてうっとりとした俺は、彼女を保護している牢屋の前まで言って、「愛している」と囁いた。
今はそっけない彼女でも、そうしている間にいつかは俺の事を好きになってくれるに違いない。
不自由を強いてしまっている事を怒っているだけのはずなのだから。
全てはそう、時間が解決していくはずだ。
だって俺はこうするために、わざわざ彼女と交わしていた婚約を破棄したのだから。
美しい彼女を外の世界で堂々と晒しておくなんてできなかったから、だからどこからも邪魔者が入らないように隠しておこうと思ったのだ。
そう思った俺は、彼女に興味がなくなったふりをした。
だって嫌っている相手と一緒になりたいなんて考える人はいないだろう。
進んで関わりたがる人間なんていないだろう。
彼女を牢屋に保護している俺に、疑いがかかる事はなくなるはずだ。
そして自分の屋敷に、婚約者にふさわしい綺麗で明るい牢屋を作った俺は、彼女を行方不明にして保護した。
ああでも、「嫌いだから殺したんだろう」と疑われるのは面倒だ。
だから、そう思われないために常日頃から、嫌っている相手にでも礼儀正しく接しなければらなかった。
おかげでイライラしっぱなしだ。
どんな相手にも礼儀正しく接するというのはなかなか難しかしい。
だから全然悪くないのに、へそを曲げたままの彼女にやつあたりしてしまいそうだ。
でも、俺はやりとげた。
ここまでくれば大丈夫だろう。
彼女の捜索はもう打ち切られた。
後は、彼女はこの生活に満足して、俺の愛を受けいてれくれるようになるまで待つだけだ。
「愛してる」
囁く俺に彼女は顔をしかめて言った。
「愛していないわ」
その時、ちょうど寿命がきたのか、美しい牢屋を煌々と照らしていた電球が切れた。
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