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〇66 世界で一番愛おしくて優しくて、愛してる。素直になれない婚約者からもらった「婚約破棄」の言葉
しおりを挟むスマホでゲームをしていると、着信音。
私はお金持ち学校に通っている。
そこで、一緒の学科に在籍している婚約者がいるのだが、彼はよくメールで連絡をいれてくる。
手紙とか文字にすると、気持ちが伝わるからって、そういうのが好きみたいだ。
メールを確かめてみると、予想通りの相手だった。
――
こんど一緒に、出掛けようか。
んん…、公園なんかどうかな。
やっぱり、海の方が良い?
くーっ、早く休日こないかな。
はっきり、授業の予定が決まればいいのにな
きたいさせといて、休日なしなんて事にはしないでほしいけど。
だって、期待を上げた分だけ駄目になった時は落ち込むじゃん。
――
この間台風で休校になったから、その穴埋めがどこになるのか心配なのだろう。
他愛ないメールの内容だった。
彼とはよくケンカするけれど、こまめに連絡を取ってくれるこういう所は嫌いではない。
言い合いするといっても、言った、言わないとかいう細かい事ばかりだし。気にする事じゃないし。
一時期は、彼が伝えたい事を私が上手くくみとれていないのかな、なんて心配したけれど。
友達に「いや、あれは分かんないでしょ」と言われたので、今では細かい事は気にしなくなっている。
いくら、メールとか手紙が好きだからって、そういう知識がないのに初見で「さぬき言葉」とか「たぬき言葉」とかの謎解きをさせられる方がきつい。
この間なんて、キーボードを使った暗号を送られてきたから、謎解き無理過ぎて友達と笑いあったな。
パソコンのキーにはローマ字とひらがなが一緒に記されてるから、そこに気づきさえすれば楽勝だって婚約者には言われたけど、素人にはそれがまず分からないんだって。
スマホに着信音。
またメールだ。
ーー
おかしいな。
れんしゅう頑張ったのに、ピアノがうまく弾けない。
のんびりしてたら、来週のコンクールが来てしまうぞ。
しんゆうにも、招待状送っておいたのに。笑われてしまう。
ゆうじんとして恥ずかしい、なんて言われたらショックだ。でも。
みんなの前で弾くとなると、いつも緊張してしまうんだよな
ばかにされるんじゃないか。へたくそって言われるんじゃないかって。
かんがえすぎかな?
にがてなんだよな。前向きに考えるのって
すむーずに精神の安定を取り戻す方法とかって、どこかにないかな。
るいは友を呼ぶというし、博識な先輩に聞いてみるのが良いかも。
やつは今どこにいるんだろうか。暇かな。
つまらない時は、逆に面白い事話せと言われるから、困ったものだけど。
はぁ、もうすぐ家にピアノの先生がくる。
きんちょうしてきた。練習なのに。
らいしゅうになるまで、俺の胃もつかな。
いい結果がでるのを流れ星にでも願ってみるとか
だいじょうぶだっていう、確証がほしいよ
!
ーー
ん?
やけに長文だな。
しかも、けっこうな部分ひらがなだし。
漢字変換の詩忘れ?
今退屈なのかな。
不通に返信していた私は、メールの文面に記されていたヒントに気が付いた。
あっ。
これ、謎解きだ。
むかっときた私は、心の狭い婚約者に返信。
――
こんどのコンクール、応援してるよ。
こんな時の為に、普段から一生懸命練習してきたんでしょ?
ろいやるなんちゃらとかいう曲、よく聞かせてくれたじゃん。
がんばって弾いたから、あれ結構上手だったよ。
せめて、応援できるように、時間前に控室におしかけるから。
まずい、失敗する! とか考えて。逃げ出さないように!
いっちゃんならできる!
――
なんだか私達って、なんだかとてつもなく馬鹿な事してるような気がする。
思い出すのは子供の頃の出来事。
『俺が今お前にいだいているかんじょうはこうだ! 焼いてないすき焼きってなーんだ』
当時はまだ、ただの友人だったいっちゃんが、こんななぞもわかんないのかって怒っちゃって。
それで、私が意地はって、三日くらい口きかなかったんだよね。
お嫁さんごっこしてたのに、なぜか私が婚約者してた時だっけ。
会う事に装飾品とか花束とかプレゼントされてたけど、いっちゃんの気持ちには気づかなかったんだ。ごめん。
『くそーっ。何でとけない! おまえみたいな、うすぎたないしりがるおんなは、こんやくはきだ。えいっ、びしばしっ』
『うぇーん、いっちゃんがいじめるよー、いっちゃんなんかだいっきらいっ』
あの頃のいっちゃんが出したなぞは、さすがにもう解ける。
焼いてない。
焼きがない。
すき焼きから焼きをとると、すき。
つまりプロポーズされたわけだ。
うん。
いっちゃんって素直じゃない子なんだ。
私はなんとなくスマホを開いて、今思いついた素人のなぞなぞを打ち込んだ。
――
友達と趣味を笑っちゃってごめんね!
こんど好きなお菓子おごるから。
まぬき言葉です。
まいっまちゃん すきま
――
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