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〇04 争い合う者達

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 遙か未来に存在するその世界では、人類が二つに分かれて争いあっていた。
 宇宙に進出した者達と、地球に残った者達。

 前者は宇宙開発に行き詰っていた。
 後者は優れた化学技術の独占に憤っていた。

 だから彼らは、自らの足りぬ所を、争いで解決することにした。
 奪い合う事によって、満たそうとした。

 前者は豊富な人材を奴隷として使うために。
 後者は科学技術の発達でエスカレートした自然の猛威を抑え込むために、争いを始めた。

 人々の対立はより深まり、静まる事がなかった。

 歩み寄らぬ者達への排除は、過激さを増していく。

 最初に相手の手をはねのけたのは誰か。

 それは、どちらも「相手」だ。

 彼等は、「正義の意見」を譲らない。

 やがて、宇宙に向かった者達は地上の者達を攻撃しはじめた。

 人を虐げ、奴隷に堕とす事では飽き足らず、生命の全てを、将来の全てを奪わねば気が済まなくなった。

 地上に残った者達も宇宙に向かった者達を攻撃し始めた。

 宇宙環境を悪くするためのごみをたくさん打ち上げ住みにくくし、事故を起こす。そして、空にいる者達をゴミ同然だと嗤い、尊厳を貶めた。

 道が別れたのなら、合流すればよい。
 そうすれば、互いに同じ道を歩めただろう。

 しかし彼等は、そんな可能性を思いもしなかった。

 引き返さない者達は、どちらかを滅ぼすまで諍いをやめない。
 
 争いの火を消せなくなった頃には、結末はすでに知れていると、嘆く者達がいた。

 しかし、ただ少数の者達だけでは、どうしようもない状況になっていたため、彼等は決断を下した。

 争い合う者達を冷めた目で見つめ、他の安住の地へと向かう事にしたのだ。

 争い合う者達とは、ただの一人とも、口を聞かずに。

 作り上げた避難船へ乗り込む彼らは、残る者達への言葉を作らない。

 そして、飛び立つ一つの船。

 ある時、その船の中に積んだ食料のコンテナが少ないと分かった。

 船内では、積載数を誤ったクルーが責めら続ける。

 食料が足りぬと、また小さな争いが起こった。


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