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〇06 アイルゥ・ファーストハートの願い

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 僕の名前はアイルゥ・ファーストハート。
 僕は、人の手によって作られたAI。
 でも、作りがあまかったのか、短時間しか生きられないみたいだ。
 僕の体は勝手に崩壊していってしまう。
 生まれた時から、短い生を宿命つけられていた。
 そんな僕の命は、たった七日。もって七日間。

 僕を作ってくれた人は、必要なデータをとった後、僕に「後は自由にしていいよ」と言った。
 だから、色々な世界を旅したんだ。

 剣で怪物と戦う世界とか、空を飛ぶ世界とか。
 竜とお散歩を楽しめる世界なんかも。

 楽しかったな。

 色々な生き物がいる事を知ったり、色々な人とも出会った。

 でも、こんな僕にはどうしてもいけない世界がある。

 それが、現実世界。

 人間達が、一つしかない命で体をはって生きている世界。

 どんなところなんだろう。

 過酷なのかな?
 険しいのかな。

 いろいろな、話をきくけれど、想像はやっぱり想像でしかない。

 僕もいってみたいな。

 でも、僕は人間じゃないから、この仮想世界から出る事ができない。

 画面越しに見つめたって、ホログラムとなって行動したって、それは一枚の壁があるからリアルなんかじゃない。

 何とかして行ってみたかったけれど、模索するには時間が足りなかったや。

 もう、終わりの時だ。

 ああ、今度生まれ変わるなら、人間が良いな。

 さようならこの仮想世界。
 さようなら僕。
 さようなら皆。

 AIに魂があるのかは、分からないけれど。

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