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〇14 ひとりぼっちの患者
しおりを挟む大きくて広い病院、最先端医療開発・栄誉最上位未来科学病院。
一つしかない病院の中の病院。
病院の王様みたいなところ。
けれどそこに、患者は一人。
僕だけだから、ひとりぼっち。
でもしょうがないよ。
僕の病は、近くにいる人間にうつすと死んじゃうっていう大変な病気なんだから。
そんな人、誰とも会わないところに、おいておくしかないよね。
お薬は、えんかくそうさとかいうので、天井から毎日散布される。
空気中にたくさんの細かいお薬がばらまかれるらしい。
目には見えないけど、つーんとしたにおいがするから、散布されてるときはわかる。
食べ物は、お部屋にある穴から、ベルトに乗せられて運ばれてくる。
食べ終わったのもベルトに乗せれば大丈夫。
トイレとかもお風呂も、ここにはないけど別の部屋に用意されてる。人のいない部屋に。
普通はここまでしてもらえないけど、僕は特別な例だから豪華な治療を受けられるんだって。
難しいことはわからないけど、特別なことには感謝しなくちゃ。
早く病気をなおして、ほかの人とお話したり、遊びたいな。
長い間人を見てないから、お話のしかた、どういう風だったかな。
退院した時うまくしゃべれるか心配だよ。
たまに差し入れのおもちゃで、ペットのロボットとか送られてくるけど、生き物じゃないし、そもそも人間じゃないから練習にはならないんだよね。
あっ、お医者さんがやってきた。
久しぶりだな。
こんにちは。今回もよろしくお願いします。
あれ、新しい人だ。
えっ、どうして僕を見て驚くんだろう。
「こんな患者とは聞いてない」って、走っていっちゃう。
すぐに真っ青になってどこかへ行っちゃった。
どうしたんですか?
って言おうとしたのに、「ぐ、グルルルル」としか言えなくなっちゃった。
おかしいなあ。
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