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〇15 心が折れた人
しおりを挟む技術が発達した少し先の未来。
ある日突然、一夜にして、世界から人々が消え去った。
原因はなにか?
人は本当に一人もいないのか。
その人物は、答えを求めて歩き続けていた。
しかし、足を向けた先に望んだそれは、影も形もない。
行く当てもなく彷徨う。
ゴールがどこか分からないまま。
延々と足を動かして、モノクロになって世界を歩いていく。
そこは人がいなくなった世界。
孤独に生きる事を強いられた世界。
唯一の人であるその人物は、自分以外の誰かを探して、世界中を歩き続けた。
生きている内は訪れなかったであろう様々な場所へ、足を向ける。
有名な観光地、ライフラインの整っていない辺境、未開に等しい土地、目もくらむようなビルが立ち並ぶ大都市。
しかし、どこに行っても人はいなかった。
だからそのうちに、足を止めてしまう。
心が挫けて、諦めてしまう。
もはや自分以外の人間は、この世界にいないのだと。
そう結論付けてしまう。
一夜にして、自分以外の者達が消え去った世界。
その理由は分からないまま。
自分が人間の屑だったからそうなったのだと、ただ自虐の精神にのまれながら。
家庭をかえりみず、友人の言葉に耳をかさずに、仕事にばかりかまけていたのだからそうなったのだと、思いすらした。
自分一人が、不思議な世界へ移動したのなら。
救いがあると。
その人物はやがて、足を止める。
思い込みの理由は、しょせん思い込み。本当の理由は分からない。
その人物が分からない所で、何かがあったのかもしれない。
けれど、その人物は原因を自分の思う様に決める事にした。
その方が楽だから。
心が折れた人物は、誰もいない世界で一人きりで生き続ける。
歩き続ければ誰かと出会えたかもしれないと思いつつも。
探し続ければその原因が分かったかもしれないと思いつつも。
その人物は科学者だった。
世界を救う研究をするために、様々な研究をしていた。
しかし、人が出す答えには限界があると思い、ある日機械に答えを求めた。
機械は、その人物は知らぬ間に答えを出して、そしてそれを実行した。
最大出力で行ったそれは、世界各地から瞬く間に人間だけを消し去って、力尽きた。
真相を語るものは何もない。
だから、その人物は、何も分からない。
結局は、歩き続けていても、何も。
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