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透けてるブランディシュカ

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〇16 仮想世界ダークシャドウと少年少女

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 あるところに、ゲーム好きの少年がいた。

 その少年は、ダークシャドウというオンラインゲームをやっている。

 その世界は、暗闇に包まれていて、よく見えない。

 暗視メガネや魔法のランタンを持っていなければ、満足に歩けないような世界だ。

 だから時間に余裕のある人間しか遊べない。

 かなり手間がかかるゲームだったが、それでも一定の人気を得ていた。





 仮想世界ダークシャドウでは、

 探索して新しいエリアを発見した者は、自分でその場所に名前をつけることができた。

 だから、自分の足跡を仮想世界に残したいという者達に評価されていた。

 それに加えて、一人でも十分に冒険できる難易度設定であるため、自分のペースで遊びたい者達に人気だった。

 とある少年も、そんな者達の中の一人だ。

 小学生だったが、友達はいなくて、両親は共働き。

 学校から帰ってきた後、時間を見て余していた。

 そんな少年に、ダークシャドウというゲームはぴったりだった。





 その日もいつものように、少年はダークシャドウの世界へ降り立つ。

 魔法のランタンを持って冒険し、いくつかのエリアに名前をつけていった。

 そんな中、少年はトラブルにあう。

 ダークシャドウに出現するモンスター達は、みな暗闇で生きていくために、独自の進化を遂げている。

 現実世界では見ないような生き物達は、攻略に攻撃力を必要としないが、癖のある戦い方が必要な者ばかりだった。

 少年の目の前に出現したダークワームもそうだった。

 深い闇色をまとった巨大なミミズのようなモンスター。

 そのダークワームは、光を点滅させながら攻撃する事によって、初めてダメージが通る。

 だから、戦いが始まったらすぐに魔法のランタンを操作して、自動点滅モードにしなければならなかった。

 手動でも点滅させる事はできるが、一人で遊んでいる少年にとって、戦いの最中にいちいちオンオフを切り替えるのは難しい事だった。





 ダークワームと接触したとき、戦闘に入る前のチャンスをふいにしてしまった。

 ランタンのモードを切り替えることを忘れた少年は戦いの中で焦っていた。

 このままでは、いつまでたってもダメージを与えられないからだ。

 いったん逃げてから、態勢を整えるべき。

 そう判断した少年だったが、そこに新たなプレイヤーがやってきた。

 そのプレイヤーは、少年の状況をすぐに察して、ランタンを点滅させた。

 するとダークワームに攻撃が通るようになって、少年がダメージを与えられるようになった。

 攻略手段を手にした後は、スムーズに戦闘が行われた。

 数分でモンスターを倒すことができた少年は、そのプレイヤーの少女にお礼を言う。

 それだけでなく、もっと何かしたいと思った少年は、少女が初心者である事を聞いて、閃いた。

 自分がこの世界のこと見ついていろいろと教えてあげようと。





 その日から少年は知り合った少女と共に冒険をする事が多くなった。

 ダークシャドウは一人でも遊ぶことは可能だが、複数人で遊ぶことができないわけではない。

 新しいエリアを見つけた時や、モンスターを倒した時の戦利品でもめる可能性はあるものの、十分に二人以上でも楽しめた。

 少年は少女にダークシャドウでの事を色々と教えていった。

 モンスターの倒し方や、ダンジョンの進み方、未知のエリアの探し方。

 一つ一つ知っていく少女はとても楽しそうに冒険していた。





 一か月程経ったある時、少年は前に教えた事を二度も話している事に気がついた。

 少年は人より物覚えが悪かったので、そういう事がよくあった。

 大抵は人から指摘されて気がつくのだが、

 しかし、この日はたまたま自分で思い至り、気づいた。

 少年は不思議に思う。

 友達になった少女は、少年よりもはるかに記憶力がいい。

 なのに、目の前の少女は初めて聞く話を耳にするかのようだった。

 疑問を抱えながら冒険を続ける少年は、またしても別の事に気がついた。

 数日前に、少女が一人でモンスターと戦っているのを偶然見かけた事がある。

 その時の少女の手際はまるで、熟練者のように手慣れていた。

 続いて、少年は思い出す。

 初めて出会った時のことを。

 初心者のはずの少女がレアモンスターである、ダークワームの倒し方を知っていた事を。






 だから、少年は気になったことを少女に尋ねた。

 遠回しな言い方は得意ではなかったため、素直ににまっすぐ疑問をぶつけた。

 すると少女は泣きながら謝った。

 現実では友達がいなかったから、仮想世界では嘘をついてしまったということを。

 少女は理由を話した後、ランタンを落として走り去っていった。

 少年はその姿を探し始める。

 光のない世界で、魔法道具なしに行動するのは危険だったからだ。

 もう見えなくなってしまった少女との縁をこれきりにしたくない、という理由も大きかった。





 少女が走り去った方向を探しつづける少年。

 真っ暗な森の中はいつもより数倍不気味に思えた。

 深い場所まで向かっていった少年はとうとう未知のエリアまで踏み入ってしまう。

 未知のエリアの発見は嬉しい事だったが、知らないモンスターなどもいるため手放しには喜べない。

 少年は早く少女を見つけようと焦った。

 しばらく歩いた少年は、小さなマッチの火が激しく動いているのを見つけた。

 それは探していた少女のものだった。

 よく見ると少女は、森の主のような大きなオオカミに追いかけられていた。

 初めて見るモンスターで、対策もないもない相手だった。

 けれど少年は迷いなく飛び込んで、少女を助けようとした。

 戦いを挑んで、モンスターの気を引く事にする。

 その後は、2人で挟み撃ちにし、時間をかけながらもなんとか倒した。

 敵のモンスター、フォレストウルフは本当に森の主だったようで、レアな戦利品を大量に入れる事ができた。

 落ち着いた頃、少女はどうして助けに来たのかと尋ねた。

 少年は、正直に自分の気持ちを話していく。

 自分も友達がいないことや、

 嘘をつかれても怒っていないこと。

 また少女と友達になりたいという事を。

 その言葉を聞いた少女は、ありがとうと言い笑って、新しいエリアにつける名前を提案してきた。

 良い名前だと思ったので、少年はその名前をそのままつけることにした。




 仮想世界ダークシャドウで新しい友達を得たそのエリアに、フレンドフォレストと。

 それからも少年と少女は一緒にその世界で冒険を続けていった。

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