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〇07 何でも捨てる傲慢な姫と捨てられた憎しみの騎士

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 使い物にならなくなったら、また新しい物を手に入れればいい。

 とある国のとあるお姫様。

 色々なものを欲しがる強欲な姫は、そういって様々な物を捨ててきました。

 玩具や宝石、洋服などもそう。

 そして、人間も。

 自らを守る存在の騎士も。

 常に傍にいる騎士に飽きた姫は、次々と新しい顔にかえていきました。

 姫に、飽きられた騎士の末路は非情です。

 歩いている時に顔もみたくない、という姫の言葉で行く末が決まってしまうのですから。

 彼らは、ゴミを捨てるかの陽に、職場から追い出されて仕事を失う事になりました。
 
 しかも、同じ目に遭いたくないと嫌われて、誰も目を向けてはくれない有り様。

 けれど、やられるばかりではありません。

 捨てられた騎士達は結託し、姫に仕返しする事にしましたた。

 転機の良い日にお散歩をするため、外へ出てきた姫。
 そんな姫を攫った騎士達は、彼女を暗い牢獄に閉じ込めます。

 ただただ閉じ込めます。

 興味をなくされた人間の末路を、同じ痛みを思い知らせるために。

 最初の頃は、姫は憤っていました。

 こんな事をしてただで済むと思っているのかと。そう。

 しかし、数日経つと、弱気になっていましたた。

 体調を崩し、声も枯れてきてしまいます。

 数週間立つと、歩く事もままならなくなってしまいます。

 これでは、たとえ牢屋の鍵が開いていたとしても、自力で遠くへ逃げるのは困難です。

 一か月経つと、孤独で心がむしばまれるように。

 人間の幻覚を見ては、話しかけるという行為を繰り返すようになりました。

 最低限食事だけは与えられていましたが、それも道具を使って行われていたため、人と姫が出会わないようになっていました。

 もう罰は十分だろう。

 と、その様を見た騎士達は、姫を解放しました。

 これで、姫が自らの行為を改めたなら、何も言う事はありません。

 しかし、姫はどうしようもなく愚かでした。

 自らがされた仕打ちを、理解していませんでした。

 以前のように、飽きた人間を辞めさせ、職場から追放する姫。

 騎士達は今度こそ、姫を捨てる事にしました。

 足掻いても足掻いても出る事ができない巨大な谷へ落とし、深い絶望と苦しみを与えて、罪を償わせます。

 そんな姫の言葉を聞いて手を差し伸べる者は、最後までいませんでした。

 また、姫が誰かの言葉を聞く事も、誰かと会う事も最後までなかったのです。

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