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第5話
しおりを挟む先程の出来事がまだ引っかかってはいるものの、学校の前の通りに着いた俺たちは取り敢えず通りの脇にあるベンチに座った。
まず俺の予備のカメラを二階堂に渡し、基本的な操作を説明する。
「…まあ基本操作はこんな感じで。今日は特に写真の明るさとか細かい設定とかは気にしないで二階堂の撮りたいように撮ってみて。」
「オッケー。なんかコツとかある?」
「んー何を主役にしてどういう構図にしたいかって事考えて撮るとか?」
「成る程、やってみるわ。」
「じゃあ俺も好きに撮ってるから分からないことあったら何でも聞いて」
「了解。」
一足先にベンチから立ち上がり、辺りを見渡してどういう構図がいいかな、と考える。この学校の前の通りは秋になると300mほどの道路沿いに生えている鮮やかな赤色の紅葉がとても綺麗なのだ。去年も秋には畑中を連れてここで写真を撮った。
***
通り一面の紅葉が写るような構図を中心に色々な写真を撮った。たまに二階堂の方を確認すると、様々な構図を試しながら撮っているのだろうか、変な体勢になっていて思わず笑みが溢れた。
二階堂が楽しんでくれてるみたいで良かった。
別になんて事はないのだが、自分の趣味を二階堂も楽しんでくれているという事実に無性に嬉しくなった。
次は敢えてこのベンチを主役にして撮ってみてもいいかもな、なんて思いながら構図を考えていると、パシャリというカメラのシャッター音が近くで聞こえた。まさか、と思い振り返ると案の定二階堂がこちらに向けてカメラを向けて笑っていた。
「…もしかして、今俺のこと撮った?」
「…あーごめん、つい」
「ついって…」
俺は基本撮る専門なため、人に撮られるのは苦手だ。クラスの集合写真に写る時でさえどんな顔をしていいか困ってしまい固まってしまう。自分の知らない内に撮られているものも、どんな顔をしているか分からないためあまり快いものではない。
けれど、二階堂が俺のことを撮ろうと思ったという事実には胸が高鳴り複雑な心境だ。
「代わりに俺のことも撮っていいからさ。」
そういう問題なのか、と思いつつも高校のしがない写真部員がモデル並みの被写体を撮れるというまたとない機会に食いついてしまうのは仕方がないことだと思う。
***
「じゃあそこのベンチの端に座って背凭れに寄りかかる感じで」
「こう?」
「そうそう。じゃあ撮るからそのまま自然にしてて」
「ん。」
二階堂を主役に背景に紅葉が写るような構図にしよう、と思いながらファインダーを覗き込む。
ファインダー越しに見ると、二階堂の端正な顔、がっしりとした体つき、座っていても分かる脚の長さを改めて感じ、こんな逸材中々撮れないぞと一写真部員として火がついた。
様々な角度から撮ったりし、ある程度の枚数を撮って満足したところでふと時計を確認すると、既に着いてから2時間以上経過していて驚いた。
「うわっ、ごめんもうこんな時間になってた」
「今日元々暇だったし全然大丈夫。それに浅倉の真剣な顔独り占め出来たし」
またそうやって気を惹くようなこと言いやがって、と思うがいつも通りの二階堂だとあまり気にしないようにした。
さっそく今撮った写真をカメラでチェックする。どれもやはり被写体が良いからか良く撮れていると思う。
…これは誰にも見せずに俺の思い出として大事にとっておこう。
少し子供じみているとは思うがその位はいいよな、と自分を納得させた。
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