ホットココア・ラブ

御手洗

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12月18日(月)〈啓輔〉

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月曜から金曜までの朝8:00。
毎日同じ時間にココアを頼みにやってくる男の子がいる。
俺は、まともに話したこともない彼に恋をしている。



ここは俺が月から金までの朝、毎日バイトをしているコーヒーショップだ。大学三年にもなり授業が全て午後にかたまっている俺は、今年の4月からこのコーヒーショップでバイトを始めた。
そこに10月の寒くなり始めた頃から毎日ココアを頼みにやってくるようになったのが、その男の子である。オーダーを取る俺の目の前に初めて現れた彼に恥ずかしながら一目惚れしてしまってから2ヶ月が経ち、今に至る。
いつも背中にはリュックを背負い、頭にはニット帽を被っていて、ニット帽からはみ出ている金髪に染めているくせっ毛が可愛いな、と見るたびに思っている。平日に私服を着ているため大学生かなとは思うが、多分見た目からして年下だろう。背は平均より高く、少なくとも178cmはありそうだが、俺が185cmあるためオーダーを頼む時に少し見上げて喋るのがいつも俺の心を擽るのだ。

毎回受けとる時に律儀にも有難うございます、と少し微笑みながら言ってくれるので、今ではその一言と彼の笑顔を貰って初めて一日が始まると感じるようになってしまった。本来休日であるはずの土日には彼のお礼と笑顔を貰えないため早く平日にならないかな、と思ってしまう程だ。

何とか話しかける事は出来ないか、と思ってはいるものの、朝の通勤通学前のこの時間は客が多く、クリスマスイブ一週間前で街が賑わっているのに比例してこのコーヒーショップも更に客足が増えてしまっており、とてもじゃないが一人の客と悠長に会話している時間などなかった。

それでも何とか彼の記憶の片隅にでも残りたい、と彼の頼むココアのカップに毎日色々な絵を描いているのは俺だけの秘密、と言いたいところだが既に俺と同じシフトの小野にはバレてしまっている。というか、彼女には俺が毎日彼のオーダーを取ろうとしている事も俺が名も知らない彼に夢中であることもバレバレである。



「っていうかさー、そんなに好きならもっと積極的にアプローチしなさいよ。」

この通り、こうして彼女にはお咎めをくらう始末だ。けれど、何も偏見などもせずにこうしてアドバイスしてくれているのは正直感謝している。

「無理だろ、話す暇もない位忙しいし。」

「だったらカップに絵なんか描いてないでメッセージ書きなさいよメッセージ!」

「例えば?」

「最初はまず普通の挨拶みたいなのから書けばいいんじゃない?」

「成る程なー」

たしかにそれだったらハードルも低いしいけるかもしれない。俺だっていつまでも見ているだけを続けたい訳ではないのだ、やるなら今日からしかない、と心に決め開店前の準備を進めた。

***

8:00になり、いつも通り彼がやってきてオーダーの列に並ぶ。
彼の前の客がコーヒーを受け取り彼の番になると、今日も彼はココア1つお願いします、と言ってお金を置いた。

オーダーを受け、小野が入れ終わったココアのカップを手にした俺は、何を書こうと短い時間の中で思案する。


色々考えた結果、当たり障りがなく誰が受け取っても喜ばれるだろうと思われる一言はこれだろう、と思い"今日も一日頑張れ!"と書いて、彼に渡した。


受け取った彼はそのメッセージに気付いたのか、少し驚いた顔をした後にいつも通りありがとうございます、と微笑んでから店を後にした。

これは成功…したのか?

正直今の反応では彼がどう思っているのか全く分からなかったため、明日も頑張ろうと思い、仕事を再開した。
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