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元エルディア軍の幹部将校達
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フウマの女が屋敷のロビーに連れてきたのは、三人の男達だった。
右の男は、かなり高齢なのか、長い髭と髪で顔のほとんどが隠れている。不思議な事に、杖を持ってはいるが、腰はほとんど曲がっておらず、足取りは力強いものだ。
(あの杖は、伊達か。老体に見せてはいるが、肉体は依然として強靭な様だ)
真ん中の男は、190㎝近くありそうな長身の男だった。年齢は35くらいだろうか、体重は100キロ近くありそうなガタイの良い男。この距離でもピリピリとした圧力を感じる。だが粗野な傭兵たちと違い、理性も気品も感じた。ハリウッドスターが演じる米軍将校とも現役自衛隊員とも違う雰囲気を持った男だった。
(品性と知性を持った武装した貴族、これが本物の〝騎士〟というものなのか)
左端の男は、細い目に眼鏡をかけた40歳くらいの優男だった。だが顔に反して体格はよく、服の上から鍛え上げられた肉体を持っているのが分かった。微笑んではいるが眼鏡の奥から覗く眼光は鋭く、まるで俺の価値を確認しているかのように感じた。
(こいつは食えないな。参謀か高級スパイか、そういう役職の男なのだろう)
屋敷の外は親衛隊の女達が警護し、中はフウマのアサシンの女達が俺を護衛している。武器を持っていない彼らにとっては危険な場所のはずだ。だが三人とも、恐れている素振りは見られない。
「お目にかかれて光栄です、セイオウ殿。元エルディア王国軍、白の軍の将軍、ロウメイと申します」
「元エルディア王国軍近衛騎士団長、ランウと申します」
「元エルディア王国軍情報部長、ハンバルと申します」
右から順に自己紹介し、俺に向かって敬礼する三人。しかし元将軍に騎士団長に情報部長か、予想以上にすさまじい経歴の持ち主だった。こんな三人が、足元のフリージアに潜伏していたとはな。
「フリージア王国経営再建最高責任者、セイオウのイクオです」
気押された俺は、思わず敬語で返してしまう。本名を名乗るのは、久しぶりな気がする。
「三人とも、いまだにエルディアに忠誠を誓っておられますか?」
「はっ!」
三人ともほぼ同時に、軍人らしく短く即答する。
──風俗魔法『達人の目』──
俺は三人の士気と忠誠心を確認する。三人とも忠誠を誠実、友好を表す色をしていた。信頼してよいだろう。
「ミア、レイナを部屋に呼んでくれ」
「はい、主様」
ミアは小走りでドアに向かい、扉を開く。
「──おおっ!」
扉から現れたドレス姿のレイナの姿に、三人が息をのむ。レイナの方も、ハッとした表情をする。三人とも、知っている様子だ。
「レイネシア姫様!!」
「ご無事でしたか・・・」
歓喜の声を漏らす三人。特にランウは、大柄の身体で膝をつき、「ううっ」と涙を流している。見かけより涙もろい男らしい。
「はい、皆の者、大義です」
凛とした声で、レイナが答える。彼女のこんな声は、初めて聞いた。
「元情報部長でありながら発見が遅れた事、お許しください」
「いいえ、貴方のせいではありません。この魔法具のせいなのです」
レイナは自身の赤いリボンを取り出す。認識疎外効果のある魔法具のおかげで、彼らですらレイナを見つけられなかったのだ。
「もっとお顔をおみせください、姫様。なんと美しくなられたのでしょう」
「ありがと、ロウメイはお髭がすごいね」
「はっはっは、おいぼれを偽装するには無精ひげが一番でございますからな。しかしその口調、幼少の頃を思い出しますな」
「平民になった時に戻したんだ。楽だからね」
「それはようございます」
「にしてもお髭なが~い、変なの~」
嬉しそうに髭を撫でるレイナと、ロウメイの姿は孫娘と祖父の様だった。
「姫様、その指は?」
ハンバルがレイナの左手薬指の指輪に気づく。
「うん、今は旦那様にお仕えしているんだ♪」
レイナは俺の腕に抱き着いてきて、仲の良いカップルであることを示す。それだけで彼女が幸福であることを三人は理解した様だ。三人は頷き、嬉しそうに微笑む。
「俺から聞いてもいいですか?」
「もちろんです。あと我々に敬語は不要です。貴方は主筋にあたる方ですから」
ロウメイが代表して答えてくれる。俺はその音場に従い、口調を変える。
「三人は、なぜフリージアに潜伏していたんだ? レイナがここにいることは、知らなかったんだろう?」
俺の質問に、元情報部長のハンバルが答える。
「はい、我々が潜伏していたのは、セイオウ様、貴方がこの国に来られたからです」
「どういうことだ?」
「本来、貴方は〝聖王〟としてこの世界に召喚され、レイネシア姫と結婚し、我々の主となられる予定でした。例え〝性王〟として召喚されたため追放されたとしても、それは同じ事でございます。そういう意味では、フリージアに追放されたのは、我々にとっては好都合でした」
エリス姫の奸計が、ここでも役立ったという事か。
「我々はフリージアに潜伏し、セイオウ様がお仕えする価値があるお方であるかどうか、失礼ながら確認しておりました。豪商から自身を担保に資金を借り受けて、娼館と裁縫工房を再建する、セイオウ様の手腕は我々の予想を超えるものでした」
俺は合格点だったという事か。しかしさすがは元情報部長、よく知っているな。
「もう一つ、我々にとって急務でした行方不明になられたレイネシア姫を探しだしてくれるのではという淡い希望もありました。しかし本当に探し出して、既に保護されていたとは、思いもよりませんでした。いったいいつ、見つけ出されたのですか?」
「俺がレイナと出会ったのは、召喚された日の夕方になるな」
「そうだね。その日のうちにお仕えしたんだったね」
俺達の言葉に、冷静そうなハンバルも驚いたのだろう。目を見開き、声を失っている。
「・・・どうやって、姫を見つけられたのですか? 認識疎外の魔法具を遮断するする魔法や人探しの魔法をお持ちなのですか?」
「いいや、ただの一目ぼれだ。レイネシア姫というより、レイナという名の少女に惹かれただけだ」
「・・・」
少なくとも魔法は使ってはいない。
「魔法なんて使わずに、召喚された日にあたしを見つけたんだよ、旦那様はすごいでしょ?」
何故か自慢げなレイナ。
「・・・レイネシア姫であると、お知りになったのはいつですか?」
「二時間ほど前だ」
「うん、ずっと黙ってて、ごめんね。もっと早く打ち明けるべきだったね」
俺達の言葉に、三人の武人達は皆、しばし固まってしまっていたが、
「はっはっは!」
「こりゃ傑作だ!」
ロウメイとランウの二人は、豪快に笑いだした。つられてハンバルも笑う。レイナも嬉しそうに微笑んでいた。
「さすがはセイオウ様、召喚されたその日のうちに姫を見つけ出すとは、素晴らしいことですじゃ!」
「しかも姫だとは知らずに、こりゃ傑作だ! 俺は初めて神や運命を信じるようになったぜ!」
「ふう、元情報部長の肩書は返上しなくてはいけませんね・・・嬉しい限りですが」
たくましい腕で俺の肩をガシガシさせながら、豪放に祝福してくれる三人。こういう男達との関係は久しぶりだった。この国では(アブドル以外は)女とばかり接していたからな。
右の男は、かなり高齢なのか、長い髭と髪で顔のほとんどが隠れている。不思議な事に、杖を持ってはいるが、腰はほとんど曲がっておらず、足取りは力強いものだ。
(あの杖は、伊達か。老体に見せてはいるが、肉体は依然として強靭な様だ)
真ん中の男は、190㎝近くありそうな長身の男だった。年齢は35くらいだろうか、体重は100キロ近くありそうなガタイの良い男。この距離でもピリピリとした圧力を感じる。だが粗野な傭兵たちと違い、理性も気品も感じた。ハリウッドスターが演じる米軍将校とも現役自衛隊員とも違う雰囲気を持った男だった。
(品性と知性を持った武装した貴族、これが本物の〝騎士〟というものなのか)
左端の男は、細い目に眼鏡をかけた40歳くらいの優男だった。だが顔に反して体格はよく、服の上から鍛え上げられた肉体を持っているのが分かった。微笑んではいるが眼鏡の奥から覗く眼光は鋭く、まるで俺の価値を確認しているかのように感じた。
(こいつは食えないな。参謀か高級スパイか、そういう役職の男なのだろう)
屋敷の外は親衛隊の女達が警護し、中はフウマのアサシンの女達が俺を護衛している。武器を持っていない彼らにとっては危険な場所のはずだ。だが三人とも、恐れている素振りは見られない。
「お目にかかれて光栄です、セイオウ殿。元エルディア王国軍、白の軍の将軍、ロウメイと申します」
「元エルディア王国軍近衛騎士団長、ランウと申します」
「元エルディア王国軍情報部長、ハンバルと申します」
右から順に自己紹介し、俺に向かって敬礼する三人。しかし元将軍に騎士団長に情報部長か、予想以上にすさまじい経歴の持ち主だった。こんな三人が、足元のフリージアに潜伏していたとはな。
「フリージア王国経営再建最高責任者、セイオウのイクオです」
気押された俺は、思わず敬語で返してしまう。本名を名乗るのは、久しぶりな気がする。
「三人とも、いまだにエルディアに忠誠を誓っておられますか?」
「はっ!」
三人ともほぼ同時に、軍人らしく短く即答する。
──風俗魔法『達人の目』──
俺は三人の士気と忠誠心を確認する。三人とも忠誠を誠実、友好を表す色をしていた。信頼してよいだろう。
「ミア、レイナを部屋に呼んでくれ」
「はい、主様」
ミアは小走りでドアに向かい、扉を開く。
「──おおっ!」
扉から現れたドレス姿のレイナの姿に、三人が息をのむ。レイナの方も、ハッとした表情をする。三人とも、知っている様子だ。
「レイネシア姫様!!」
「ご無事でしたか・・・」
歓喜の声を漏らす三人。特にランウは、大柄の身体で膝をつき、「ううっ」と涙を流している。見かけより涙もろい男らしい。
「はい、皆の者、大義です」
凛とした声で、レイナが答える。彼女のこんな声は、初めて聞いた。
「元情報部長でありながら発見が遅れた事、お許しください」
「いいえ、貴方のせいではありません。この魔法具のせいなのです」
レイナは自身の赤いリボンを取り出す。認識疎外効果のある魔法具のおかげで、彼らですらレイナを見つけられなかったのだ。
「もっとお顔をおみせください、姫様。なんと美しくなられたのでしょう」
「ありがと、ロウメイはお髭がすごいね」
「はっはっは、おいぼれを偽装するには無精ひげが一番でございますからな。しかしその口調、幼少の頃を思い出しますな」
「平民になった時に戻したんだ。楽だからね」
「それはようございます」
「にしてもお髭なが~い、変なの~」
嬉しそうに髭を撫でるレイナと、ロウメイの姿は孫娘と祖父の様だった。
「姫様、その指は?」
ハンバルがレイナの左手薬指の指輪に気づく。
「うん、今は旦那様にお仕えしているんだ♪」
レイナは俺の腕に抱き着いてきて、仲の良いカップルであることを示す。それだけで彼女が幸福であることを三人は理解した様だ。三人は頷き、嬉しそうに微笑む。
「俺から聞いてもいいですか?」
「もちろんです。あと我々に敬語は不要です。貴方は主筋にあたる方ですから」
ロウメイが代表して答えてくれる。俺はその音場に従い、口調を変える。
「三人は、なぜフリージアに潜伏していたんだ? レイナがここにいることは、知らなかったんだろう?」
俺の質問に、元情報部長のハンバルが答える。
「はい、我々が潜伏していたのは、セイオウ様、貴方がこの国に来られたからです」
「どういうことだ?」
「本来、貴方は〝聖王〟としてこの世界に召喚され、レイネシア姫と結婚し、我々の主となられる予定でした。例え〝性王〟として召喚されたため追放されたとしても、それは同じ事でございます。そういう意味では、フリージアに追放されたのは、我々にとっては好都合でした」
エリス姫の奸計が、ここでも役立ったという事か。
「我々はフリージアに潜伏し、セイオウ様がお仕えする価値があるお方であるかどうか、失礼ながら確認しておりました。豪商から自身を担保に資金を借り受けて、娼館と裁縫工房を再建する、セイオウ様の手腕は我々の予想を超えるものでした」
俺は合格点だったという事か。しかしさすがは元情報部長、よく知っているな。
「もう一つ、我々にとって急務でした行方不明になられたレイネシア姫を探しだしてくれるのではという淡い希望もありました。しかし本当に探し出して、既に保護されていたとは、思いもよりませんでした。いったいいつ、見つけ出されたのですか?」
「俺がレイナと出会ったのは、召喚された日の夕方になるな」
「そうだね。その日のうちにお仕えしたんだったね」
俺達の言葉に、冷静そうなハンバルも驚いたのだろう。目を見開き、声を失っている。
「・・・どうやって、姫を見つけられたのですか? 認識疎外の魔法具を遮断するする魔法や人探しの魔法をお持ちなのですか?」
「いいや、ただの一目ぼれだ。レイネシア姫というより、レイナという名の少女に惹かれただけだ」
「・・・」
少なくとも魔法は使ってはいない。
「魔法なんて使わずに、召喚された日にあたしを見つけたんだよ、旦那様はすごいでしょ?」
何故か自慢げなレイナ。
「・・・レイネシア姫であると、お知りになったのはいつですか?」
「二時間ほど前だ」
「うん、ずっと黙ってて、ごめんね。もっと早く打ち明けるべきだったね」
俺達の言葉に、三人の武人達は皆、しばし固まってしまっていたが、
「はっはっは!」
「こりゃ傑作だ!」
ロウメイとランウの二人は、豪快に笑いだした。つられてハンバルも笑う。レイナも嬉しそうに微笑んでいた。
「さすがはセイオウ様、召喚されたその日のうちに姫を見つけ出すとは、素晴らしいことですじゃ!」
「しかも姫だとは知らずに、こりゃ傑作だ! 俺は初めて神や運命を信じるようになったぜ!」
「ふう、元情報部長の肩書は返上しなくてはいけませんね・・・嬉しい限りですが」
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