高梨由香と後藤悟 アオハル物語

月夜野ルナ

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高梨由香と後藤悟 アオハル物語

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高梨由香と後藤悟 アオハル物語

それはある日の授業の後の事
「はい、じゃあ今日の授業はこれまで。係の者は片付け頼むぞー」
と、化学の授業は終わりその係の俺と由香は試験管とかビーカーを隣の準備室に
運び込み洗浄して片付けるまでが仕事。

「お、今日は悟と由香か・・悪いけど会合があるから俺、先に出るから後頼むわ」
と足早に先生は出て行ってしまった。

{しょうがねぇな・・} と二人で片付けていた時

カッシャーン!!  「きゃっ!」 「どした?」と振り向くと由香の指先から血が手首に
かけて流れる。

「ヤベッ!」っとすぐにハンカチを巻いて押さえ近くにあったセロハンテープを巻いて
止血したつもりが・・じわじわとハンカチが赤く染まる。

「お前、ここもういいから教室帰ってすぐ荷物まとめろ! 俺、教務室行ってくるから!」
そう言って俺は教務室に走り、事の経緯を手短に話して由香を近くの病院に連れて行く
事にした。一瞬 {救急車・・} も浮かんだがそこまででは無いと判断。

まだ診察時間内・・。

「おら、カバンを俺のチャリに乗せて! 手は胸より高くして! ・・隣の町内に整形
あったからそこ行くぞ!」と、彼女を連れて行った。

受付に事情を話して優先で見てもらえる事になり、すぐに呼ばれた。
診察室に入ると女医さんで、見るなり「あー、切っちゃった・・何で切った?」
「試験管が割れてその破片だと思います」と俺。
「試験管・・ガラスだね・・破片が入ってるとまずいな・・消毒と表面麻酔!」と
指示が出る。
「じゃあこれ外すね・・ちょっと痛いかな・・」とテープを切断してハンカチを
解き、血まみれの指先を洗浄していく。そして麻酔液? を塗って・・ツンツンとピンセット
の先で突いて「痛くない? 効いたかな?」 コクンと頷く由香。
「じゃあルーペ付けて」と先生のメガネの上にルーペを装着する看護師さん。
怖いのか処置を見ないように横を向く由香。

その傷口をピンセットで広げて流れ出てくる血を何度も洗い流しながら奥まで破片が
入ってないか念入りに探ってくれる。ひとしきり診てくれた後、「うん・・破片は入って
無いね・・大きな血管を損傷してる訳でもないし・・止血テープ!」
「え? 先生・・縫わなくて大丈夫なんですか?」と俺。
「うん、今は強力テープがあるから大丈夫。縫うより痕が残らなくていいよ。
女の子の指だからね。」とそれを3本。 その上からガーゼと包帯して
「はい、これでok。今日はお風呂ダメね、しばらく濡らさないように。雑菌入ったら大変だから。
それと痛み止めと抗生剤出しとく。今週中くらいは毎日通って消毒してね。あ、
急患で来たんでしょ?  持ち合わせ無いだろうから明日でいいよ。」と言ってくれた。

「それと彼、彼女ちょっと動揺してると思うから親に今言ったの説明できる?」
「判りました・・」と俺。
隣の薬局へ処方箋を出すと連絡が行ってたらしく「今日のお代はいいですよ」と。
それから俺達は彼女のカバンを俺のチャリの荷台にくくりつけたまま夕暮れの街を二人で歩く。
聞いたら彼女の家はここから歩いて15分程の所。

家に着いたら「お母さーん!」と呼ぶ由香。奥からパタパタと出てくるお母さん。
指を見るなり「あら、それどうしたの・・」と。
「あの・・俺、同級の後藤悟といいます。・・」それから事の顛末を説明して・・。
「わざわざ済みませんでしたね・・ありがとう」と言われ帰途についた。

それから翌朝、俺は一番に教務室に行き昨日あった事を担任と化学の先生に話した。
「何っ・・そんな事が・・済まなかった・・由香の家にはあとで直接謝罪に伺うから・・
処置してくれてありがとうな」と。教室に行くと由香が来ていた。

「大丈夫か?」と聞くと「うん・・ちょっと痛いけど痛み止め効いてるみたいだし・・
大丈夫」と。そして一日の授業も終わり・・

「おい、帰るぞ。カバン貸しな」「え?・・」「え?って、お前のその参考書ギッチリの
鞄持って帰るの大変だろ? 病院も行かなきゃだし、付き合ってやるよ。俺チャリだし」
「そんな・・悪いよ・・」 「いいから・・・」となかば強引にそれを取ると荷台に
またロープで固定して「ほら、病院行くぞ」と。その俺の後ろをテトテト歩く彼女。
消毒とかの処置を終えて昨日の分も支払いをして二人でまた帰途につく。

「ね、悟君の家って・・・」「ん? 信濃町」「え? じゃあ全然方向逆じゃない!」
「まぁ・・でもこんなデカい鞄不自由な手で持って暗くなるとこ一人で帰せないし」
「ごめんね・・」「謝る事無いさ・・俺、チャリだからすぐ着くし。」
そうしてそんな事を一週間程続けて、テープも外れて「もう来なくていいよ。不安だったら
市販の傷テープでも巻いておけばいいから」と医者に言われたと出てきた由香。

「そうか・・じゃあもう送らなくていい・・かな・・」と俺。黙って歩く彼女。
玄関に着いてドアを開けそこに鞄を置いて「じゃあ・・」と帰ろうとする俺の袖をツンッと
つまんで「あの・・」「・・ん?・・」と言った俺にふっと近づきチュッとキス。
「ありがと」と言って「・・うん・・」と返し外に出た俺はしばしボーゼン。

{俺・・ファーストキス・・・} それからどこを通って帰ったかよく覚えていない・・(笑)。

その夜の事。家のチャイムが鳴って母が対応してると「悟ー、ちょっとおいで!」
なんだ? と行くとそこには由香とその両親。
「あ、悟君・・今回の事はほんとうにありがとう。毎日由香を送ってくれたって
今日始めて聞いたもんだから・・この子ったら・・お世話になりました。
これ・・ほんのお礼と言ったらなんだけど・・」と某有名店のケーキの包を手渡してくる。

「まぁまぁそんなご丁寧に・・ほれっアンタも・・」とオカン。
「あ・・どうも・・」と俺。 由香達が帰ったあとに・・

「アンタそんな事してたの・・どうりでこの頃帰りが遅いと思ったら・・」
「・・ん・・まぁ・・」  「アンタもいいとこあるじゃん・・で、彼女とはどういう?」
「・・どうもねぇよ・・ただの・・・」 「お、赤くなったね♡、じゃあさ、その時は
オカンに相談するんだよ・・」 「「何を・・?」 「ほら・・避妊具とか・・」
「バ・・俺達そんなんじゃねーよ!」 「おおーアオハルだねぇ♡」と笑う。
そんな事を言うもんだから・・次の日から由香の顔をまともに見れなくなった。

それからしばらくは何もなく・・放課後、俺が図書館で調べ物してた時にふと由香が
近付いてきて「あのさ・・」 「ん?・・」 「好きな人・・いるの?」
「なんで?」 「あの・・この前の・・好きな人いるなら悪かったのかな・・なんて・・」
「そうだな・・俺、そいつにまだ告白もしてないのに・・あんな事されちゃ・・」
「・・えっ?・・・やっぱり・・・ごめんなさい・・・」と下を向く彼女。

「だってさ・・俺が告白する前に・・ずるいよ・・」
「あの・・ほんとうに・・ごめ・・」
「ほんとうなら俺から先に好きだって言うべきだったのに・・お前にさ。」
「えっ・・・」
「短かったけど毎日一緒に帰れてすごく嬉しかったんだ・・由香とさ。」
「あの・・・」 「俺・・由香が好き・・」 「・・・・」

それから俺達は付き合い始めて。さて、その後の事は・・・♡

おしまい。
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