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46話〜結構ですわ!〜
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私はシンシア。ラッセル冒険者ギルドの受付になって、来月で2年目となるベテラン受付嬢だ。漸く仕事にも慣れて来たし、冒険者相手でも怖がらずに対応出来るようになってきた。中には私達を蔑んでくる人もいるし、ナンパしてくる困った人もいる。
けれど、頼もしい先輩達が色々と教えてくれるので、そういう奴は軽くあしらえるようになってきた。
さぁ、もうどこから来ても大丈夫よ。
そう思っていたんだけど…。
「これ…どうすればいいのよ…」
私の目の前には、今、ギルドが欲していた薬品が山積みにされ、その横には、黒い怪鳥の死体が無造作に置かれていた。
普段、大型魔物の素材引き取りは隣の解体屋に持って行ってもらっているから、こんな大きな死体を目にすること自体が初めてだ。
そもそも、魔物って体の一部しかドロップしないんじゃなかったの?
「こいつは…また凄いのが出て来たな…」
その知識を教えた張本人が、死体のクチバシを突きながら呑気にそう呟いている。そして、神妙な顔で私を見上げてきた。
「こいつは、ギルド長に話を通した方が良いんじゃないか?シンシアちゃん」
ええっ?ギルド長に?この案件って、そんなに重大なことなの?
私が答えを求めるように後ろを振り返ると、先輩達も「そうね」と神妙な顔で頷いていた。
ええ…面倒くさいなぁ。
そう思いながらも、私は足取り重く2階の階段を登る。魔物の死体は皮と骨だけだったけど、それなりに重かったからランベルトさんが担いでくれている。
そして、2階の一番奥の部屋…ギルド長の部屋を小さくノックする。
コンッ、コンッ、コンッ。
「入れ」
ドアの向こうから渋い声で入室の許可が下りたので、私は一つ深呼吸をしてからドアを開ける。するとすぐに、本と薬草の匂いが鼻腔をくすぐり、淡い光の中で机に座る壮年の男性が目に入る。
ギルド長のボーウェンさんだ。
手元の書類へと落とされていた彼の目が上がり、鋭い視線が私を射抜く。そして、直ぐにそれが逸れて、私の後ろを睨みつける。
「何だ?それは。討伐依頼品か?」
「ああ。きっと、怪鳥コリの一種だと思いますよ」
私を追い越して、ランベルトさんが答える。答えながら、応接用の机の上にドカッと怪鳥の死体を置いた。
ええっと、コリってなんなの?魔物なの?
魔物に詳しくない私は、頭の上に〈?〉を浮かべながら、ベテラン冒険者達の会話を聞く。
「コリ…か。確か、北の帝国で目撃例のある魔物であったな。それが何故、ラッセルの近隣に現れるのだ?」
「さてね。生息域を追われたのか、はたまた誰かが持ち込んだのか、一介の冒険者である俺には図りかねますよ。分かってるのは、こいつを倒した途端、プリムローズの生態系が元に戻り始めたって証言だけだ」
「ふむ、そういうことか」
ギルド長の目が、私に向く。
「これを倒した者達と直接話をしたい。シンシア。悪いが、その者達をここに連れてきてくれぬか」
ああ、やっぱりそうなるよね。
私はどういうべきか迷いながら、ギルド長に首を振る。
「ギルド長。あの、それなんですけど…もうすでに帰られてしまって…」
「であれば、その者らの宿まで行って、引きずってでも連れてくるのだ。事は急を要す。もしもそ奴らがごねるのならば…そうだな、情報の対価として大銀貨3枚(30万円)を支払う用意があると言ってやるのだ」
「あの、ギルド長。その子は街の宿に泊まっているんじゃなくて、ロゼリア学園の寮生みたいなんです。あんな格式高い場所だと、私じゃ爪弾きにされちゃいますよ…」
私が肩を落として報告すると、ギルド長の鋭かった目が驚きで丸くなった。
「まさか…これを学生がやったと言うのか?コリはBランクの魔物だぞ?」
「えっ!」
Bランクという明確な基準で、私も漸くギルド長の驚く意味が理解できた。
そのランク帯の魔物と言えば、オーガやゴブリンキングみたいな、発生するだけで周囲の村や町が危機に陥るレベルの魔物だ。達人レベルの冒険者達がチームを組んで、やっと倒せるランクの化け物。
それを、あの女の子が1人で倒したっていうの?
「えっと、それは流石に、何かの間違いとしか…」
「さて、それはどうかな?」
ランベルトさんが意味深な言葉を吐いて、怪鳥の胴体を示す。
「ここの打撃痕。こいつは以前、嬢ちゃんが持ってきたフォレストウルフの毛皮にも付いていた痕だ。どんな手を使ったのかまでは分かんねぇけど、ウルフもコリも同じ武器で仕留めたってのは確かだ。嬢ちゃん、もしくは嬢ちゃんに近しい従者がやったって考えるのが妥当だろうよ」
「従者の線は薄いだろうな、ランベルトよ」
ギルド長がゆっくりと首を振る。
「学園は従者の帯同を許可してはおらん。自主性を育む為だったか、生徒は1人で学園生活をおくる事を是としているのが、アンブローズの考え方よ」
それにな、と、ギルド長は続ける。
「仮に従者が居たとて、この怪鳥コリを倒せる程の力量となれば、王国の正規兵でも値せんぞ?近衛騎士の、それも熟練騎士でなければ太刀打ち出来まい。そのような者を従えるのは、この王国でも王族くらいなものよ」
「それじゃあ、魔法が使える嬢ちゃんがやったって方が、まだ可能性があるか。魔法には色々と、相性ってのがあるみたいだからな」
確かに、生活魔法くらいしか使えない私からしたら、厳つい冒険者よりも魔術師の方が恐ろしく感じる。
感じるけど…本当にあんな可愛らしい子が、Bランクの魔物なんて倒せるのかしら?
「どうであれ、その者が力を秘めていることは間違いない様だ。で、あるならば、それ相応の地位に召し上げるのが道理と言うもの」
えっ?それって…。
恐る恐るギルド長を見ると、彼は私に向って大きく頷いた。
「手続きの準備をしておいてくれ、シンシア。ギルド長権限で、その者をCランクに上げることとする」
「えぇっ!?」
クロエさんのランクは、現在Eランク。それが、一つ飛ばしでCランクになろうとしている。
そんなの、聞いたこともないわ!
ギルド長は豪語していたけれど、本人の同意なしにランクを上げることは出来ない。
と言う事で、私は翌日の早朝から必要書類を準備した。彼女が来たら、直ぐに手続きを進めようと思って。
でも、なかなか現れない。今までもそうだったけど、週末しか彼女達学生は自由時間が無いみたいだった。
なので、それまではのんびり待ってようと思っていたら、その日の夕方に彼女は現れた。
あら?どうしたの?
「ごきげんよう。昨日は押し付けるように帰ってしまい、申し訳ございませんでした。今日は、無事に素材が依頼者へ届いたかを確認したく伺いましたわ」
凄い子だわ。私はてっきり、クエストクリアの報酬を受け取りに来たのかと思っちゃった。まさか、依頼主の事を気にかけて来館したなんて…。
はっ!いけない。
私は後ろのファイルを引っ掴み、何枚かの羊皮紙を抜き取って机に並べた。
「大丈夫ですよ、クロエ様。クエストは無事に完了してます。いっぱい持ち帰ってくださいましたので、これらのクエストも全部、達成されたとして処理させて頂きました」
「良かったですわ。他の方々にも行き渡る量があって」
余った素材を勝手に他クエストの処理に回してしまったけれど、クロエ様は文句ひとつ言わずに喜んでくれた。
凄い人だ。
「クロエ様。それで、今回の事でお話がありまして…」
この人には是非、上に立ってもらいたい。
そう思って、私は嬉々として昇格の話を出した。
でも、クロエ様は苦い顔をした。
「昇格…ですの?それって、有名になるって事ではなくて?」
「えっ?ええ、勿論です。EランクからCランクに飛び級なんて、きっと街中の噂に…」
「結構ですわ!」
…えっ?今、なんて?
「私は、Eランクで十分ですの。昇格なんかして学園の皆さんに知られたりしたら…絶対に、昇格なんて嫌ですわ!」
ええっ!?
あまりに驚いたので、私はクエスト報酬も支払えず、足早に出ていくクロエ様の背中を見送るだけとなってしまった。
そして、その話をギルド長にしてみると…。
「かかっ!|面白い!」
大笑いしていた。
「万人が求める好機を、そう容易く蹴り飛ばすとはな。ただランクに目がくらんだ、愚か者ではなかったか」
こんなに楽しそうなギルド長を見るのは初めてだ。
でも、
「よろしいのですか?ギルド長。折角、このギルドを引っ張ってくれそうな逸材でしたのに」
冒険者ギルドの力は、そこに所属している冒険者の技量で決まってくる。強い冒険者が居てくれたら、それだけ高級な素材が手に入るし、危険な魔物が迷い込んでも安心だ。
だから、ギルドは常に人を募集しているし、所属する冒険者が強くなるのは自分達の事のように嬉しい。
今回だって、クロエ様がちゃんとした評価を受けてくれたら、街の住人も安心するだろうし、ギルド自体も活気に溢れる。彼女のキャラクターなら、ギルドの看板にも十分なり得るだろうに…。
「良いのだ、シンシア。無理に我らの思いを押し付けたとて、行きやすい方へと流れるが人の性」
それに、と、ギルド長は続ける。
「貴族と対するは利がない。特に、相手はあのバーガンディ家。睨まれれば我々など、塵芥となろうぞ」
あっ、そうだった。彼女はあのバーガンディ家のご令嬢。とても物腰柔らかく相手してくださるから忘れそうになっていたけど、本来ならお声がけも出来ない天上の人なんだ。
そんな人が「嫌です」って言うんだもの、もうひっくり返せない。
「残念です。折角、実力があるのに」
「そう悲観するでないぞ、シンシア」
ギルド長は、片頬だけ引き上げた笑みをこちらに見せる。
「昇格こそ叶わずとも、彼女に力があるのは明白。であるなら、彼女については儂の権限で、Cランクまでの依頼を受けることを特別に許可しよう」
ええっ!?EランクがCランクの任務を受けるってこと?そんな非常識な事、本当に許しちゃって良いの?
私が驚いてギルド長を見上げると、彼は楽しそうに笑い飛ばす。
「かかっ!真の強者とは、人の理から外れる者よ」
けれど、頼もしい先輩達が色々と教えてくれるので、そういう奴は軽くあしらえるようになってきた。
さぁ、もうどこから来ても大丈夫よ。
そう思っていたんだけど…。
「これ…どうすればいいのよ…」
私の目の前には、今、ギルドが欲していた薬品が山積みにされ、その横には、黒い怪鳥の死体が無造作に置かれていた。
普段、大型魔物の素材引き取りは隣の解体屋に持って行ってもらっているから、こんな大きな死体を目にすること自体が初めてだ。
そもそも、魔物って体の一部しかドロップしないんじゃなかったの?
「こいつは…また凄いのが出て来たな…」
その知識を教えた張本人が、死体のクチバシを突きながら呑気にそう呟いている。そして、神妙な顔で私を見上げてきた。
「こいつは、ギルド長に話を通した方が良いんじゃないか?シンシアちゃん」
ええっ?ギルド長に?この案件って、そんなに重大なことなの?
私が答えを求めるように後ろを振り返ると、先輩達も「そうね」と神妙な顔で頷いていた。
ええ…面倒くさいなぁ。
そう思いながらも、私は足取り重く2階の階段を登る。魔物の死体は皮と骨だけだったけど、それなりに重かったからランベルトさんが担いでくれている。
そして、2階の一番奥の部屋…ギルド長の部屋を小さくノックする。
コンッ、コンッ、コンッ。
「入れ」
ドアの向こうから渋い声で入室の許可が下りたので、私は一つ深呼吸をしてからドアを開ける。するとすぐに、本と薬草の匂いが鼻腔をくすぐり、淡い光の中で机に座る壮年の男性が目に入る。
ギルド長のボーウェンさんだ。
手元の書類へと落とされていた彼の目が上がり、鋭い視線が私を射抜く。そして、直ぐにそれが逸れて、私の後ろを睨みつける。
「何だ?それは。討伐依頼品か?」
「ああ。きっと、怪鳥コリの一種だと思いますよ」
私を追い越して、ランベルトさんが答える。答えながら、応接用の机の上にドカッと怪鳥の死体を置いた。
ええっと、コリってなんなの?魔物なの?
魔物に詳しくない私は、頭の上に〈?〉を浮かべながら、ベテラン冒険者達の会話を聞く。
「コリ…か。確か、北の帝国で目撃例のある魔物であったな。それが何故、ラッセルの近隣に現れるのだ?」
「さてね。生息域を追われたのか、はたまた誰かが持ち込んだのか、一介の冒険者である俺には図りかねますよ。分かってるのは、こいつを倒した途端、プリムローズの生態系が元に戻り始めたって証言だけだ」
「ふむ、そういうことか」
ギルド長の目が、私に向く。
「これを倒した者達と直接話をしたい。シンシア。悪いが、その者達をここに連れてきてくれぬか」
ああ、やっぱりそうなるよね。
私はどういうべきか迷いながら、ギルド長に首を振る。
「ギルド長。あの、それなんですけど…もうすでに帰られてしまって…」
「であれば、その者らの宿まで行って、引きずってでも連れてくるのだ。事は急を要す。もしもそ奴らがごねるのならば…そうだな、情報の対価として大銀貨3枚(30万円)を支払う用意があると言ってやるのだ」
「あの、ギルド長。その子は街の宿に泊まっているんじゃなくて、ロゼリア学園の寮生みたいなんです。あんな格式高い場所だと、私じゃ爪弾きにされちゃいますよ…」
私が肩を落として報告すると、ギルド長の鋭かった目が驚きで丸くなった。
「まさか…これを学生がやったと言うのか?コリはBランクの魔物だぞ?」
「えっ!」
Bランクという明確な基準で、私も漸くギルド長の驚く意味が理解できた。
そのランク帯の魔物と言えば、オーガやゴブリンキングみたいな、発生するだけで周囲の村や町が危機に陥るレベルの魔物だ。達人レベルの冒険者達がチームを組んで、やっと倒せるランクの化け物。
それを、あの女の子が1人で倒したっていうの?
「えっと、それは流石に、何かの間違いとしか…」
「さて、それはどうかな?」
ランベルトさんが意味深な言葉を吐いて、怪鳥の胴体を示す。
「ここの打撃痕。こいつは以前、嬢ちゃんが持ってきたフォレストウルフの毛皮にも付いていた痕だ。どんな手を使ったのかまでは分かんねぇけど、ウルフもコリも同じ武器で仕留めたってのは確かだ。嬢ちゃん、もしくは嬢ちゃんに近しい従者がやったって考えるのが妥当だろうよ」
「従者の線は薄いだろうな、ランベルトよ」
ギルド長がゆっくりと首を振る。
「学園は従者の帯同を許可してはおらん。自主性を育む為だったか、生徒は1人で学園生活をおくる事を是としているのが、アンブローズの考え方よ」
それにな、と、ギルド長は続ける。
「仮に従者が居たとて、この怪鳥コリを倒せる程の力量となれば、王国の正規兵でも値せんぞ?近衛騎士の、それも熟練騎士でなければ太刀打ち出来まい。そのような者を従えるのは、この王国でも王族くらいなものよ」
「それじゃあ、魔法が使える嬢ちゃんがやったって方が、まだ可能性があるか。魔法には色々と、相性ってのがあるみたいだからな」
確かに、生活魔法くらいしか使えない私からしたら、厳つい冒険者よりも魔術師の方が恐ろしく感じる。
感じるけど…本当にあんな可愛らしい子が、Bランクの魔物なんて倒せるのかしら?
「どうであれ、その者が力を秘めていることは間違いない様だ。で、あるならば、それ相応の地位に召し上げるのが道理と言うもの」
えっ?それって…。
恐る恐るギルド長を見ると、彼は私に向って大きく頷いた。
「手続きの準備をしておいてくれ、シンシア。ギルド長権限で、その者をCランクに上げることとする」
「えぇっ!?」
クロエさんのランクは、現在Eランク。それが、一つ飛ばしでCランクになろうとしている。
そんなの、聞いたこともないわ!
ギルド長は豪語していたけれど、本人の同意なしにランクを上げることは出来ない。
と言う事で、私は翌日の早朝から必要書類を準備した。彼女が来たら、直ぐに手続きを進めようと思って。
でも、なかなか現れない。今までもそうだったけど、週末しか彼女達学生は自由時間が無いみたいだった。
なので、それまではのんびり待ってようと思っていたら、その日の夕方に彼女は現れた。
あら?どうしたの?
「ごきげんよう。昨日は押し付けるように帰ってしまい、申し訳ございませんでした。今日は、無事に素材が依頼者へ届いたかを確認したく伺いましたわ」
凄い子だわ。私はてっきり、クエストクリアの報酬を受け取りに来たのかと思っちゃった。まさか、依頼主の事を気にかけて来館したなんて…。
はっ!いけない。
私は後ろのファイルを引っ掴み、何枚かの羊皮紙を抜き取って机に並べた。
「大丈夫ですよ、クロエ様。クエストは無事に完了してます。いっぱい持ち帰ってくださいましたので、これらのクエストも全部、達成されたとして処理させて頂きました」
「良かったですわ。他の方々にも行き渡る量があって」
余った素材を勝手に他クエストの処理に回してしまったけれど、クロエ様は文句ひとつ言わずに喜んでくれた。
凄い人だ。
「クロエ様。それで、今回の事でお話がありまして…」
この人には是非、上に立ってもらいたい。
そう思って、私は嬉々として昇格の話を出した。
でも、クロエ様は苦い顔をした。
「昇格…ですの?それって、有名になるって事ではなくて?」
「えっ?ええ、勿論です。EランクからCランクに飛び級なんて、きっと街中の噂に…」
「結構ですわ!」
…えっ?今、なんて?
「私は、Eランクで十分ですの。昇格なんかして学園の皆さんに知られたりしたら…絶対に、昇格なんて嫌ですわ!」
ええっ!?
あまりに驚いたので、私はクエスト報酬も支払えず、足早に出ていくクロエ様の背中を見送るだけとなってしまった。
そして、その話をギルド長にしてみると…。
「かかっ!|面白い!」
大笑いしていた。
「万人が求める好機を、そう容易く蹴り飛ばすとはな。ただランクに目がくらんだ、愚か者ではなかったか」
こんなに楽しそうなギルド長を見るのは初めてだ。
でも、
「よろしいのですか?ギルド長。折角、このギルドを引っ張ってくれそうな逸材でしたのに」
冒険者ギルドの力は、そこに所属している冒険者の技量で決まってくる。強い冒険者が居てくれたら、それだけ高級な素材が手に入るし、危険な魔物が迷い込んでも安心だ。
だから、ギルドは常に人を募集しているし、所属する冒険者が強くなるのは自分達の事のように嬉しい。
今回だって、クロエ様がちゃんとした評価を受けてくれたら、街の住人も安心するだろうし、ギルド自体も活気に溢れる。彼女のキャラクターなら、ギルドの看板にも十分なり得るだろうに…。
「良いのだ、シンシア。無理に我らの思いを押し付けたとて、行きやすい方へと流れるが人の性」
それに、と、ギルド長は続ける。
「貴族と対するは利がない。特に、相手はあのバーガンディ家。睨まれれば我々など、塵芥となろうぞ」
あっ、そうだった。彼女はあのバーガンディ家のご令嬢。とても物腰柔らかく相手してくださるから忘れそうになっていたけど、本来ならお声がけも出来ない天上の人なんだ。
そんな人が「嫌です」って言うんだもの、もうひっくり返せない。
「残念です。折角、実力があるのに」
「そう悲観するでないぞ、シンシア」
ギルド長は、片頬だけ引き上げた笑みをこちらに見せる。
「昇格こそ叶わずとも、彼女に力があるのは明白。であるなら、彼女については儂の権限で、Cランクまでの依頼を受けることを特別に許可しよう」
ええっ!?EランクがCランクの任務を受けるってこと?そんな非常識な事、本当に許しちゃって良いの?
私が驚いてギルド長を見上げると、彼は楽しそうに笑い飛ばす。
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