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こんな風に街中を歩いても、どこにでもいる普通の子にしか、きっと見えないんだと思う。
里奈は、あ、なんだか似てるかも、そんなことを思っても、結局、違ったりするのだ。
と言うよりも、どこの街だか、覚えてなどなかった。
五歳まで、住んでた場所なんて。
たしか、アパートで、母と住んでたな。あと、微かな、部屋の間取りぐらい。
ブランコがあったりとか、そんな公園でもなくって。
散策とかも出来る、森林公園みたいな感じ、なんだか大きかった。
丸太のアスレチックもあって、つい、夢中になってた。
何か飲む物、買ってくるね、さっきのコンビニ。荷物あるから、いてよね。
そんなこと言われて、私は、なんて返したのか。
不安になって、荷物を抱えて、コンビニまで行ったりするが、いなくって。
公園に戻ってくると、荷物を抱えて泣いてしまった。
やっと、知らない大人が気づいた。
困ったこと。あの森林公園に行くとき、きっと、最後だから。
小さな洋食屋さんで、オムライスを食べた。
それが、迷惑なぐらい、美味しくって、だから、嬉しかった。
ある日、仕事の用があったので、何度か検索をした。着いた先、そこでも、調べ物なんかをしてた。
そんなのが、何週間もあった。
だから、なのだろう。その地域のイベント情報などが、スマホに表示された。
なんとなく、見覚えのある、公園だった。フリマをやるとか、書いてもあった。
駅を挟んで、目的地の反対側。その為か、気づきもしない。
ウサギのオブジェ。
あれは、最後に写真を撮った。
ウサギなのに、なぜか青かった。
変なの。そんなこと言って、母と笑ったが、結局、またがってた。
しかも、自撮りだった。
その近くに、洋食屋さんがあった。
正直、年齢も分からない。顔だって覚えてなかった。
と言うよりも、やってはみたが、思い出せない。
洋食屋さんを出ると、まっすぐ先が、あの公園なので、一緒に歩いたのを、微かにも覚えてる。
よほど、オムライスが美味しかったのか、若干、テンションも高かった。
「帰りも、食べたい」
たしか、何度も叫んでた。
そんなのを、どう思ったのか、お母さんは。
あれから、あの洋食屋さんに、よく行っている。店のおばさんとも、すっかり顔見知りで。
諦めたわけでもないのだが、もう、これでいいかな、とも思ってる。
だって、ここなら、よく、思い出せる。
あと、最初に尋ねたとき、帰り際なのだが、サービス期間中とかで、店のおばさんは券をくれた。
まだ、ちゃんと準備できてないから、ごめんねと、ボールペンの手書きだった。
駅からの地図。
唐揚げ、一ヶ月無料。
これは、また来ないと。
ちょっと、早く来てしまった。
買い出しの帰りらしくて、店のおばさんと出くわす。
「あら、ちょうど、よかったかも。ま、入ってよ。お茶ぐらい、サービスするわ」
店のおばさんは、なんだか嬉しそう。けっこうな買い物袋を、テーブルに置くと、紅茶なんかを入れる。
里奈は、買い物袋の中、手帳が入ってるのを見つけた。買い物リストとか、そんな為なのか、一緒に突っ込んであった。
なんだろう、領収書かな。ちょっと、はみ出してる。
里奈は、つい、手帳を手にとってしまう。
マグカップで、紅茶をもってくる。戻るときだが、店のおばさんは、てっきり、里奈の手帳かと思ったのか、気にもせず、買い物袋を持っていく。
あっちで、店のおばさんは、手帳がないと気づく。
里奈は、手帳を開いて、固まっていた。
だいぶ、古い写真。
森林公園で、ウサギのオブジェ。
あの後、いつか、来るのではと、働かせてもらった。
その後、この店を、受け継いだらしい。
迷ったのは、声をかけてよいのか。
とっさに、また来て欲しくて、唐揚げ、一ヶ月無料。
それぐらいなら、来てくれるかと。
もう、諦めてた。見つかんないと、これで、いいんだと。
なんなのよ、もう。
だったら、捨てないでよ。
ウサギのオブジェ。それにまたがると、もう全開で笑ってる。
その隣、母がいた。
つい、撮った。そんな写真だった。
里奈は、あ、なんだか似てるかも、そんなことを思っても、結局、違ったりするのだ。
と言うよりも、どこの街だか、覚えてなどなかった。
五歳まで、住んでた場所なんて。
たしか、アパートで、母と住んでたな。あと、微かな、部屋の間取りぐらい。
ブランコがあったりとか、そんな公園でもなくって。
散策とかも出来る、森林公園みたいな感じ、なんだか大きかった。
丸太のアスレチックもあって、つい、夢中になってた。
何か飲む物、買ってくるね、さっきのコンビニ。荷物あるから、いてよね。
そんなこと言われて、私は、なんて返したのか。
不安になって、荷物を抱えて、コンビニまで行ったりするが、いなくって。
公園に戻ってくると、荷物を抱えて泣いてしまった。
やっと、知らない大人が気づいた。
困ったこと。あの森林公園に行くとき、きっと、最後だから。
小さな洋食屋さんで、オムライスを食べた。
それが、迷惑なぐらい、美味しくって、だから、嬉しかった。
ある日、仕事の用があったので、何度か検索をした。着いた先、そこでも、調べ物なんかをしてた。
そんなのが、何週間もあった。
だから、なのだろう。その地域のイベント情報などが、スマホに表示された。
なんとなく、見覚えのある、公園だった。フリマをやるとか、書いてもあった。
駅を挟んで、目的地の反対側。その為か、気づきもしない。
ウサギのオブジェ。
あれは、最後に写真を撮った。
ウサギなのに、なぜか青かった。
変なの。そんなこと言って、母と笑ったが、結局、またがってた。
しかも、自撮りだった。
その近くに、洋食屋さんがあった。
正直、年齢も分からない。顔だって覚えてなかった。
と言うよりも、やってはみたが、思い出せない。
洋食屋さんを出ると、まっすぐ先が、あの公園なので、一緒に歩いたのを、微かにも覚えてる。
よほど、オムライスが美味しかったのか、若干、テンションも高かった。
「帰りも、食べたい」
たしか、何度も叫んでた。
そんなのを、どう思ったのか、お母さんは。
あれから、あの洋食屋さんに、よく行っている。店のおばさんとも、すっかり顔見知りで。
諦めたわけでもないのだが、もう、これでいいかな、とも思ってる。
だって、ここなら、よく、思い出せる。
あと、最初に尋ねたとき、帰り際なのだが、サービス期間中とかで、店のおばさんは券をくれた。
まだ、ちゃんと準備できてないから、ごめんねと、ボールペンの手書きだった。
駅からの地図。
唐揚げ、一ヶ月無料。
これは、また来ないと。
ちょっと、早く来てしまった。
買い出しの帰りらしくて、店のおばさんと出くわす。
「あら、ちょうど、よかったかも。ま、入ってよ。お茶ぐらい、サービスするわ」
店のおばさんは、なんだか嬉しそう。けっこうな買い物袋を、テーブルに置くと、紅茶なんかを入れる。
里奈は、買い物袋の中、手帳が入ってるのを見つけた。買い物リストとか、そんな為なのか、一緒に突っ込んであった。
なんだろう、領収書かな。ちょっと、はみ出してる。
里奈は、つい、手帳を手にとってしまう。
マグカップで、紅茶をもってくる。戻るときだが、店のおばさんは、てっきり、里奈の手帳かと思ったのか、気にもせず、買い物袋を持っていく。
あっちで、店のおばさんは、手帳がないと気づく。
里奈は、手帳を開いて、固まっていた。
だいぶ、古い写真。
森林公園で、ウサギのオブジェ。
あの後、いつか、来るのではと、働かせてもらった。
その後、この店を、受け継いだらしい。
迷ったのは、声をかけてよいのか。
とっさに、また来て欲しくて、唐揚げ、一ヶ月無料。
それぐらいなら、来てくれるかと。
もう、諦めてた。見つかんないと、これで、いいんだと。
なんなのよ、もう。
だったら、捨てないでよ。
ウサギのオブジェ。それにまたがると、もう全開で笑ってる。
その隣、母がいた。
つい、撮った。そんな写真だった。
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