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赤ずきんと悪い狼【陰猫Ver.】
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むかしむかし、あるところに赤ずきんと言う可愛らしい女の子がいました。
赤ずきんはお母さんといつも一緒でとても幸せな毎日を過ごし、この時がいつまでも続いたらと思ってました。
──ある日、赤ずきんのお婆さんが病に倒れたとの連絡が入ります。
その日から赤ずきんのお母さんは毎日、そわそわしてました。赤ずきんはお母さんの変化にとても心配になります。
それからしばらくして、お婆さんから手紙が届きます。
──内容はこうでした。
『代筆して貰って手紙を出しました。
私もそんなに長くは生きれそうもない。
最期に一目で良いから孫である赤ずきんの姿が見たかった』
その手紙を見て、赤ずきんのお母さんは寝込んでしまいます。
小さな赤ずきんはそんなお母さんを心配する事しか出来ません。
翌日、赤ずきんのお母さんは赤ずきんにおつかいを頼みます。
「赤ずきんや。お婆さんのところにパイを届けて上げておくれ。
寄り道とかはせずに真っ直ぐ、お婆さんの家へ向かうんだよ。それと悪い狼に気を付けるんだよ」
赤ずきんはお母さんの言い付け通り、真っ直ぐお婆さんの家へと向かいます。
その途中で赤ずきんは倒れた狼と出会います。
お母さんには悪い狼に気を付けるように言われましたが、心優しい赤ずきんは見過ごせません。
「狼さん。こんなところでどうしたの?」
「ああ。天使が迎えに来ましたか・・・」
「しっかりして私は赤ずきんよ!これからお婆さんのところへ出来立てのパイを届けに行くの!」
「ああ。赤ずきんちゃんと言うのか・・・良かったら、そのパイを少し分けてくれないかい?・・・飲まず食わずで働き過ぎてロクに何も食べてないんだ」
「どうして、そんなになるまで働いているの?」
「それしか、私に出来る事がなかったからだよ。女の子と遊んだり、お酒を飲んだりせずに真面目に働くのが私の取り柄だからね。
それに私が働くと皆が幸せそうにしているから仕事が楽しいんだよ」
「皆の為に働くなんて、あなたはとても良い狼さんなのね?」
「一口に狼と言っても色々いるんだよ。けれども、本当に悪い狼は──いや、なんでもない」
狼は何か言い掛けて口を閉ざします。
そんな狼のお腹がぐ~っとなると狼はそれっきり動かなくなります。
流石に放っておけなくなった赤ずきんは狼にパイを少し分けて上げる事にします。
狼は弱々しくパイを咀嚼して飲み込み、なんとか一命を取り留めます。
「ありがとう、赤ずきんちゃん。お蔭で少しは元気が出たよ──このお礼は必ず、するからね」
働き者の狼はそう言うとフラフラと茂みへと消えて行きます。
赤ずきんはそんな狼を見送ると改めて、お婆さんの家へと向かって歩き出します。
赤ずきんがお婆さんの家へ向かい、ノックをするとしわがれた「お入り」と言うお婆さんの声が聞こえました。
家へと入ると寝室で眠るお婆さんの姿がありました。
「お婆さん。お婆さんの身体はどうして、そんなに大きいの?」
「美味しいものをいっぱい食べて元気になったからさ」
「けれども、声も低いわ。まるで狼さんみたいだけれど大丈夫なの?」
「風邪を引いて喉が少し壊れただけさ。お前の顔を見れば、きっと良くなるよ・・・もっと近くに来ておくれ」
「お婆さんの目がギラギラがしているけれども、どうして、そんなにこわい目をしているの?」
「──それはね、美味しそうなご馳走が運ばれて来たからさ!」
──ズドン。
お婆さんが赤ずきんに飛び掛かろうとした瞬間、鉄砲の音が響きます。
お婆さんの正体は悪い狼でした。そんな悪い狼は入り口に立っていた猟師と一緒にいる同じ狼を見て驚きます。
「──どうして?」
悪い狼の視線の先にはあの働き者の狼がいました。
働き者の狼は言います。
「友達だからさ。友達が悪い事をしていたら、止めるのも友達の務めだからだよ」
──その後、悪い狼は猟師と一緒に出て行きます。
働き者の狼は赤ずきんに頭を下げました。
「・・・ごめんね。私も悪い狼なんだ。友達が悪さをするのを止められなかった。
だから、私と私の友達はこれから、きちんと罪を償って来るよ」
「じゃあ、本当のお婆さんはどこなの?」
「赤ずきんちゃんの本当のお婆さんは数日前に病が悪化して天国に旅立ってしまったんだよ。
裏庭にお墓を作っておいたから案内するね」
赤ずきんは働き者の狼と一緒にお婆さんのお墓で手を合わせ、お供え物をします。
「お婆さんの最期は私達が看取ったんだよ。最期までお婆さんは赤ずきんちゃんに会いたがっていたんだ。
そんな気持ちに漬け込んで私の友達の狼が赤ずきんちゃんを食べようと来るのを待っていたんだ。
私も止めたけれども友達の狼は止まらなかった。だからこそ、友達を止められなかった私も悪い狼なんだよ」
「・・・お婆さん」
「こうして来てくれただけでも、お婆さんはきっと喜んでくれているよ。だから、そんな悲しそうな顔はしないで上げて」
働き者の狼はそう言って猟師と共に去って行きます。
そんな狼に赤ずきんは言いました。
「狼さん、お婆さんの最期を見届けてくれた上にお墓まで作ってくれて、ありがとう」
赤ずきんの言葉に働き者の狼は照れ臭そうに笑うと猟師に頭を下げて去って行きました。
赤ずきんはお母さんにこの事を伝えました。
お母さんはとても悲しそうな顔をして赤ずきんを抱き寄せます。
「お婆さんの事もあるけれども、赤ずきん──あなたが無事で良かったわ。あなたまで失ったら、私はどうして良いか分からなかったもの」
しくしくと泣くお母さんの頭を赤ずきんは優しく抱き、しばらく、二人をそのままに時だけが過ぎて行きます。
それから数年の月日が経ち、赤ずきんは大きくなりました。
いまでは赤ずきんがお母さんで小さな女の子が赤ずきんになっています。
お母さんになった赤ずきんは小さな赤ずきんに言います。
「悪い狼さんには気を付けなさい。けれどもね、みんながみんな、悪い狼さんじゃないのよ。中には優しい働き者で友達思いの狼さんもいるの。だから、困っている狼さんがいたら時には話を聞いて上げる事も大切な事だわ。これがお母さんのお話。あなたはどんな狼さんと出会うかしらね、赤ずきん?」
《おしまい》
赤ずきんはお母さんといつも一緒でとても幸せな毎日を過ごし、この時がいつまでも続いたらと思ってました。
──ある日、赤ずきんのお婆さんが病に倒れたとの連絡が入ります。
その日から赤ずきんのお母さんは毎日、そわそわしてました。赤ずきんはお母さんの変化にとても心配になります。
それからしばらくして、お婆さんから手紙が届きます。
──内容はこうでした。
『代筆して貰って手紙を出しました。
私もそんなに長くは生きれそうもない。
最期に一目で良いから孫である赤ずきんの姿が見たかった』
その手紙を見て、赤ずきんのお母さんは寝込んでしまいます。
小さな赤ずきんはそんなお母さんを心配する事しか出来ません。
翌日、赤ずきんのお母さんは赤ずきんにおつかいを頼みます。
「赤ずきんや。お婆さんのところにパイを届けて上げておくれ。
寄り道とかはせずに真っ直ぐ、お婆さんの家へ向かうんだよ。それと悪い狼に気を付けるんだよ」
赤ずきんはお母さんの言い付け通り、真っ直ぐお婆さんの家へと向かいます。
その途中で赤ずきんは倒れた狼と出会います。
お母さんには悪い狼に気を付けるように言われましたが、心優しい赤ずきんは見過ごせません。
「狼さん。こんなところでどうしたの?」
「ああ。天使が迎えに来ましたか・・・」
「しっかりして私は赤ずきんよ!これからお婆さんのところへ出来立てのパイを届けに行くの!」
「ああ。赤ずきんちゃんと言うのか・・・良かったら、そのパイを少し分けてくれないかい?・・・飲まず食わずで働き過ぎてロクに何も食べてないんだ」
「どうして、そんなになるまで働いているの?」
「それしか、私に出来る事がなかったからだよ。女の子と遊んだり、お酒を飲んだりせずに真面目に働くのが私の取り柄だからね。
それに私が働くと皆が幸せそうにしているから仕事が楽しいんだよ」
「皆の為に働くなんて、あなたはとても良い狼さんなのね?」
「一口に狼と言っても色々いるんだよ。けれども、本当に悪い狼は──いや、なんでもない」
狼は何か言い掛けて口を閉ざします。
そんな狼のお腹がぐ~っとなると狼はそれっきり動かなくなります。
流石に放っておけなくなった赤ずきんは狼にパイを少し分けて上げる事にします。
狼は弱々しくパイを咀嚼して飲み込み、なんとか一命を取り留めます。
「ありがとう、赤ずきんちゃん。お蔭で少しは元気が出たよ──このお礼は必ず、するからね」
働き者の狼はそう言うとフラフラと茂みへと消えて行きます。
赤ずきんはそんな狼を見送ると改めて、お婆さんの家へと向かって歩き出します。
赤ずきんがお婆さんの家へ向かい、ノックをするとしわがれた「お入り」と言うお婆さんの声が聞こえました。
家へと入ると寝室で眠るお婆さんの姿がありました。
「お婆さん。お婆さんの身体はどうして、そんなに大きいの?」
「美味しいものをいっぱい食べて元気になったからさ」
「けれども、声も低いわ。まるで狼さんみたいだけれど大丈夫なの?」
「風邪を引いて喉が少し壊れただけさ。お前の顔を見れば、きっと良くなるよ・・・もっと近くに来ておくれ」
「お婆さんの目がギラギラがしているけれども、どうして、そんなにこわい目をしているの?」
「──それはね、美味しそうなご馳走が運ばれて来たからさ!」
──ズドン。
お婆さんが赤ずきんに飛び掛かろうとした瞬間、鉄砲の音が響きます。
お婆さんの正体は悪い狼でした。そんな悪い狼は入り口に立っていた猟師と一緒にいる同じ狼を見て驚きます。
「──どうして?」
悪い狼の視線の先にはあの働き者の狼がいました。
働き者の狼は言います。
「友達だからさ。友達が悪い事をしていたら、止めるのも友達の務めだからだよ」
──その後、悪い狼は猟師と一緒に出て行きます。
働き者の狼は赤ずきんに頭を下げました。
「・・・ごめんね。私も悪い狼なんだ。友達が悪さをするのを止められなかった。
だから、私と私の友達はこれから、きちんと罪を償って来るよ」
「じゃあ、本当のお婆さんはどこなの?」
「赤ずきんちゃんの本当のお婆さんは数日前に病が悪化して天国に旅立ってしまったんだよ。
裏庭にお墓を作っておいたから案内するね」
赤ずきんは働き者の狼と一緒にお婆さんのお墓で手を合わせ、お供え物をします。
「お婆さんの最期は私達が看取ったんだよ。最期までお婆さんは赤ずきんちゃんに会いたがっていたんだ。
そんな気持ちに漬け込んで私の友達の狼が赤ずきんちゃんを食べようと来るのを待っていたんだ。
私も止めたけれども友達の狼は止まらなかった。だからこそ、友達を止められなかった私も悪い狼なんだよ」
「・・・お婆さん」
「こうして来てくれただけでも、お婆さんはきっと喜んでくれているよ。だから、そんな悲しそうな顔はしないで上げて」
働き者の狼はそう言って猟師と共に去って行きます。
そんな狼に赤ずきんは言いました。
「狼さん、お婆さんの最期を見届けてくれた上にお墓まで作ってくれて、ありがとう」
赤ずきんの言葉に働き者の狼は照れ臭そうに笑うと猟師に頭を下げて去って行きました。
赤ずきんはお母さんにこの事を伝えました。
お母さんはとても悲しそうな顔をして赤ずきんを抱き寄せます。
「お婆さんの事もあるけれども、赤ずきん──あなたが無事で良かったわ。あなたまで失ったら、私はどうして良いか分からなかったもの」
しくしくと泣くお母さんの頭を赤ずきんは優しく抱き、しばらく、二人をそのままに時だけが過ぎて行きます。
それから数年の月日が経ち、赤ずきんは大きくなりました。
いまでは赤ずきんがお母さんで小さな女の子が赤ずきんになっています。
お母さんになった赤ずきんは小さな赤ずきんに言います。
「悪い狼さんには気を付けなさい。けれどもね、みんながみんな、悪い狼さんじゃないのよ。中には優しい働き者で友達思いの狼さんもいるの。だから、困っている狼さんがいたら時には話を聞いて上げる事も大切な事だわ。これがお母さんのお話。あなたはどんな狼さんと出会うかしらね、赤ずきん?」
《おしまい》
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