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陰猫(改)

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二日目・分析まとめ

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「……ふむふむ。今回はこんなものかな?」

 配信を終えた朝多マヤはそう言うとペンを走らせ、今日のリスナー達とのやり取りを振り返る。

「少し早いけれども、アンチ対策はしておいた方が良さそうかな?
 伝達の仕方とか工夫はもっと、必要だけれども、いまは土台崩壊がこわいな」

 リスナー傾向を分析しながら朝多マヤはやり取りを文字として言語化する事で可視化すると次に配信水準について考える。
 現代のパフォーマンスにおける配信機材はあくまでも、スマートフォンで可能でかつ、学生の朝多マヤでも揃えられる最低限の機材である。
 今後を考えるのであれば、配信機材のランクアップなども考えなくてはならないが、現段階で可能なパフォーマンスレベルのランクアップはトーク力であろう。

 会話言語をより分かり易く、明確にし、言葉として相手に認識させる事で会話というものは成立するが、配信媒体は違う。
 会話による相手の反応があるとは言えども、喋れるのはドクター・エンゼルフィッシュだけである。
 つまり、会話によるキャッチボールが成立せず、投げたボールが壁で跳ね返り、一人でキャッチボールをするのに近い状態と言える。
 今後はリスナーのコメントが方向性を決める訳だが、朝多マヤにとってニーズを増やさなくては意味がないので頭打ちにならないかを懸念せねばならない。

 そして、迷信などの仮説による情報を信じ込ませたりする事が問題視される中で自分が綱渡りをしている状態なのを意識しつつ、朝多マヤはこれらをクリアし、自信の目的である日本が本来持つ独自性の追求した文化を早く研究したかった。
 当然、焦りも生まれるが、それ以上に彼女の知的探求がより深い歴史のルーツへの仮説に導こうとしていた。

 自身の追求の為にしなくてはならない事。ルール内で如何に自身の目的である文化ルーツの発掘をするか、如何にそれらを他者に視認させ、疑問を持たせて更なる情報拡散を引き起こすか。

 これこそが朝多マヤの文化ルーツの発掘と人間の意識改革に繫がると彼女は思っていた。

 妖怪談義で疑問に思った事を口にしても大学の仲間も教授も答えを口にしない──否、答えとなる言葉を口に出来ない。
 それらは伝承や神話の存在があるとは言ってもルーツを調べると言った事をいままでする者がいなかったからである。
 言語ルーツも妖怪談義で言語ルーツの変化が記されているが、それらが何処から来て、どう広まったかを明確に記す手掛かりになったとは言い難い。
 妖怪談義の言語ルーツをマヤなりに分析した感じでは南から北上か、北から南下の2パターンである。

 最も多いのは南からの北上ルーツである。
 南側の外交発展に伴う北上ルーツの拡散が妖怪談義で記されたルーツとも読める事を朝多マヤは発見した。
 ならば、それ以前の言語などはロストしている事になる。
 この言語ルーツを発掘するのは難しいであろう。
 それと同時に朝多マヤは情報拡散による一つの実験を試みていた。

 従来の言語ルーツ拡散の仕方は南側の外交発展による情報拡散が一つの仮説である。
 では、現代のインターネットの普及した時代に拡散されるルーツは何処が主流になるのか、また、どの地域から拡散交流が行われ、それに伴い、言語ルーツと化すのか。

 それらを観測し、発表するまでを朝多マヤは論文にする事が彼女の目的であった。
 それまでに4年の文化の交流と拡散、情報伝達と疑問点の洗い出しをする事で現代社会の情報拡散速度と文化ニーズを観測し続けようと彼女は決めたのである。

 これが如何なる答えに行き着くかは定かではないが、それ故に知的探求が何処まで続くかを朝多マヤは知りたかった。
 最長で4年、最短で1年。それまでは記録し続け、このアプリ内でデータを取り続けようと彼女は誓うのであった。

 無論、それは並大抵の努力では続かないであろう。
 故に朝多マヤはこれからの長い道のりを覚悟する必要があったのである。

 分析を一区切り終えると朝多マヤは大きく背伸びをしてから、ベッドへとダイブし、そのまま、深い眠りへと落ちるのであった。
 明日になれば、大学へ学問を学ばねば、ならなくなる。
 ルーツの記録管理も重要であるが、学生として本分を忘れぬ事も彼女の務めであった。
 デジタルによるブルーライトを浴びた故に眠気はあまり、感じないが、それでも寝なくてはならない。

 まずはこの生活に慣れる事──それが朝多マヤの最重要項目であった。
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