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第1章【侍と天使】
第1話『職を失った侍と舞い降りた天使』
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「ふわぁ~」
欠伸を一つしながら風馬景信は背筋を伸ばすとベッドから立ち上がり、近くにあったテレビのリモコンを操作してテレビの電源をオンにする。
『──次のニュースです。戦ヶ崎市伍光地区にて怪異の出現を確認しました。これに対し、政府は近隣の侍や陰陽師に応援を要請するとの事です』
風馬は顔を洗って歯を磨くと寝間着から普段から外出の為に着こなしているくたびれた黒いワイシャツと色褪せたジーパンに身を包み、侍である事を象徴するジャケットを羽織る。
そして、普段から愛用している刀の手入れをしてから黒塗りの鞘に納めると玄関の扉を開けながらスマホを起動して着信履歴やLINEヤホーを確認する。
5件にも渡る着信回数や短いLINEのメッセージスタンプの履歴を見て、風馬はダメ元で相手に電話する。
留守録に切り替わりそうになった直後、連絡相手に繋がり、風馬はとりあえず大丈夫そうで安心する。
「もしもし、風馬です──あー。すみません。今、目が覚めました。
いまから向かいますんで、もう少し踏ん張ってて貰えますか?・・・はい。全速力で向かいますんで。大丈夫ですよ。事故ったりしませんから・・・はい。あとは着いてからですね。わかりました」
風馬はスマホの通話機能で相方である人間──相川朝緋にそう連絡すると普段から使うクロスバイクを漕いで全力疾走で向かう。
その速度はテレビで活躍する競輪選手並みに速く、途中で車を五台ほど追い抜いて相川が待つ現場へとクロスバイクを漕ぐ。
肉眼で茶色のスーツの女性と常識では考えられない異形の生物が対峙しているのを確認すると風馬は急ブレーキを踏み、腰のベルトの専用ホルスターに差していた鞘から刀を抜刀すると異形の生物へと向かうようにして後輪を浮かせたクロスバイクから跳び上がる。
「いらっしゃいませえぇ!」
その異形の生物に斬り掛かりながら叫ぶと異形の生物──ドラゴンも雄叫びを上げながら上体を起こしながら翼を広げ、その前足を風馬に振るう。
ドバンと言う音を風馬が聞いたのはその直後であった。
相川が牽制でドラゴンにショットガンを放ったのである。
ドラゴンが怯んだ瞬間を見計らって風馬は空中で身を捻り、突き出された腕を斬り捨てながら着地し、怒り狂うドラゴンの反撃を予想して炎を吐かれるよりも先にそのまま素早く後方へと下がる為に跳ぶ。
その後方には相川が黒いロングヘアーを靡かせながら凛とした顔でショットガンを手にドラゴンを見据えていた。
「フォローありがとうございます、相川さん!」
「遅い。15分の遅刻よ」
「うぐっ・・・すみません。埋め合わせは囮になる事で許してくれませんか?」
「帰ったら今回の始末書の提出もお願いね」
「うっす。相変わらず、お役所仕事は大変そうですね?」
軽口を叩きながら風馬は相川と共に今回の怪異であるドラゴンを見据える。今回の怪異の正体は一般的な西洋風のドラゴンのようである。
風馬達にとっては久しぶりの大物相手となるが、風馬には余裕があった。
「それじゃあ、相川さん。いつもの奴を頼みますね?」
「わかったわ。今回は大物相手だし、長めに集中するから少し時間を頂戴」
相川はそう言うと風馬にショットガンを預け、風馬の方も相川さんに手にしていた刀を預ける。
「こっちだ、蜥蜴野郎!」
そう言いながら風馬は相川の詠唱の邪魔にならぬようにショットガンを発砲しながらドラゴンを牽制する。
その間に相川さんが神経を集中させ、受け継がれし儀式詠唱を開始する。
「我が身に宿りし陰陽の血よ。我が命を以て彼の者をあるべき輪廻へと祓い、清めたまえ。
我が名は相川朝緋。陰陽師朝月相川法潤言代守の末裔なり」
相川の詠唱が完了し、ドラゴンの背後に鬼門が出現する。
そして、相川に預けた風馬の刀の刀身が眩い光を放ち出す。
「──退魔の儀『依り抜きの理』」
相川はそう呟くと風馬に向かって刀を投げる。
その刀を造作なく、キャッチすると風馬はショットガンを捨ててドラゴンと対峙し、いつもの真言を以て退魔の儀を完遂する為に動く。
「此処は汝が在るべき世界に非ず!依り代より離れ、その魂の在るべき世界へと還れ!」
──風馬が光の刃を飛ばし、それを受けたドラゴンの魂が鬼門へと吸い込まれて行く。
しかし、流石は大物相手故にか、完全な依り代から切り離すには至らず、風馬は普段なら行わないニノ太刀を繰り出し、ようやくドラゴンの魂を鬼門へと還す。
完全にドラゴンと呼ばれる異形の魂が吸い込まれて門が閉まると鬼門はスーッと消え、残されたのは依り代となっていた人間とドラゴンが暴れたという痕跡だけであった。
「──退魔の儀"鬼門還し"・・・此処に完了」
「ご苦労様ね、風馬君。相変わらず、見事な手際だったわ」
そう言うと相川は風馬が投げ捨てたショットガンを拾って彼に近付く。
「ただし、物を扱う時はもっと慎重にお願いね。付喪神になるのも怖いけれども何よりも礼節をわきまえない侍は侍として三流よ」
「あっと・・・すいません。気を付けます」
相変わらず、手厳しいが、相川が正しいので風馬も素直に謝る。
風馬が刀を鞘に納めてドラゴンの依り代となっていた人物の安否を確認していると少し遅れてパトカーのサイレン音が遠くから響き渡り、数人の警察官が風馬達に近付いて来る。
「やれやれ。来るのが遅いですよ」
「仕方ないわ。これは侍と陰陽師にしか出来ない事なんですもの。その分、犯罪関連は私達ではどうしようもないわ」
相川とそんな話をしながら、風馬はチラチラと降りだした雪を眺める。
こうして、風馬景信と言う侍の令和5年の慌ただしい12月は幕を明けるのであった。
全ての根源は昭和後半期に現れたインターネットの普及と共に異世界と日本がアクセスした事が発端だと風馬は小学生の頃に習った。
異世界の存在は現世に直接現れるのではなく、ある条件に該当した人間に憑依し、人間がいままで用いて来たあらゆる武器を無効化するのであった。
しかし、人間にも対抗手段が完全に断たれた訳ではない。
即ち日本が誇る刀である。無論、刀のみで相手をしたとしても憑依した人間が劣勢になれば、その魂は憑依対象を変えるのみで真の解決策には至らない事も発覚した。
そこで更に研究が進み、退魔の儀に必要とされる陰陽師の血を宿す特殊な人間の鬼門への還す儀式であった。
こうして、受け継がれた異世界との戦いで得た知識と経験により現代に侍と陰陽師と言う役職が蘇ったのである。
そんな侍と陰陽師の異世界からの侵略──もとい怪異との戦いの歴史は昭和から平成、平成から令和へと続いて来たのであった。
これがこの世界の異世界と共存しながら行われる特殊な仕事である。
この仕事がある限り、食うには困らないが、日に日に異世界の勢力──魂が力を付けているので風馬も楽観視が出来ないのも事実である。
この状況がいつまで続くのか・・・それこそ、神のみが知る世界だろうと思いつつ、風馬は警察官と話していた相川に呼ばれ、彼女に顔を向けて近付くのであった。
12月ははじまったばかりである。
──この時の風馬はまだ自分の運命が大きく動き出すのを知らずにいた。
───
──
─
──戦ヶ崎市伍光地区。
戦ヶ崎うどんがと呼ばれるうどんが名物であり、怪異の出現以外にも野生動物が多く目撃される東京都内でも比較的に田舎にあたる場所である。
一見してのどかな場所ではあるが、現代の世界で侍の存在が再び息を吹き返した地とも言うべき場所であるが為、この地にて侍を志すものも多い。
侍を名乗る為には特殊な訓練と帯刀許可書による技術試験だけでなく、対になる役職である陰陽師を生業とする家系に仕える事を義務付けされている。これは怪異の討伐や撃退に陰陽師の培って来た陰陽道を称する特殊な力が必須となる為であり、侍は対に該当する陰陽師を主君として仕えねば、ならない規則があった。
風馬は身体能力こそ、人間離れしているもののまだまだ荒削りであり、とある事情で主君となる陰陽師に仕えている訳でもない。
故に伍光地区の役場にて対になる陰陽師が見付かるまでの間、役場にて仮の資格を得る事で役場に貢献しているに過ぎないのであった。
その契約有効期限も2年と期間が決まっており、風馬はこのまま侍ではなく、別の職業を探す準備を始めようかどうするかを迷っている最中であった。確かに特殊な訓練で風馬の侍としての身体能力はずば抜けている。
その気にさえなれば、他のスポーツの類いのプロの選手として成り上がる事も可能なのだろうが、風馬にはその気すらもなかった。
寧ろ、侍以外の生き方以外知らず、今後についても前々から悩んでいたが、新しい進路が決まった訳でもない。
風馬自身はほどほどの力量で安定した収入が得られれば、なんでも良かった。
しかし、当然と言うべきか、そんなに都合の良い話がある訳もなく、風馬はいつものようにハローワーク通いと役場通いを繰り返していた。
そんな彼に突然の悲報が舞い込んで来る。
この2年近く、対になっていた役場スタッフである陰陽師・相川朝緋の退職である。
「え?相川さんが辞めた?」
「ええ。一身上の都合と言うので詳しくは聞いてませんが、かなり前から無理をされていたようです。退職についても前々から考えられていらっしゃったらしくて・・・」
役場の新しい受付のそんな言葉に風馬も自分の耳を疑った。
自分の事もであったが、あの生真面目な相川が退職を考えていた事にも驚きが隠せなかった。
そんな風馬に追い討ちをかけるように新しい受付嬢が言葉を続けた。
「風馬さんにも突然で申し訳ありませんが、次のスタッフが見付かるまで侍の資格は剥奪させて頂きます」
「・・・えっと、この場合って失業手当てって出ますか?」
「残念ながら風馬さんは役場の正規の侍としての条件ではなく、臨時採用されて頂いていただけでしかありませんので失業手当てを得る事が出来るのかは少し難しいかと」
風馬は受付とそんなやり取りをした後に肩を落として役場から去って行く。明日から収入を得るのが一層難しくなる。
派遣で侍として仕事をするのもアリなのだが、場所によっては伍光地区を離れなくてはならないし、力量も解らぬ強力な怪異を相手にしなくてはならなくなるかも知れない。
下手をすると収入目的で侍や陰陽師の偽る詐欺紛いの人間と組まされる事もある。
侍として仕事を続けるにしても職場内容などの厳選が必要である事には変わらない──かと言って、このままでは困る。
はてさて、どうしたものか?と悩みつつ、風馬は役場から出て最寄りのハローワークへ向かおうとしていた。
──まさにその時であった。
「・・・あの」
そんな風馬にひとりの少女が声を掛ける。悩んでいた風馬がその声に気付き、眼前の少女に視線を向ける。
身なりから察するに少女は星女晴明学園と呼ばれる陰陽師の育成を専門に扱う学園の生徒であろう。
そして、恐らくは陰陽師見習いか何かなのであろう事は確かであった。
役場周りで仮登録の陰陽師や侍をスカウトしようとする事自体は珍しい事ではない。
今回のように声を掛けられる事もあるが、それにしては目の前の少女は若過ぎるように風馬には思えた。
「声を掛けて、すみません。お兄さんはお侍さんですよね?」
「つい、さっきまではね。いまはただのフリーターさ」
「そうですか・・・あの、良ければ、私のお侍さんになりませんか?」
やはり、スカウトの類いかと思いつつ、風馬は丁寧に断る。
「ありがたい申し出だけれど、お嬢ちゃんは学生だろう?──と言う事はまだ陰陽師見習いか何かだろう。
悪いけれども、侍の規約上、未成年の相手の侍は出来ないんだ」
「なら、卒業するまで待って頂けませんか!必ず、一人前の陰陽師になりますので!」
よくは解らないが、この少女は風馬を侍に選びたいようであった。訳アリなのは理解したが、何故に此処まで固執するのかが風馬には解らなかった。
仕方なく、少女が卒業して陰陽師となるまで待つ事を約束すると少女は花が咲いたように笑う。
これだけ見ると無垢な子どものようであった。ある意味で風馬も天使のようなその少女の笑みに少し救われたような気がした。
「約束ですよ!嘘ついたら赦しませんからね!」
「はいはい。解ったから話はこれでおしまいね。悪いけれども、こっちも今日からフリーターでさ。
明日の飯の心配もしなきゃいけない身だから、これで・・・」
「そんなに大変なんですか?」
「まあ、それなりに・・・いや、かなり大変かな?」
「だったら、うちに来て下さい!」
「・・・いや。なんで、そうなるの?」
屈託のない少女の言葉に風馬も思わず、ツッコんでしまう。
侍は主君に対して恋愛感情を抱くのも性的に手を出す事も許されない。
そもそも、陰陽師をする者は祓い、清めるが故に穢れを行う行為を極端に嫌うところがあるのだが、目の前の少女はそんな事を一切、考えてない素振りであった。
風馬は改めて、少女を観察する。
黒髪に淡い瞳を見るに生粋の日本人だが、その容姿は制服がなければ、更に幼く見えていただろう。
寧ろ、相手が純真無垢過ぎて星女晴明学園の生徒のコスプレした小中学生だとも考えられるし、Uチューバー関連のドッキリ企画である可能性も拭えなくはない。
そんな風にあれこれ頭を悩ませている風馬に対してツッコみを受けた少女は不思議そうに首を捻る。
「だって、お侍さんなのに生活に困っているんですよね?」
「いや、まあ、確かにそうっちゃあ、そうだけれども・・・普通、見ず知らずの人間と同居しようとするかね?」
「?」
「あー・・・OKOK。お嬢ちゃんがその手の話題が全く解らんのが、なんとなくだけれど解った。
けれども、ゴメンね。規則は規則だからさ」
「そう、ですか・・・」
少女が残念そうに肩を落とし、風馬が横切ろうとすると少女は風馬の後ろから出て来た刀を差した別の人物に声を掛けようとする。
「あの、すみません。おさむ──」
「ちょっと待てえええぇぇーーっっ!!」
あまりにも無知な少女の行動に堪らず、風馬は叫んで少女の肩を掴む。
少女はあまりにも無知過ぎていた。それは世の中の恐さなど知らないかのように・・・流石の風馬もそんな少女の将来が不安になってしまって思わず、止めに入る。
「え?え?・・・えっと、どうかしましたか?」
「どうかしましたか?──じゃないよ!お嬢ちゃんは自分が色々とヤバい事をやっているの気付いている?
もしや、ギャグ?ギャグか?──いや、そんな無知な顔をして裏では色々とやらかしている系のUチューバーかなんかなのか!?」
「え、え~っと、そんなに私って変でしょうか?」
「変だからツッコんでんでしょが!お嬢ちゃんはあれか!──異世界からでも来た天使の生まれ変わりか何かか!」
「え?──ちょ、ちょっと待って下さい!
な、なんで天使の生まれ変わりだってバレたんですか!?」
「・・・え?」
「・・・え?」
直後、時が止まり、我に返った風馬は彼女の手を掴んで、とんでもない拾い物をしたと内心で思いつつ、天使の生まれ変わりを自称する少女と共に再び役場へと足を運ぶのであった。
───
──
─
風馬のもたらした情報に伍光地区にある役場内は慌ただしくなった。
結論から言ってしまえば、少女が嘘を言っている訳ではないのが明白だったが、役場内で行える簡易検査の結果だけで見てもより一層、信憑性を増したのである。
簡易検査を行った役場内での霊力測定器のデジタル測定器も従来の陰陽師よりも少女が遥かに高エネルギーのオーラを放っている事が解り、その不純物を全くと言っていい程、含んでいない聖なるエネルギーは明らかに人外のそれである事も発覚した。
スタッフによっては少女の小さな身体に菩薩のようなものをも見たであろう。それくらい純真無垢で清らかなるオーラを少女は発していたのである。
異世界との同化がもたらしたものなのか、このような人間は稀に出て来るのを風馬も知識として知ってはいたが、実際にこの目で実物を──しかも何らかの生まれ変わりの類いを目撃するのはこれが初めてである。
なので、流石にどうしたものかと風馬が悩んでいると受付の女性が役場で決定した事を風馬に報告する。
「遅くなりました、風馬さん。こちらの提案としてなのですが、風馬さんには特別監視員として臨時でになりますが再度、役場のスタッフとして採用させて頂きます。つきましては彼女──天月光癒ちゃんと行動を共にする事をお願い致します」
「・・・つまりはお嬢ちゃん──天月さんと同居せよと?」
「そうなります。此方の準備不足もありますが、相川さんの引き継ぎなどで、いまは人手が足りませんので・・・臨時とは言え、侍経験のある風馬さんなら問題ないでしょう。
天月さんが卒業し、陰陽師として登録されましたら、そのまま彼女の侍として正規登録を行わせて頂きます」
「大丈夫ですか?不純異性行為とかになったら、どうするんですか?」
「その時は風馬さんが役場が信頼出来る人物ではないと認定し、今後の斡旋出来るお仕事が限られてしまいますのでご注意下さい」
「・・・ですよねえ?」
「気休めに聞こえるかも知れませんが、これも風馬さんに侍として必要な試練だと思って下さい」
「これからこの子と同居させられる健全な男性に言う事じゃないですよね、それ?」
風馬は「トホホ」と肩を落として深いため息を吐くと未だに状況を理解していない顔をしている天月光癒に顔を向ける。
「よく解ってないのですが・・・私って、どうなっちゃうんでしょうか?」
「とりあえずは大丈夫そうだから安心してくれ」
「そうなんですか?・・・それなら良かったです~」
「あとはさっき、お嬢ちゃんの──あっと、光癒ちゃんって呼べば良いかな?──光癒ちゃんちに行く話だったけれども急でなんだけれども、厄介になっても構わないかな?」
「──っ!はい!是非、うちに来て下さい!」
(くそっ・・・可愛いな。流石は天使の生まれ変わりなだけある)
風馬はそんな事を思いながら一旦、借り住まいの自宅へと向かう。
その後ろからとてとてと光癒がついて来る。
「・・・えっと、なんで、ついてくんのかな?」
「あ、すみません。お侍さんのお部屋って言うのが、どんなものか気になってしまって・・・迷惑でしたか?」
「う~む。本当にびっくりするくらいに素直だねえ?・・・まあ、うちに来るくらいなら問題ない・・・のか?・・・一応、役場の要請だし、問題ない、よな?」
風馬はそんな事をぼやきながら素直な事を褒められたと勘違いして照れている光癒と共に自宅へと到着する。
その光景を見て、光癒はひどく驚く。
「こ、これがお侍さんのお部屋ですか?」
「・・・うん。わかっている。凄く散らかっていて汚いって言いたいんだろ?」
「そ、そんな事は・・・」
「いや、良いから。変に気を配られるよりは素直に言われた方がよっぽどマシなレベルなのは自分でも解っているからさ」
そう言って風馬はテキパキと掃除や整理をはじめる。
そんな風馬を見て、光癒の世話焼きモードに火が点いたようにウズウズする。
「風馬さん!やっぱり、私もお手伝いしますね!」
「え?──いや、悪いよ。すぐ終わらせるからさ」
「お気になさらず!──と言うか、こんなに汚れてしまったお部屋は綺麗にして上げなきゃ可哀想じゃないですか!」
「・・・うぐっ!素直に言われた方がダメージ少ないと思っていたが、まさか、火の玉ストレートで来るとは・・・光癒ちゃんって綺麗好きか、世話焼きさんなんだね?」
そんな事をぼやきながら風馬は光癒にいまは亡き母の姿を重ねるのであった。
「まずはベッドの下ですね!」
「──っ!?はい!ストップ!そこは自分でやるから、光癒ちゃんは台所とかからを頼むよ!あっちの方が汚れているからね!」
「?──よく、わかりませんが、わかりました!」
(あっぶねえ。危うく性癖を暴露されるところだったわ)
風馬は冷や汗を掻きながらベッドの下の秘蔵コレクションをどうするかを真剣に悩む。
──それから程なくしてピカピカにされた風馬の部屋を見て、光癒は満足そうに頷く。
「これでバッチリですね!」
「う、うん。そうだね?」
鼻歌交じりに風馬の洗濯物を片付ける光癒に対して風馬はぐったりと脱力しながら「ぜったい忘れているよな?」と呟く。
「ねえ、光癒ちゃん?」
「はい。まだ何かお手伝いする事がありますか?」
「・・・いや、そうじゃなくて何か大事な事を忘れているとかない?」
「・・・あ!そうでした!」
風馬の言葉に光癒はポンと手を叩くと何故か浴室へと向かう。
「排水溝の髪の毛ですね!私とした事がうっかりしてました!」
「違う違う。そうじゃなくて俺の自宅に来たのは光癒ちゃんの家にお邪魔させて貰う為だろう?」
「・・・あっ!」
その言葉に光癒もようやく本来の目的を思い出し、「すみませんすみません」と謝りながら掃除をする手を止める。
風馬もだいぶ疲れたが、本来の役目も果たさねばならないので、「これからが本番だ」と気合いを入れ直す。
「それじゃあ、行くか・・・必要なものは証明書とキャッシュカードとスマホくらいだしね。あとはクロスバイクくらいか。替えの下着とかはどうするかな?」
風馬は持って行くものを厳選していると光癒が不思議そうに首を捻る。
「風馬さんはどこかへお泊まりでも、するんですか?」
「え?何処って光癒ちゃんちだけれど?」
「・・・ふぇっ!?」
そう言われて光癒は今更ながら顔を赤らめた。
「そ、それはちゅま──つまり、風馬さんと一緒に寝るって事ですか!?
コ、コウノトリさんが赤ちゃんを運んで来ちゃうんですか!?」
「・・・ああっと何処からツッコみゃ良いんだ、コレ?」
さしもの風馬もドキドキしている光癒に頭を抱えそうになる。
「よし。少し整理しよう。俺は光癒ちゃんちに呼ばれた訳だよね?──それは同居とかって意味ではないのね?」
「ちが──違いましゅ──違います。うちはちょっとしたお料理屋さんなので風馬さんもお腹いっぱいになって幸せになると思っただけでして・・・」
「ああ。そう言う事ね?・・・いや、同居とか泊まり込みについては俺の勘違いっぽいから気にせんでくれ」
風馬はようやく、光癒の言葉の意図を理解して他意がない事に納得する。
それから他に気になっていた事を質問する。
「光癒ちゃんの生まれ変わる前の世界ではコウノトリが赤ちゃんを運んで来るものなの?」
「え?この世界では違うのですか?」
「あ~っと、この話についても忘れてくれ。説明するのが難しい。
大人になれば、その内に違いとかに気付くだろうし、それまでは気にせんでくれ」
「そうなんですね!なら、私も早く大人になってみたいです!」
「・・・俺はこのまま、光癒ちゃんが大人になっていく方が心配だがな。将来、悪い大人に騙されないか心配だよ」
風馬は目を輝かせるピュア過ぎる光癒にボソッと呟くと最低限の必需品だけ持って光癒と共に再び外に出る。
だいぶ日も暮れて来たせいか、少し肌寒さも感じるので風馬は光癒を自宅前で待たせ、近くの自販機でホットの缶コーヒーを2本買う。
「──っと、相川さんとのくせでついつい、両方ともブラックで買っちまったな?・・・光癒ちゃん、飲めるかな?」
そんな事をぼやきながら風馬は来た道を戻ると光癒に温かい缶コーヒーを渡す。
光癒は初めて飲む缶コーヒーのブラックに興味津々であったが、一口飲んで盛大にむせるのであった。
───
──
─
「・・・ふぇっ・・・えぐっ・・・んぐっ」
「・・・あのさ、無理に飲まなくても良いんだよ?」
「でも、風馬さんが折角、買ってくれたコーヒーですから・・・んっ・・・んぐっ」
「いや、本当に無理に飲ませる気はなかったんだ。それは俺が貰うから別の買って来るよ。
一応、間違えがないように聞くけれど、オーダーはある?」
「・・・あの・・・それならホットレモンを」
「ホットレモンね?・・・OK」
風馬は光癒が飲みきれなかったコーヒーを受け取って一気に飲み干すと自販機へとダッシュで向かい、ホットレモンを購入して急いで戻る。
「ほい。ホットレモン」
「あ、ありがとうございます」
涙をポロポロ溢しながら光癒はホットレモンを飲むと少しずつ落ち着きを取り戻し、頬を赤らめて「ほぅっ」と一息吐く。
そんな小動物のような光癒の姿を見て、風馬は自然と光癒の頭を撫でていた。
そんな風馬の行動に光癒は戸惑った様子を見せるがホットレモンのボトルを両手で持って上目遣いで風馬を見る。
「あっと、すまない。なんか、自然と手が出てたわ」
風馬は我に返って、そう言うと光癒の頭を撫でていた手を離す。
そんな風馬に対して光癒は何も言わずに俯いたまま、ホットレモンをチビチビと飲む。
(やれやれ。子守りってのは得意じゃないんだがな)
そんな事を考えながら風馬は自分の頭を掻いて空を見上げて──
──赤黒く染まる空に異変を感じる。
「光癒ちゃん。スマホ持っている?」
「ふぇっ?・・・あ。持ってますけれど・・・」
「緊急速報で異界の門が開かれたとかってニュースがあったりしない?」
風馬がそう聞いた次の瞬間、遅れて非常事態を知らせるアラームが鳴り響き、驚いた光癒がわたわたとしながら自分のスマホを落とさぬように手にして速報ニュースに目を通す。
その間に風馬は異変の元凶へと疾走する。
そこで目にしたのは異形の存在に憑依されて人間を襲う変貌した怪物であった。
──話は少し変わるが、侍と陰陽師が二人一組なのは依り代の正体を知っているからである。
怪異が好んで憑依するのは憎悪や嫉妬など根幹になる負のエネルギーである。異形の怪物達にとって負のエネルギーこそが現世へと肉体を構築する媒体である。即ち、依り代の正体は負のエネルギーに満ちた人間である。
陰陽師の役割は怪異を現世から切り離す儀を行い、浄化する為に存在し、侍の役割は怪異を剣を以て現世から怪異を切り離す為に儀を行い、本来あるべき世界に魂を還す為に存在する。
どちらかが欠ける事は即ち、依り代の正体である人間の死を意味するのだ。
故に風馬は刀を抜くか、どうするかを迷う。
怪異のレベルはクトゥルーのような異形である。このレベルは風馬でも一人で押さえ込むのは至難の技であった。
いまの風馬に出来る事は異形の怪物を撹乱し、時間稼ぎする事くらいである。
しかし、それ以上に残された人間が多いのが厄介である。先にも述べたように異形は負の感情で強さが決まる。つまり、この負の感情が荒れ狂う中で異形の魂はより強さを増すのであった。それは風馬自身の焦りすら糧にしている。
風馬は焦る気持ちを圧し殺し、己の使命を果たす為に心を無にする。
侍が為すべき事は無辜の民を守る事──剣は弱き者を守る為に在る。その為なら修羅に落ちようと──
「ダメ!」
不意にそんな叫びが聞こえて風馬は振り返る。
声の主は天月光癒であった。
「・・・そんな気持ちじゃダメだよ、風馬さん」
光癒は呼吸を整え、ゆっくりと近付く。
一歩。また一歩。
光癒が近付く度に異形の存在が後退する。
異形の存在は恐れていた。たった一人の少女と言う光の存在に。
後退出来なくなった異形が恐怖のあまり攻撃するが、それを風馬が立ち塞がって剣で捌く。
最早、異形に対して焦りや恐怖はない。寧ろ、とても温かい何かに護られているかのような安心感さえ、風馬は感じた。
(・・・いまなら出来るな)
風馬はなんとなく、直感で光癒に顔を向ける。
「光癒ちゃん。いまなら祓い、清められる。君の思う通りに言葉を紡げば良いから──」
「・・・風馬さん。もう少し近付いて」
光癒にそう言われて風馬が顔を近付けると光癒は風馬の唇にそっとキスをする。一瞬、驚いたが、光癒の顔を見て、そこに恥ずかしさや照れはない。あるのは憂いのみである。
それを悟って風馬は自身が為すべき事をする。
──即ち魔を断ち斬る事である。
「此処は汝が在るべき世界に非ず。我が一刀にて祓い、清めん」
そう告げた途端、風馬の刀から眩い金色の光が放たれる。
その光は魔を祓い、清めんが為に存在し、その刃は魔を断ち斬るが為に存在する。
「──絶儀【魔斬剣】」
そう言い放ち、風馬が刀を振るうと刀身から極太のビーム状の光が放たれ、風馬の背後から天使の翼のようなオーラが一瞬、放出される。
そのビーム状の光を受けた異形の魂は完全に浄化され、光の粒子となって空へと還る。
それを見送ってから風馬は刀を納め、滝のように汗を流して意識を失う光癒を抱き止めてから優しく地面へと寝かせる。
──絶儀【魔斬剣】。
異形の魂すら浄化するこの剣は明らかに従来の陰陽師の魂の返還とは異なる完全な浄化方法である。恐らくは天使の生まれ変わりである天月光癒だからこそ、出来る魔を絶つ儀なのだろうと風馬は考える。
──とは言え、光癒の様子を見るに乱発は出来ないであろう。恐らくは一撃に膨大なエネルギーを有すると考えられる。
そんな事を考えているとスパンと頭を叩かれた。
何事かと顔を上げると見慣れた顔があった。
「相川さん?・・・何で此処に?」
「ちょっと、いまはそんな事より、この子の回復が先でしょう?」
「──っと、そうっすね!」
風馬はいつもの調子を取り戻して、そう言うと光癒を抱き抱えて走る。
本来ならば、役場や病院を頼るべきだが、光癒の事をもっとも知る人物に見て貰った方が良いだろうと風馬は判断すると光癒の家族がやっていると言う料理屋を探しに向かう。
そんな風馬を見送りながら相川はスマホを取り出す。
「もしもし。私です・・・はい。相川本人です。はい。はい・・・ええ。私に憑依していた異形の魂はそちらでも観測された通り、浄化されました。はい。いままでの返還の儀ではなく、完全な浄化です・・・はい。天月光癒と言う存在は天使の生まれ変わりと聞いております。即ち天使が今後の鍵となる可能性は十分に考えられるでしょう・・・はっ。今後の調査も踏まえ、陰陽師一同精進して参ります。ええ。お任せ下さいませ──次期首相殿」
相川は冷静に状況を伝えるとサイレンが響く中、光癒を抱き抱えて走り去った風馬が目指した方角を眺めるのであった。
───
──
─
風馬は市内をひたすら駆け回って、ある事に気付くのに一時間掛かった。
(・・・住所知らねえのに意味もなく、駆け回ってしまった)
とんでもない失態をして風馬は自分にげんなりする。
光癒の呼吸は整っているとは言え、未だに熱にうなされた赤子のように蒸気している。このままでは光癒が危険であると焦り過ぎた結果がこれである。
「えっと、光癒ちゃん。今更なんだけれど、どんなお店やってんのか教えてくれない?──って、その状態じゃあ流石に無理だよな?──すまん。少し冷静になるわ」
そんな事を今更のように言う風馬に応じるように光癒は弱々しい手つきで鞄からチラシを取り出す。
「・・・ここです。中華の満腹亭ってお店です」
「中華の満腹亭ね?・・・OK」
「満腹亭は品揃えも豊富・・・手作り餃子に焼売だけでなく・・・いまなら期間限定で満腹炒飯特盛が750円・・・学生さんはなんとワンコインで食べられ・・・」
(朦朧とした意識の中で自分の店の宣伝しとるよ、この子!?)
染み付いた宣伝告知のお蔭で光癒の店がわかり、風馬は彼女を抱き抱える事からおんぶに切り替えてスマホで中華の満腹亭を調べる。するとそこは目と鼻の先であった。
風馬は彼女をおんぶしながら汗だくだくで店内に入る。
「いらっしゃいませ!」
「満腹炒飯特盛一つ!──じゃなかった!ここは天月光癒ちゃんの働いている店で良いんだよな!?」
「あいよ!満腹炒飯特盛一つね!光癒はうちの子だよ!
あんた、うちの看板娘目当てで来たんか!」
「いやいや。そうじゃなくて光癒ちゃんが大変なんだ!悪いが見てくれないか!」
そう言われて亭主が目を細め、ようやく事態を飲み込む。
「光癒!?何があった!?」
「俺は臨時採用された侍だ。詳しい話はあとでするから、まずはこう言う時の光癒ちゃんをどうすれば良いか知りたい」
風馬がそう告げたのも聞いているとは思えぬ様子であったが、亭主は棚から琥珀色の蜂蜜を取り出して、それを白湯とレモンで割る。
「光癒。お父さんの作ったホットレモンだぞ・・・飲めるか?」
光癒はカップに入ったホットレモンを手にするとチビリチビリと少しずつ飲む。
呼吸も落ち着き、安定化すると光癒は自室で仮眠を取る為におかみによって運ばれる。
そんな光癒を見送ってから風馬は出来上がった満腹炒飯特盛を食しながら亭主と一対一で話し合う。
「臨時の侍って事は光癒の事は既に知ってんだな?」
「ああ。親孝行の良い子で宣伝も上手い──そして、陰陽師見習いって事はな?」
「当たり前よ。光癒はただの看板娘じゃねえ。俺達には勿体ないくらい、優しい子に育った。
インスタグラフィティでも話題になっていたんだぜ?・・・満腹亭の看板娘は天使だってな」
それが言葉的揶揄なのか、実際にあの状態を知っていて言っているかまでは定かではなかったが、風馬は満腹炒飯の特盛を半分以上平らげながら更に蓮華で炒飯を口に運びながら耳を傾ける。
「陰陽師見習いになったのは2ヶ月前からだ。光癒は気の優しい子だ。恐らくはいてもたってもいられなかったんだろう。
それに光癒は俺が言うのもなんだが、本当に天使の生まれ変わりなんじゃないかって出来た子だ。そんなあの子があんな状態で帰って来るなんてよお」
「気持ちは解らないでもないな」
そう風馬が言うと天月の亭主は頭を下げる。
「あんたを侍と見込んで頼みがある。光癒を──娘を守ってくれ。頭ん中がヒヨコみたいな子だ。そんな我が子が陰陽師なんて危険な道を進むとなると気が気じゃねえ。後生だ・・・頼まれてくれねえか?」
土下座に近い頭の下げ方をする天月の亭主に風馬は「わかった」と頷く。
それを聞いて、天月の亭主は喜びかけるが「ただし、条件がある」と言われて、すぐに笑みを消す。
「なんだ?やはり金か?」
「金もだが、もっと重要な事だ」
「金よりも重要な事だと?・・・もしや、光癒を嫁にとか──」
「いや、侍を請け負う間、中華の満腹亭の飯を250円にしてくれ。これは俺の死活問題なんでな・・・頼む」
予想外の提案に天月の亭主は空いた口が塞がらなかったが、何を言われたのか理解し、豪快に笑う。
「がっはっは!色恋云々や一攫千金でなく、飯が第一ってか、面白い奴だ!」
「此方も金銭で厳しくてな・・・その条件で構わんか?」
「おうよ!それくらいで光癒が無事なら大歓迎だ!宜しくな、若いの!」
──こうして、風馬は明日の食事の為に正式な侍稼業をする事になる。
後日、正式に風馬景信は天月光癒の侍となるのであった。
陰陽師見習いの女子高生が正式に侍を雇うなどの例がない為に話題となったが、前回の事件の怪異のやり取りがショート動画なので一部がネットに公開されて一層、話題となるのであった。
それがとある波乱を呼ぶ事となるのだが、この時の風馬達はまだ知らずにいた。
欠伸を一つしながら風馬景信は背筋を伸ばすとベッドから立ち上がり、近くにあったテレビのリモコンを操作してテレビの電源をオンにする。
『──次のニュースです。戦ヶ崎市伍光地区にて怪異の出現を確認しました。これに対し、政府は近隣の侍や陰陽師に応援を要請するとの事です』
風馬は顔を洗って歯を磨くと寝間着から普段から外出の為に着こなしているくたびれた黒いワイシャツと色褪せたジーパンに身を包み、侍である事を象徴するジャケットを羽織る。
そして、普段から愛用している刀の手入れをしてから黒塗りの鞘に納めると玄関の扉を開けながらスマホを起動して着信履歴やLINEヤホーを確認する。
5件にも渡る着信回数や短いLINEのメッセージスタンプの履歴を見て、風馬はダメ元で相手に電話する。
留守録に切り替わりそうになった直後、連絡相手に繋がり、風馬はとりあえず大丈夫そうで安心する。
「もしもし、風馬です──あー。すみません。今、目が覚めました。
いまから向かいますんで、もう少し踏ん張ってて貰えますか?・・・はい。全速力で向かいますんで。大丈夫ですよ。事故ったりしませんから・・・はい。あとは着いてからですね。わかりました」
風馬はスマホの通話機能で相方である人間──相川朝緋にそう連絡すると普段から使うクロスバイクを漕いで全力疾走で向かう。
その速度はテレビで活躍する競輪選手並みに速く、途中で車を五台ほど追い抜いて相川が待つ現場へとクロスバイクを漕ぐ。
肉眼で茶色のスーツの女性と常識では考えられない異形の生物が対峙しているのを確認すると風馬は急ブレーキを踏み、腰のベルトの専用ホルスターに差していた鞘から刀を抜刀すると異形の生物へと向かうようにして後輪を浮かせたクロスバイクから跳び上がる。
「いらっしゃいませえぇ!」
その異形の生物に斬り掛かりながら叫ぶと異形の生物──ドラゴンも雄叫びを上げながら上体を起こしながら翼を広げ、その前足を風馬に振るう。
ドバンと言う音を風馬が聞いたのはその直後であった。
相川が牽制でドラゴンにショットガンを放ったのである。
ドラゴンが怯んだ瞬間を見計らって風馬は空中で身を捻り、突き出された腕を斬り捨てながら着地し、怒り狂うドラゴンの反撃を予想して炎を吐かれるよりも先にそのまま素早く後方へと下がる為に跳ぶ。
その後方には相川が黒いロングヘアーを靡かせながら凛とした顔でショットガンを手にドラゴンを見据えていた。
「フォローありがとうございます、相川さん!」
「遅い。15分の遅刻よ」
「うぐっ・・・すみません。埋め合わせは囮になる事で許してくれませんか?」
「帰ったら今回の始末書の提出もお願いね」
「うっす。相変わらず、お役所仕事は大変そうですね?」
軽口を叩きながら風馬は相川と共に今回の怪異であるドラゴンを見据える。今回の怪異の正体は一般的な西洋風のドラゴンのようである。
風馬達にとっては久しぶりの大物相手となるが、風馬には余裕があった。
「それじゃあ、相川さん。いつもの奴を頼みますね?」
「わかったわ。今回は大物相手だし、長めに集中するから少し時間を頂戴」
相川はそう言うと風馬にショットガンを預け、風馬の方も相川さんに手にしていた刀を預ける。
「こっちだ、蜥蜴野郎!」
そう言いながら風馬は相川の詠唱の邪魔にならぬようにショットガンを発砲しながらドラゴンを牽制する。
その間に相川さんが神経を集中させ、受け継がれし儀式詠唱を開始する。
「我が身に宿りし陰陽の血よ。我が命を以て彼の者をあるべき輪廻へと祓い、清めたまえ。
我が名は相川朝緋。陰陽師朝月相川法潤言代守の末裔なり」
相川の詠唱が完了し、ドラゴンの背後に鬼門が出現する。
そして、相川に預けた風馬の刀の刀身が眩い光を放ち出す。
「──退魔の儀『依り抜きの理』」
相川はそう呟くと風馬に向かって刀を投げる。
その刀を造作なく、キャッチすると風馬はショットガンを捨ててドラゴンと対峙し、いつもの真言を以て退魔の儀を完遂する為に動く。
「此処は汝が在るべき世界に非ず!依り代より離れ、その魂の在るべき世界へと還れ!」
──風馬が光の刃を飛ばし、それを受けたドラゴンの魂が鬼門へと吸い込まれて行く。
しかし、流石は大物相手故にか、完全な依り代から切り離すには至らず、風馬は普段なら行わないニノ太刀を繰り出し、ようやくドラゴンの魂を鬼門へと還す。
完全にドラゴンと呼ばれる異形の魂が吸い込まれて門が閉まると鬼門はスーッと消え、残されたのは依り代となっていた人間とドラゴンが暴れたという痕跡だけであった。
「──退魔の儀"鬼門還し"・・・此処に完了」
「ご苦労様ね、風馬君。相変わらず、見事な手際だったわ」
そう言うと相川は風馬が投げ捨てたショットガンを拾って彼に近付く。
「ただし、物を扱う時はもっと慎重にお願いね。付喪神になるのも怖いけれども何よりも礼節をわきまえない侍は侍として三流よ」
「あっと・・・すいません。気を付けます」
相変わらず、手厳しいが、相川が正しいので風馬も素直に謝る。
風馬が刀を鞘に納めてドラゴンの依り代となっていた人物の安否を確認していると少し遅れてパトカーのサイレン音が遠くから響き渡り、数人の警察官が風馬達に近付いて来る。
「やれやれ。来るのが遅いですよ」
「仕方ないわ。これは侍と陰陽師にしか出来ない事なんですもの。その分、犯罪関連は私達ではどうしようもないわ」
相川とそんな話をしながら、風馬はチラチラと降りだした雪を眺める。
こうして、風馬景信と言う侍の令和5年の慌ただしい12月は幕を明けるのであった。
全ての根源は昭和後半期に現れたインターネットの普及と共に異世界と日本がアクセスした事が発端だと風馬は小学生の頃に習った。
異世界の存在は現世に直接現れるのではなく、ある条件に該当した人間に憑依し、人間がいままで用いて来たあらゆる武器を無効化するのであった。
しかし、人間にも対抗手段が完全に断たれた訳ではない。
即ち日本が誇る刀である。無論、刀のみで相手をしたとしても憑依した人間が劣勢になれば、その魂は憑依対象を変えるのみで真の解決策には至らない事も発覚した。
そこで更に研究が進み、退魔の儀に必要とされる陰陽師の血を宿す特殊な人間の鬼門への還す儀式であった。
こうして、受け継がれた異世界との戦いで得た知識と経験により現代に侍と陰陽師と言う役職が蘇ったのである。
そんな侍と陰陽師の異世界からの侵略──もとい怪異との戦いの歴史は昭和から平成、平成から令和へと続いて来たのであった。
これがこの世界の異世界と共存しながら行われる特殊な仕事である。
この仕事がある限り、食うには困らないが、日に日に異世界の勢力──魂が力を付けているので風馬も楽観視が出来ないのも事実である。
この状況がいつまで続くのか・・・それこそ、神のみが知る世界だろうと思いつつ、風馬は警察官と話していた相川に呼ばれ、彼女に顔を向けて近付くのであった。
12月ははじまったばかりである。
──この時の風馬はまだ自分の運命が大きく動き出すのを知らずにいた。
───
──
─
──戦ヶ崎市伍光地区。
戦ヶ崎うどんがと呼ばれるうどんが名物であり、怪異の出現以外にも野生動物が多く目撃される東京都内でも比較的に田舎にあたる場所である。
一見してのどかな場所ではあるが、現代の世界で侍の存在が再び息を吹き返した地とも言うべき場所であるが為、この地にて侍を志すものも多い。
侍を名乗る為には特殊な訓練と帯刀許可書による技術試験だけでなく、対になる役職である陰陽師を生業とする家系に仕える事を義務付けされている。これは怪異の討伐や撃退に陰陽師の培って来た陰陽道を称する特殊な力が必須となる為であり、侍は対に該当する陰陽師を主君として仕えねば、ならない規則があった。
風馬は身体能力こそ、人間離れしているもののまだまだ荒削りであり、とある事情で主君となる陰陽師に仕えている訳でもない。
故に伍光地区の役場にて対になる陰陽師が見付かるまでの間、役場にて仮の資格を得る事で役場に貢献しているに過ぎないのであった。
その契約有効期限も2年と期間が決まっており、風馬はこのまま侍ではなく、別の職業を探す準備を始めようかどうするかを迷っている最中であった。確かに特殊な訓練で風馬の侍としての身体能力はずば抜けている。
その気にさえなれば、他のスポーツの類いのプロの選手として成り上がる事も可能なのだろうが、風馬にはその気すらもなかった。
寧ろ、侍以外の生き方以外知らず、今後についても前々から悩んでいたが、新しい進路が決まった訳でもない。
風馬自身はほどほどの力量で安定した収入が得られれば、なんでも良かった。
しかし、当然と言うべきか、そんなに都合の良い話がある訳もなく、風馬はいつものようにハローワーク通いと役場通いを繰り返していた。
そんな彼に突然の悲報が舞い込んで来る。
この2年近く、対になっていた役場スタッフである陰陽師・相川朝緋の退職である。
「え?相川さんが辞めた?」
「ええ。一身上の都合と言うので詳しくは聞いてませんが、かなり前から無理をされていたようです。退職についても前々から考えられていらっしゃったらしくて・・・」
役場の新しい受付のそんな言葉に風馬も自分の耳を疑った。
自分の事もであったが、あの生真面目な相川が退職を考えていた事にも驚きが隠せなかった。
そんな風馬に追い討ちをかけるように新しい受付嬢が言葉を続けた。
「風馬さんにも突然で申し訳ありませんが、次のスタッフが見付かるまで侍の資格は剥奪させて頂きます」
「・・・えっと、この場合って失業手当てって出ますか?」
「残念ながら風馬さんは役場の正規の侍としての条件ではなく、臨時採用されて頂いていただけでしかありませんので失業手当てを得る事が出来るのかは少し難しいかと」
風馬は受付とそんなやり取りをした後に肩を落として役場から去って行く。明日から収入を得るのが一層難しくなる。
派遣で侍として仕事をするのもアリなのだが、場所によっては伍光地区を離れなくてはならないし、力量も解らぬ強力な怪異を相手にしなくてはならなくなるかも知れない。
下手をすると収入目的で侍や陰陽師の偽る詐欺紛いの人間と組まされる事もある。
侍として仕事を続けるにしても職場内容などの厳選が必要である事には変わらない──かと言って、このままでは困る。
はてさて、どうしたものか?と悩みつつ、風馬は役場から出て最寄りのハローワークへ向かおうとしていた。
──まさにその時であった。
「・・・あの」
そんな風馬にひとりの少女が声を掛ける。悩んでいた風馬がその声に気付き、眼前の少女に視線を向ける。
身なりから察するに少女は星女晴明学園と呼ばれる陰陽師の育成を専門に扱う学園の生徒であろう。
そして、恐らくは陰陽師見習いか何かなのであろう事は確かであった。
役場周りで仮登録の陰陽師や侍をスカウトしようとする事自体は珍しい事ではない。
今回のように声を掛けられる事もあるが、それにしては目の前の少女は若過ぎるように風馬には思えた。
「声を掛けて、すみません。お兄さんはお侍さんですよね?」
「つい、さっきまではね。いまはただのフリーターさ」
「そうですか・・・あの、良ければ、私のお侍さんになりませんか?」
やはり、スカウトの類いかと思いつつ、風馬は丁寧に断る。
「ありがたい申し出だけれど、お嬢ちゃんは学生だろう?──と言う事はまだ陰陽師見習いか何かだろう。
悪いけれども、侍の規約上、未成年の相手の侍は出来ないんだ」
「なら、卒業するまで待って頂けませんか!必ず、一人前の陰陽師になりますので!」
よくは解らないが、この少女は風馬を侍に選びたいようであった。訳アリなのは理解したが、何故に此処まで固執するのかが風馬には解らなかった。
仕方なく、少女が卒業して陰陽師となるまで待つ事を約束すると少女は花が咲いたように笑う。
これだけ見ると無垢な子どものようであった。ある意味で風馬も天使のようなその少女の笑みに少し救われたような気がした。
「約束ですよ!嘘ついたら赦しませんからね!」
「はいはい。解ったから話はこれでおしまいね。悪いけれども、こっちも今日からフリーターでさ。
明日の飯の心配もしなきゃいけない身だから、これで・・・」
「そんなに大変なんですか?」
「まあ、それなりに・・・いや、かなり大変かな?」
「だったら、うちに来て下さい!」
「・・・いや。なんで、そうなるの?」
屈託のない少女の言葉に風馬も思わず、ツッコんでしまう。
侍は主君に対して恋愛感情を抱くのも性的に手を出す事も許されない。
そもそも、陰陽師をする者は祓い、清めるが故に穢れを行う行為を極端に嫌うところがあるのだが、目の前の少女はそんな事を一切、考えてない素振りであった。
風馬は改めて、少女を観察する。
黒髪に淡い瞳を見るに生粋の日本人だが、その容姿は制服がなければ、更に幼く見えていただろう。
寧ろ、相手が純真無垢過ぎて星女晴明学園の生徒のコスプレした小中学生だとも考えられるし、Uチューバー関連のドッキリ企画である可能性も拭えなくはない。
そんな風にあれこれ頭を悩ませている風馬に対してツッコみを受けた少女は不思議そうに首を捻る。
「だって、お侍さんなのに生活に困っているんですよね?」
「いや、まあ、確かにそうっちゃあ、そうだけれども・・・普通、見ず知らずの人間と同居しようとするかね?」
「?」
「あー・・・OKOK。お嬢ちゃんがその手の話題が全く解らんのが、なんとなくだけれど解った。
けれども、ゴメンね。規則は規則だからさ」
「そう、ですか・・・」
少女が残念そうに肩を落とし、風馬が横切ろうとすると少女は風馬の後ろから出て来た刀を差した別の人物に声を掛けようとする。
「あの、すみません。おさむ──」
「ちょっと待てえええぇぇーーっっ!!」
あまりにも無知な少女の行動に堪らず、風馬は叫んで少女の肩を掴む。
少女はあまりにも無知過ぎていた。それは世の中の恐さなど知らないかのように・・・流石の風馬もそんな少女の将来が不安になってしまって思わず、止めに入る。
「え?え?・・・えっと、どうかしましたか?」
「どうかしましたか?──じゃないよ!お嬢ちゃんは自分が色々とヤバい事をやっているの気付いている?
もしや、ギャグ?ギャグか?──いや、そんな無知な顔をして裏では色々とやらかしている系のUチューバーかなんかなのか!?」
「え、え~っと、そんなに私って変でしょうか?」
「変だからツッコんでんでしょが!お嬢ちゃんはあれか!──異世界からでも来た天使の生まれ変わりか何かか!」
「え?──ちょ、ちょっと待って下さい!
な、なんで天使の生まれ変わりだってバレたんですか!?」
「・・・え?」
「・・・え?」
直後、時が止まり、我に返った風馬は彼女の手を掴んで、とんでもない拾い物をしたと内心で思いつつ、天使の生まれ変わりを自称する少女と共に再び役場へと足を運ぶのであった。
───
──
─
風馬のもたらした情報に伍光地区にある役場内は慌ただしくなった。
結論から言ってしまえば、少女が嘘を言っている訳ではないのが明白だったが、役場内で行える簡易検査の結果だけで見てもより一層、信憑性を増したのである。
簡易検査を行った役場内での霊力測定器のデジタル測定器も従来の陰陽師よりも少女が遥かに高エネルギーのオーラを放っている事が解り、その不純物を全くと言っていい程、含んでいない聖なるエネルギーは明らかに人外のそれである事も発覚した。
スタッフによっては少女の小さな身体に菩薩のようなものをも見たであろう。それくらい純真無垢で清らかなるオーラを少女は発していたのである。
異世界との同化がもたらしたものなのか、このような人間は稀に出て来るのを風馬も知識として知ってはいたが、実際にこの目で実物を──しかも何らかの生まれ変わりの類いを目撃するのはこれが初めてである。
なので、流石にどうしたものかと風馬が悩んでいると受付の女性が役場で決定した事を風馬に報告する。
「遅くなりました、風馬さん。こちらの提案としてなのですが、風馬さんには特別監視員として臨時でになりますが再度、役場のスタッフとして採用させて頂きます。つきましては彼女──天月光癒ちゃんと行動を共にする事をお願い致します」
「・・・つまりはお嬢ちゃん──天月さんと同居せよと?」
「そうなります。此方の準備不足もありますが、相川さんの引き継ぎなどで、いまは人手が足りませんので・・・臨時とは言え、侍経験のある風馬さんなら問題ないでしょう。
天月さんが卒業し、陰陽師として登録されましたら、そのまま彼女の侍として正規登録を行わせて頂きます」
「大丈夫ですか?不純異性行為とかになったら、どうするんですか?」
「その時は風馬さんが役場が信頼出来る人物ではないと認定し、今後の斡旋出来るお仕事が限られてしまいますのでご注意下さい」
「・・・ですよねえ?」
「気休めに聞こえるかも知れませんが、これも風馬さんに侍として必要な試練だと思って下さい」
「これからこの子と同居させられる健全な男性に言う事じゃないですよね、それ?」
風馬は「トホホ」と肩を落として深いため息を吐くと未だに状況を理解していない顔をしている天月光癒に顔を向ける。
「よく解ってないのですが・・・私って、どうなっちゃうんでしょうか?」
「とりあえずは大丈夫そうだから安心してくれ」
「そうなんですか?・・・それなら良かったです~」
「あとはさっき、お嬢ちゃんの──あっと、光癒ちゃんって呼べば良いかな?──光癒ちゃんちに行く話だったけれども急でなんだけれども、厄介になっても構わないかな?」
「──っ!はい!是非、うちに来て下さい!」
(くそっ・・・可愛いな。流石は天使の生まれ変わりなだけある)
風馬はそんな事を思いながら一旦、借り住まいの自宅へと向かう。
その後ろからとてとてと光癒がついて来る。
「・・・えっと、なんで、ついてくんのかな?」
「あ、すみません。お侍さんのお部屋って言うのが、どんなものか気になってしまって・・・迷惑でしたか?」
「う~む。本当にびっくりするくらいに素直だねえ?・・・まあ、うちに来るくらいなら問題ない・・・のか?・・・一応、役場の要請だし、問題ない、よな?」
風馬はそんな事をぼやきながら素直な事を褒められたと勘違いして照れている光癒と共に自宅へと到着する。
その光景を見て、光癒はひどく驚く。
「こ、これがお侍さんのお部屋ですか?」
「・・・うん。わかっている。凄く散らかっていて汚いって言いたいんだろ?」
「そ、そんな事は・・・」
「いや、良いから。変に気を配られるよりは素直に言われた方がよっぽどマシなレベルなのは自分でも解っているからさ」
そう言って風馬はテキパキと掃除や整理をはじめる。
そんな風馬を見て、光癒の世話焼きモードに火が点いたようにウズウズする。
「風馬さん!やっぱり、私もお手伝いしますね!」
「え?──いや、悪いよ。すぐ終わらせるからさ」
「お気になさらず!──と言うか、こんなに汚れてしまったお部屋は綺麗にして上げなきゃ可哀想じゃないですか!」
「・・・うぐっ!素直に言われた方がダメージ少ないと思っていたが、まさか、火の玉ストレートで来るとは・・・光癒ちゃんって綺麗好きか、世話焼きさんなんだね?」
そんな事をぼやきながら風馬は光癒にいまは亡き母の姿を重ねるのであった。
「まずはベッドの下ですね!」
「──っ!?はい!ストップ!そこは自分でやるから、光癒ちゃんは台所とかからを頼むよ!あっちの方が汚れているからね!」
「?──よく、わかりませんが、わかりました!」
(あっぶねえ。危うく性癖を暴露されるところだったわ)
風馬は冷や汗を掻きながらベッドの下の秘蔵コレクションをどうするかを真剣に悩む。
──それから程なくしてピカピカにされた風馬の部屋を見て、光癒は満足そうに頷く。
「これでバッチリですね!」
「う、うん。そうだね?」
鼻歌交じりに風馬の洗濯物を片付ける光癒に対して風馬はぐったりと脱力しながら「ぜったい忘れているよな?」と呟く。
「ねえ、光癒ちゃん?」
「はい。まだ何かお手伝いする事がありますか?」
「・・・いや、そうじゃなくて何か大事な事を忘れているとかない?」
「・・・あ!そうでした!」
風馬の言葉に光癒はポンと手を叩くと何故か浴室へと向かう。
「排水溝の髪の毛ですね!私とした事がうっかりしてました!」
「違う違う。そうじゃなくて俺の自宅に来たのは光癒ちゃんの家にお邪魔させて貰う為だろう?」
「・・・あっ!」
その言葉に光癒もようやく本来の目的を思い出し、「すみませんすみません」と謝りながら掃除をする手を止める。
風馬もだいぶ疲れたが、本来の役目も果たさねばならないので、「これからが本番だ」と気合いを入れ直す。
「それじゃあ、行くか・・・必要なものは証明書とキャッシュカードとスマホくらいだしね。あとはクロスバイクくらいか。替えの下着とかはどうするかな?」
風馬は持って行くものを厳選していると光癒が不思議そうに首を捻る。
「風馬さんはどこかへお泊まりでも、するんですか?」
「え?何処って光癒ちゃんちだけれど?」
「・・・ふぇっ!?」
そう言われて光癒は今更ながら顔を赤らめた。
「そ、それはちゅま──つまり、風馬さんと一緒に寝るって事ですか!?
コ、コウノトリさんが赤ちゃんを運んで来ちゃうんですか!?」
「・・・ああっと何処からツッコみゃ良いんだ、コレ?」
さしもの風馬もドキドキしている光癒に頭を抱えそうになる。
「よし。少し整理しよう。俺は光癒ちゃんちに呼ばれた訳だよね?──それは同居とかって意味ではないのね?」
「ちが──違いましゅ──違います。うちはちょっとしたお料理屋さんなので風馬さんもお腹いっぱいになって幸せになると思っただけでして・・・」
「ああ。そう言う事ね?・・・いや、同居とか泊まり込みについては俺の勘違いっぽいから気にせんでくれ」
風馬はようやく、光癒の言葉の意図を理解して他意がない事に納得する。
それから他に気になっていた事を質問する。
「光癒ちゃんの生まれ変わる前の世界ではコウノトリが赤ちゃんを運んで来るものなの?」
「え?この世界では違うのですか?」
「あ~っと、この話についても忘れてくれ。説明するのが難しい。
大人になれば、その内に違いとかに気付くだろうし、それまでは気にせんでくれ」
「そうなんですね!なら、私も早く大人になってみたいです!」
「・・・俺はこのまま、光癒ちゃんが大人になっていく方が心配だがな。将来、悪い大人に騙されないか心配だよ」
風馬は目を輝かせるピュア過ぎる光癒にボソッと呟くと最低限の必需品だけ持って光癒と共に再び外に出る。
だいぶ日も暮れて来たせいか、少し肌寒さも感じるので風馬は光癒を自宅前で待たせ、近くの自販機でホットの缶コーヒーを2本買う。
「──っと、相川さんとのくせでついつい、両方ともブラックで買っちまったな?・・・光癒ちゃん、飲めるかな?」
そんな事をぼやきながら風馬は来た道を戻ると光癒に温かい缶コーヒーを渡す。
光癒は初めて飲む缶コーヒーのブラックに興味津々であったが、一口飲んで盛大にむせるのであった。
───
──
─
「・・・ふぇっ・・・えぐっ・・・んぐっ」
「・・・あのさ、無理に飲まなくても良いんだよ?」
「でも、風馬さんが折角、買ってくれたコーヒーですから・・・んっ・・・んぐっ」
「いや、本当に無理に飲ませる気はなかったんだ。それは俺が貰うから別の買って来るよ。
一応、間違えがないように聞くけれど、オーダーはある?」
「・・・あの・・・それならホットレモンを」
「ホットレモンね?・・・OK」
風馬は光癒が飲みきれなかったコーヒーを受け取って一気に飲み干すと自販機へとダッシュで向かい、ホットレモンを購入して急いで戻る。
「ほい。ホットレモン」
「あ、ありがとうございます」
涙をポロポロ溢しながら光癒はホットレモンを飲むと少しずつ落ち着きを取り戻し、頬を赤らめて「ほぅっ」と一息吐く。
そんな小動物のような光癒の姿を見て、風馬は自然と光癒の頭を撫でていた。
そんな風馬の行動に光癒は戸惑った様子を見せるがホットレモンのボトルを両手で持って上目遣いで風馬を見る。
「あっと、すまない。なんか、自然と手が出てたわ」
風馬は我に返って、そう言うと光癒の頭を撫でていた手を離す。
そんな風馬に対して光癒は何も言わずに俯いたまま、ホットレモンをチビチビと飲む。
(やれやれ。子守りってのは得意じゃないんだがな)
そんな事を考えながら風馬は自分の頭を掻いて空を見上げて──
──赤黒く染まる空に異変を感じる。
「光癒ちゃん。スマホ持っている?」
「ふぇっ?・・・あ。持ってますけれど・・・」
「緊急速報で異界の門が開かれたとかってニュースがあったりしない?」
風馬がそう聞いた次の瞬間、遅れて非常事態を知らせるアラームが鳴り響き、驚いた光癒がわたわたとしながら自分のスマホを落とさぬように手にして速報ニュースに目を通す。
その間に風馬は異変の元凶へと疾走する。
そこで目にしたのは異形の存在に憑依されて人間を襲う変貌した怪物であった。
──話は少し変わるが、侍と陰陽師が二人一組なのは依り代の正体を知っているからである。
怪異が好んで憑依するのは憎悪や嫉妬など根幹になる負のエネルギーである。異形の怪物達にとって負のエネルギーこそが現世へと肉体を構築する媒体である。即ち、依り代の正体は負のエネルギーに満ちた人間である。
陰陽師の役割は怪異を現世から切り離す儀を行い、浄化する為に存在し、侍の役割は怪異を剣を以て現世から怪異を切り離す為に儀を行い、本来あるべき世界に魂を還す為に存在する。
どちらかが欠ける事は即ち、依り代の正体である人間の死を意味するのだ。
故に風馬は刀を抜くか、どうするかを迷う。
怪異のレベルはクトゥルーのような異形である。このレベルは風馬でも一人で押さえ込むのは至難の技であった。
いまの風馬に出来る事は異形の怪物を撹乱し、時間稼ぎする事くらいである。
しかし、それ以上に残された人間が多いのが厄介である。先にも述べたように異形は負の感情で強さが決まる。つまり、この負の感情が荒れ狂う中で異形の魂はより強さを増すのであった。それは風馬自身の焦りすら糧にしている。
風馬は焦る気持ちを圧し殺し、己の使命を果たす為に心を無にする。
侍が為すべき事は無辜の民を守る事──剣は弱き者を守る為に在る。その為なら修羅に落ちようと──
「ダメ!」
不意にそんな叫びが聞こえて風馬は振り返る。
声の主は天月光癒であった。
「・・・そんな気持ちじゃダメだよ、風馬さん」
光癒は呼吸を整え、ゆっくりと近付く。
一歩。また一歩。
光癒が近付く度に異形の存在が後退する。
異形の存在は恐れていた。たった一人の少女と言う光の存在に。
後退出来なくなった異形が恐怖のあまり攻撃するが、それを風馬が立ち塞がって剣で捌く。
最早、異形に対して焦りや恐怖はない。寧ろ、とても温かい何かに護られているかのような安心感さえ、風馬は感じた。
(・・・いまなら出来るな)
風馬はなんとなく、直感で光癒に顔を向ける。
「光癒ちゃん。いまなら祓い、清められる。君の思う通りに言葉を紡げば良いから──」
「・・・風馬さん。もう少し近付いて」
光癒にそう言われて風馬が顔を近付けると光癒は風馬の唇にそっとキスをする。一瞬、驚いたが、光癒の顔を見て、そこに恥ずかしさや照れはない。あるのは憂いのみである。
それを悟って風馬は自身が為すべき事をする。
──即ち魔を断ち斬る事である。
「此処は汝が在るべき世界に非ず。我が一刀にて祓い、清めん」
そう告げた途端、風馬の刀から眩い金色の光が放たれる。
その光は魔を祓い、清めんが為に存在し、その刃は魔を断ち斬るが為に存在する。
「──絶儀【魔斬剣】」
そう言い放ち、風馬が刀を振るうと刀身から極太のビーム状の光が放たれ、風馬の背後から天使の翼のようなオーラが一瞬、放出される。
そのビーム状の光を受けた異形の魂は完全に浄化され、光の粒子となって空へと還る。
それを見送ってから風馬は刀を納め、滝のように汗を流して意識を失う光癒を抱き止めてから優しく地面へと寝かせる。
──絶儀【魔斬剣】。
異形の魂すら浄化するこの剣は明らかに従来の陰陽師の魂の返還とは異なる完全な浄化方法である。恐らくは天使の生まれ変わりである天月光癒だからこそ、出来る魔を絶つ儀なのだろうと風馬は考える。
──とは言え、光癒の様子を見るに乱発は出来ないであろう。恐らくは一撃に膨大なエネルギーを有すると考えられる。
そんな事を考えているとスパンと頭を叩かれた。
何事かと顔を上げると見慣れた顔があった。
「相川さん?・・・何で此処に?」
「ちょっと、いまはそんな事より、この子の回復が先でしょう?」
「──っと、そうっすね!」
風馬はいつもの調子を取り戻して、そう言うと光癒を抱き抱えて走る。
本来ならば、役場や病院を頼るべきだが、光癒の事をもっとも知る人物に見て貰った方が良いだろうと風馬は判断すると光癒の家族がやっていると言う料理屋を探しに向かう。
そんな風馬を見送りながら相川はスマホを取り出す。
「もしもし。私です・・・はい。相川本人です。はい。はい・・・ええ。私に憑依していた異形の魂はそちらでも観測された通り、浄化されました。はい。いままでの返還の儀ではなく、完全な浄化です・・・はい。天月光癒と言う存在は天使の生まれ変わりと聞いております。即ち天使が今後の鍵となる可能性は十分に考えられるでしょう・・・はっ。今後の調査も踏まえ、陰陽師一同精進して参ります。ええ。お任せ下さいませ──次期首相殿」
相川は冷静に状況を伝えるとサイレンが響く中、光癒を抱き抱えて走り去った風馬が目指した方角を眺めるのであった。
───
──
─
風馬は市内をひたすら駆け回って、ある事に気付くのに一時間掛かった。
(・・・住所知らねえのに意味もなく、駆け回ってしまった)
とんでもない失態をして風馬は自分にげんなりする。
光癒の呼吸は整っているとは言え、未だに熱にうなされた赤子のように蒸気している。このままでは光癒が危険であると焦り過ぎた結果がこれである。
「えっと、光癒ちゃん。今更なんだけれど、どんなお店やってんのか教えてくれない?──って、その状態じゃあ流石に無理だよな?──すまん。少し冷静になるわ」
そんな事を今更のように言う風馬に応じるように光癒は弱々しい手つきで鞄からチラシを取り出す。
「・・・ここです。中華の満腹亭ってお店です」
「中華の満腹亭ね?・・・OK」
「満腹亭は品揃えも豊富・・・手作り餃子に焼売だけでなく・・・いまなら期間限定で満腹炒飯特盛が750円・・・学生さんはなんとワンコインで食べられ・・・」
(朦朧とした意識の中で自分の店の宣伝しとるよ、この子!?)
染み付いた宣伝告知のお蔭で光癒の店がわかり、風馬は彼女を抱き抱える事からおんぶに切り替えてスマホで中華の満腹亭を調べる。するとそこは目と鼻の先であった。
風馬は彼女をおんぶしながら汗だくだくで店内に入る。
「いらっしゃいませ!」
「満腹炒飯特盛一つ!──じゃなかった!ここは天月光癒ちゃんの働いている店で良いんだよな!?」
「あいよ!満腹炒飯特盛一つね!光癒はうちの子だよ!
あんた、うちの看板娘目当てで来たんか!」
「いやいや。そうじゃなくて光癒ちゃんが大変なんだ!悪いが見てくれないか!」
そう言われて亭主が目を細め、ようやく事態を飲み込む。
「光癒!?何があった!?」
「俺は臨時採用された侍だ。詳しい話はあとでするから、まずはこう言う時の光癒ちゃんをどうすれば良いか知りたい」
風馬がそう告げたのも聞いているとは思えぬ様子であったが、亭主は棚から琥珀色の蜂蜜を取り出して、それを白湯とレモンで割る。
「光癒。お父さんの作ったホットレモンだぞ・・・飲めるか?」
光癒はカップに入ったホットレモンを手にするとチビリチビリと少しずつ飲む。
呼吸も落ち着き、安定化すると光癒は自室で仮眠を取る為におかみによって運ばれる。
そんな光癒を見送ってから風馬は出来上がった満腹炒飯特盛を食しながら亭主と一対一で話し合う。
「臨時の侍って事は光癒の事は既に知ってんだな?」
「ああ。親孝行の良い子で宣伝も上手い──そして、陰陽師見習いって事はな?」
「当たり前よ。光癒はただの看板娘じゃねえ。俺達には勿体ないくらい、優しい子に育った。
インスタグラフィティでも話題になっていたんだぜ?・・・満腹亭の看板娘は天使だってな」
それが言葉的揶揄なのか、実際にあの状態を知っていて言っているかまでは定かではなかったが、風馬は満腹炒飯の特盛を半分以上平らげながら更に蓮華で炒飯を口に運びながら耳を傾ける。
「陰陽師見習いになったのは2ヶ月前からだ。光癒は気の優しい子だ。恐らくはいてもたってもいられなかったんだろう。
それに光癒は俺が言うのもなんだが、本当に天使の生まれ変わりなんじゃないかって出来た子だ。そんなあの子があんな状態で帰って来るなんてよお」
「気持ちは解らないでもないな」
そう風馬が言うと天月の亭主は頭を下げる。
「あんたを侍と見込んで頼みがある。光癒を──娘を守ってくれ。頭ん中がヒヨコみたいな子だ。そんな我が子が陰陽師なんて危険な道を進むとなると気が気じゃねえ。後生だ・・・頼まれてくれねえか?」
土下座に近い頭の下げ方をする天月の亭主に風馬は「わかった」と頷く。
それを聞いて、天月の亭主は喜びかけるが「ただし、条件がある」と言われて、すぐに笑みを消す。
「なんだ?やはり金か?」
「金もだが、もっと重要な事だ」
「金よりも重要な事だと?・・・もしや、光癒を嫁にとか──」
「いや、侍を請け負う間、中華の満腹亭の飯を250円にしてくれ。これは俺の死活問題なんでな・・・頼む」
予想外の提案に天月の亭主は空いた口が塞がらなかったが、何を言われたのか理解し、豪快に笑う。
「がっはっは!色恋云々や一攫千金でなく、飯が第一ってか、面白い奴だ!」
「此方も金銭で厳しくてな・・・その条件で構わんか?」
「おうよ!それくらいで光癒が無事なら大歓迎だ!宜しくな、若いの!」
──こうして、風馬は明日の食事の為に正式な侍稼業をする事になる。
後日、正式に風馬景信は天月光癒の侍となるのであった。
陰陽師見習いの女子高生が正式に侍を雇うなどの例がない為に話題となったが、前回の事件の怪異のやり取りがショート動画なので一部がネットに公開されて一層、話題となるのであった。
それがとある波乱を呼ぶ事となるのだが、この時の風馬達はまだ知らずにいた。
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